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2009年11月15日

連続不審死が放置される理由

 首都圏と鳥取で複数の男性が不審死した事件が注目を集めている。詐欺容疑で逮捕された元スナックホステスの女(35)が男性の死に関与していたかどうかはまったく予断を許さないが、この数百キロを隔てた2つの事件の背景には日本の刑事司法が抱えるある共通した問題がある。

 それは、死因究明のシステムがおそろしくズサンだという問題だ。

 通常、変死体が出ると検視官が検視を行い、犯罪性の有無を判断する。犯罪性があれば司法解剖によって死因究明が進むことになるのだが、事件処理の煩わしさや解剖医の数、予算などの問題からか、どうしても「犯罪性なし」の判断に傾きがちになるようだ。

 その結果、真実とは異なる死因で処理されたり、かなりの数の殺人、もしくは傷害致死が未発覚のまま見逃されることになる。
 
 2年前に起きた大相撲時津風部屋リンチ死事件を思い出していただきたい。当初、警察は、若手力士の死亡を「事件性なし」と判断し、病死(急性心不全)として処理されるところだったが「週刊現代」のスクープによってリンチ死(多発外傷によるショック死)だったことが明らかになり、再捜査によって傷害致死が立件されるという事件だった。

 では、実際にどの程度が司法解剖に回されているかというと、手元のデータが古くて恐縮だが、2004年に全国の警察に届け出のあった変死体13万6092体に対して司法解剖されたものが、わずか4969体、約4%だった。これは都道府県警によってもバラバラで、変死体の多い大都市圏の警察では1%台というところも珍しくない。ちなみに、WHOの統計(1998年)によると、各国の解剖率はハンガリー49%、スウェーデン37%、英国24%、アメリカ12%、ドイツ8%などとなっていて、日本は統計を公開している国の中で最低だった。

 これが犯罪の未発覚につながっていることは明らかだ。

 先々週号(11月13日号)の週刊朝日で、今年2月に東京・青梅市で起きた会社員の不審死を警視庁が「事件性なし」の自殺と判断したことが、婚カツ詐欺師の周辺で起きている連続不審死の発覚を遅らせた重大な捜査ミスだったと指摘した。自室から計6個の練炭七輪が見つかり、室内も物色されたようすがなかったことなどが自殺と断定した理由だが、練炭の購入元や女に1700万円も振り込んだ銀行口座の確認などもなされていなかった。もし、この「自殺」が「事件性あり」と判断されていたら、その後の不審死を防ぐことができた可能性が高い。

 鳥取の事件もまるで同じだ。今年に入ってからの3件の不審死については警察も事件性ありの判断をして捜査を進めているようだが、それ以前にも女の周辺で確認されているだけで3件の不審死があり、いずれも事件性なしの自殺もしくは事故死として処理されていたようだ。

 こうした態勢は一朝一夕には変わらない。もし、自分の周辺で親族や知人が不審死をした場合、たとえ警察が「事件性なし」と判断してもにわかに信じてはいけないということだ。なお、来週発売の週刊朝日では、日本の「死因不明社会」について警鐘を鳴らし続けてきた作家の海堂尊氏が問題解決のための提言をしている。興味のある方はぜひ、読んでいただきたい。

Profile

山口一臣(やまぐち・かずおみ)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。ゴルフダイジェスト社勤務を経て、89年朝日新聞社入社。高校時代から愛読していた『朝日ジャーナル』編集部に配属され、あこがれの「ファディッシュ考現学」(田中康夫)を担当するも3年で休刊の憂き目に。『週刊朝日』へ異動し、事件&事件の日々を送る。その後、何を血迷ったのか広島の公教育問題で日教組を徹底批判し、「朝日なのに産経と論調が同じ」と物議をかもす。9.11テロ直後のニューヨーク、パキスタンを取材。米軍によるアフガニスタン市民への誤爆を伝えまくる。デスク時代に北朝鮮拉致被害者関連の記事で下手を打ち、『週刊文春』に叩かれ、副編集長を解任、更迭される(停職10日の処分付き)。その後、広報部へ配属されるが約半年でお払い箱。百科編集部で子ども向け週刊科学誌『かがくる』の創刊などに携わり、05年5月から再び副編集長、同年11月から、『週刊朝日』第41代編集長に。85年にわたる『週刊朝日』の歴史で中途採用者が編集長になるのは、これが初めて。

-----<出演>-----

『スーパーモーニング』
(テレビ朝日系、8:00~)

『愛川欽也 パックインジャーナル』
(朝日ニュースター、毎月第1土曜)

『大竹まこと ゴールデンラジオ』
(文化放送、毎週火曜・5月8日から)

『週刊朝日編集長登場』
(asahi.ポッドキャスト)

BookMarks

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