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2011年2月18日

天明伸浩:ムラからのTPP反対論──まず百姓が声をあげるぞ

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【読者投稿募集中!】
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TPP問題が農村を直撃している。

「農業保護のために日本がたち行かなくなってもいいのか」マスコミから聞こえてくる言葉に、農家もたじろいでいる。

 「TPPを受け入れて、農業を強くするべきだ」「TPPに参加せずに国力が落ちたら農家もやっていけない」という言葉が、村の中でさえ発せられることもある。若い元気のいい農家からは「TPPが来ても自分の農場はしっかりとした経営基盤があるから大丈夫」「農産物を輸出しているからTPP賛成」と威勢のいい発言を聞くことも度々だ。財界やマスコミによって洪水のように流されるTPP推進論の前に、大きな声で反対を唱えることをためらう雰囲気が、農村に広がっている。

◆農業は、先頭を切って海外と戦い続けてきた

 戦後農業は不足する食料の増産を第一の目標にスタートした。朝鮮戦争の特需から経済的に立ち直った日本は、工業製品を輸出するのと引き替えに農産物の輸入量を増大させた。
 農村に大きな影響を与えたのは昭和36年に制定された農業基本法による選択的規模拡大だ。都会に若者を送り出し、村でも金になる作物を推奨され、大豆や小麦は駆逐され、アメリカからの輸入が増大。そして昭和45年からの減反は米増産に励んできた村に大きな衝撃を与えた。米が余る時代が来ると、米の値段は低迷するようになった。平成に入ると牛肉やオレンジも自由化されて国内の生産量は大きく減少。その頃から東南アジアや中国の低賃金労働者によって栽培された野菜の輸入も増えた。
 原住民を追い出した大平原で作られる農産物。日本人の労賃を遙かにしのぐ安さで働く人々によって作られる野菜。低コストの海外の農業との戦いを強いられ続けながらも、日本の村で踏ん張り、百姓は田や畑を守り続けていると言える。日本の山野が美しいのはそんな百姓の働きがあったからだ。

 財界は円高が進み日本の製造業地としての条件が悪化すると、安い労働力や土地を求めて海外に工場を移転した。移転しない企業では、終身雇用から派遣労働へと労働条件を悪化させ、労賃を下げた中で人を働かせている。
 賃金は増えず、労働条件は悪化、職場が減り、同業者も減っていく。昭和30年頃から農業者が体験してきた悲哀を、今では労働者も味わうことになったのである。

◆自由貿易は、民主主義を破壊する 

 ソ連の崩壊や、アメリカの凋落を予想したフランスの学者・エマニュエル・トッド氏は著書の中で「自由貿易は不平等、格差を増大させ、非常に優遇された超富裕層が社会を支配して、民主主義を崩壊させる」「この状況下で問題を解決するのは、協調的な保護主義である」と述べている。

 この10年、新自由主義での自由貿易や規制緩和策で社会の安定感は大きく壊された。特に地方はひどいことになっている。まだ県庁所在地はましだが、それよりも小さな地方都市はなすすべもなく活力が低下している。実際、私が暮らす上越市の山間地では農協の支店、ガソリンスタンドが閉店され、保育園や小学校などの公的な施設の閉鎖が続いている。子どもを育てたり買い物をする、当たり前の暮らしを営むことが難しくなった。 
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妻・香織さんと3人の子どもと住む川谷地区は全人口21人、平均年齢70歳以上の集落。毎年3メートルの雪が降る豪雪地帯だ

 各面で格差が増大している日本において、TPPは民主主義を破壊する最後の一撃を加えるのではないだろうか。
 トッド氏の「自由貿易は、民主主義を滅ぼす」、「デモクラシー以後―協調的「保護主義」の提唱」などはぜひ多くの人に読んでもらいたい著書だ。

◆農業の崩壊だけでは済まされない

 TPP問題で百姓を血祭りに上げ、ムラで生きることを否定すれば、同じことがマチで暮らしている多くの人にも襲いかかるだろう。
 かつては変化がゆっくりでタイムラグがあった。しかし、今はムラで暮らせなくなると同時に、マチでも暮らせなくなるのではないだろうか。TPPでは医療や金融などあらゆる面での市場開放が義務づけられている。私たちが作り上げてきた社会の安全網を破壊し尽くされ、労賃が下がり続けたときに、どんな暮らしが私たちを待ち受けているのだろうか。
 
◆まずは百姓がこえをあげるぞ!

 これまで自由化によって破壊し続けられる先頭を切ってきた百姓も、今回ばかりはおとなしく滅んでいくわけには行かない。百姓だけでなく、その後ろにはマチで暮らす多くの人たちも、続けて生活を壊されていくことがいよいよ明らかになってきたからだ。
 TPP問題は「自由貿易によって破壊される生活者」vs「新自由主義者」の戦いであり。この戦いに負けると民主主義すら破壊されかねない。その最前線に私たち百姓が立たされている。 
 全国の百姓と共にTPP反対の決起集会を企画した。

 まずは百姓が大きな声を上げ、賛同してもらえる仲間と手を取り合いながら大きな運動に発展させていければと思っている。中野剛志先生の話を聞き、全国から手弁当で集まる百姓の熱い思いをぜひ一緒に感じてください。

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【お知らせ】
当たり前に生きたい、ムラでもマチでも TPPでは生きられない!座談会
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日時:2月26日(土)午後1時から
場所:東京千代田区神田駿河台、明治大学リバティータワー2階 1021教室
参加費:500円
内容:中野剛志・京都大学助教授の基調講演、韓国農民の報告、参加者の3分間スピーチ、キャンドルデモなどが予定されている。

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【プロフィール】 天明伸浩(てんみょう・のぶひろ)
1969年東京都生まれ。95年、東京農工大大学院卒。同年、新潟県上越市吉川区の最上流部「川谷」に夫婦でIターン就農。2年の研修を経て「星の谷ファーム」を立ち上げる。新潟日報「星降る山里から」を連載、著書に「転身!リアル農家--等身大の新規就農」

2011年2月 2日

菅野芳秀:TPP ちょっと考えて...土の話

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 TPPについてはすでに多くの視点から論じられている。私はここで、同じことを繰り返すよりも、その方々の論を踏まえながら、主に土に限定して書きたいと思う。

 長年、百姓してきてつくづく思うことは、「土はいのちのみなもと」ということだ。土を喰う。そう、私たちはお米や野菜を食べながら、それらの味と香りにのせてその育った所の土を喰っている。私たちはさながら土の化身だ。もしその土が汚れた土ならば作物も汚れ、食べる私達も汚れていく。もしその土が疲弊した土ならば作物のもつ生命力は弱く、それを食べる私達の生命力、免疫力も弱くならざるを得ない。「土はいのちのみなもと」なのだ。多くの農民にとっては今さらということなのだろうが。

 作物は言うまでもなく土の産物であり、その育った場所の土の影響を全面的に受け、その汚れはそのまま作物の汚れにつながっていかざるを得ない。山形県でキュウリの中からおよそ40年前に使用禁止となった農薬の成分が出て問題になったことがあった。40年経っても土の中に分解されずにあったのだろう。そこにキュウリの苗が植えられ、実がつき、ふくらんで汚染されたキュウリができてしまった。隣の市ではかつてお米からカドニュウムがでたこともあった。つまり、作物は土から養分や水分だけでなく、化学物質から重金属まで、いい物、悪い物を問わずさまざまなものを吸い込み、実や茎や葉に蓄えるということだ。それらは洗ったって、皮をむいたってどうなるものではない。何しろ身ぐるみ、丸ごと溶け込んでいるのだから始末が悪い。土の汚染はそのまま食べる者の汚染につながっていく。

 一方、土の力の衰えは作物を通して食べる者の生命力免疫力に影響を与えていく。作物の中のビタミンやミネラルなどの養分をみてみよう。「食品成分表」(女子栄養大学出版部)によって1954年と、約50年後の2000年のピーマンを比較すると、100gあたりに含まれるビタミンAの含有量は600単位から33単位へとほぼ1/18に激減している。ビタミンB1も0.1mgから0.03mgに。その他のビタミンも軒並み1/2、1/3とその成分値を下げているのだ。これはピーマンに限ったことではなく、全ての作物にあてはまることであり、また、ミネラルにも同じことが言える。

<参考グラフ>
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見た目が同じピーマンでも中に含まれる栄養素は違う。最近注目されている植物工場で育つ農作物の栄養素はもっと下がるのだろうか...

 原因は何か。それは土の力の減退にある。1954年まではほぼ堆肥だけで作物を作っていた。だが、60年代に入って堆肥から化学肥料へと農法を変え、効率と増産による最大利益を追い求めて来た結果、土の力が衰え、作物の質が落ちて行ったということだ。ビタミンAを言えば昔の1個が今の18個に匹敵するが、だからといって子どもたちに18個を食えとはいえない。彼らは50年前と比べ、数分の一に成分値が下がった作物を取り入れながら、骨や肉、血液を作らざるをえないのだ。子どもを取り巻く基礎的食料の質の劣化。このことが子どもたちの生命力や精神力に少なからざる影響を与えていると言わざるを得ない。土の健康は即、人間の健康に結びつく。食を問うなら土から問え。いのちを語るなら土から語れ。健康を願うなら土から正そう。生きて行くおおもとに土がある。そういうことだ。

 土を食べ、土に依存することによって生きる。このことは我々のみならず、100年後の人たちにとっても、200年後の人たちにとってもかわらない。土は世代を越えたいのちの資源なのだ。政治や行政の最大の課題が、人々の健康、すなわちいのちを守ることであるとすれば、そのいのちを支える土の健康を守ることは第一級の政治課題でなければならない。切実にそう思う。

 さて、そこでTPPだ。

 農水省の調査によるとTPPに参加すれば、食料自給率が14%まで下がるという。86%は諸外国の作物だ。それらの作物を食べながらさまざまな国々の土を食べることになる。その土が食べてもいいほどに安全かどうかは誰も知らない。汚染度合いも疲弊度合いもわからない。国民の健康で安心な暮らしが量的のみならず、質的にも危機にさらされる。

 海外から押し寄せる作物の安さに引きずられ、国内の農業はより一層、農薬、化学肥料に傾斜したものにならざるをえないだろう。土からの収奪と土の使い捨て。未来の世代にはぼろぼろになった土しか渡せない。そんな農業、そのような「国づくり」が進行していくのだ。それを民主党は「新成長戦略」という。でも、それがどのような意味で「成長」なのだろうか。

 そのような「成長」路線から離れ、未来の世代を脅かすことのない、土を始めとした、いのちの資源を基礎とする「循環型社会」づくりを通して、新しい人間社会のモデルを広くアジアに、世界に示していくことこそが日本の進むべき道ではないかと思うのだ。

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【関連映像】

(「土はいのちのみなもと」by zachoice)

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【プロフィール】菅野芳秀(かんの・よしひで)kanno.jpg
1949年生まれ。養鶏農家を営む一方、山形県長井市の全世帯を巻き込んだ生ゴミ・リサイクルのシステム「レインボー・プラン」を実現。著書に『土はいのちのみなもと 生ゴミは よみがえる』(講談社)

Profile

日本語の「ヨロン」という言葉には「世論」と「輿論」という2種類の漢字があります。実は、この2つの言葉は大きく意味が異なっていて、「世論(セロンとも読みます)」とは「感情的な世間の空気」のことで、「輿論」とは「議論を積み重ねてできあがった公的意見」のことを指します。《よろんず》が目指すものは後者の「ヨロン=輿論」をつくることであり、そのために、《よろんず》では情報のプロ・アマに関係なく自由闊達に議論を交わすための場所を提供します。メディアの調査で発表される「ヨロン=世論」とは違う真の「ヨロン」をつくるため、執筆者・出演者・読者のみなさんに、この新しい“知の共有空間”に参加いただけるよう呼びかけます。

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