タミフル疑惑3
タミフル疑惑の話がどんどん大きくなって、ついに「因果関係なし」の報告書をまとめた研究班の教授が今後の研究から除外されることになりました。
これでようやく利害関係のない人たちでの調査が始まることになるのだと思います。
取材の過程でいろいろ勉強すると、タミフルは確かに画期的な薬のようです。ただ、日本では安易に処方し過ぎというか、使い方に問題があるというのが率直な感想です。どんな薬にも副作用があり、その副作用のリスクがあっても服用するメリットがある場合に、その薬を使えばいいわけです。こんなことお医者さんにとっては釈迦に説法でしょうが、なぜかインフルエンザになるとなんでもかんでもタミフル、という風潮があったのは事実でしょう。
製薬会社にとっても、一時的に売り上げが伸びるでしょうが、今回のような事態になると薬そのものにケチがついてしまうような気がします。
ところで、週刊朝日がなんでタミフル研究班の教授に中外製薬からカネが渡ってる事実をつかんだのか。その裏話をしようと思います。
実は、たまたま偶然、見つけたのでした(爆)。
そもそもの問題意識は、「病気の基準は誰が決めるのか」という事でした。
健康診断で、尿酸値や血糖値やコレステロール値などさまざまな数値が指摘され、ぼくのようのおじさん編集者はすっかり落ち込んでしまうのですが、この数値の決め方に着目しました。
つまり、正常値をはみ出た人はすなわち「異常」となるわけで、異常な値が出てしまった人が「病気」とされるわけです。
病気になったら、どうなるか?
そうです、病院に行って薬をもらうことになるでしょう。
つまり、この「正常値」の範囲によって、製薬会社が儲かったり、損したりする可能性があるわけです。
この仕組みに気づいた弊誌の担当記者が、「製薬会社と(正常値を決める)研究者の間に、少なからぬ癒着関係がある」
と、業界関係者から聞き込んできたことが、そもそものきっかけでした。
当然、当初は雲をつかむような話で、どうやって取材すればいいかもわかりません。
試行錯誤を重ねながら、全国の国公立大学の医学部の教室に製薬会社から流れているカネの実態を調べようということになりました。
もちろん、そんなことは表から行ってもなかなか教えてもらえません。
そこで軒並み「情報公開請求」を出したのです。
ところが出てくる書類は、例によって「黒塗り」ばかり。
そこで「異議申し立て」を繰り返すという作業を続けました。
地味で愚直な作業ですが、約1年半かかってだいぶ実態がわかってきました。
今回、報じたタミフル疑惑は、その一部だったというわけです。
最近は、こうした愚直な調査報道が減っているようで気になります。
地味な作業を延々と続けてくれた、担当記者やデスクには頭がさがる思いです。