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2009年9月27日

官邸の記者会見もいずれ開放される!?

 民主党政権はやっぱりホンモノだった。

 先々週の土曜日、校了明け朝寝をしていたところをジャーナリストの上杉隆さんからの電話で起こされた。「岡田克也さん、やりましたねぇ」。「ん?」何のこっちゃ。例の密約問題でまた進展があったのかな? なんて寝ぼけていると、「外務省が記者会見をオープンにするって宣言したんですよ」(上杉)。おお、そりゃすごい。「ただ、例によって一般紙では毎日しか書いてませんね......」(上杉)いつものことだ。

 さっそく毎日新聞を広げてみると、〈「全メディアに開放」岡田外相〉という見出しの記事が出ていた。「全メディア」ということだが、とりあえず日本新聞協会、日本民間放送連盟、日本雑誌協会、日本インターネット報道協会、日本外国特派員協会の各会員と、外国記者登録証保持者、また、これらの媒体に定期的に記事を提供する人に限り、フリーランス記者も認める、という。これに対して、「フリーランスに対しては全面開放でないではないか」と批判する人もいるかもしれない。だが、これが国際標準なのだ、と上杉さんは言っていた。

 いずれにしても、試行錯誤の第一歩が踏み出されたことは間違いない。外務省が開けたのだから、と他省庁もドミノ倒しのように会見を開放し出したら、いくら平野官房長官らが抵抗しようと最終的に官邸も開けざるを得ない......、

と考えるのは楽観的すぎるだろうか?

 官邸の記者会見がオープンにならなかった内幕については先週発売の週刊文春の上杉さんのリポートに詳しい。その後の動きと今後について、その上杉さんと神保哲生さんの対談(わたしが司会してます)を今週発売の週刊朝日に載せました。TheJournalの読者のみなさんにとっては、いまさらの内容ですが、この問題があまりに一般活字メディアに露出しないことに対するささやかな抵抗の意味もあります。ご興味のある方はぜひ。

2009年9月16日

新聞が書かない民主党の「公約破り」

民主党の鳩山新内閣がきょう正式に船出する。「官邸主導 一進一退」(朝日)、「準備不足の船出に」(毎日)、「鳩山人事は『安全運転』」(読売)、「無視できぬ『小沢』」(産経)と各紙の紙面は関連ニュースで埋まっている。だが実は、この新政権発足にあたって新聞がまったく触れていない重大なことがある。

 それは、歴代民主党代表が約束してきた「政府会見を記者クラブ以外のメディアにも開放する」という方針が一部メディアの圧力と党内守旧派によって握りつぶされたという事実である。数時間後に行われるであろう新内閣発足の記者会見も閣僚の会見も、「民主党革命」といえる今回の政権交代を象徴するかのように、本来はすべてのメディアに対して開放されるはずだった。それが直前に撤回され、従来どおり官邸記者クラブである内閣記者会に対してのみ、行われることになりそうなのだ。

 総選挙が終わった直後から、実はこの問題に関して水面下で熾烈な戦いが繰り広げられていた。記者クラブを形成する既得権メディアが経営幹部から一線記者まで動員して、さまざまなルートで民主党の各層に働きかけを行っていた。鳩山由紀夫代表に直接、電話を入れた大手新聞社の首脳がいれば、秘書や側近議員の籠絡を担当した記者もいたという。

そのときの共通する殺し文句が、「新聞、テレビなどのメディアを敵に回すと政権が長く持ちませんよ」というものだったという。政権発足前からさかんに行われていた「小沢支配」「二重権力構造」批判といった実体を伴わないネガティブキャンペーンも、実はこの延長線上にあったのではないか、とわたしは疑っている。

 こうした既得権メディアの意を受けた党内抵抗勢力の中心が、藤井裕久@新財務相と平野博文@新官房長官だった。とくに平野氏は官房長官として内閣記者会とのパイプ役となる立場だけに、取り巻きの記者に対して「『記者クラブ開放』は俺がツブす」と息巻いていたという。平野氏にとっては民主党のDNA(by神保さん)であり民主党革命の真髄といえる「情報公開」(ディスクロージャー)よりも、目先の自分の仕事をやりやすくすることのほうが重要なようだ。こんなことで既得権の牙城といえる霞が関に本気で切り込めるのか、先が思いやられるというものだ。

 そもそも、民主党が政府会見を記者クラブ以外のメディアにも公開する方針であるということ自体、既得権メディアはほとんど報じていない。民主党の歴代代表が記者会見で明確に約束しているにもかかわらず、新聞、テレビは(産経新聞がオンラインメディアで扱った以外)いっさい伝えてこなかった。ちなみに、週刊朝日は4月10日号で上杉隆氏のリポートを載せている。当時代表だった、小沢一郎氏の会見でのやり取りだ。公約の証拠として以下に引用する。質問者は上杉氏自身である。

「ジャーナリストの上杉隆と申します。3月4日の記者会見以来、代表は説明責任を果たそうと、わたしのようなフリーランス、雑誌記者、海外メディアに記者会見を開放し続けてきたことについて、まずは敬意を表したい。一方で、自民党、首相官邸など全官公省庁は、わたしのような記者が質問する権利はおろか、参加することすらできない。そこで質問です。仮に、政権交代が実現したら、民主党政権は今までと同じように記者クラブを開放し続けて首相官邸に入るのか。あるいは、これまでの自民党政権のように記者クラブをクローズにしてしまうのか?」
 これに対して小沢代表は、こう答えた。
「わたしは政治も行政も経済社会も、日本はもっとオープンな社会にならなくてはいけない。ディスクロージャー、横文字でを使えばそういうことですが、それが大事だと思っております。これは自民党の幹事長をしていたとき以来、どなたとでもお話をしますよということを言ってきた思いもございます。そしてまた、それ以降もとくに制限はまったくしておりません。どなたでも会見にはおいでくださいということを申し上げております。この考えは変わりません」
 会見後、小沢氏のこの「答弁」を引き出した上杉氏の前には、海外メディアやフリーランスジャーナリストらが握手を求める小さな列ができたという。「ありがとう」「素晴らしい質問だった」と称賛の言葉が飛び交った。小沢氏の答弁は、それほど重要なことなのだ。

 上杉氏は、鳩山氏の代表就任会見でも同様の質問をした。それに対する答えは、
「(前略)わたしが政権を取って官邸に入った場合、(質問者の)上杉さんにもオープンでございますので、どうぞお入りいただきたいと。自由に、いろいろと記者クラブ制度のなかではご批判があるかもしれませんが、これは小沢代表が残してくれた、そんな風にも思っておりまして、私としては当然、ここはどんな方にも入っていただく、公平性を掲げて行く必要がある。そのように思っています」

 小沢前代表、鳩山現代表がここまでハッキリと打ちだした方針を、一官房長官の平野氏が自らの保身のために撤回してしまっていいのだろうか。

ついでに、これはわたしは現場にいなかったので、あくまで取材記者からの報告だが、民主党のマニフェスト発表会見でも同じ質問が確認されている。質問したのは、たぶんTheJournal執筆者でもある神保哲生さんだと思う(違ったらゴメンなさい)。質問者が、マニフェストに「記者クラブ開放」が書かれていないことを指摘した。それに対して、鳩山代表はこういう趣旨のことを述べたという。
「マニフェストは国民のみなさんとの約束です。記者会見にどなたでもお入りいただくというのは、記者のみなさんとのお約束なのでそこには書いてありません。しかし、その方針自体はなんら変わることはありません」
 会見に出席した週刊朝日の記者の話によると、鳩山代表がこの発言をしたとたん、場内にざわめきが起こり、マニフェストに対して批判的な質問が急に飛ぶなど、それまでの和やかな雰囲気が一変、険悪なムードになったという。なんだかなぁ......。

 そもそも、いずれも重要な記者会見でのやりとりであるにもかかわらず、新聞、テレビがいっさい扱わないことからして異常ではないかと思う。鳩山代表の就任会見はNHKが生中継していたのだが、ある民主党関係者が後日、わたしに明かしたところでは、こんな信じられない工作がなされていたという。それは、中継の時間中は上杉氏が質問の手をあげても指名しないという密約がNHKと現場を仕切る党職員との間でできていたというのである。なにしろ「密約」なので真偽のほどは定かでない。ただ、事実として、上杉氏の質問は中継されることもなく、新聞記事になることもなかった。

 わたしや上杉氏(やたぶん神保さんも)がこのことにこだわるのは、単にフリーや週刊誌記者だから、会見に出られないからといった次元の話でないことは理解してもらえると思う。また、わたしは新聞社の子会社で働く者として、記者クラブ自体の存在を否定するものではない。既得権を持った者が既得権を維持しようと努力するのも理解できないことではない。残念なのは、民主党の職員や藤井氏、平野氏といった幹部までが既得権者の利益代表となり、歴代代表の方針を握りつぶしてしまったことだ。「公開と公正」(オープン&フェアネス)は民主党政権にとっての魂ではなかったか。

まあ、徐々にということかもしれないけれど、とり急ぎ状況をTheJournal読者のみなさまにご報告させていただきました(来週号はすでに誌面がいっぱいで合わないので、さ来週発売の週刊朝日でも取り上げるつもり=社内の圧力がなけばね=爆=)。

2009年9月 9日

民主党小沢支配はなぜ、悪いのか?

 先週から今週にかけて新政権の骨格がだいぶ固まってきたようだ。

 いちばん最初に漏れてきたのが小沢一郎民主党代表代行の幹事長就任だった。振り返れば2007年の参院選を指揮して与野党逆転に持ち込み、先の衆院選で単独過半数を制し、政権交代を成し遂げた最大の功労者だ。政権の長期安定を賭けた来年の参院選への備えを考えれば、わたしのような素人でも理解できるきわめて妥当な人事だと思う。

 にもかかわらず、翌日の新聞はどこも判で押したように「党内には権力の二重構造を懸念する声が広がっている」という趣旨のことが書かれていた。わたしの見た限り、「権力の二重構造」という文言を使っていない新聞はひとつもなかった。ところが、いったい党内の誰が「懸念」を表明しているのか、どこを読んでも書いていない。かろうじて「中堅、若手」とか「小沢氏と距離をおくグループ」といった表現があるが、それだけだ。

 要は、匿名の不満分子が文句を言っているという話なのだ。

 だとすると、果してそれを報じる価値があるのだろうか、という疑問がわく。

 どんな組織にも不満分子はいるし、下っ端が酒を飲みながら上司の悪口を言うのはサラリーマン社会のごくありふれた風景だ。新聞がことさら取り上げることでもないだろう。また、組織が何らかの決定をしたとき、その決定に対する「懸念」があるのも当然だ。将来に対して何も懸念も不安もないほうがおかしい。

 もし、匿名の「中堅、若手」ではなく、岡田克也氏や菅直人氏といった幹部クラスが小沢氏の幹事長就任に対して「懸念」を表明しているというなら話は別だ。ところが、そんな話はどこにもない。要は、サラリーマンの飲み屋の愚痴レベルの話なのだ。

 実は、これはわたし自身の反省も込めて言うのだが、こうした報道のありようは「メディアの思考停止」ではないかと思っている。メディアには、「小沢一郎」といえば「剛腕」「壊し屋」「独断専行」と、考えもせず、自動的に書こうする癖がある。あるいは「竹下─金丸ラインの申し子」とか。もちろんそれは間違いではないが、いったい何年前の話だというのだ。

 最近の似たような例でいうと、「のりピー」といえば「清純派アイドル」というのがある。ほとんど何も考えずに使っている。しかし、のりピーこと酒井法子はすでに数年前から薬物を常用し、行動に異変が見られたという。芸能界に詳しい若い記者の間では、数年前からのりピーの薬物疑惑は広まっていたようだ。つまり、のりピーが清純派アイドルというのは、ここ数年の酒井法子の言動についてほとんど取材ができていなかったことを告白しているに過ぎないのではないか。話を戻そう。

 「権力の二重構造」が問題となったのは16年前の細川連立政権でのことである。しかし当時といまでは状況がまったく違う。細川連立政権は少数党の集まりだったが、いまの民主党は堂々の単独過半数を制している。小沢氏自身もこの間、さまざまな経験をしたことだろうし、16年前の出来事がそのままいまの「懸念」になると考えるほうがおかしいと思うのだが、いかがだろうか。

 新聞がどこも、党内に懸念が広がっていることを前提に、16年前のできごとを解説するパターンの記事を載せていることに強い違和感を感じる。週刊誌屋のうがった見方かもしれないが、新聞が産経から朝日まで同じような論調の記事を書いているときは、ウラにきっと何かあると思う。それは、民主党政権が新聞業界全体にとって面白くないことをしようとしているとか......おっと、それについてはまた稿を改めて書こうと思う。

 ついでに言うと、「小沢支配」という言葉も気になる。新聞でこの言葉を見ない日のほうが珍しいくらいだ。「小沢支配が強まる」「小沢支配への懸念が広がる」......と、だいたい「二重権力」と同じような使われ方をしている。だが、小沢支配が強まるといったいわたしたちの生活にどういう不都合が生じるというのだろう。新聞のどこを読んでも書いていない。ただ、小沢支配が広がると悪いことが起きるかもしれないという印象だけが残る。本当にそうなのか?

 そもそも「小沢支配」とはどういう状況を指しての言葉なのかもわからない。

 小沢氏が一人で勝手に重要な決定をして、それを鳩山氏や菅氏や岡田氏らに押しつけているというのだろうか。大の大人の集まりで、そんなことが実際にあるだろうか? それは選挙に勝ったことを背景に発言力が増したり、意見が以前より尊重されるということはあるだろう。それをもって「小沢支配」というのも、わたしには違和感がある。

 もちろん、本当に小沢氏が党を私物化していたり、支配している実態があるならそれはきちんと伝えるべきだ。批判すべきことがあれば批判すべきだ。たとえば、小沢氏が幹事長権限で党のカネを個人的な事業に流用しているとか、親類縁者を党職員に採用したり役職に就けたりして小沢王朝をつくろうとしているとか。とにかく、事実・実態があれば書くのは当然である。だがいま、わたしが言うような「小沢支配」というような事実・実態があるのだろうか。はなはだ疑問だ。

 さらに付け加えれば、「圧勝した民主党が数にモノを言わせて傲慢に振る舞えば......」というような言い回しも目につく。いったい日本のメディアはどうしちゃったんだろう。選挙は民意の反映で、議席が増えれば発言力が増すのはきわめて合理的だ。少数意見の尊重はもちろん大事だけど、少数党がキャスチングボートを握ったというだけで大きな声を出していることのほうが不合理だと感じるのだが......。

 まあいずれにしても、いま世の中の人は自らが選んだ新政権がどんなことをしようとしているのか、固唾を飲んで見守っていることだろう。それだけに、間違った先入観を与えないよう、正確な実態を伝える努力が大切だ。本格的な政権交代は戦後初めてのことだから、何から何まで未経験のことばかりだ。そんな先が見えない、変革のときだからこそ、こういう安易なワーディングは気をつけなければと、自戒を込めて思うのだ。(いや、ホント他人のことは言えません。自戒を込めて......)。

Profile

山口一臣(やまぐち・かずおみ)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。ゴルフダイジェスト社勤務を経て、89年朝日新聞社入社。高校時代から愛読していた『朝日ジャーナル』編集部に配属され、あこがれの「ファディッシュ考現学」(田中康夫)を担当するも3年で休刊の憂き目に。『週刊朝日』へ異動し、事件&事件の日々を送る。その後、何を血迷ったのか広島の公教育問題で日教組を徹底批判し、「朝日なのに産経と論調が同じ」と物議をかもす。9.11テロ直後のニューヨーク、パキスタンを取材。米軍によるアフガニスタン市民への誤爆を伝えまくる。デスク時代に北朝鮮拉致被害者関連の記事で下手を打ち、『週刊文春』に叩かれ、副編集長を解任、更迭される(停職10日の処分付き)。その後、広報部へ配属されるが約半年でお払い箱。百科編集部で子ども向け週刊科学誌『かがくる』の創刊などに携わり、05年5月から再び副編集長、同年11月から、『週刊朝日』第41代編集長に。85年にわたる『週刊朝日』の歴史で中途採用者が編集長になるのは、これが初めて。

-----<出演>-----

『スーパーモーニング』
(テレビ朝日系、8:00~)

『愛川欽也 パックインジャーナル』
(朝日ニュースター、毎月第1土曜)

『大竹まこと ゴールデンラジオ』
(文化放送、毎週火曜・5月8日から)

『週刊朝日編集長登場』
(asahi.ポッドキャスト)

BookMarks

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