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 引き続き、漢字制限問題について書こう。そもそも何故に漢字をなくそう、制限しようなどの発想が起きたか、その動機は単純であって、江戸末期から明治の初めにかけて、先進国と称された国々の文字数の少なさに驚いたというのが主たる要因である。

 前回紹介した新聞社説は、敗戦直後の狼狽ぶりを表出しているが、文化国家や民主政治がローマ字表記によって成るなら、テロも、戦争も起こりえずこんな簡単なことはない。

 「われわれの腦中に存在する封建意識の掃蕩」をローマ字表記で試そうとも思ったが、ばかばかしくなって止めた。皆さんでお試しあれ。意味を理解するのに数倍の脳力(誤植に非ず)が必要。

 一字、一字を拾って読まなくても、「見て分かる」それが日本語の特長でもある。

 「かなづかい」は別項で語るとして、漢字排斥、若しくは制限論で最初に登場するのは江戸時代中期の学者・新井白石である。無論その後に登場する単純廃止派のような浅薄な主張ではなかったが漢字の多さには異論も述べている。

 ここは学問の府でもないことから、あいだを端折って進めるが、明治に入って郵便制度を創ったことで知られている前島密が、慶応2年、時の将軍徳川慶喜に「漢字御廃止の議」を建白した。

 要約すると「漢字をまったくなくすことは容易ではない」、「文字を習うことに長時間を費やすことはよくない」、「従って仮名文字を用いる」べしと説いている。

 次の、薩摩出身で、初代の文部大臣を務めた森有礼は、「英語をもって日本語に変えるべし」とエール大学教授ホイットニーに書簡を送ったが、「一国の文化の発達は、必ずその国語に依らねばならぬ」と、逆に諭されている。

 福沢諭吉はこの二人のような極論ではなく「ムツカシキ漢字ヲバ成ル丈用ヒザルヤウ心掛ケルコトガ緊要」と説いている。

 江戸末期から明治初期にかけては国語問題に多くの人が発言し、明治35年3月24日、文部省は国語調査委員会を設置した。同委員会は、同年4月から6月まで9回の会議を開き、

1、 文字ハ音韻文字(フォノグラム)ヲ採用スルコトヽシ假名羅馬字等ノ得失ヲ調査スルコト
(漢字は廃止するが、かなにするか、ローマ字にするかを調査する)
2、文章ハ言文一致體ヲ採用スルコヽトシ是ニ關スル調査ヲ為スコト
3、國語ノ音韻組織を調査スルコト
4、方言ヲ調査シテ標準語ヲ選定スルコト

 という四つの調査方針を決定したが、わずか3ヶ月の短期間に、国の根幹ともいうべき課題に「漢字全廃に異論なし」としているが、ことの是非は別にして、どこかの国の総理には「ちっと」は見習って欲しい気もする。

 プロローグで「たかだか10人前後の米国派遣による教育使節団」の仕業とも書いたが、その実はこの「国語調査委員会」が、すでにその基礎はしっかりつくっていたのであり、連中が占領政策に便乗したに過ぎない。これはりっぱな「売国奴」でもある。

 さても、長々と漢字制限、廃止論の背景を端折って書いてきたが、その全貌は「知的生産の文化史―ワープロがもたらす世界」(阿辻哲次書・丸善ライブラリー)に見える。要するに、諸外国との交渉や貿易に伴う文書作成に、ちんたら毛筆で書いていても話にならぬ、しかも数千はある漢字を学ぶなど、非効率このうえない、しかも諸外国は「タイプライター」という便利な筆記具を駆使し、機関銃のように文書を作成するのだから、「めんたま」を白黒したであろうことは想像のうちにある。

 私の友人である金文学先生(北京大学・放送大学客員教授、広島文化学園講師)によると、現在の中国で政治、経済に使われている用語のほとんどは、明治期につくられた「和製漢語」だそうな。

 いま私たちが使っている「国」という漢字は、漢字の歴史には登場しない。正漢字は「國」だが、略字をえらぶ時、中国で使われたことのある國がまえの中に王を書く漢字を転用して、我が国には王がいないことから、1点を付記して玉として国字をつくった、とその真偽のほども分からぬほど、いい加減な漢字を私たちは「正しい漢字」として、戦後の教育をうけた。

 それらの漢字について、先に登場した阿辻哲次先生は、

引用始め(月刊・書法H12年9月号・書法研究會発行)
 『(前段略)しかしはっきりいって、「涜」や「祷」などは明らかに誤字です。私のように漢字の研究を本職とする者から見れば、いったいどこの機関で、どのような議論の結果、このような字体がJISに採用されたのか、いちどじっくりと聞いてみたいところです。しかしいくら誤字であっても、それがやがて習慣として使われ続けると、いつの間にかその形が社会に定着してしまいます。
 この問題についてはちょうど今、国語審議会が審議しているところであり、そして私自身が国語審議会のメンバーとして、まさにこの問題にかかわっていますので、正規の答申が出る前にここで個人的な見解を出すことを避けておきます。
 ただこの問題については、第21期国語審議会(清水司会長)が文部大臣に報告した試案で、「鴎」とか「涜」のように常用漢字表に収録されていない漢字(「表外字」という)については、できるだけ中国の規範的な字書に載っている伝統的な字体(康煕字典体)にするという方針を確定し、ただ社会的に定着している簡略体39字についてのみ「簡易慣用字体」として、略字体を許容する、との方針を引き継いでいる、とだけ申しておきます。伝統的な文化遺産の継承という面から考えて、私個人としても、前期の国語審議会が表外字についてはいわゆる「康煕字典体」を標準とする方針を決定したことを歓迎しています。』                                     
引用終わり

 「明らかに誤字」と断定しながら、「個人的な見解を出すことを避ける」と書かれたことに、当時は大笑いだったが、戦後の漢字問題は「制限」のみならず、いい加減なものであったといえる。

 次回は、WindowsXPからVistaに変わるなかで、字体が変わるものが多くあることを確かめよう。PCのOSを変更することで字体が変わるなど、あってはならないとも思うのだが、やっぱり日本はアメリカの最後の州なのかなぁ、困ったもんだ。

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