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2009年3月30日

二階経産省は「漆間発言」の生贄か?

 読売新聞オンラインがきょう未明の03:05、「二階氏側を立件へ、事務所無償提供疑惑で 東京地検」という記事を配信していた。いま話題の西松建設が二階俊博経産相の政治団体に事務所を無償提供していた疑いがあり、それが政治資金規正法違反にあたる可能性があるという話である。本当にこんなことが立件できるのか? もし、これが本当だとしたら、捜査はいよいよドロ沼化の様相を呈してきたと言わざるを得ない。

検察は当初、自民党議員関連の立件をするつもりはないといわれっていた。目的はあくまでも野党・民主党の小沢一郎代表を狙い撃ちし、「政権交代を阻むこと」にあったからだ。旧体制に属する法務・検察としては、民主党政権が誕生し、人事などで幹部が不利な扱いを受けることを恐れていた。法務・検察が一体となって推進していた裁判員制度導入の引き換えに、民主党は取り調べの過程を録音・録画する「取り調べの可視化」を盛り込んだ法案を提出していた。密室の取り調べを記録することは、冤罪を防ぐためには重要で、先進国では当たり前に行われている。だが、捜査当局にとってはおもしろくない。

 さらに民主党は、政権を取ったら霞が関の密約をすべて暴露すると公言している。小沢代表はディスクロージャーの先頭に立っていた。小沢民主党が政権を取ったら、何をされるかわからない。動機はそんなところにあったようだ。

 まずは小沢氏の公設秘書を逮捕し、それを糸口に小沢氏自身の贈収賄、もしくはあっせん利得など悪性の強い事件にもっていこうとしていたのだ。ところが、地方から応援検事の導入までして徹底的に捜査したにもかかわらず、不正がまったく見つからなかった。検察は小沢氏自身の立件はもちろん、事情聴取も見送り、秘書の再逮捕もできずに、結局、秘書の勾留期限の3月24日の段階では、政治資金規正法違反での起訴しかできなかった。捜査は明らかな失敗だった。

 検察にとって、もうひとつ想定外だったのは、小沢氏側の猛反発だ。

 確かに政治資金規正法違反程度の罪で任意の事情聴取もなく、逃亡や証拠隠滅のおそれのない人をいきなり逮捕するというのは常軌を逸していると言わざるを得ない。小沢氏が怒るのも無理はない。だが、当の検察は公設秘書を逮捕すれば、いくら小沢氏でもおとなしく代表を辞任すると思っていたようなのだ。

 予想外の反発を受けた検察は、「バランスをとるため」自民党議員にも手を着けざるを得なくなった。そのダメを押したのが、例の「漆間発言」だ。

 元警察庁長官で官房副長官の漆間巌氏が記者とのオフレコ懇談で「捜査が自民党のほうにまで波及する可能性はないと思う」などと発言し、それが「国策捜査」批判へつながった。漆間副長官が検事総長の樋渡利秋氏と東大の同級生だったことなどもあり、信憑性がありそうだと世間は思ったかもしれない。真相は不明だが、私はこれはないと思う。

 小沢捜査に燃える検事も、この発言には困惑したはずだ。もし、これで自民党議員に手を着けなければ「漆間発言」が本当のことになってしまう。そこであわてて探し出したのが、冒頭の事務所無償提供疑惑というわけだ。

 しかし、ほんとにこんなことでいいのだろうか?

 まだ、読売が報じただけでどうなるかわからないが、二階氏のケースも大臣の進退問題に発展するかもしれない。だが、検察の指摘に納得ができなければ二階氏は辞めてはいけないと思う。例によって、選挙に有利か不利かという判断が別にあるかもしれないが、検察に疑われたからといって、国民の代表である政治家がいちいち辞めていたら、議会制民主主義はおしまいだと思うからだ(本人が否認している場合)。違うかな?

2009年3月29日

「捜査ミス」を「政治とカネ」にすり替えるな!

 自分自身もよくわかっていなかったのですが、3月3日の小沢秘書逮捕以降、いくつものマターがゴッチャになって議論され、ことの本質を見失っていたような気がします。それぞれの人がそれぞれの関心の強い領域でものを考えているので、ときどき議論がかみ合わないという現象が起きていました。ぼく自身も「何でこんな簡単なことが理解されないんだろう」と困惑した時期がありましたが、要はそういうことだったのかと思います。

 気がつく範囲で整理すると……

(1)逮捕容疑である政治資金規正法の問題
(2)秘書逮捕が政治に与える影響の問題(選挙に勝てるかどうか)
(3)逮捕によって浮き彫りになった「政治とカネ」の問題
(4)検察権力の行使が公正・公平に行われたのかという問題

(1)は、検察が公判請求(起訴)したので、裁判所の判断に委ねられます。ただ、ここで重要なのは「起訴=有罪」ではないということです。この段階では、検察側(原告)も弁護側(被告)も対等な関係で、無罪が推定されています。とくに今回は、起訴後に被告が罪をおおむね認めているという怪情報が流され、複数のマスコミがそれを報じましたが、翌日、被告弁護人がそれを否定するという騒ぎがありました。ぼくは、例によってメンツを重んじる検察が「否認のまま起訴した」という事実を隠したいがために、意図的に流したウソ情報だと思っています。いずれ公判廷で明らかになるでしょう。

 民主党議員にとっては(2)が最大の関心事のようで、「小沢おろし」の原動力になっているようにも見えます。議員にとって選挙が大事なのは、理解できます。とくに今回は政権交代をかけた大事な選挙だということでしょうが、部外者にとってはあまり関心のないことです。逆に言えば、「選挙で勝てれば小沢でもいいのか?」ということになるのでしょうか。まあしかし、これは民主党の党内で勝手にやってくださいという程度の問題で、ぼく的にはどうでもいいかと思っています。

 曲者なのが(3)と(4)です。ぼくは、どちらにも強い関心がありますが、あえて言わせてもらえれば、まず「検察の公平性」の問題がクリアならない以上、「政治とカネ」の問題の議論に進むわけにはいかない、と考えています。なぜならこれは、民主主義の根幹にかかわる問題だと思うからです。

 検察の公平性を問題にする発言をすると、「なんでおまえは小沢の肩を持つんだ」と批判を受けることがあります。逆に、小沢氏に対する好き嫌いで、「嫌い」の立場に立つ人はたいてい「政治とカネ」の問題を声高に話します。民主党の反小沢の人たちは、ことさら「政治とカネ」の問題にしようとしています。しかし、そうしたもろもろの背景を含んだ上であえて言わせてもらえば、今回の事件を「政治とカネ」の問題と捉えたなら、それこそ検察の思うツボです。検察は、自らの捜査ミスを糊塗するため、問題を「政治とカネ」にすり替えようと、たくさんの情報をリークし続けてきたのです。

 そのため、いまだに今回の政治資金規正法違反を「大疑獄事件」ととらえている人が少なくないようです。実際、検察批判を続ける週刊朝日の編集部には「これほど大きな疑獄事件が起きているのに、なぜ検察の悪口を書くのか」といった電話が来ることもあり(そういう人は広告だけで、たいてい記事を読んでいない)、検察の世論誘導能力には、あらためて目を見張る思いです。

 しかし、冷静に考えれば、単なる政治資金規正法違反です。人一人が身柄を拘束されるような事件ではありません。検察がミスを犯したのは明らかでした。

 担当検事はネタ元のたれ込みを鵜呑みにして、秘書ではなく、小沢氏の自身を贈収賄やあっせん利得などで立件できると思い込んでいたようです。そうほのめかされたからこそ、新聞もあれだけ大々的な大本営発表を続けたわけです。ところが、いくら捜査しても小沢氏に関する不正の事実は出てこなかった。建設業界の実態や政治献金に関する基本認識を欠いた、勉強不足の結果でした。要は「バンキシャ!」と同じ構図です。

 しかし、メンツと不敗神話にこだわる検察は、自らの勉強不足を認めるわけにはいきません。そこで「政治とカネ」の問題を持ち出して、ミスから目を逸らそうとしているのです。その結果、主権者である国民の政治判断を歪める結果となりました。

 検察が数多いる政治家の中から小沢氏を狙った背景によこしまな意図があったことも明らかになりつつあります。人事や出世(幹部の叙勲)の都合から、政権交代を阻止したかったということです。そんな個人的な事情で、検察が「気に食わない」政治家を次々と逮捕する社会が、民主的と言えないことは明らかです。最近よく、検察も説明責任を果たすべきだという論を目にしますが、これは無理というものです。いくら取繕っても、説明などできるわけがないからです。

 民主党も自民党も政治家は選挙への影響には敏感なくせに、こうした民主主義の危機には鈍感すぎると思います。とくに民主党の議員は、党内抗争などやっている場合ではありません。もっとも、検察権力が国民の代表である政治の上に君臨するような社会を許容するというなら別ですが。その辺をはっきりして欲しいと思います。

 小沢氏に限らず、「政治とカネ」の問題は今回、初めて明らかになったことではありません。ここ数十年ずっと言われ続けてきた問題です。いずれ時間をかけてきちんとしなければならないことは明らかですが、それは事件とは別の問題だと思います。

 もう一度整理すると、

(1)政治資金規正法違反の問題=小沢事務所の問題
(2)政治への影響の問題=民主党の問題
(3)政治とカネの問題=政界全体の問題
(4)検察の公平性の問題=日本の民主主義にかかわる問題

 
 ということで、優先順位は明らかかと思います。

 そんなわけで、31日火曜日発売の週刊朝日は「検察の劣化」を特集しています。ぜひ、お読みください。

2009年3月25日

西松献金事件 問われる民主党の見識

いつも他人のふんどしで恐縮ですが、
前に紹介した郷原信郎さんが日経ビジネスオンラインに投稿した、新しい論考です。

わかりやすく参考になるので、またご紹介します。

郷原さんはまとめとして、今回の西松献金事件捜査は、日本の民主主義の根幹にかかわる問題だと指摘しています。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090323/189737/?bv

2009年3月22日

紀香VS.陣内 離婚の情報戦

検察VS.小沢の情報戦より、だいぶわかりやすかったのが、「藤原紀香・陣内智則」の離婚騒動だ。

19日、木曜日のスポーツ3紙(報知、日刊、スポニチ)が、同時に1面トップで、「紀香離婚」を報じたのだ。

この種のネタが3紙同着というのも珍しい。
ほぼ発表に近いかたちのリークなら各紙が報じるはずだし、純粋な特ダネなら、1紙が完全にリードするはず。

そこで、各紙の見出しを並べると、

報知:紀香スピード離婚 昨年秋ごろから関係悪化…修復不可能に 近日中に届け提出
日刊:紀香離婚へ 陣内の暴力との情報も
スポ:紀香離婚へ 陣内とわずか2年で… すでに別居

となる。唯一、報知だけが「へ」の文字がなく断定的だ。
しかも、「昨年秋ごろから…」と具体的な経過に触れている。
日刊はあくまで「情報も」だし、スポニチの「わずか2年」は、取材しないでも書ける見出しだ。

芸能記者に裏話を聞いてみると、「確かに報知が先行していたのですが、前日の夜中あたりから情報が漏れだした。
日刊とスポニチが追って、ギリギリで突っ込んだと聞いています」

2人は結婚当初から「格差婚」などといわれ、先行きが心配されていた。
この日の紙面は、3紙とも「格差」「すれ違い」などを引き合いに出し、ケンカしていたこと、すでに関係が冷え切っていたこと、などを指摘しているが、決定的な「原因」については、唯一、日刊が「陣内にはDVがあったとの情報もあり」と書いただけ。

となると、気になってくるのは、ホントの「原因」と、どうして情報が「漏れだした」のかだ。

ヒントは、3月19日という日付にあった。

この日は吉本興業などが初めて主催した「沖縄国際映画祭」の開幕初日で、陣内が所属する吉本の主要な幹部や関係者、とりわけマスコミ対応の広報主力部隊が沖縄に出払っていた。

そこにドカーンと爆弾が落ちた。
日刊には「陣内のDV」情報まで出ている。
そして、紀香はアフリカ出張中で日本にいないタイミングだ。

「情報の発信元は明らかに紀香サイド。
でも本人ではなく、事務所(バーニング)もしくはその周辺だ。
2人の仲が冷え切っているのを察知した事務所が、できるだけ自分の商品の方に傷がつかないように、『離婚へ』の事実を表沙汰にしたかったようです」とは、知り合いのスポーツ紙記者の解説だ。

なるほど、紀香陣営はやるのぉ……。

と、思っていたら、陣内にラッキーポイント。

前述の沖縄映画祭に参加するため休んだキム二イのピンチヒッターで、たまたま陣内が日テレの情報番組「ラジかるッ」に生出演することに。
そこで、当面の「弁解」をした。
離婚届けを渡したことや、不仲なことは認めたものの、「いい方向で話し合っている」と、離婚をやんわりと否定。
だが、この番組でいちばん言いたかったのは、おそらく「DVの否定」だったと思う。

陣内側に原因があるとしても、暴力は今後の仕事のひびくからだ。

ところがである。その日のうちに超ド級の証言が飛び出す。
紀香ママだ。
集まった芸能記者を前にしゃべるしゃべる。
それまで気丈に振る舞っていた紀香が、3月1日に実家に来て、「ママ、もう無理」と打ち明けたという。そして、紀香の母は、「原因は陣内の浮気。智則さんは誠意を見せて欲しい」「紀香は太っ腹。2人や3人なら大目に見るでしょうが、それどころじゃない」などと心情を吐露した。

あ~あ、これで勝負あった。
「陣内=女グセの悪い夫」
「紀香=耐え忍ぶ妻」
の、わかりやすい構図ができあがった。

陣内パパが細々と、「報道されていることは氷山の一角。(報道が仮に)7分の1だとしたら、あとの7分の6は当人同士にしか分からない」と反論した(報知21日)が、世の中はすっかり、「原因は陣内の浮気」になっている。

唯一、東スポだけが、「離婚の原因は 紀香 風水のお告げか」(21日)と、例によって「か」が小さくついた見出しで報じた。
要は、紀香が風水にハマっていて、陣内の着る服からなにから、なんでもかんでも風水に頼っていたことで、陣内がうんざり、愛想をつかしたというのだ。

まあ、真偽のほどは定かでないが、いずれにしても離婚の原因なんて、夫婦双方にあるのが普通だ。

紀香と陣内は確か、ドラマの共演で知り合って、婚約まで半年くらいだったと思う(詳しく調べてないけど)。
陣内は芸人だから女性関係はもとから派手だろうし、紀香も、直前まで別の男性とつきあっていたという話もある。

要は、相手のことをよく知る時間もなく、覚悟もなく結婚してしまったということだろう。
それは、お互いさまというものだ。
それにつけても、紀香サイドの情報リークは上手だった。

ちなみに、報知の見出しに「昨年秋ごろから…」とある、関係を悪化させた出来事については、火曜日発売の週刊朝日をご覧ください。

って、コレ宣伝か? すんません。

2009年3月21日

検察に正義を求め過ぎるのは気の毒だ

 民主党・小沢一郎代表の秘書の勾留期限があと3日に迫った。さらなる「悪事」での再逮捕があるとすれば、このタイミングしかない。はたして「東北の業者一斉聴取」の成果は出るのだろうか。「出ない」という意見が強い。だが、もしいわれている政治資金規正法違反の起訴だけで終わっても、「検察の敗北だ!」などと囃し立てることは慎んだ方がいいと思う。プライドの高い検察が批判に耐えきれず、さらに戦線を拡大する可能性があるからだ。そうするとまた、税金が無駄に浪費される。今回の捜査では、すでに地方検察庁から多数の応援検事が呼び寄せられているとの報道がある。その人たちの旅費、滞在費、出張日当などの経費はすべて税金なのだ。ぼくたちは、そのことをもっとしっかり認識しておく必要がある。

 この捜査は、本当に公益にかなう(税金を支出する価値のある)ものなのか?

 捜査指揮経験のある複数の検察OBに聞いたが、誰もが判で押したように「もし、私がこれを決裁する立場にあったら、捜査着手は見送っただろう」と言っていた。つまり、それほど異常な捜査なのだ。それがなぜ、今回に限ってゴーサインが出てしまったのか。検察の動機はなんなのか? これまでのぼくの取材や報道を通じて見えてきたことを、とりあえず整理しておこうと思う。

 まず、民主党がいうような「国策捜査」説にはくみしない。

 検察が、官邸や政府与党に動かされているという主張は、ぼくには信じられない。19日の参院予算委員会で民主党議員が首相に「指揮権を発動した事実はないか」などと質問していたが、時間と税金の無駄である。意味がないので、この種の質問はやめたほうがいい。

 秘書逮捕が小沢氏の例の「第7艦隊発言」の直後だったことから、「アメリカの陰謀」説を唱える人もいる。週刊朝日の編集部にも、その種の意見を言ってくる人が少なくない。でも、いくらなんでも、こりゃないだろう。週刊新潮じゃないんだから(爆)。

 きっかけは、だぶんもっと人間臭いものだと思う。

 検察官といえども人間だ。出世欲もあれば物欲、性欲もある。好きな政治家、嫌いな政党もあるだろう。いや、ないほうがおかしい。あって当たり前だ。たとえば、10年前に当時東京高検検事長だった則定衛氏が、不倫がバレて辞職する事件があった。それをかばった最高検の堀口勝正次席検事が、「浮気は、捜査現場の活力になっている」と発言して問題となった。さらに、「浮気の経験がある者が、ひょっとすると検察の中には半分はいるかもしれない」と言った。軽率だと指弾されたが、ホンネだと思う。

 人間はスケベである。検察官も例外でない。もちろん、ぼくだってスケベで欲深だ。カネも欲しい。喜怒哀楽もある。

 たとえば、秘書逮捕直後の小沢氏の会見を聞いた検察幹部が、その挑戦的な態度に激怒したという話がある。記者が聞いてきた話では、幹部は小沢氏が「政治的にも法律的にも不公正な国家権力、検察権力の行使だ」と発言した点をとらえ、「政治的にというのはまだいいにしても、法律的にもというのは絶対に許せん!」と言い、「こうなったら、あっせん利得でも収賄でも、必ずやってやる」と息巻いたという。いかにも人間臭い。

 だが、もしかしたらこうして始まったかも知れない「あっせん利得」や「収賄」に関する捜査の目的は、この幹部の「怒りを慰撫すること」または「溜飲をさげること」ということになる。公益とはちょっと違う。いや、だいぶ違う。しかし、人間の集団が何かを始めるきっかけは、実はこういうことがかなり影響していると思うのだ。

 幹部の怒りが現場に伝わり、「上司のご機嫌」をとろうとした現場指揮官が部下にハッパをかける。現場指揮官の目的は、いうまでもなく出世である。さらに上層部にはまた、別の思惑があって……などなど。組織の意思決定には、こんなふうに構成員の思惑と欲望が複雑に絡み合っているものだ。

 では今回、「小沢の秘書をパクってしまえ」という意思決定は、どのように行われたのだろう。以下は、出ている情報と取材をもとにした推論だ。

 まず、現場に相当強いプレッシャーがかかっていたのは間違いない。

 東京地検特捜部が、西松建設が海外で裏金1億円をつくって日本に持ち込んでいた事実をつかんで外為法違反容疑で家宅捜索していたことがわかったのが、去年6月のこと。それから約半年の捜査を経た今年1月、ついに西松建設の前社長逮捕に行き着く。なにしろ1億円の裏金だ。当然、その行方に関心が集まり、「特捜部は海外から持ち込んだ資金の流れの全容解明を進めるものとみられる」といった記事が新聞をにぎわした。

 すると、それまで120円~140円前後で動いていた西松建設の株価が一気に70円近くにまで暴落した。100円を切った株価は「倒産危険水域」といわれている。このままでは、「検察の捜査」によって「中堅ゼネコン1社が潰れる」ことになるかもしれない。すでに事件のせいで、国交省からの指名停止も受けていた。だが、この段階で立件できていたのは外為法違反だけ。そんなチンケな捜査でゼネコン1社潰したら、どんな批判をされるかわからない。ただでさえ、雇用不安が叫ばれるご時世なのだ。中途半端なことで西松建設の社員を路頭に迷わすわけにはいかなかった。

 なんとかして外為違法違反を「政界疑獄」にまで持っていかないとマズイ。そう考えた担当検事の動機は保身である。さいわい、逮捕した西松の前社長はベラベラといろんなことを話してくれる。なんとか「政界ルート」へ、と考えるのも無理はない。

 ところが2月下旬、目星をつけていたルートで聴取していた重要参考人が自殺する失態を犯してしまう。当然、新聞記者にも嗅ぎつけられる。担当検事は焦りまくった。上からは「年度末までには決着をつけろ」と言われていた。もう、時間がない。どうしよう。そんなプレッシャーの中、検事が西松前社長の供述から見つけ出したのが、他でもない。「小沢献金」にまつわる話だった。「なぁ~んだ、いいネタがあるじゃないか」。

 検察の矛先は本来、職務権限のある与党政治家に向かうものだ。その方が手柄も大きいはずだ。だが、野党でも第一党の党首なら獲物としても遜色はない。しかも、田中角栄の系譜を受け継ぐ土建政治家の小沢氏なら、世論も味方してくれるだろう。「いけ~!」「やれ~!」の怒号が現場に飛び交うことになる。あ~わかりやすい。

「半年以内に確実に選挙がある」という状況など、すっかり頭の中から消えていた。あるのは年度末の人事異動だ。もともと現場には長くまともな「政界ルート」を手掛けてこなかったことへのフラストレーションが溜まっていた。1カ月後には異動が迫っている。それまでになんとか「実績」を残したい。特捜検事は、特捜部在籍中にどれだけ実績をあげたかが、将来の出世につながる。大物政治家関連の捜査に携わった経歴は、退官してヤメ検弁護士になったときの「ハク」にもなるようだ。

「政治には極力影響を与えないようにする」という検察の不文律は、出世とカネの前にあっさりと破られた。

 そういえば、3月22日号の「サンデー毎日」に、最高検刑事部の東京担当として今回の捜査に関わった大鶴基成検事に関する面白い記事が出ていた。この人が特捜部長時代に、現場が乗り気でなかった前福島県知事の事件を立件する際、「これができるかどうかで俺が検事正や次席になるかが決まる」と息巻いて、部下を怒鳴り散らしていたそうだ。

 ちなみに、現在の佐久間達哉特捜部長は、最高裁で無罪が確定した長銀粉飾決算事件の主任検事だったそうだ。そのとき特捜副部長として指揮していたのがいまの東京地検検事正の岩村修二氏、つまり今回の小沢秘書逮捕を決裁した検事である。この二人はネットでは「国策捜査のプロ」などと散々な書かれようだ。何をやったのかといえば、不良債権問題にはほとんど関わっていなかった当時の長銀頭取を粉飾決算だけで逮捕し、その一方でイ・アイ・イなどに対する巨額不良債権の山を築いた元頭取の罪を問わなかった。巨悪を逃して小悪を処罰しようともがいたあげくに、最高裁に完全無罪を食らってしまったというわけだ。「国策捜査のプロ」ではなく「見込み捜査のプロ」かもしれない(この見込み捜査では、複数の自殺者まで出している)。

 まあそんなわけで、現場の保身と出世とカネという人間臭い理由で決裁をスルスルとくぐり抜けた「小沢秘書逮捕」は、いよいよ検察上層部へ上げられる。

 上層部の思惑も、いろいろある。ひとつは人事だ。この説は、3月20日号の「週刊朝日」でジャーナリストの上杉隆さんが指摘してから、いろいろなところで言われている。それは、民主党が政権を取ったらポリティカル・アポインティ(政治任用)によって官僚人事を見直すと宣言していることである。鳩山由起夫幹事長が「局長以上は辞表を提出してもらう」と宣言しているように、もし、本当に民主党政権が実現したら、いまいる検察幹部が飛ばされる可能性だって出てくる。しかも首相は、あの金脈政治家、田中角栄の流れを汲む、憎き小沢一郎なのである。だから絶対、政権交代は阻止したい。若干、政治臭くなったとはいえ、これもいってしまえば保身である。

 功なり名を遂げた人間は、次に名誉が欲しくなるという。検察官も高検検事長クラスになると、叙勲を気にし始めるらしい。もう少しで勲章に手が届きそうなところで、ポリティカルなんたらだか、何だか知らないが、ひっくり返されたらたまらない。

 もうひとつ言われているのが、この5月に施行される裁判員制度である。法務・検察が一体となって推進してきたこの制度に小沢氏は、「日本人には馴染まないのでは」と違和感を表明していた。さらに、民主党として制度導入の引き換えに、すべての取り調べを記録(録音・録画)する、いわゆる捜査の可視化を盛り込んだ法案を出した。これは先進国では当たり前のことだが、密室の取り調べ室で被疑者を脅したりすかしたりしながら調書を取る日本の捜査当局にとっては受け入れがたいことだった。

 つまり、前検事総長の但木敬一氏から裁判員制度を託された樋渡利秋検事総長にとって、民主党も小沢氏も「好ましからざる存在」だったのだ。

 もっとも、裁判員制度がなくても、樋渡総長の「民主党嫌い」は検察内部でも有名だったようだ。その理由については、前述の上杉論文に詳しいのでここでは触れない。要は、そういう人間としての感情やさまざまな思惑、欲望が「検察の不文律」を超えて、小沢秘書逮捕に向かってしまったのではないか、と思うのだ。

 もちろん、それだけではないかも知れない。ただ、こういうことが組織の意思決定には確実に影響している。それはどの会社だって組織だった同じである。検察だけが、特別な存在だとは思わない。あなたの会社も、わたしの会社も同じである。

 それは「いい、悪い」の問題ではない。人間の組織だから仕方ない。ただ単に、「そういうものだ」ということだ。ただ、そういうものだということを、ぼくたちは納税者として知っておくことが大切なのだ。検察や検察の捜査を語るとき、なんとなく違和感があるのは、多くの人が検事をスーパーマンだと思っているように感じることだ。スーパーマン的な「正義の体現者」を求めても、それは酷ではないか。もちろん、検事を職業と選んだからには、それなりの正義感を持ってもらわなければならないし、実際に正義感にあふれたまじめで論理的な人が多いのはわかる。だが、一皮むけば同じ人間なのだ。メシも食えば、うんこもする。ひとり検察だけに、過剰な「正義」を求めるのは気の毒だ。

 正義だけを考えている人間などいるわけがない。

 さて、なんでこんなことをつらつら書いてきたかというと、これから先、小沢秘書の起訴や初公判の冒頭陳述などで、またもや大量の「検察発情報」がタレ流されると思うからだ。それはまた、バランスを取るため自民党議員にも及ぶかもしれない。検察情報がタレ流されることを批判する人もいるが、ぼくは情報が出ないより出たほうがいいと思っている。それを「受け手」がどう受け取るかということのほうが、より大事だと思うからだ。

 つまり、検察から出てくる情報は、正義の情報ではなく、あくまでも検察にとって、あるいは担当検事にとって都合のいい話だということだ。そう思って情報に接すると、同じ新聞記事が違ったふうに見えてくるから面白い。さらに、その記事を書いた記者や新聞社にはどんな人間臭い思惑があるかを考えると、もっと面白くなってくる。新聞社によって記事の傾向に色がある。ネタ元(情報源)の違いが出ていたりする。

 さて、勾留期限まであと3日、どんなことが起きるか楽しみだ。

2009年3月19日

小沢秘書逮捕と「検察の裏金」

民主党の小沢一郎代表の秘書をめぐる政治資金規正法違反事件のいかがわしさについては、多くの人が指摘してくれるようになってきた。今回の捜査は簡単に言うと、まず「小沢秘書逮捕」がありきで、「別件」で逮捕してしまってから「逮捕」に見合う「罪」を探しているという状況だ。つまり、最初に「罪」があったのではなく、捜査の目的は「小沢排除」にあったと言われても仕方ない。後から「バランスを取るため」に付け加えられそうな二階俊博氏の関係者はいいトバッチリというものだ。

検察のターゲットはあくまで「小沢」であったことは間違いない。だが、このまま政治資金規正法違反だけでは「検査の敗北」(by田原さん)になる。

取材記者からは、検察上層部が捜査現場に「なんとしてもあっせん利得処罰罪までもっていけ。できなければ出世はない」とハッパをかけているとか、すでに「あっせん利得」はあきらめて、「入札妨害罪(談合罪)でも偽計業務妨害でも、とにかく何でもいいから再逮捕しろ」と指令がとんでいるといった情報が上がってくる。いよいよ切羽詰まった状況だ。

 ここでさらに追い詰めると、検察が新たな「つじつま合わせ」をやるのではないか、と不安が募る。はっきり言って、何をやってくるかわからない。「まさか、そこまで」と多くの人は思うだろうが、それは甘い。検察は、やるときはやる。これが恐い。本当に恐いのだ。

ぼくが検察の「つじつま合わせ」のコワさを身をもって知ったのは、2002年4月に現職の大阪高検公安部長だった三井環さんが突然、逮捕された事件である。記憶している人も多いと思う。容疑は「電磁的公正証書原本不実記録」だ。何かと言うと、実際に居住している住所でないところに住民登録をしていた、という「罪」である。本当にそんなことが犯罪になるのかと思うが、一応、法律はある。

世の中、住民票のあるところと別のところに住んでいる人はごまんといるのではないか。都内に邸宅を構える地方選出の国会議員はほぼ間違いなく地元に住民票があるはずだ。三井さんは、こんな「微罪」にもならないような「罪」で人としての自由を奪われた。しかも、逮捕したのは泣く子も黙る大阪地検特捜部だ。さすがに住民票の虚偽記載だけで特捜事件にするには気が引けたのか、逮捕時には「詐欺容疑」が加わっていた。不正な住民票を元に、不動産取得時の登録免許税の軽減措置をうけようとして、市役所から「家屋証明書」を詐取した、というものだ。もう一度、繰り返す。役所から証明書1枚をだまし取ったので、「詐欺罪」に当たるという話である(爆)。

 これは、税金を使って捜査しなければならない事件なのか。しかも、大阪地検特捜部が……。

 しかし、現職の幹部検察官が特捜部に逮捕されたということで、マスコミをあげての大報道合戦になる。ぼくは、「小沢秘書逮捕」後の報道を見て、「ああ、三井さんのときとまったく同じだなぁ」という思いが消えなかった。

・詐欺などの疑いで高検公安部長を逮捕
・暴力団関与し財テク 逮捕の高検公安部長
・暴力団絡み承知でマンション落札
・情報提供の見返りに組員から接待受ける

 あれよあれよという間に話がどんどん大きくなっていく。新聞を読む限りでは、三井さんが「大悪人」に思えてくる。

 実は、こう書くとまた誤解されるかもしれないが、三井さんは不動産購入が趣味で、気に入った中古マンションを見つけては買い、自前でリフォームしてから人に貸して賃料を得ていた。老後は検察の年金と不動産収入で暮らそうとしていたわけだ。もちろん、これは違法でもなんでもない。だが……、

・ローン合計1億何千万円で家賃収入を得る 高検公安部長
・マンション高騰期狙い、購入
・高検公安部長 賃料で安定収入目的か?
・検察内では「三井不動産」と呼ばれていた

 などなど、すごい見出しが新聞に踊る。何だか悪いことをしているように見えてくる。しかし、この時点での容疑は、あくまでも住民票の虚偽記録と家屋証明書を「詐取」したという疑いだけ。比べられるもんじゃないだろうが、今回の政治資金規正法の記入ミスより軽いかもしれない。だが、三井さんは逮捕された。なぜなら、三井さんは検察側にとって決して許すことのできない「大罪」を犯していた、いや、犯そうとしていたからだ。

 それは、検察に長く宿痾のように存在していた「裏金づくり」を現職の幹部検察官として実名告発しようという「罪」だ。検察には捜査上の必要から「調査活動費」という名目の予算が計上されている。それを偽造領収書を使って現金に換え、事務方がプールして幹部検察官の遊興費や接待、ゴルフ代などに使っていた。有印私文書偽造・同行使、公金横領である。

 三井さんの告発動機は「正義」ではない。人事で冷遇されたことの不満という、きわめて人間臭い、わかりやすいものだった。調査活動費が裏金に回されていることは、当時の検察関係者なら、誰もが知っていることだった。原資はもちろん税金である。世の不正を取り締まる検察が、組織的な犯罪を犯していた。それを、現職の幹部検察官が告発しようというのである。検察には、なりふりかまっている余裕はなかった。微罪でもなんでもいいから、とにかく「しょっぴく」必要があった。

 当日は、鳥越俊太郎さんがテレビ朝日のクルーを連れて大阪に先乗りし、三井さんの告白をビデオに収める手はずになっていた。ぼくも、新幹線で合流する予定だった。その車内の電光ニュースで、三井さんの逮捕を知った。「そう来たか」と思った瞬間、体中の毛穴がキュッと縮み上がるのがわかった。

 でも、そこまでするか? いや、やるのである。

「微罪」で逮捕してから「罪」を探す。検察リークの構図も今回とまったく同じだった。新聞報道を通じて「大悪人」三井がつくり上げられる。事前に三井さんと接触していた週刊朝日や週刊文春などの週刊誌がいくら「これは口封じ逮捕だ!」「本当の罪は検察の裏金にある」といった趣旨の記事を書こうと、リークに乗った新聞報道にかき消される。

 そして、最終的に検察がつくり上げた「罪」は、「贈収賄」と「公務員職権乱用罪」だった。ちなみに、収賄の額は約30万円。暴力団組員と飲みに行って、おごってもらったということだった。

 確かに三井さんは、しょうもないおっさんだ。酒に目がなく、飲むとヘベレケになり、おいたを始める。あれで、高検の公安部長がよく務まっていたなと思う。暴力団員とのつき合いもあった。三井さんは「情報源のひとつだ」と言い訳していたが、実際、どんなつき合いなのかはわからない。きわめて脇の甘い、だらしない検察官だったことは間違いない。ただ、そのだらしなさと「犯罪」に問えるかどうかはまったく別の話なのだ。

 心ある検察関係者は、三井環事件は検察にとって大きな汚点だったと思っている。今回の小沢秘書逮捕も、それに近い。

 ただ、三井さんを排除しようとした検察の「動機」ははっきりしていて、わかりやすかったが、今回の「動機」はまだよく見えない。週刊朝日3月20日号の上杉隆論文と3月27日号の特集「検察が小沢政権と絶対に潰したかったわけ」で現段階で言えることを論証したが、まだ裏がありそうだ。

いずれにしても秘書ではなく、小沢氏自身を排除し、評判を落とすことが目的だったことは推認できる。あれだけリーク情報が新聞に載れば、世間は贈収賄などの「大疑獄事件」だと思うだろう。だが、いまのところ容疑は政治資金規正法違反に過ぎない。そこで目下最大の関心事は、検察がつじつま合わせにどこまで「罪」をつくってくるか? だ。 先週は「職務権限がないから贈収賄はむずかしそうだ」「ならば、あっせん利得じゃないか?」といった情報が流れていたが、今週は「あっせん利得もむずかしいみたいだ」「だったら談合罪がある」といった話にトーンダウンしている。リークもどうやらネタ切れのようだ。

 現状の容疑での起訴は間違いない。それに、別の「罪」での再逮捕があるかどうか。週明け火曜日には明らかになる。

2009年3月17日

ガダルカナル化する検察捜査

桐蔭横浜大学法科大学院教授で、
コンプライアンス研究センター・センター長の郷原信郎さんが、
「日経ビジネスオンライン『ニュースを斬る』に寄稿しています。
大変参考になるので、
西松建設事件に関心のある人は読んでみてください。
題名は、
「『ガダルカナル』化する特捜捜査~『大本営発表』にまどわされてはならない~」

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090315/189047/?P=1

知っている人には釈迦に説法ですが、
郷原さんは、東京地検特捜部に在籍していたこともあり、
長崎地検の次席時代に自民党長崎県連の政治資金規正法事件を手掛けた、
政治資金規正法のプロ中のプロです。

郷原さんの論考を読むと、世の中の見え方が変わってきます。
新聞の見方も変わってきます。

このコンプライアンス研究センターでは、企業不祥事などがあると、
マスコミの記者等を対象にしたレクチャーを開催しています。

告白すれば、ぼくも「小沢秘書逮捕」の一報を聞いたとき、
状況も内容もよくわからず、とにかく特捜部が逮捕したんだから、
何か極悪なことをしたんだろう、と思い、
小沢さんも辞めないとまずいだろうなぁ~、と思ったクチです。
それが、たまたま郷原さんの「記者レク」を聞いて、
見方がガラリと変わりました。

こんな程度のことなら、起訴されても辞めたらまずいだろうなぁ、と。
それは二階さんや尾見さんや森喜朗さんら自民党の人たちも同じです。
だいたい、自民党の方は立件されてもいないのですから。

なんて、ぼくが書くより、
郷原さんの論文を読んでみてください。

2009年3月16日

西松建設事件 検察批判はつつしもう!

小沢一郎民主党代表の秘書の政治資金規正法違反捜査はいよいよ混迷を深めているように見える。すでに多くの専門家が指摘しているように、いまいわれている逮捕容疑は軽微な形式犯で、人ひとりの身柄を拘束(逮捕)するような事件ではない。検察OBや政界関係者の誰に聞いても、「なぜ、この時期に、あんな微罪で逮捕したのか?」と首をかしげる、異常な捜査であることは間違いない。

 もちろん、「政治とカネ」の問題はこれからも透明性を高める努力が必要なことは当然で、国民はそのための監視を怠ってはいけないし、さらに公共工事の受注に政治家の「口利き」があり、見返りに金銭授受があったとしたら、言語道断である。新聞やテレビのニュースを見る限り、さも大疑獄事件のように見えるが、ひとつひとつの記事を冷静に読むと、話はまだそこまでいっていない。

 とくに、ここ最近の報道を見ると、捜査の「異常さ」が際だってきた印象だ。

 まず、小沢氏の秘書である大久保隆規容疑者が事前の事情聴取もなく、いきなり逮捕されたことが明らかになった。いうまでもなく捜査の基本は任意である。任意の事情聴取で容疑が固まり、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるなど、身柄拘束の必要があると判断されて、初めて逮捕権が行使される。それが今回は、いきなり強制捜査、即逮捕だったという。
 当然、翌日の新聞1面トップにドーンと記事が載ることになる。

 新聞各紙に漆間発言が掲載され、「国策捜査」批判が強くなると、こんどはバランスを取るかのうように「二階疑惑」が急浮上する。二階報道では他をリードしている毎日新聞の見出しで見るとわかりやすい。「二階側も本格捜査へ」(8日)→「二階側、週内立件へ」(9日)→「二階氏側きょうにも聴取」(同夕刊)。報道は勇ましいが、いまだに立件されていない。

 小沢氏も二階氏も旧田中派の流れをくむ「同じ釜のメシを食った」政治家だ。典型的な「土建政治家」ともいわれている。その二人に揃って「疑惑」が浮上しているというのは、それなりに説得力がありそうに見える。新聞には「西の二階、東の小沢」なんて言葉も出ていて、わかりやすい。だが、政治資金規正法に詳しい検察OBに言わせると、二階氏関連の立件はかなり難しいといわれ、報道もいつの間にかトーンダウンしている。

 次いで、小沢氏が10日の民主党常任委員会で代表続投を表明すると、突然、「東北の業者一斉聴取」(12日付、朝日新聞)という情報が流れる。さらに驚いたのが、小沢氏の元秘書だった衆院議員の石川知裕氏が検察に参考人聴取されるという話が、事前にじゃんじゃん流されたことだ。新聞などにも「小沢元秘書 聴取へ」などと大見出しが出る。それだけで、かなり悪いことをした印象になる。

 3月14日付の「タハラ・インタラクティブ」で田原総一朗さんが〈小沢秘書逮捕に突っ走ってしまった検察が、後から新聞に情報を流すことでつじつま合わせをしているのではないかとさえ思える〉と指摘しているのは同感だ。

さらに検察は、ここへ来て地方の検察庁から応援検事を呼んだという。先の検察OBに言わせると、人事異動のあるこの時期に応援要請するというのはまったく常識ではあり得ない、という。一般の会社に当てはめても尋常ではない。

政治学者の岩井奉信さんは、週刊朝日の取材に今回のケースは「スピード違反でいきなり逮捕されたようなもの」だと解説してくれた。その例えを借りると、こういうことではないか。検察は、スピード違反で車を停めて、いきなり運転手(秘書)を逮捕してしまった。しかし、車を捜索すると中から何か不正なものが出てくるかもしれない。いや、少なくとも確証があって、逮捕したと考えるのが自然だ。しかし、確証はあくまでも検察側の「心証」で、実際に出てくるかどうかわからない(実際、まだ出ていない?)。もし、出れば大きなお手柄だが、出なければ大きな汚点となる。検察はいま、必死なはずだ。

しかし、果たしてそれでいいのか? と思う。

 捜査機関は普通、犯罪を認知してから捜査を始めるものだと思っていた。今回は、まず「小沢秘書逮捕」があり、後から「逮捕」に見合う「罪」を探しているという構図に見える。田原さんのいうように、まさにつじつま合わせだ。これから、さらに「やってしまったこと」のつじつまを合わせるため、何かやってくるかもしれない。

 考えてみると、「バランスを取るため」に「自民党の政治家も」というのも、いかにもつじつま合わせである。小沢氏の政治資金集めの方法が他の政治家と比べて明らかに悪質だという自信があるなら、堂々と小沢氏関連だけでやればいいと思う。まず、民主党に手を着けたら予想外の反発で、あわてて自民党にも、ではあまりに付け焼き刃だ。「特捜部が関心を持っている」と書かれるだけで、かなりのイメージダウンになる。

 それはさておき、昨日の神保町フォーラムで、田原さんが「政治資金規正法だけで起訴なら検察の敗北だ」と言っていた。プライドの高い検察は、そんな批判に耐えられないかもしれない。だから、あまり検察を批判しないほうがいいと最近思い始めた。「政治資金規正法だけなら敗北だ!」「敗北だ!」と言い続けると、敗北したくない検察がまた、つじつま合わせをやってくる可能性があるからだ。コワ。

2009年3月 9日

「小沢辞めろ」コールはマスコミの怠慢

週明けの新聞各紙の世論調査で、民主党の小沢一郎代表は辞めるべきだ、という意見が半数を超えていた。
さらに、小沢氏の記者会見の説明が、「納得できない」という意見が8割前後にのぼっていた。

これを受けて、民主党の党内までが揺れ始めたという。
曰く「小沢氏の秘書が起訴されたら、辞任は避けられないだろう」などなど…。

小沢氏の肩を持つわけではないが、日本人はもっと冷静になったほうがいい。
一般ピープルならまだしも、いやしくも立法府の構成員である国会議員までが、「起訴されたら……」とは、この人たちは刑事罰の仕組みや刑事訴訟法の精神を理解していないのだろうか。

近く裁判員制度が始まり、誰もが裁判員に選ばれる可能性があるのであえて言うが、小沢氏が民主党の代表を辞めたら、日本の民主主義は、ハッキリ言っておしまいだ。

知っている人にはまったく釈迦に説法だが、まず、「逮捕された人=犯人」ではない。

刑事捜査の原則は任意である。
証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合に限って、被疑者の身柄を拘束できる。これが逮捕だ。

しかし、この段階では、被疑者は捜査当局が罪を犯したと疑っているに存在に過ぎない。
逮捕された人、イコール犯人ではない。
新聞などでよく「捜査当局の調べによると……」と書かれているが、あれもすべてが事実であるとは限らない。
あくまでも、警察や検察など当局がそう思っているという程度の話なのだ。

さらに言えば、起訴された被告人というのも、検察官が処罰に値すると思っている人に過ぎない。
裁判で有罪が確定するまでの間は、いわゆる「無罪推定」なのである。

法廷で検察官が縷々述べる被告人の罪状も、あくまでも検察側の「主張」であって事実ではない。
捜査員も検察官も人間だから、思いこみや間違いもある。
感情的になって、何かをやってしまうことだってある。
そのこと自体は非難できない。人間だから当たり前だ。

つまり、何が言いたいのかとい言えば、「秘書が起訴されたら、小沢氏は辞めるべきだ」という論調が、いかに非合理かということだ。

小沢氏は例の会見で、「(秘書が)起訴されることはないと信じている」と、なんともノー天気なことを言っていたが、これはあり得ない。
検察が捜査した事件なのだから、検察はメンツに掛けても必ず起訴する。
秘書が起訴をされたら、小沢氏は、「法廷で潔白を証明するよう(秘書は)努力するでしょう」と、淡々と述べればよいのだ。
起訴の段階では「無罪」なのだから、堂々としていればいい。

こんな当たり前のことを説明しなければならないのは、やはり、これまで日本のマスコミがずっと、

逮捕=犯人
起訴=有罪

というような報道をしてきたからだ、と自戒を込めてつくづく思う。

お恥ずかしい話だが、ぼくも駆け出しのころ、警察・検察のやっていることはすべて正義で、周辺から漏れてくる情報はまったく事実だと思っていた。
でも、この仕事を20年以上もやってると、警察も検察も人間の集まりだとつくづく思うようになる。

恣意的な捜査はもちろんあるし、証拠のでっち上げだってやる。
ズサンな捜査、思いこみ捜査、ウソやデタラメだってある。
そのくせやりにくい相手は取り締まらなかったりする。
そんなことも、ごく普通にある。
だから、ぼくは納税者の視点での監視が必要だと思うのだ。

その捜査、本当に税金をかける価値があるのか? と。

人事異動が近いから、ちょいちょいと被疑者をつかまえて、異動前にとっとと起訴してしまえば手柄になる。
野党第一党の党首なら「大金星」だ。
そう思っていたら、相手が思わぬ反発をしてきたので「けしからん」。
マスコミを通じて、どんどん悪性情報を流してしまえ。
検察を批判するような男を総理にしていはいけない!

そんな気持ちがどこかで働いていなかったか?

誤解しないで欲しいのは、検察官だって人間だから、出世欲もあれば性欲、物欲もある。
だから、いろんな感情があって仕方ないのだ。
それ自体を否定しているわけではない。

ただ、そういうことがあることを知っておくべきだと言いたいのだ。
それから、マスコミで働く一員として、こういうことをきちんと伝えていけなければならないと思う。
今回の事件を通じて、また改めて反省した。

検察は必ずしも正義ではない。
検察の言い分は「主張」であって事実ではない。
逮捕・起訴された人はイコール犯人ではない。
この当たり前の前提での報道を心がけないといけない。
それが、どれだけキチッとできているかが問われている。

釈迦に説法でした、すんません……。

2009年3月 8日

納税者の視点で検察の捜査を監視しないと

今回の捜査が「国策捜査」だとは思いませんが、あまりに世間の空気が読めていないことは間違いありません。

それが何より証拠には、ふつう、東京地検特捜部が政治家に手を着けようとすれば、世間は拍手喝采したものなのに、今回はそんな雰囲気ではありません。
新聞に「国策捜査」なんて文字まで踊る始末です。
少しでも知識のある人は、検察の捜査に疑いのまなざしを向けています。
(あくまで疑いですが……)

いまここで、民主党の小沢一郎代表の秘書を逮捕することが、どの程度、国民の利益になるのか。
国民がこれだけ日々の暮らしに苦労しているご時世ですから、
検察庁といえども、費用対効果について、きちんと説明する義務があると思います。

世の中にはたくさんの違法行為や悪事があって、それを取り締まるのが捜査当局の役割です。
しかし、数多ある悪事のすべてが取り締まれるわけではありません。
どれを取り締まるかは、当局の都合によります。

だとしたら、なぜその事件にあえて着手するのか、(逆に言えば、他の悪事を見逃すのか)きちんと説明しなければいけないと思うのです。
なぜなら、それには税金が使われるわけですから。

ぼくは以前から、納税者の視点で検察の捜査を監視すべきだと思っていて、いろいろなところで書いたり言ったりしてきました。
検察庁に限らず国の役所(霞が関)は、会社でいえば管理部門で、それ自体が何の生産も稼ぎもしない、いわゆるコストセンターです。

しかし、彼らには自らがコストセンターであるとの自覚がありません。
税金を投じた活動の効果がどれだけあがっているか、まったく検証されていないのです。
世の中、そんなお気楽な仕事をしているのは、霞が関しかありません。

今回の小沢秘書の政治資金規正法違反の摘発も、いま本当に税金を使ってやらなければならないことだったのか?
捜査にどれだけ費用を使って、その結果、どれだけの利益を国民もたらすのか、そういう観点で考えると、はなはだ疑問と言わざるを得ないのです。

民主党は、漆間巌官房副長官の発言を引き合いに出し、鬼の首を取ったように、「これは国策捜査だ」と息巻いているようですが、逮捕から今日までの経緯を見る限り、そんな上等なものか? との感想を抱きます。

現場の記者からあがってくる情報を聞いても、実態はもっとくだらない理由なような気がしてなりません。

3月5日付のNewsSpiralで二木さんが指摘されていたように、3月末の人事異動が目前に迫るなか、かっこうの「大捕物」になる予定だった事件の被疑者に自殺されるミスを犯し、「なんか他にネタないか?」と探したところ、「小沢代表の案件ありまっせ……」と、失地回復を狙ったのか、今回の捜査だったのは?
との疑いは確かに消えません。

あるいは、もっとくだらん事情かもしれません。
(検察側が何も説明しないので、疑いはどんどん膨らみます)

いずれにしても重要なのが、こういうことをきちんと検証して、それが税金を使うに値するものなのか、それをチェックする必要があるということです。
いままで何で誰もそれをやってこなかったのが不思議で仕方ありません。
システムがない以上、当面はメディアがそれを監視して、納税者である国民にお伝えする義務があるのではないかと考えます。

今回の事件では地方からも応援検事を呼び寄せているそうです。
その出張費や宿泊代に、いったいいくら使っているのでしょう。
それで、返す返すも、今回の違反摘発は税金を使うに値する捜査なのか?

これまで小沢代表以外の政治家が同じことをやった場合、政治資金収支報告書の修正で済ませてきました。
そのために支出される税金は、わずかな額だったと思います。
それが今回、東京地検特捜部を動かし、税金を使いまくっているのです。

それがもし、一部検事の功名心や出世欲のためだとしたら、とんでもないことだと思います。
まだ、政治的思惑や背景があったほうがマシかもしれませんね(爆)。
そんなふうに思わせないためにも、捜査の目的やめざす方向、そしていくら費用をかけているのか、捜査の結果、どのような利益をもたらすのか、法務・検察当局はきちんと説明しないとマズイですね。

Profile

山口一臣(やまぐち・かずおみ)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。ゴルフダイジェスト社勤務を経て、89年朝日新聞社入社。高校時代から愛読していた『朝日ジャーナル』編集部に配属され、あこがれの「ファディッシュ考現学」(田中康夫)を担当するも3年で休刊の憂き目に。『週刊朝日』へ異動し、事件&事件の日々を送る。その後、何を血迷ったのか広島の公教育問題で日教組を徹底批判し、「朝日なのに産経と論調が同じ」と物議をかもす。9.11テロ直後のニューヨーク、パキスタンを取材。米軍によるアフガニスタン市民への誤爆を伝えまくる。デスク時代に北朝鮮拉致被害者関連の記事で下手を打ち、『週刊文春』に叩かれ、副編集長を解任、更迭される(停職10日の処分付き)。その後、広報部へ配属されるが約半年でお払い箱。百科編集部で子ども向け週刊科学誌『かがくる』の創刊などに携わり、05年5月から再び副編集長、同年11月から、『週刊朝日』第41代編集長に。85年にわたる『週刊朝日』の歴史で中途採用者が編集長になるのは、これが初めて。

-----<出演>-----

『スーパーモーニング』
(テレビ朝日系、8:00~)

『愛川欽也 パックインジャーナル』
(朝日ニュースター、毎月第1土曜)

『大竹まこと ゴールデンラジオ』
(文化放送、毎週火曜・5月8日から)

『週刊朝日編集長登場』
(asahi.ポッドキャスト)

BookMarks

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