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2010年6月29日

霞が関のアルカイダ

 経済産業省には、「霞が関のアルカイダ」と呼ばれる官僚がいる。現在、12階の個室に「幽閉中(or窓際中)」の身であるため、その存在は日に日に忘れられている。彼の名は、古賀茂明大臣官房付審議官(昭和55年入省)。霞が関ムラの村民なら、「官房付」という言葉を聞けばすぐに、古賀氏が宙ぶらりんの状態で干されていることがわかるだろう。実際、1年近くもの間、古賀氏には仕事らしい仕事は与えられていないという。

「本人が耐えきれずに辞めると言い出すのを待っていたのだと思います」

 と、古賀氏と志を同じくする改革派の若手官僚は嘆く。しかし、その必要もなくなったかもしれないと彼はいま懸念しているのだ。

 日本列島はサッカー・ワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント進出で沸きに沸いている。その上、相撲協会のスキャンダルに消費税論争。メディアの報道は過熱している。そんな中、誰よりも熱いのが霞が関の守旧派幹部たちだと言うのだ。

「頑張れ日本!と叫びながら、改革派の支柱である古賀さんのクビを取る用意を始めているはずです」

 じつは、W杯の喧噪の影で、菅内閣は、公務員改革を明らかに後退させる「退職管理基本方針」を閣議決定した。これにより、「現役の天下り=裏下り」が急増することになる。たとえば民主党は、野党時代、独立行政法人の役員ポストは天下り排除のため公募するとしていたが、「現役出向であれば、役員公募の対象外にできる」と路線を大きく変更したのだ。各省幹部は満足そうな様子を隠さない。

「退職して出向していたのが、現役のまま、複数出向を重ねることに代わるだけ。退職金を何度も貰えない以外は身分は安泰。こんな時代だから、それでも充分ですがね」

 それだけではない。基本方針の内容には、次官や局長レースに敗れた幹部のために高給の「専門スタッフ職」の新設も盛り込まれている。さらに、官民交流という形をとって民間企業にも「裏下り」の範囲を広げようとしているのだ。

 退職管理基本方針を活用した「裏下り」と「クビ切り」はすぐにでも始まり、秋頃にかけて順次五月雨式に行われるとみられている。クビ切りターゲットから改革派の急先鋒である古賀氏をはずすわけなどないというのが、若手改革派の不安の理由だ。古賀氏は、6月29日号の「エコノミスト」で「現役官僚が斬る『公務員改革』消費税大増税の前にリストラを」という論文を発表しており、退職管理基本方針に対して厳しく批判している。その古賀氏に対して「現役天下り」の辞令が降りれば、退職する以外に道は当然なくなる。

 いっぽうで、古賀氏のポストはそのままで塩漬けされる可能性も否定できない。

「彼のような官僚を野に放てば、本物のアルカイダになる危険性が高いですからね」

 と、基本方針を中心となってまとめた総務省の官僚は苦虫を噛みつぶした様子で話す。
 菅新内閣に対する「ご祝儀支持率」は瞬く間に下降し始めたが、こうした話を聞くにつれ、それも仕方ないのではという気がする。

 民主党は、再び、原点に立ち戻る必要があるのではないか。

Profile

横田由美子(よこた・ゆみこ )

-----<経歴>-----

埼玉県出身。
96年、青山学院大学卒。在学中より、ライター活動を本格化。
以後、フリーランスを貫く。
新聞、雑誌で主に、女性、官僚、政治をテーマに記事を執筆。
趣味はクラシックバレエとワイン。

-----<連載>-----

朝日新聞be「読み解く」

日刊現代「霞が関の掟」(毎週木曜)

-----<出演>-----

『ザ・インタビュー』
(BS11)
アシスタント・キャスター

『ニュースの深層』
(朝日ニュースター)
サブ・キャスター/月・水・金担当

BookMarks

ペコちゃん日記
http://blog.livedoor.jp/yumikoyokota/

-----<著書>-----


『官僚村生活白書』
2010年6月、新潮社


『ヒラリーをさがせ!』
2008年1月、文藝春秋


『私が愛した官僚たち』
2007年2月、講談社




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