平成22年 3月30日
公認会計士 矢野弘樹
本年2月4日に小沢一郎民主党幹事長の元秘書石川知裕衆院議員らが収支報告書の虚偽記入で起訴された。昨年の西松建設の関係団体からの寄付の事件から今回の事件に至るまで、様々な報道、識者によるコメントが出されてきている。それらは検察及び報道のあり方や企業・団体献金の是非が主な論点となっている。
しかし、一連の事件は、収支報告書という財務報告の記載に関する容疑であるから、政治資金の情報公開制度についての検討も行われるべきだろう。筆者は公会計や政治資金の収支報告書に関しては、専門分野ではないのだが、一般的な企業会計に係る者として、政治資金の情報公開制度を考察してみる。
【要旨】
昨年からの陸山会の政治資金に関する事件を分析すると、検察の行為の問題だけでなく、情報公開制度自体の不備も背景にある。このため、以下の、政治資金に関する情報公開制度改正を提言する。
(1) 政治資金の収支の公開の基準・指針は、立法府からも行政からも独立した団体が設定する
一連の事件の分析を通じ、政治資金規正法の収支範囲が不明瞭で、記載時期も誤解が生じやすく、法令が求める会計帳簿は不十分で事務的ミスが発生しやすいと思われることなどが分かった。
政治資金規正法は、「収支の公開」と「政治資金の授受の規正その他の措置」という2つの目的を持っているが、両者は性質を異にする為、収支の定義で会計の世界に馴染まない言葉が用いられて収支報告書作成方法が難解になっている問題などがある。両者を切り分け、収支の公開は、国民の不断の監視と批判を可能にする為に、立法府からも行政からも独立した団体が基準・指針を設定し、そこで、現在の収支報告書の様式の変更、整備すべき会計帳簿などの改正を検討し、政治資金規正法は政治資金の授受の規正その他の措置に特化するのが適切である。
(2) (1)の団体は、公的な資金の情報開示全般の基準・指針設定を行う
政治資金が国民の浄財であることに鑑みて収支を明らかにするのであれば、税金が投入されている役所等の収支を明らかにすることも同様に重要であるため、(1)で述べた団体は、政治資金のみならず、自治体や国の会計などの公会計全般に渡る基準・指針の設定主体としたい。
なお、東京都が総務省の指導とは異なる「東京都方式」と呼ばれる複式簿記に基づく財務諸表を独自に作成しており、これは高く評価出来るが、そういう自治体の自主性にゆだねる方法よりも、(1)の団体で規定されるのが望ましい。
(3) 政治資金監査は、現金預金の残高確認を取り入れるなど、品質向上を図るべき
筆者がこのような提言を持つに至った経緯は、【詳細】をご参照頂きたい。
【詳細】
<目次>
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.西松建設事件
(1)前提(報道から得られる事実)
(2)事件の分析
Ⅲ. 不動産取引関係事件
(1)前提(報道から得られる事実)
(2)収入と支出の範囲
(3)虚偽記載の重要性判断
Ⅳ.制度上の問題点と対応策案
Ⅴ.結び
Ⅰ.はじめに
昨年からの陸山会の政治資金に関する事件は、検察の不当な逮捕・起訴であると思われるが、そもそも政治資金情報公開制度自体に不備があり、それが検察に不公正な権力行使の余地を与えたといえる。
これは検察の権力行使を是正すれば済む話ではなく、政治資金の収支報告が、作成者の過失または法令の誤解により不適切になる恐れがある。このため、政治資金の情報公開制度を改正する必要があると考える。
現行制度の問題点を明らかにするため、一連の事件の分析を通じ、論考を加えてゆきたい。
Ⅱ.西松建設事件
(1)前提(報道から得られる事実)
新政治問題研究会(以下、新政研)及び未来産業研究会(以下、未来研)が陸山会に寄付→陸山会の収支報告書に寄付された金額が収入に記載され、そこに寄付をしたものの名前として、新政研、未来研が記載されていた。
これに対し、検察は、新政研、未来研は西松建設のダミー団体だから寄付したものの名前は西松建設にすべきだったとして起訴。
(2)事件の分析
政治資金規正法(以下、規正法)は、寄付を受けた場合に「寄附をした者の氏名」を記載することとしている(規正法12条1項1号、以下、条文番号の前に法律名無い場合は規正法を指す)。ここでは特段の基準は示されておらず、寄附をした者の氏名として、直接お金を出した新政研、未来研を記載したのは当然だろう。
検察は、担当者であった大久保隆規氏が両団体からの寄付を西松建設から説明を受けたからダミーと分かっていたはずと主張しているようだが、企業や医師会などの業界団体と関係のある政治団体は全国に多数ある。そういう状況下では、西松建設から説明を受けたことは同社が両団体へ影響力を持っていることの認識にしかならず、両団体がダミーであることの認識にはならない。
例えば、ある会社に寄付を頼んだ時に子会社から寄付させるとの回答を得て、子会社から寄付があった場合、寄付をした者に親会社を記載するだろうか。普通は子会社を記載するだろう。その場合と同じような話である。
収支報告書作成者がダミーと実体を分けられる外形上の基準でも無い限り、直接拠出した団体の名前を記載して問題無いはずである。
この事件は制度上の不備も特に無いのだが、このような容疑の存在自体疑わしい起訴が起きたからには、寄付した者の氏名を記載する際の指針などが必要かもしれない。
なお、話は少しそれるが、この事件の時に報道された、天の声は、昨年夏に出された国沢幹雄元西松建設社長の判決文で否定されていることを申し添えておく。
Ⅲ. 不動産取引関係事件
(1)前提(報道から得られる事実)
① 平成16年に小沢一郎氏から陸山会に4億円移動し、平成19年に返還された
→収支報告書の記載無し
② 陸山会は平成16年に約3億5千万円で不動産を購入
→平成16年の収支、資産等に記載無く、平成17年の支出、資産等に記載あり
③ 陸山会は①で受領した4億円を陸山会名義で定期預金を組む
→収支報告書の記載対象外
④ ③の定期預金を担保に小沢一郎氏が銀行から4億円を借入、これを陸山会に貸付ける
→小沢一郎氏から陸山会への貸付収支、資産等ともに記載あり
以上の事実に対し、検察は、①は陸山会が小沢一郎氏から借入れたと認定し、平成16年の収入及び平成19年の支出が4億円少ない、②の購入代金の支払が平成17年に記載されているが平成16年に記載すべきだから、平成16年(17年)の支出が、約3億5千万円少ない(多い)、との内容で、収入総額及び支出総額が間違っているという虚偽記入(政治資金規正法25条1項3号)で起訴している。
(注)①は実際には他の政治団体を経由しているのもあるが、話の簡略化のため上記のように捉える。また、平成19年以降に架空寄付があったと言われているが、問題の起点は上記取引なので、架空寄付はここでは取り扱わない。
(2)収入と支出の範囲
①の資金移動を分析するにあたり、規正法を確認しておこう。
規正法は、収支報告書を、収入(12条1項1号)、支出(同2号)、資産等(同3号)の3区分で記載するとし、資産等は特定の資産と借入金を記載する。
収入は党費又は会費、寄付、借入金などの項目が挙げられており(12条1項1号)、支出も経費の項目が挙げられているが、その他収入も項目として挙がっているので、収支の範囲を確認する必要がある。
収入は「金銭、物品その他の財産上の利益の収受」(4条1項)、支出は「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付」(4条5項)とされている。
検察は①の資金移動を借入金と認定しており、借入金なら具体的項目として挙がっているから虚偽記入であることは明確だが、借入金は収支金額の他、収入欄に借入先、資産等に年末残高及び借入先の記載が必要だから、不記載(政治資金規正法25条1項2号)で起訴するのが自然である。それが収支総額間違いの虚偽記入で起訴したのは、借入金と認定されるか否かに係らず、金銭を収受している以上は収支総額にそれを含めるべきとの主張であり、借入金と認定された方が収入の項目として明示されているから違法性を特定しやすいということと思われる。
まず、借入金と認定されるか否かであるが、③の定期預金が実質的に小沢一郎氏に帰属したとの見解もあるが、その場合、小沢一郎氏の個人資産公開で定期預金の開示が必要になるため、定期預金は陸山会のものであり、陸山会が小沢一郎氏へ担保として提供したととらえられる。よって、実質的に借入金と認定される可能性はある。
ただし、これは事後的な、取引の性質の認定の話であり、当時の会計処理の判断としては、契約書も無く利息も発生しない資金の収受を借入金とするのは困難である。
よって、一時的に受け取っただけの金銭の収受(会計上の勘定科目は仮受金)を収支総額に含めなかったことが問題となるが、収入の定義に照らせば、金銭を収受している以上は収入に含まれると思われる。しかし、収支の定義が会計の世界で馴染まない言葉だから分かり難い点や規正法が政治資金の流れを透明化させる趣旨であることに鑑みれば、含まれないと解しても責めを問うほどではないだろう。
ここで、規正法の収支の定義が会計用語と相容れないことを説明する。
※規正法の収支の定義が会計用語と相容れない理由
収入は「金銭、物品その他の財産上の利益の収受」(4条1項)、支出は「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付」(4条5項)とされ、収入の具体的項目としては、党費又は会費、寄付、機関紙誌の発行その他事業収入(パーティーに係る収入含む)、借入金、その他が挙がっている(12条1項1号)。
その他の収入とは、収入として定義されるものから、他に列挙されている項目を除外したものになるので、金銭、物品その他の財産上の利益の収受の範囲が問題となる。
「金銭、物品その他」の「その他」とは、例えば無償で資産譲渡を行うことや役務提供を行う場合などである。
ここで、利益という言葉を考えたい。
会計上、利益とは収受した価値から供与した価値を差引いたものである。例えば、時価300万円の資産を200万円支払って取得した場合、100万円の利益が生じる。
しかし、規正法は収支の定義に、信託に供した元本の授受を除く説明がある(信託元本の授受は資産の保有形態の変化に過ぎず、会計用語としての利益も損失も発生しない)。
さらに収入の項目として借入金が挙がっているが、借入金は返済義務があるため、会計用語の利益など生じていない。例えば借入金の返済が免除された場合を想定して頂きたい。免除された時点で利益が発生するので、借入れ時に利益は発生しない。
よって、規正法の財産上の利益は会計用語の利益より広く、反対給付の有無に係らず収受(供与又は交付)した財物等の価値は全額収入(支出)になると解する。
この解釈なら、先の資産取得の例は、収入に300万円(資産取得200万円、寄付100万円)、支出に200万円の記載となる。
ここで、規正法には減価償却の規定がないため、償却性資産の場合は取得額をゼロとみなすのも可であり、実務はそれが多いようである。しかし、非償却性資産ならそれを購入した場合は収入に記載すべきであるが、今回の不動産取引事件では取得した土地が収入に記載されていないことが問題とされていない。土地の収受を収入に記載せず、金銭の供与だけ支出に記載する処理で良いのなら収支の定義を変えるべき(これだと資金収支報告書である)。
また、借入金の返済免除の例を考えると、借入れ時と免除時両方に収入が記載され、収入の二重計上が起こる。つまり、企業会計のキャッシュ・フロー計算書の収入と損益計算書の収益を合算するような意味不明な数値が出来上がるのである。そんな馬鹿な!と思われるだろうが(これが会計上有り得ないことくらい、簿記3級の知識でも分かる。)、今の規正法はそう定義しているのだ(免除時に一旦借入金を返済してから寄付を受けたとみなして支出に借入金返済を記載する方法も考えられるが、規正法の支出の定義からそれも難しい)。
規正法の収支の定義が会計用語と相容れない理由は、規正法が「収支の公開」と「政治資金の授受の規正その他の措置」の2つの目的を持っている(1条)ことにあると思われる。
政治資金の授受の規正は寄付の金額制限などがあり、これは賄賂を抑制する思想が背景にあると思われる。賄賂などの認定は幅広い定義をするが、会計処理は作成する財務報告に合わせて記載すべき取引の範囲を明確にするので両者の範囲が一致し難い。この、規正法が持つ二面性が会計処理を分かり難くしていると思われる。
法解釈とは別に、検察の主張が実務上可能な会計処理であったかも考えたい。収支報告書が金銭以外の収支(物の贈与や役務提供も寄付になる)も記載することを考えれば、会計帳簿は複式簿記にするのが最善であるが、単式簿記でも現金の出入りを全て記録して残高を算出し、期末に現金有高を確認すれば、残高の差引き計算で現金収支金額は特定される。
しかし、法令が求める会計帳簿(政治資金規正法施行規則6条)は複式簿記どころか、単式簿記より程度が低く、現金勘定残高さえ記載しない様式になっている。このため、記帳漏れが生じやすく、企業・団体からの寄付なら普段から注意しておくだろうが、政治団体の代表者自身からの一時的な金銭の授受であれば事務的ミスで記帳が漏れることはありうる話だろう。
なお、話は少しそれるが、①の小沢一郎氏の資金の原資が水谷建設からの裏金ではという憶測報道があったが、筆者は裏金疑惑は全くのデマだと思っているが、本旨から外れるので、ここでは取り扱わない。
(3)収入と支出、資産等の記載時期
②の不動産代金支払についての起訴は、不動産自体は平成16年の資産等に記載しなくても良いが、支払った金額は平成16年の支出に記載すべきとしている。
つまり、資産等の記載時期は登記にあわせて良いが、支出の記載時期は現金支払時にするとのことであり、記載時期が問題とされている。
これは、現金支払い時以外に支出として記載すべき適当な時期も思いつかないので、検察の主張は正しいが、法令が要求する会計帳簿にも問題がある。
会計帳簿は、収入簿、支出簿、運用簿の3つからなる(政治資金規正法施行規則6条)。
収入簿は寄付や党費又は会費ごとに区分され、収入額を記載していくのだが、運用資産以外の資産を管理する帳簿は用意されていない。つまり、資産等は収入簿と支出簿の摘要欄を確認して作成することになり、これは未払で資産を取得した時などを考えると困難である。よって、収支と資産等の記載時期を合わせるべきとの誤解が生じても致し方ない。
ここで、法令が要求する会計帳簿を確認しておく。
※法令が求める会計帳簿
法令が求める収入簿、支出簿、運用簿は、収支報告書の区分(収入なら党費又は会費、寄付などの区分)に合わせている。収支報告書の収支はあらゆる財物、財物を含まない財産上の利益も含んでいるので範囲は幅広いためだろうが、勘定科目別の記載方式となっておらず、残高も記載しない様式である。よって、この帳簿だけでは勘定科目残高の確定が行えず、年間収支の検証機能が無い。
これは、複式簿記どころか、単式簿記より程度が低い。
ここで、企業会計などで採用される複式簿記は取引全てを対照する2つの勘定科目で記録する。
他方、単式簿記は単一の勘定科目の推移のみ記録する(家計簿など)が、現金勘定の推移を全て記録する様式なら、期末に現金有高を確認することで残高の確定が行える。残高が確定出来れば、前期末残高と当期末残高の差額計算から現金勘定の年間純収支が特定でき、現金勘定の記帳漏れを防ぐことが出来る。
しかし、法令が要求する会計帳簿は収支報告書区分に合わせた記載方法となっているため、勘定科目という切り口の記載ではないから期末残高の確定はそのままでは行え無い。
もちろん、経理の知識・経験のある人や、気の回る人は別途管理簿を作成して収入簿、支出簿及び運用簿に現金、預金、資産などの勘定科目識別欄を追加し、期末にはその識別毎に集計して勘定科目残高を作成し、実査や通帳残高との突合せなどで検証を行うだろうが、それは法令が求める会計帳簿を超えた作業を行うことになり、皆に期待は出来ない。
また、資産等を作成するには、収入簿や支出簿に収受、供与した資産を記録しておき、そこから集計するしかないが、例えば12月に購入した自動車の代金を翌月支払う場合、年末時点の支出簿にはまだ記載されていないが、年末に有する資産等には当該自動車を記載する必要がある。
つまり、資産等の作成の為には現金主義の帳簿だけでは不十分で、別途管理簿が必要となるが、これも自発的にそういう運用をしなければ対応出来ない。
法令が求める帳簿だけでは、年末時点で未払の状態で取得した資産は帳簿に記録されていないから収支報告書の記載が漏れることは十分考えられる。このため、収支と資産等の記載年度はあわせるとの誤解も生じるだろう。
このように、法令が求める会計帳簿は収支報告書作成を支えるには不十分である。
(4)虚偽記載の重要性判断
ここまで、虚偽記入が成立するかどうかについて考察してきたが、虚偽記入であった場合、その内容の重要性も考えなければならない。
財務報告の虚偽記載は、報告を受けるものが判断を誤るかどうかが重要性を判断する基準となる。
収支報告書は、その趣旨からすれば、党費又は会費、寄付などの政治資金の収入と、政治活動としての支出の開示こそが重要なのである。つまり、特定企業・団体から多額の献金を受取っている政治家・政党が偏った政治活動をしてないかどうか、あるいは、政治家が私服を肥やしていないかを主権者が判断するために作成されるのである。
よって、政治団体の代表者及びその親族からの借入金の記載が漏れたことや、不動産の購入に支払った金銭の記載が1年ずれたことは法の趣旨を考えれば重要では無い。
財務報告の虚偽記載は量的重要性だけではなく、質的重要性の観点を持って判断すべきである。
Ⅳ.制度上の問題点と対応策案
一連の事件を分析すると、
・収支報告書の収支の定義が不明瞭
・収支と資産等の記載時期の誤解が生じやすい
・会計帳簿が現金残高さえ確定しない様式である
といった問題点がみえてきた。また、一連の事件では無かったが、
・役務提供などの金額評価方法
・同一政治家が代表となっている政治団体同士の資金の移動の開示方法
なども現在の制度が抱える問題である。
解決方法は色々考えられるが、例えば、資金収支報告書を作成し、この他に規正法の趣旨から開示すべき贈与、役務提供、特定の資産並びに借入金などは、資金収支報告書の付属情報として開示する方法が考えられる。
資金収支報告書にすれば、単式簿記でも純収入額の特定は可能だし、記載時期も資金が移動した時と定義すれば判断に迷うことも少なくなり、金額評価が困難な寄付などは付属情報にすれば済む(単式簿記の帳簿と別の管理簿は要るだろうが)。そもそも会計の大原則として貨幣価値評価の原則なるものがあり、貨幣価値で合理的に測定できないものは計上すべきではない。それが今の収支報告書の収支は範囲が広く、貨幣価値で合理的に測定できないものも記載対象とされている。
また、同一政治家が複数の政治団体を持つことの是非は別途議論されるとして、この状況が続くのであれば、同一政治家の政治団体の収支報告を連結するなども考えられるだろう。
これらの課題、解決案は一例であり、もっと多くの専門家、実務担当者の声を吸い上げ、情報開示制度を改善すべきである。
ここで、そういう議論・改正を何処で行うかという問題がある。
現行通り政治資金規正法を改正して、総務省が指導する方法もあるが、前述の規正法の二面性(Ⅲ.(2))を踏まえると、収支の公開は規正法以外で定めるのが適切である。
それは、国民の不断の監視と批判(1条)を可能にする目的を考えると、立法府からも行政からも独立したところが適切である。
その場合、政治資金の会計基準のためだけに団体を設置するのは大げさと思われるかもしれないが、政治資金は国民の浄財だから収支を公開する(2条)ことに鑑みれば、自治体などの公的な収支の公開も同様に扱うべきだから、当該団体は公会計全般に渡る基準・指針設定主体とすれば良い。
その上で、政治資金監査も、企業会計と同レベルの品質保証までは難しいだろうが、現金預金残高監査を行うなど、現在の外形上の監査よりは品質を向上させるべきである。
Ⅴ.結び
ここまで、事件の分析を通じ、政治資金に関する情報公開制度改正の提言をしてきたが、残念ながら多くのマスコミは、スキャンダル的な憶測報道を繰り返すことに終止し、検察の不公正な権力行使への言及もほとんどなければ、法解釈、制度改正の検討などもほとんど行われていない。
国会議員も、野党は政争の具にし、与党内部でも小沢一郎民主党幹事長の辞任を求めて党内権力闘争に利用している議員が閣僚にもいる。
今回の起訴内容は前述の分析どおり悪質性はほとんど感じられず、過去の事案からすれば通常不起訴になる内容である。当然、小沢幹事長が幹事長職を辞す必要など全く無い。
一連の事件を権力闘争に利用するのではなく、事件を冷静に分析して、検察のあり方に加え、政治資金の情報開示制度のあり方も議論すべきである。
但し、こういう国会議員を選んでいるのも国民であり、低次元な報道を繰り返すマスコミを生きながらえさせて来たのも国民である。
本論は検察や報道のあり方などに比すと地味な論点を取上げたが、情報開示は民主主義が有効に機能するための必要条件である。情報開示制度についても大いに議論されるべきであり、その議論の過程で一人でも多くの方に、一連の事件についても正確な情報を持って頂きたい。本論がその一助となれば幸甚である。