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2010年7月31日

日本農政への代替案「CSA」─参加と負担が担い手をつくる

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 作り手は食べものを作りながら、自分で価格を設定できない。テレビやカメラと同じようにメーカーでありながら、メーカー希望小売価格は存在しない。市場に出してみなければ値段が決まらない。

 そんな農業の世界で、どうして後継者が育つのだろうか。

 21世紀を目前にした2000年、我が国にはまだ389万人の農業者がいた。そのうちの66%が60歳以上の高齢世代で占められていたとはいえ、懸命に田園に立ち国民食料を支えていた。しかし、その後も毎年10万人ほどが田舎を去り、2009年には289万人までに減ってしまった。10年足らずの間に100万人もやめていく仕事が日本の農業だ。

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1970年の農業人口は1000万人を超えていた(出典:農水省 農業構造動態調査結果)

 1億2,742万人(2010年7月現在)分の食料を、わずか289万人、全体の2.26%が作っているということになる。期待の後継者について言えば、39才以下の若き農業者が3年間で6万人近くも減り、わずか23万人ほどになってしまった。

 10年、20年後、次世代の食と農はどうなってしまうのだろうか。


《 はたして日本で「前払い約束社会」は根付くか 》

 グローバリゼーションの名の下に大規模農業を展開した食料輸出大国の米国。その米国で小規模農家を消費者が買い支える「CSA(Community Supported Agriculture)」という取り組みが90年代以降に広がった。

 CSAとは地域ごとに農家が地域住民など消費者と結びついた運動で、1年分の農作物を前払いで契約し、収穫した作物が消費者の手に届く仕組みだ。2007年に米農務省が初めて調査したところCSAに取り組んでいる農場の数は1万2,549にも上っていた。

 買い支える側は"Share Holder"と呼ばれている。"Share"とは一般的に「分かち合う」と訳されるが、その他に「参加する」「負担する」の意味を持っている。

 自然を相手にする農業は天気など環境に左右されやすく、農家はリスクと隣り合わせだ。CSAでは消費者は農家と年間契約しており、不作時に返金することもない。作物だけでなく、冷害など不作時のリスクも分かち合うのだ。

 日本において、果たして前金を支払う消費者がいるのだろうか。消費者はいまだに「良いものができたら買ってやる」という姿勢で、先払いしたところで「不作だったらお金を返せ」とはなりえないだろうか。

 旧自民党政権下の「戦後農政の大転換」で画一化や効率化が加速され、ますます生産者と消費者の距離が開きつつある現在、食と農もイチから考え直す時期にきているのではないか。

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 100軒の消費者が集まって月5,000円(年間6万円)でも生産者に直接前金を払うようになれば、作り手は100軒を喜ばせるために安心して農業に取り組める。霞ヶ関が机の上でつくる政策に乗るよりも、よっぽど「担い手」がふえるのではないだろうか。

 作り手と食べ手が向かい合い、お互いが"Share Holder"としてリスクを負担、共有することで初めて良い食べもの、良い農業、良い農村、良い都市生活がうまれてくる。参加と負担の気持ちを持った"日本型CSA"が日本各地で広がることを心から願っている。

Profile

結城登美雄(ゆうき・とみお)

-----<経歴>-----

1945年中国東北部(旧満州)生まれ。
民俗研究家。
仙台で広告会社経営に携わった後、東北各地を10年以上歩きながら、住民を主体にした地域づくりの手法「地元学」提唱する。
「食の文化祭」などの地域づくり活動で、1998年「NHK東北ふるさと賞」、2005年「芸術選奨芸術振興部門文部科学大臣賞」受賞。
「増刊現代農業」「グラフィケーション」など、雑誌や新聞を中心に農と地域づくりについて多数執筆中。
現在、宮城教育大学・東北大学大学院非常勤講師。

BookMarks

-----<著書>-----


『地元学からの出発―この土地を生きた人びとの声に耳を傾ける』
2009年11月、農山漁村文化協会


『東北を歩く―小さな村の希望を旅する』
2008年8月、新宿書房


『山に暮らす海に生きる―東北むら紀行』
1998年11月、無明舎出版

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