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2009年7月26日

西松建設事件判決に関する郷原教授の論考

 ちょっと時間が経ってしまいましたが、名城大学の郷原信郎教授が、日経ビジネスオンライン『ニュースを斬る』」のコーナーに『「無条件降伏」公判でも認定されなかった「天の声」~検察は検察審議会の民意を本当に反映させたのか~』と題する論考を寄稿しました。

 3月3日の小沢秘書逮捕直後から、この事件に関して羅針盤のような明確な指針を示し続けてきた郷原先生の解説は、いつもながら明瞭で「検察の正義」と「西松建設事件とは何だったのか」を考える上で、とても参考になります。
 
 ご興味のある方はぜひ。

【日経ビジネスオンライン】
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2009年7月12日

都議選自民惨敗で政権交代へ!

 衆院選の前哨戦といわれる東京都議会議員選挙の投票が締め切られた。18時時点での投票率は38.8%で前回(4年前)より4ポイント上昇している。さらに注目したいのは期日前投票者数が前回の1.83倍の87万人もいたことだ。何か具体的な根拠があるわけではないが、開票結果はとてつもない数字になりそうな予感がする。

 知り合いが期日前投票に行ってたまたま見かけた光景だが、どの候補者が民主党の候補者なのかを聞いて投票している人がいたという。実は、その知り合い自身も「民主党の候補者に入れる」ことは決めていたが、民主党の候補者が誰なのか知らないまま投票所に足を運んだという。「誰に」ではなく、とにかく「民主に」という投票行動だ。

「都議選はどの政党に入れますか」という事前の世論調査でも、自民党は民主党にダブルスコアで負けていた。期日前も当日も、投票率が増えた分のほとんどが民主党を中心とする野党に流れているような気がしてならない。もしわたしの見立てが正しければ、公明党は20議席を、自民党は40議席をそれぞれ割り込む結果になる。

 この勢いは当然、そのまま衆院選にも引き継がれる。たとえ自民党が表紙を変えても、何をやっても無駄だと思う。なぜ、そうなのかを以下に書いてみよう。 

 まず今年に入ってから、与野党対決になった主な地方選挙(知事選、政令市市長選)の結果を見ると、次のとおりだ。

山形県知事選(1月) 民主党系
千葉県知事選(3月) 自民党系(完全無所属=爆)
秋田県知事選(4月) 自民党系
名古屋市長選(4月) 民主党系
さいたま市長選(5月)民主党系
千葉市長選(6月)  民主党系
静岡県知事選(7月) 民主党系

 主な地方選挙で民主党系候補が負けたのは、小沢一郎前代表秘書の「不当逮捕」で民主党が逆風の真っただ中にあった3月の千葉県知事選と4月の秋田県知事選だけだった。もし、検察が不当な横やりを入れなければ、その結果もどうなっていたかわからない。

 政権交代の絶対阻止をもくろむ検察は、麻生政権の支持率がどん底にあった3月に狙いを定めて小沢前代表の秘書を逮捕した。一時的には奏功したが、このTheJournalをはじめとするネット世論の逆襲にあい、「検察は必ずしも正義ではない」という当たり前の事実を世間に広める結果となった。いま振り返ればの話だが、3月の「小沢秘書逮捕」は有権者にとっていい学習効果をもたらしたのかもしれない。

 検察はその後も捜査権力を使って執拗に「アンチ民主党」キャンペーンを展開しようとしたが、ことごとく不発に終わっている。大阪地検特捜部が着手した障害者郵便不正事件では新聞を使って「有力民主党議員の関与」を盛んに喧伝したが、もはや有権者の心に響くことはなかった。西松建設事件の西松ルート初公判でも、冒頭陳述で本来の立証とはまったく関係のない「天の声」なるキャッチーな言葉を使って小沢前代表側を批判し、新聞各紙の1面に「小沢事務所が『天の声』」という見出しを躍らせることまでは成功したが、それ以上の世論にはならなかった。新聞があれだけ協力しても、世論がまったくついてこないことに検察は驚愕したことだろう。その後も名古屋地検特捜部を動かし、マルチ商法関連事件と民主党議員の関係を探らせているが、もはや何をやっても無駄である。

 有権者はそんな重箱の隅をつつく瑣末なことよりも、単純に「政権交代」を求めているのだ。その結果が、名古屋市長選以降の民主党系候補の全勝につながっているのだと思う。

 いずれの選挙も民主党系候補は地元マターよりも「政権交代」を強く訴えた。最後の静岡県知事選は民主党が候補者の1本化に失敗し、分裂選挙になったにも拘わらず勝った。分裂した民主党系2候補の得票数を合わせると105万票に達している。これは民主党への投票ではなく、「反自公」への票だと思う。

 静岡県の県民意識は「全国の平均」といわれ、新商品のマーケットリサーチなどによく使われる。弊社(朝日新聞出版)も大がかりなシリーズ出版をするときは、事前に静岡でテスト販売をして本格発売に踏み切るかどうかの判断をしている。静岡で得た数字は全国でも得られる可能性が高い。その意味でも、民主党系候補が取った105万票という数字は極めて重い。というか、流れはもはや完全にできている。すべての地方選挙で投票率が軒並み上がっているのも、有権者の「不満」の表れだ。

 そう考えると、ここ数日の自民党が見せる最後の悪あがきはぶざまとしか言いようがない。とにかく1日でも先に選挙を延ばそうと総理の人事・解散権を封じ込めたり、人気知事に秋波を送って蹴られたり。いまではベテラン勢が寄ってたかって麻生太郎首相に自主的な退陣を促しているという。それらの行動のすべてが票を減らすことにつながるのをまったく理解していない。

 さらに情けないのが、政権公約(マニフェスト)づくりを置き去りにしたまま、いま自民党がもっとも力を入れているのが民主党・鳩山由紀夫代表の献金問題の追及だということだ。今朝のサンデープロジェクト(テレビ朝日系)で自民党の菅義偉氏と公明党の高木陽介氏が田原総一朗さんに促されたのをいいことに、鬼の首を取ったかのように嬉々として献金問題について語っていたのを有権者の多くは冷ややかに見ていたはずだ。「この議論を見ていて、どう思う? 自民党と民主党のどっちの言い分が正しい?」と田原さんに聞かれ、急に振られた寺崎貴司アナが「むずかしいですねぇ」と答えに窮していた横から、小川彩佳アナが「そういうことよりも、どういうマニフェストを見せられるかじゃないでしょうか」と言った一言にすべてが集約されている。

 青臭い言い方かもしれないが、政党政治の基本は政策を競い合うことだ。どちらの主張する政策がより多くの支持を得られるかである。その重要な選択肢を示さずに、鳩山献金問題を公明党と一緒になってプロジェクトチーム(PT)までつくって調べているというから驚く。ハッキリいって、これはもはや政策では民主党に勝てないことを告白しているのと同じだ(民主党はすでにロードマップまで示している)。有権者が知りたいのは相手(民主党)の欠点ではなく、あなた方(自民党)がどんな国づくりをしたいかなのだ。

 そもそも鳩山献金問題は、与党議員がPTを作って追及するようなことだろうか。もし、法令違反があるのならば捜査機関がしかるべき対応をするだろうし、道義的な問題があればメディアが追及することになる。いま与党がPTまでつくって調べているというのは国や国民のためではなく、単に自分たちの選挙のためだとしか言いようがない、極めて姑息な振る舞いだ。本気で「政治とカネ」の透明化に取り組もうというなら、政治資金のありとあらゆる問題を取り上げ、立法化するのが議員の務めだろう。菅氏と高木氏は弁が立つだけに、発言すればするほど惨めに見えた。

 しかも、本質がまったくわかっていない。前にも書いたように、政治資金規正法の根本的な趣旨は、資金の拠出者と寄付を受けた政治家の政治活動の関係をチェックできるようにすることだ。具体的には、寄付を受けた個人や企業・団体に政治力を使って便宜供与をしていないか、カネで政治が曲げられていないかを監視するのが目的だ。その趣旨からすると、鳩山献金問題はかなり異質だ。形式的な違反は明らかで(だから謝罪して修正した)、こまごま問題はあるのだろうが、「金権政治」とか「疑獄事件」という類の話ではまったくない。少なくとも、国会議員が時間と経費を使って調べるような話ではない。せいぜい、われわれ週刊誌屋が針小棒大に面白がって扱うネタである。

 ちょっと話が逸れてしまった。いずれにしても、そんなことが国民・有権者にも見えてしまっているのである。いまさら何をやっても無駄なのだ。鳩山献金追及も、麻生おろしも、舛添総裁誕生も、何をやっても政権交代への流れは変わらない。だから、おそらく都議選も、中選挙区制でありながら、とんでもない結果になると推察するのだ。

 自民党は奇策を弄さず正々堂々と総選挙を戦い、そして立派に下野したほうがいいだろう。

2009年7月 6日

国家公安委員長のスキャンダル(続き)

 数時間後にアップと言って、すでに1日以上経ってしまいました。すみません。

 さて、新入閣した林幹雄国会公安委員長にもうひとつのスキャンダルというかトラブルが持ち上がっている。実はこれ、入閣直前のサンデー毎日(09年7月12日号)のスクープなだが、扱いが地味なのせいか、あまり話題になっていない。なので、少しでも多くの人に知らせるために、簡単に内容をキャリーしておきたいと思う。詳しくは、サンデー毎日の同号をお読みいただければさいわいだ。

 記事は、「『羽田空港』新滑走路工 口利きトラブル 土木業者実名告発『私は贈賄に問われても構わない』」という刺激的なタイトルで、千葉県の土木工事業者の社長が実名、顔写真入りで、林氏側への口利き依頼の実態を赤裸々に告白する内容だ。
 告白は、業者社長が羽田空港の新滑走路埋め立て工事に使う材料調達の仕事を受注を狙って、発注者である国交省の副大臣や衆院国土交通委員長ポストに就いていた林氏側に口利きを依頼し、その見返りに接待やパーティ券購入攻勢をかけていたというもの。赤坂の高級クラブや寿司店の請求書を肩代わりして支払う、いわゆる「付け回し」にも応えていたとも話している。また、パーティ券を購入し、領収書をもらっているにもかかわらず、林氏が支部長を務める自民党千葉県第10選挙区支部や林氏の資金管理団体「大樹会」の収支報告書に記載が見当たらない、というものだ。時期は03年~05年ごろのことだという。
 献金を受けたり、パーティ券を購入してもらったりして、収支報告書に記載がないというのは「裏献金」になる。しかも、話が本当ならば、献金の見返り仕事をあっせんしようとしていた(実際には紹介してもらえなかった)ということだから、悪質性はかなり強い。実際、この告発社長は、サンデー毎日の取材に「一連の行為が贈収賄になりかねないとの認識はありました。たとえ贈収賄に問われても(略)捜査当局が事情を聴きたいのなら、その他の事実も含めて本当のことを話すつもりです」とまで言っている。

 これに対して林氏の秘書がサンデー毎日の取材に応え、「口利き」や飲食接待、パーティー券を購入してもらったことなどの事実を認めたうえで、
(1) 収支報告書の件は記載漏れなので早急に訂正する。
(2) 職務権限を利用して圧力をかけて仕事を取らせたことはない。
(3) 領収書のない金銭の授受も一切ない。
 として、この業者の社長とは「善良な後援者・支援者の一人として」付き合ってきたものの、サンデー毎日への証言は、「総選挙が近い中での選挙妨害を意図したとしか考えられませんので。名誉棄損で裁判を起こします」と話している。

 確かに05年ごろの出来事をいまごろ話し始めるのはなぜだろうという気もする。両者の言い分も微妙に食い違っている。
それにしても、このサンデー毎日の記事が出たのは、閣僚補充人事の前週のこと。こんな指摘を受けた人物を、こともあろうに国家公安委員長に任命するとは、いったいどういう神経をしているのだろう。

 社長は、捜査当局が事情を聴きたいというならいつでも応じると言っているのだから、宮崎学さんが告発した西松マネーの件と一緒に調べてもらったらいいだろう。自民党も他党のスキャンダルばかり探していないで、足元の不祥事をしらべる(得意の)PTでもつくったらどうだろう。

2009年7月 4日

新閣僚に「西松スキャンダル」発覚!

「宮崎学さんがなかなかアップしないので、代わりに書いちゃいますよ!」
 って思って書き始めたら、宮崎さんアップしてましたね。がむばってください!

 自民党がプロジェクトチーム(PT)をつくり、鬼の首を取ったかのように鳩山由紀夫・民主党代表の「架空献金」問題を追及しようとしていることについて、「調子に乗ってやっていると『天にツバ』になる」と先日、書いたばかりだが、早くも天からツバが落ちてきた(爆)。

 迷走の末、国会公安委員長・沖縄北方・防災担当相に「新入閣」した林幹雄氏が代表を務める自民党千葉県第10選挙区支部に対して、西松建設が他人名義で献金していたことが〝発覚〟したのだ。民主党の小沢一郎前代表のケースと同じく「新政治問題研究会」を経由した寄付で、私はこのコラムで再三書いてきたように、違法にはならないと考えているが、検察は政治資金規正法違反が成立すると判断している。

 ならば、間もなく時効になるので一刻も早く捜査し、起訴しなければならない。

「発覚した」と書いたが、実は先に発表された政治資金問題第三者委員会の報告書にちゃんと明記されていたことなのだ(報告書にはほかに藤井孝男衆院議員、藤野公孝参院議員についても同様の事実を指摘している……)。今回、迷走に迷走を続けたあげく、腰砕けに終わった麻生人事で国家公安委員長に林幹雄氏、経済政策担当相に林芳正氏が選ばれたのは、福田改造内閣で初入閣しながら、内閣が短命だったことに配慮したためといわれているが、入閣経験組なら新たに「身体検査」をする必要がない、という都合もあった(ちなみに、東国原英夫・宮崎県知事が入閣できなかったのは、この身体検査で引っ掛かったからだと見られている)。

 ところが、麻生の目は(やはり)フシ穴だった。

 自民党にはあの〝憎っき〟郷原信郎氏らが関わった第三者委員会の報告書を批判的に検証するためのPT(PTが好きだなぁ)もできている。そのメンバーはいったい、何を読んでいたのだろう。よりによって、西松マネー汚染議員を警察を所管する国家公安委員長に据えるとは、ブラックジョークとしかいいようがない。

 もっとも、自民党も与謝野馨財務・金融担当相の悪質性の高い「迂回献金」が発覚したことから宗旨変えをして、西松建設の献金問題は「違法性なし」ということにしたのだろうか。もし、そうならそれはそれでよし。小沢前代表の秘書の公判が始まったら、郷原さんや私と同じスタンスから、政権交代を阻止しようとする検察の恣意的捜査を批判する側に回ってほしいものだ。
 もし、引き続き「違法性あり」の立場に立つなら、違法献金を受け取った議員を新閣僚にした麻生太郎首相の任命責任が問われることになるだろう。まあ、どうせ死に体なのでどうでもいいちゃあ、どうでもいい話かもしれないが、小沢献金問題であれだけ口を尖らせて非難していたことの責任だけはとってもらいたい。

 そうして、この自民党PTが見落とした「違法献金」を見逃していなかったのが、わがTheJournal執筆陣の宮崎学さんだ。なんと、きのう(3日)午前、林ルートも捜査・起訴するよう東京地検に告発したのだ(ただし、今回は西松建設側の国澤幹雄元社長の林議員に対する他人名義献金を告発する形をとっている)。これはなんとも皮肉な話である。検察が小沢献金についてあくまでも違法というスタンスを取るなら、この林ルートも捜査・起訴しなければ辻褄が合わない。検察がどう動くかに注目したい。

 類似のケースとして、西松建設は自民党二階派の政治団体「新しい波」(会長・二階俊博経産相)に対しても他人名義の献金をしていた。これについて検察は、小沢ルートのみを起訴して、二階ルートは不起訴(起訴猶予)だった。ところが、6月16日に東京第三検察審査会が「起訴相当」の決議を行ったため、検察は起訴せざるを得なくなり、実際26日に起訴をしている。これらのケースを整理すると、―――

         ▽西松側          ▽議員側
【民主党関係】
●小沢ルート    逮捕・起訴         逮捕・起訴
【自民党関係】
●二階ルート    不起訴→起訴相当→起訴   不起訴→不起訴不当→不起訴
●林ルート     未捜査           未捜査
●藤井ルート    未捜査           未捜査
●藤野ルート    未捜査           未捜査

 となり、検察が自民党議員(二階、林、藤井、藤野の各氏)に対する「他人名義献金」について、手心を加えていたことは明らかだ。

 しかし今回はそうはいかない。二階ルートについて検察審査会の「起訴相当」の決議を受けて起訴しているのだから、宮崎さんが告発した林ルートについても起訴せざるを得ないだろう。もし、しなければ、それこそ検察官適格審査ものだ。

しかし、新聞の扱いは意外なほど(?)小さかった。私の見落としでなければ、

朝日新聞は当日夕刊も、翌日朝刊も扱いなし(見落としかな?)
毎日新聞は夕刊で〈林幹雄氏側に献金 西松元社長を告発〉ベタ31行。
読売新聞は夕刊で、〈ダミー献金告発状提出〉ベタ17行。
産経新聞は朝刊で〈作家の宮崎氏が西松元社長告発〉ベタで29行。
東京新聞は夕刊で、〈藤井議員らへの献金めぐり告発 西松事件で宮崎学氏〉ベタ31行。

 あれだけ大騒ぎした「小沢献金事件」の〝余罪〟なのに、こんなもんか? なんかおかしくないか? 仕方がないので、またもや今日(土曜日)締め切りの週刊朝日の誌面を差し替えて記事を突っ込むことにした。これからその作業に取り掛かるので、とりあえずここまで。続きはまた数時間後にアップしようと思います……。

 実は、林国家公安委員長に関するスキャンダルはこれだけではないようです。

2009年7月 2日

自民党が狙う! 鳩山「架空献金スキャダル」

 天の神さまはそう簡単に政権交代を実現させてくれないようだ。

 鳩山由紀夫民主党代表の「架空献金」問題は、本来なら(平時なら)それだけでも議員辞職に相当する事案かもしれない(詳細は後述)。ただ、現在の混沌とした政治状況と、これを追及し始めると政界全体の政治資金のパンドラの箱を開けることになりかねないので、今後この問題がどのような方向に発展していくかは未知数だ。

 民主党の岡田克也幹事長は4月30日の鳩山代表の「謝罪会見」を受けて「説明責任は果たされているし、納得のいくものだった。(代表を)辞める話ではない」と党としての立場を説明したが、認識が甘いと言わざるを得ない。

 西松献金事件の教訓から民主党は今回、政治資金問題第三者委員会の報告書の指摘に従い、鳩山氏の会見を党本部ではなく議員会館で行うなど、「鳩山代表個人立場」と「党の立場」をせっかく分離したにもかかわらず、「鳩山個人」の会見の直後に、その内容を党としての検証なしに受け入れてしまったからだ。岡田幹事長は少なくとも「現段階では……」という留保をつけるべきだった。

 なぜそう思うのかというと、鳩山氏の説明にはかなり苦しい部分があるからだ。

今後もし、会見での説明と異なる事実が出てくるような事態になると、民主党が被るダメージは小さくない(実はすでに出始めている)。鳩山氏は個人として弁護士を雇い、検証結果を個人として発表した。この場合、弁護士には第三者性が求められていないから、検証結果はクライアントである鳩山氏の意向に沿うものだと思うのがふつうだ。なので、民主党は民主党で党として客観的な事実関係の調査をすべきだった。いまからでも遅くはない。

 では、今回の鳩山氏のケースはどの程度の悪質性があるものなのか。わたしの知る限りで解説してみようと思う。みなさんはどう思われるか。

 まず、収支報告書に寄付をしていない人の名前を使って寄付をしたかのように書いてあるので、違法であることは間違いない。政治資金規正法の趣旨は、政治資金のカネの流れを透明にすることだ。政治資金の拠出者がどのような人か、国民がチェックできるようにするという意味である。その拠出者を何年にもわたって偽っていたのだから、資金の透明化という法の趣旨を逸脱した悪質な行為であることは間違いない。

 ところが、会見での説明を信用すれば、今回のケースでは真の拠出者が実は鳩山氏自身だったというからややこしい。

 そもそもなぜ、政治資金の流れを透明化する必要があるかというと、資金の拠出者と寄付を受けた政治家の政治活動の関係をチェックできるようにするためだ。具体的には、寄付を受けた個人や企業・団体に政治力を使って便宜供与をしていないかなどの監視である。
 拠出者がゼネコンであれば、公共工事の受注に便宜を図ったのではないかとか、拠出者に有利な質問や答弁をしていないか、とか。その意味では、経済閣僚を務めることが多い与謝野馨氏が商品先物取引業者から迂回献金を受けていたというと、かなり灰色っぽい印象になる。
 それが鳩山氏の「架空献金」の場合は原資が鳩山氏自身の個人資金だったというのだから、その意味での悪質性はほとんどゼロに近いといってもいいかもしれない。

 情報開示や透明性という意味では完全な「クロ」だが、カネの出自というか寄付の趣旨については限りなく「シロ」に近いというのが今回のケースではないかと思う。

 誤解を恐れずにあえて言えば、小沢一郎前代表のケースは法的にはシロだと思うが、世間が疑いの目を持って見るのは仕方がない。ただし、小沢氏の場合は検察の必死の捜査にもかかわらず、便宜供与などの悪質性が発見できなかったというわけだ。
 一方、鳩山氏の場合はこれとは逆で、立件されれば有罪になる可能性が高い。だが、肝心のカネの趣旨に悪質性がほとんど感じられないというものだ。

 以上は、あくまでも会見の内容を信じればという前提の話である。だが、本当に額面通り信じてよいものなのか。

 政治資金が不足したときの補充や鳩山氏個人の支出のために預けていた鳩山氏個人のカネを、秘書が勝手に他人名義で資金管理団体に寄付していた―――鳩山氏の説明を要約するとこうなる。これを信じる人がどれくらいいるだろう?
 信じてもらうには、それなりに説得力のある「理由」が必要だろう。

 鳩山氏の説明によれば、秘書は弁護士のヒアリングに対して「本体、当該秘書が直接、これらの方々に寄付をお願いすべきであったものを怠ったことから事実でない記載をし、それを繰り返してしまった」と話したという。加えて鳩山氏は、「私に対する個人献金があまりに少ないので、そのことがわかったら大変だとの思いがあったと推測している」と述べ、同席した弁護士も「(担当者の)自己保身だと思う」と強調した。

 推測としては確かに成り立つ。「企業・団体献金より個人献金」と主張している手前、あまりに個人献金が少ないとかっこうがつなかいという動機もあり得る。鳩山事務所では秘書に対して個人献金を集めるノルマがある、などの事実があればより説得力は増すだろう。だが、そのような事実は鳩山氏の説明の中には出てこなかった。
 さらにもし、鳩山氏が個人献金が少ないことを気にしていたとしたら当然、政治資金の管理状況などについても関心が高かったはずだ。すべて秘書まかせで、何年間も不適切な処理に気づかなかったということと矛盾する。そもそも政治家が個人献金の多寡を気にするという話はあまり聞いたことがない。

 要は、秘書が虚偽記載を続けていたことに関する説得力のある動機が思いつかないということだ。鳩山氏の「~と推測している」、弁護士の「~と思う」という発言も曖昧だ。自分の公設秘書なのだから、「どうしてこんなことやったんだ」と一言聞けば済むはずだ。国民が知りたいのは、推測ではなく事実である。鳩山氏の秘書はなぜ、何年にもわたって不適切な処理を続けていたのか。そこには明確な意図があった、と考えるのが自然だろう。

 問題発覚のきっかけは、わが親会社の朝日新聞が「故人献金」の存在を指摘したことだった。それを週刊新潮がさらに深堀りをして、複数の「架空献金」があることをスクープした。
 会見での説明によれば、年に400万円から700万円、05年からの4年間で193件2177万8000円にのぼり、名前を使われた人が約90人いたという。だが、「架空献金」はこれだけでなかった可能性も出てきた。

 7月2日付の産経新聞に、〈議員献金も個人資産?〉という記事が掲載された。与党プロジェクトチーム(PT)の調べとして、鳩山氏が支部長を務める民主党の政党支部に03年から07年までの間に選挙区内の道市町議会議員42人(元職含む)から、総額約1650万円の個人献金があったことがわかったという。
〈献金はすべて毎年12月25日にそろって行われており、金額もほぼ同額で計画的に行われた可能性がある。PTでは「献金は鳩山氏個人の資産を原資としていた可能性があり、政治資金規正法違反や詐欺の疑いもある」(自民党幹部)とみている〉というのだ。
 これは会見後、新たに出てきた新事実である。

 一般に国会議員が系列の県市町村会議員に寄付をすることはよくあるが、地方議員が国会議員に「上納」するという話はあまり聞かない。自民党幹部が指摘するように、鳩山氏個人の資産を原資としていた、つまりこれも「架空献金」だった可能性がある。「一連の架空献金には何らかの意図があった」との疑いがさらに強くなったと言わざるを得ない。

 それはいったい何なのか。先の週刊新潮の記事では、日大法学部の岩井奉信教授が「マネーロンダリングが、真っ先に疑われますね」として、以下のように解説している。
「大口の献金を貰ったが、法廷上限を超えていた。それを完全に裏金扱いするのもさすがにマズいと考え、適当に支援者名簿の中から名前を借りて小口に分散させた」
 これはかなり説得力がある。では、その大口献金の拠出者とは誰なのか?
 実は、今週号の週刊朝日(マイケル・ジャクソンの表紙)で、

与謝野「迂回献金」発覚でも検察は動かない―――
違法献金「Xファイル」全調査

 という大特集を組んでいる。興味のある方はぜひ読んでいただきたいが、そこに鳩山氏の「架空献金」問題について「鳩山(邦夫)氏に近い関係者」のコメントとして、次のような解説を掲載している。
「弟の邦夫さんが07年には母と姉からそれぞれ計600万円ずつの献金を受ける際、同一の政治団体への個人献金の上限が150万円であることから、超過分を別の三つの政治団体を迂回させていることが報じられた。常識的に考えて由紀夫さんにも同じ額が献金されているはず。由紀夫さんは資金管理団体と政党支部しか受け皿がないので、超過分を故人などの名義を使って割り振ったのでしょう」
 鳩山家は言わずと知れた超大金持ちで、兄弟の母・安子さんの名義になっている東京・音羽の「鳩山御殿」は土地の評価額だけでも約50億円になるといわれる。弟の邦夫氏は先の「迂回献金」が発覚した際、「母の愛だ」と釈明した。
 兄・由紀夫氏の架空献金も実は「母の愛」ではなかったか。

 もしそうだとしたら、カネの趣旨(ワイロ性)としては限りなく「シロ」に近いと言えるかもしれない。だが、別の問題が新たに生じる。
 千葉大法学部の新藤宗幸教授は週刊朝日の取材にこう話した。
「(前略)仮に政治活動にきちんと使っていなかったとしたら、非課税の政治資金を利用して相続税を脱税する形に……(後略)」

 実はこの政治団体を使った「課税逃れ」こそ、政界全体に広がる「パンドラの箱」なのだ。

 自民党は現在、総選挙に向けたマニフェストもろくにつくれない状態で、幹部たちは「ネガティブキャンペーンで乗り切るしかない」と話すありさまだという。その先兵とされているのが産経新聞に出ていたPTだ。もともとこの問題も出元は自民党の事務当局だといわれている。複数のメディアに「ネタ」が持ち込まれていたとの情報もある。きっかけとなった故人献金問題が報道された直後には、官邸周辺から「これで民主党に回復不能な打撃を与えることができる」と〝喜び〟の声が聞こえてきたという人もいる。

 だが、結論からいうと、自民党がこの問題を徹底的に追及できるかどうかはかなり微妙だ。なぜなら、この政治団体を使った贈与税、相続税の「課税逃れ」は世襲議員を中心にかなり広く行われる政界のタブーだからだ。
 週刊朝日6月26日号で、ジャーナリストの高瀬真実氏が小渕優子少子化担当相の課税逃れを指摘したばかりだった。高瀬氏はかつて週刊現代誌上で安倍晋三首相(当時)の「脱税」を指摘して話題となったことがある。鳩山氏のように架空の名前を使う手口は珍しいが、どこが悪いのかという本質的な部分では同じこと。いずれにしても、やりだしたら「あいつも」「こいつも」ときりがない案件で、いつか浄化しなければならないが、与野党ともなかなか手がつけられない日本の政界の宿痾のようなものなのだ。

 もちろん、だからといって鳩山氏の架空献金が許されるわけではない。
 ただ、今回、取材してみてあらためて政治資金の問題は根が深いと感じた。報道ベースで最近、発覚したケースを拾っただけでもかなりの数になってしまう。それは与野党議員を問わない。たまたま発覚した案件をそのたびごとに追及していてもきりがないと、正直思った。だが、放置すれば国民の政治不信につながることは間違いない。
 いまは選挙前なのでとくに自民党は藁にもすがる思いで、せっかくのネタをネガティブキャンペーンに使いたい気持ちもわかる。だが、やはりこれは政界全体の問題として与野党を超えて浄化に取り組むべきではないかと思うのだ。
(といっても、ドロボーに警察官をやらせるような話なので、なかなかむずかしいかもしれないが……)。
 自民党のPTも、調子に乗ってやっていると「天にツバ」になることを忘れないほうがいいだろう。

Profile

山口一臣(やまぐち・かずおみ)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。ゴルフダイジェスト社勤務を経て、89年朝日新聞社入社。高校時代から愛読していた『朝日ジャーナル』編集部に配属され、あこがれの「ファディッシュ考現学」(田中康夫)を担当するも3年で休刊の憂き目に。『週刊朝日』へ異動し、事件&事件の日々を送る。その後、何を血迷ったのか広島の公教育問題で日教組を徹底批判し、「朝日なのに産経と論調が同じ」と物議をかもす。9.11テロ直後のニューヨーク、パキスタンを取材。米軍によるアフガニスタン市民への誤爆を伝えまくる。デスク時代に北朝鮮拉致被害者関連の記事で下手を打ち、『週刊文春』に叩かれ、副編集長を解任、更迭される(停職10日の処分付き)。その後、広報部へ配属されるが約半年でお払い箱。百科編集部で子ども向け週刊科学誌『かがくる』の創刊などに携わり、05年5月から再び副編集長、同年11月から、『週刊朝日』第41代編集長に。85年にわたる『週刊朝日』の歴史で中途採用者が編集長になるのは、これが初めて。

-----<出演>-----

『スーパーモーニング』
(テレビ朝日系、8:00~)

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