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2012年7月24日

星英雄:オスプレイ配備でアメリカは日本を守るのか 野田政権の倒錯

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 アメリカは「日米安保条約上の権利」を振りかざして、垂直離着陸機MV22オスプレイの沖縄への配備を強行する構えだ。野田佳彦首相は「米政府の方針にどうのこうの言う話ではない」と、アメリカに追従して受け入れる。しかし、考えてみてほしい。アメリカが日本に基地を置き米軍を配備できるのは、「日本防衛」の義務を果たすことが条件のはず。だが、アメリカは日米安保条約の根幹をなす「日本防衛」の義務を果たさない、と森本敏防衛大臣はかねてから公言してきている。
 3月下旬、東京・秋葉原で防衛省主催による日米同盟に関するシンポジウムがあった。長島昭久・野田首相補佐官がアメリカの新国防戦略指針について講演し、アメリカと日本の安全保障問題専門家4人のパネリストが討論した。見逃せない場面はシンポジウムの終盤に訪れた。
 「アメリカは日米安保条約でどれほどの義務感を日本に感じているのか」。シンポジウム会場内から、鋭い質問が出た。日米安保条約に基づいて、いざというときアメリカは「日本防衛の義務」を遂行するのかという問いである。

 これにパトリック・クローニン新アメリカ安全保障センター(CNAS)上級顧問がこたえた。
 「アメリカの日本防衛のコミットメントは磐石だ」。さらに、「万一、尖閣の紛争が発生した場合、アメリカは日本を完全に支持するだろう」とも付け加えた。
 CNASは、オバマ政権のカート・キャンベル東アジア・太平洋担当国務次官補が設立したシンクタンク。クローニン氏は、1996年の日米安保共同宣言に寄与するなど、アメリカにおける有数の日米同盟専門家だ。
 ところが、森本敏・拓殖大学大学院教授(当時)は、求められてもいないのにあえて発言し、クローニン氏に反論したのである。
 「条約というのは何が書いてあろうとも、そして(日米安全保障)条約に基づいて何百回、(アメリカが)貴国(日本)を守ると約束しても、それは一片の紙に過ぎない」。
 「本当にアメリカが日本を守るかどうかは、アメリカにとって日本を守ることがアメリカ国家とアメリカ国民にとって真に利益だと感じるときしかない」
 日本と米国が国家として取り決めた日米安保条約はただの紙切れだ、いくらアメリカが「日本防衛」を約束したとしても、アメリカが「日本防衛」のために実際に行動することはない。森本防衛相は、「アメリカは日本を守ってくれるから基地を提供する」という日本政府の国民に対する表向きの説明を根底から否定してみせたのだ。
 ほかでもない。野田首相は森本氏を「安全保障分野のわが国の第一人者」と評価し、防衛相に任命した。アメリカの安全保障政策・軍事動向を熟知している、その森本防衛相の言である。
 だが、不都合な真実は隠す。防衛省はシンポジウムの模様をホームページで公開したものの、肝心のこのやり取りの部分は削除している。
 
 「アメリカは日本を守らない」というのは森本防衛相の持論である。ここ数年、目立たないが雑誌やテレビで公言してきた。持論を形成するきっかけの一つとなった出来事があったという。
 2008年3月、福田康夫首相(当時)の外交ブレーンといわれた五百旗頭真防衛大学校長(当時)と森本氏らがアメリカの首都ワシントンを訪れた。福田首相が前年の日米首脳会談で提案した「日米交流を強化するイニシアティブ」の一環としてのことだった。
 このとき、日本とアメリカの安全保障関係者がウォーゲームを実施した。2011年に北朝鮮が日本の領土に弾道ミサイルを撃ち込んだという想定の机上作戦演習。同盟関係にある日米両国がそれにどう対応するかというシミュレーションである。
 ウォーゲーム参加者は日本側は五百旗頭氏や森本氏のほか、自衛隊陸将、さらにワシントンの日本大使館から政務担当公使や武官ら。アメリカ側はマイケル・グリーン元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長、太平洋軍司令官経験者、NATO軍司令官経験者ら米国の安全保障政策に影響力を持つそうそうたる顔ぶれだった。
 北朝鮮に「反撃しない」──というのがアメリカ側の結論だった。これにたいし森本氏は、日米安保条約第5条を引き合いに、日本施政下の領域に対する武力攻撃が発生した場合、アメリカが日本防衛にあたるのは条約上の義務ではないか、と訴えた。
 しかしアメリカ側は、「条約に書いてある文言に従って国際関係が動くと思うのか」と反論。日米安保条約の義務に拘束されないというアメリカ側の「本音」をあからさまにしたのである。
 ワシントンでのウォーゲームの2カ月後、森本氏は「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」でこのときの顚末を語った。同会(現在、新世紀の安全保障体制を確立する議員の会に衣替え)は、集団的自衛権の行使や自衛隊の常時海外派兵、日米同盟強化をはかる最大の議員連盟である。民主党の前原誠司政調会長、長島首相補佐官、自民党の中谷元・元防衛庁長官らが集う。
 何よりも驚くことがある。森本氏がこの場でもっとも力説したことは、「日本防衛義務」を果たそうとしないアメリカを非難することではなかった。逆に、日米同盟を維持するためにはよりいっそうの「犠牲とコストを負担し、アメリカと行動をともにする必要がある」と強調したのだ。
 「日本を守らないアメリカ」に認めてもらえる日本になるには、「日本がさらなる犠牲とコストを払わなければならない」というきわめて倒錯した論理を展開したのである。これにたいして、その場にいた議員たちは誰一人として異論や疑問をさしはさむことはなかったという。
 自民党に代わった民主党政権下で進む日米同盟の「深化」。オスプレイの強行配備、辺野古への新基地建設、日本の軍事的役割の増強はこの文脈で推進されるのだ。

 実は、「アメリカは日本を守らない」というリアルな認識は森本氏1人だけのものではない。日米同盟に関する専門家の間では広く浸透している。
 「アメリカは日本防衛の義務を負う」と、岸信介首相(当時)が答弁したのは1960年、いわゆる「安保国会」だった。それまでの旧安保条約は、「安全保障」とは名ばかりで実態は米軍による占領の継続に過ぎなかった。引き続きアメリカに基地を提供し、駐留を認めるためには、「対等性」の演出は欠かせない。「アメリカの日本防衛義務」こそ、現行安保条約締結にあたって日本国民向けの最大の売りだった。以降今日まで、「物(基地)と人(米軍)の交換」の日米安保といわれてきた。
 だが、アメリカの「日本防衛」については日本側がつねに不安にかられ、時にそれが表面化した歴史がある。北朝鮮の核・ミサイル問題、中国との尖閣諸島をめぐる問題、「核の傘」。「近年日本の一部に米国の拡大抑止の保障を疑問視する声があるが、米国の日本に対する拡大抑止のコミットメントはゆるぎない」。在日米国大使館の政務担当公使が公開の場で、問われもしないのに自ら釈明をはじめたこともある。
 ある専門家は、「アメリカが日本を防衛する根拠はない」と、こう指摘する。①日米安保条約にアメリカの自動参戦条項はない②それどころか、戦争に関する権限は連邦議会にある③アメリカが日本のために自国の青年の命を犠牲にすることはまずありえない④日米同盟はアメリカの世界戦略にしたがってグローバル化し、変質した。
 防衛省関係者はこういう。「イラクに陸上自衛隊を派遣したように、基地と人の取引の日米安保から、日本が基地も人も提供する日米安保になっている。アメリカが日本を守るといえたのは1950年代までのことだ」
 日米同盟を推進してきた当事者の久間章生・初代防衛大臣も「日米安保の変質」を指摘してこういう。
 「在日米軍はもう日本を守っていないのだ。・・・いまや安保条約締結当初の日本防衛という役割は薄れ、新たに米国の世界戦略の拠点になっているのが在日米軍基地なのだ」(『 防衛維新 : 新たな安全保障戦略の確立に向けて 』2009年)
 いま野田民主党政権は「米国は日本を防衛する義務を負い、日本はそのために米国に施設・区域を提供する義務を負う」。これが「日米安保体制の最も重要な部分」(外務省ホームページ)だと説明する。その日米同盟の根幹が虚構なのだ。沖縄をはじめとする日本国民が、世界で群を抜く米軍基地と米軍関係経費用の負担を強いられ、安全や人権を侵害されなければならない理由はどこにあるだろうか。
 日米安保条約・日米同盟とは何なのか。国民が議論し判断するときがきたと思う。

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日本語の「ヨロン」という言葉には「世論」と「輿論」という2種類の漢字があります。実は、この2つの言葉は大きく意味が異なっていて、「世論(セロンとも読みます)」とは「感情的な世間の空気」のことで、「輿論」とは「議論を積み重ねてできあがった公的意見」のことを指します。《よろんず》が目指すものは後者の「ヨロン=輿論」をつくることであり、そのために、《よろんず》では情報のプロ・アマに関係なく自由闊達に議論を交わすための場所を提供します。メディアの調査で発表される「ヨロン=世論」とは違う真の「ヨロン」をつくるため、執筆者・出演者・読者のみなさんに、この新しい“知の共有空間”に参加いただけるよう呼びかけます。

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