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« 米中関係の深化に変化なし
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「核密約」調査は大きな一歩前進だが »

リコール問題で露呈したトヨタが失ったもの

トヨタのリコール問題は、豊田章男社長が出席した下院での公聴会に続き、3月2日、上院でも開催され、大きな峠を越したものと思われる。ここで峠という意味は、政治家やアメリカ・メディアによるトヨタたたきであり、国民の関心の高さである。しかし、これで問題がスムースに解決する方向に向かうとは限らない。全米各地では損害賠償を求める訴訟が数多く起きている。連邦大陪審はトヨタに資料提出を求めるなど、司法当局も動き出した。連邦捜査局(FBI)は、直接的な関係はないとしながらも、公聴会の開催とあわせて、トヨタとも関係の深い日系自動車部品メーカーを反トラスト法違反の疑いで捜査を開始した。今後も対処の仕方を間違えると、この問題は思わぬ方向に行きかねない。

振り返れば、過去にも品質問題では、食品偽装や三菱自動車のリコール隠し等、企業存続の危機に至った事例は数多くあった。さすがに品質重視のトヨタは、取引先が泣くほど品質管理の厳しさには定評があり、このような問題の対極に位置する企業だと思っていた。しかし期待は見事に裏切られた。ここには、他社事例はあくまで他社のことであって、その教訓を自らの企業経営に生かせないという、企業の本質的課題が浮き彫りになった。

今回のリコール問題は、日本の経済発展を支えた製造業、しかもそのトップに君臨し続けた「超優良企業」トヨタに対する信頼低下のみならず、透明性の欠如等、もともと日本にあったマイナス面の印象を強めたことは否めない。このリコール問題を前後して、米国品質調査(09年JDパワー・アソシエイツ)の評価では、韓国の現代自動車がトヨタを上回り、確実にシェアを伸ばしている。電機産業でも、韓国のサムスン電子が日本の得意としていた半導体や薄型テレビ等の家電製品で日本企業を圧倒している状況だ。まさに日本の製造業の衰退を象徴するようなトヨタのリコール問題ではあったが、ピンチはチャンスであり、いずれトヨタが消費者の信頼を回復し、再度「世界の自動車レース」をリードすることを期待したい。

今回のような大きなリコール問題に発展した背景には、「意図的な日本たたき」とまでは言わないまでも、「政治的」な要因があったことは間違いない。ここで言う「政治的」とは、社会は常に様々な利益、思惑、関心を持った人々の活動の集大成であり、物事は常に政治的なのであるという意味においてである。その中で、今回の問題は極めて「政治的」な度合いが高かったと言える。

リコール問題の根本的な背景には、やはり長期的なアメリカ企業(特に製造業)の衰退と共に、現在の深刻な雇用問題を含む経済情勢が大きく影響している。アメリカ国民は、日頃の生活を通じて強い苛立ちを感じており、それが強すぎた日本企業、トヨタに対して、激しい批判として吹き出た形となった。

特に今年は中間選挙の年である。特にオバマ政権の支持率は下がっており、ラフード運輸長官を先頭にここぞとばかり、厳しくトヨタを批判した。また経済危機等への対応で米国連邦議会に対する国民の支持は過去最低になっていたところ、この消費者の安全に関わるリコール問題は、政治家にとって与野党が対立せず、格好の攻撃材料となった。まさに公聴会は、政治家が有権者の信頼を少しでも獲得すべく「政治ショー化」し、メディアはさらにそれを囃したてるように「劇場型」にした。

ここ20年の間に、ビッグスリーは凋落、トヨタは躍進する日系自動車企業の先頭を走り、更に世界のトップ自動車会社に踊りでた。しかし日系自動車企業の車がどんなに品質が良く、どんなに現地雇用を生み出しても、そのブランドはあくまで外国企業の域を出ていない。特に政治家にとっては、トヨタの生産拠点や関連部品メーカー等がないかぎり、トヨタは叩く対象にすぎない。裾野の広い自動車産業の中で、ビッグスリーに関わった人々の鬱積した反感は、アメリカの大地にマグマのごとく深く溜まっていたのである。また多くの国民の間には、認めざるを得ない品質の高い自動車であっても、日本企業への潜在的な不快感が潜んでいたとしても不思議ではない。

現にビッグスリーに携わった雇用者数は、1970年に327万人いたが、2008年には255万人と、72万人、22%減り、この間にアメリカの人口は52%、約1億人増えている。(Moody's Economy.com及びUS Census Bureau)。UAW(全米自動車労組)の組合員も、多い時には150万人いたが、現在は50万人に減少した。この間、ビッグスリーの社会・経済に与えるインパクトは相対的に小さくなり、それを日本企業が埋め合わせ、そのことを快く思っていない人が増加したことも事実である。

今回の騒動でも、問題を大きく政治化させる原動力になったのは、メディアと共に労働組合の存在だと言われている。特に民主党政権において労働組合の影響力は絶大である。トヨタに限ったことではないが、歴史的に日系企業は「デトロイト」を避け、労組の弱い南部へ現地生産拠点を展開した。結果としてトヨタは、UAWによる生産拠点組織化の阻止に成功し、それが現地経営成功の一因だとされていた。そして昨年は、唯一組織化されていたGMとの合弁会社、NUMMI(カリフォルニア州)の閉鎖を発表し、UAWの怒りを買った。

UAWは未だに50万人の組合員を擁し、その上部団体であるAFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別労働組合会議)等と共に、現政権に対して極めて大きな影響力を持っている。今回もUAWは、トヨタ車の不買運動をNUMMIの閉鎖とからめて展開し、一方でUAWが全米30州程度で応援している政治家にトヨタのリコール問題追求で圧力をかけたとも言われている。これまでトヨタの米国自動車産業や労組への対応は大きな問題にもならなかったが、日頃の反感がこのような時に吹き出たとも言える。

今回のリコール問題でトヨタは高い代償を払うこととなった。トヨタは、徹底的なコスト削減をはかり、生産では「カイゼン」、「ジュストインタイム」等、所謂トヨタ生産方式を生み出し、効率的な経営で「トヨタ銀行」と言われるほど財務体質の強い企業となった。しかしこの徹底したコスト削減、経営効率の優先により、欠陥情報を隠蔽しがちになり、品質管理が低下する等、失ったものも大きかった。そしてトヨタ躍進の影で、会社の閉鎖を余儀なくされ、仕事を失うなど、負の影響を受けた多くの人々の存在があり、今回の問題では、経済の悪化で苛立つアメリカ社会の気持ちの現われともなった。トヨタは、目先の効率だけでは推し測れない、人間の活動の集大成である社会を相手にしていることも忘れてはならない。今回のリコール問題を教訓に、消費者の信頼を取り戻し、「やはり、さすがにトヨタだ」と言われて欲しいものだ。再度、トヨタ経営の原点に立ち返って欲しい。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

民主政権は何をやってるのかと、もどかしく思います。トヨタが収める法人税は、全体の1割を占めるといいます。国がもっと積極的にバックアップしても良いと思うのですが。現在の日本では、トヨタが国民の生活を支えていると言っても過言ではないのに

若林秀樹さん  

毎回格調高いご投稿に多謝申し上げます、然しながら、今回は・・・、
引用【「やはり、さすがにトヨタだ」と言われて欲しいものだ。再度、トヨタ経営の原点に立ち返って欲しい。】という情緒的感慨には同感ですが・・:

若林さんの「表面的なご経歴を観る限り!」、メーカーでの経験はお持ちのようですが、メーカー・トップが「品質の致命的不具合」に直面した(弁護的に表現を変える訳ではないが、「直面させられた」)場合の「深い苦悩」をご存じないのではないのでしょうか??!!

嘗てトヨタがGMとの合弁会社NUMMI設立を決断(決死の判断)するに至る英二氏の苦悩(三日三晩、不眠不休の苦悩が続いたと聞く)、その決断を引き継いだ章一郎氏の苦悩にも、現在の彰男氏の「経営者の重い苦悩」にも「想いを致す」ことをお薦めします、私は「超人的な四日四晩、不眠不休の苦悩が続いた」と確信します。
例えば、「品質の不具合」と「ユーザーの違和感」「不具合とは言えない違和感」の狭間で、経営者は悩むものです。この経営的悩みは、曖昧な定義しか存在しない「リコール」とは別次元の「高度な苦悩」であり、解決策を決断するには「其れなりの時間」は必須だと申し上げます。
日本人は、情緒的に「せっかち」過ぎる。
アメリカ人は、意図的に「せっかち」を造っている。
「善し悪し」は別として、現実として。

今回の騒動でトヨタ側の対応の拙さは、確かにあった。
けれど、私から見ると、アメリカの本音が垣間見えたと思う。
それに対して、今後トヨタを含め、アメリカに進出する・している日本企業の対応の模範になった意味で、逆にトヨタが得たものの方が大きいと思える。

これまでも、何度か日本企業に限らず、他国からの経済影響がアメリカ国内に多大な影響を与え始めると、一斉に保護主義(バッシング)をとる。これは、他の国でも見受けられるが、日本国内でこれほど大きな保護色を強めることは無い。「お人よし」と言われれば、反論できないのでないだろうか。

更に、私自身とすれば、アメリカに対して、以下の感を更に強めた。
まずは、対等な同盟国といっておきながら、一方では、日本は敗戦国であり、俺達の上を飛ぶなという意識が根底にあるのでないか。
原爆問題にしても、アメリカと日本では、真逆の世論が強いと思える。
去年に、オバマ氏の陛下に謁見した際も、お辞儀でアメリカ世論がにぎわった。アメリカと日本との人の付き合い間の差があるとは言え、郷に入れば郷に従う、その国の文化を尊重するのが礼儀であろう。
伺った見方をすれば、アメリカは世界のNO1であり、頂点にいるのだとの驕りでないだろうか?
排他的思考が強く、絶えず自分達が正義であり、他はすべて悪という考え方である。

ヨーロッパや中国など他の国の対応と比べて余りにも過剰である。それ故、私自身はこうした思いを更に強くしたのです。

非は非として、認める事は良いが、日本政府は一体何をしているのだろう。
担当大臣、前原氏は何を思うのだろう。
総理大臣鳩ポッポは、日本人の「生きる」道を、どこに見ているのだろう。
会見で、トヨタの態度を攻めるのは良い。
しかし、その後何をしているのだろう。
アメリカ政府に対して、何らかのアプローチをしているのだろうか。こんな事をされ続けると、アメリカ国債を購入し続ける事が出来なくなると、発信しているのだろうか。
日米安全保障にひびが入りかねないと、発信しているのだろうか。

トヨタは、日本のGDPの何%を引きずっていると思うのだろう。

若林様
こんにちは。ここにコメントされている方や、日本の新聞もこういう論調がありますが、「政府は何をしている」という言葉には私的には違和感があります。この事件を通じて、個人的には日本の企業は国や政府を背負わず、もっと逞しくアグレッシブになってほしいと思いました。市場は(人)最終的には、自らが欲するものを求めます。それは単に安価なものを求めるのではなく、その価値に見合い、必要なものを人は欲するという事だと思いす。
>ここ20年の間に、ビッグスリーは凋落、トヨタは躍進する日系自動車企業の先頭を走り、更に世界のトップ自動車会社に踊りでた。
若林さん、これは国が、国民がトヨタを後押ししからではないと思います。世界の市場がこの20年トヨタの車を欲しただけなのでしょうか?しかし、現在では状況が変わってきたというのが、情緒を排した現実だと言う事以外何者でもないわけで、企業は自らの利益と価値の向上を求め世界の市場で戦い抜くべきだと思います。今回の公聴会の政治ショーはむしろ私は、アメリカが今日の衰退を招いた根本的な原因であり、こういう問題の捉え方しか出来ないアメリカ国民の民度を露呈したと言っても過言ではないと思いました。なぜ、この状況を日本人がこれほどまでにおびえるのか私には全く理解が出来ません。全ての日本企業はもっと身軽になって、精神的な縛りを解き放った方が良いと思う。ウィンドウズですらヨーロッパで独禁法で批判された時戦い抜きました。国の保護を受けるような会社はいずれは衰退する運命です。一企業が国を背負うような日本人的感覚を私たちが脱却しなければ、産業自体が衰退してしまうような気がしてなりません。政治介入や政治的なものを気にする必要など私は無いと思います。企業や商品の価値を判断し、守るのはあくまでも、消費者でありユーザーなのだから。

堀口雪文さん | 2010年3月 4日 10:26  

お久し振りです、お元気でしたか?

1.ご趣旨に概ね同感します。
特に、後段引用【国の保護を受けるような会社はいずれは衰退する運命です。】の原理的認識には強く共鳴します。流石、堀口さん!!と(笑)

2.但し仔細なことですが・・:
1)後段引用【この状況を日本人がこれほどまでにおびえるのか】は、私には理解できます、大局観を持てない、自分への高い誇りが持てない国民性が原因しているのだろうと。泰然自若たるを妨げる「視野が、狭く、浅く、短い」や「大海を知らない」に通じるものとして。蛇足を付せば、同じ日本人として(あっ、もとへ!!私はもう日本人は止めたのでした(笑))是認できるものではない。

2)前段引用【日本の企業は国や政府を背負わず、もっと逞しくアグレッシブになってほしいと思いました。】も、事業家・経営者が「自己に向けたもの」として当然の原理であり覚悟であり志だと確信します。
但し、大義のある戦いには、必ず勝たなければいけません。
イ)事態が困難であれば有る程に、 ロ)または相手(此処ではアメリカの業界や市場)が或る種の特別な武器(此処では政治)を使って来るような場合には、限定的にEqualFootingを整えるために、企業が単独で戦うことは避けなければならないという側面も認められるべきだと思います。
これは、DoubleStandardではなく二重思考・複眼で観る複雑思考、原理ではなく現実論として。

トヨタ自身の問題で相変わらず米頼みの日本ということ。

何年か前に熊本県で消費者からトヨタの車の欠陥を訴えたが、警察は取り上げなかった。
恐らく経団連会長会社として何らかの力が働いたのかと考えていた、相当な隠ぺい体質であったのだ。
他の県にもあったのであろう。

こんな甘やかしをした国やマスコミに問題があるのである。
日本には色んな権力が作られる、司会者の紳助は暴力事件を起こそうが、暴言を吐こうが、非難されることはない、吉本興業にはテレビ局は逆らわない。
それと同じである。他国は知らないが。
トヨタも国内では巨大権力者として君臨していたのが、今回アメリカの策略に引っ掛かっただけだ。
初期から改善していればこんな問題にアメリカがしようとしてもできなかった。
国がどうこういう問題ではない。
トヨタの自業自得である。
トヨタ自身も奥田や張といった元社長に頼らず、現社長が真正面から取り組んでいるということは、高い授業料を払ってもそういった企業体質を作った過去の経営陣との決別であるとみる。
今後トヨタは政治に関わることはないだろう。
企業としての原点に回帰したのである。
田中氏の説ではないが、アメリカのように利害関係者が大きな声を上げるのは当然であり、それに政治家が答えるのも当たり前である。
当たり前を前提としてアメリカに進出しているのであり、中国進出も同様である。
この論は前文が抜けており、つまらない論である。
いたずらに日本を被害者にしているだけで情けない文章である。
もうトヨタや権力者に媚びるのは辞めよう。


(日本人を止めた)無国籍人 様

トヨタへの思いを込めたコメントありがとうございます。

私は、これまで熱心な製造業サポーターであり、今後の日本も製造業が頑張るしかないと思っている人間です。だからこそ発言も自ずと厳しくなります。
NUMMIは、実際に見学したことがあり、素晴らしく、印象深い工場でした。

若林秀樹さん | 2010年3月 4日 20:16
(私は、何方様に拠らず、特定の方々に対して「様、さま」は使いませんのでご了承ください。)

思いもしないご返答を、有り難うございました。

1.事業や経営を知らない「日本のジャーナリスト達」が、日本メーカーの中では別格中の別格であるトヨタの経営陣を評して、ああだ! こうだ!と言い募っている喧騒を苦々しく感じている次第です。その苦々しい気分が、今回の若林さんのご寄稿の行間を読み間違えたのかもしれませんね。

2.翻って、「トヨタの大野耐一流品質管理」に緩みが出ているのは間違いないでしょう。意欲的な事業成長計画がその原因を造った、日本人の特質の劣化と非日本人の低レベルが複合的に嘗てのトヨタ流品質意識に劣化を起こしたなどなど、彰男社長が遣るべきことは多様で困難なことです。

今後とも、若林さんのご投稿に期待いたします。


追伸:引用【トヨタへの思いを込めたコメント】は、真に私の心情です。嘗て付き合ったトヨタ海外子会社の経営層と本社側CounterPart達の例外なく全員が「しっかりした横綱相撲」を取る立派なビジネスマン達であったという事情も是あり・・。
草々

ここも参考になるでしょう。
ちなみに、うちの会社の筆頭株主はトヨタです。はぁ。


http://news.livedoor.com/article/detail/4591325/

http://www.mynewsjapan.com/blog/masa/107/show

若林秀樹さん | 2010年3月 4日 20:16 製造業が頑張る

度々になりますが、論点が違いますので別稿にしました。
引用【今後の日本も製造業が頑張るしかないと思っている人間です。】

1.この点には私も100%同感です。日本人の性癖などを考えれば、また日本人の産業上の「誇りの在り処」が「ものづくり」にあることを踏まえれば、日本が再び世界に羽ばたくには「製造業の再生しかない」という脈絡で・・。
其処で次なる課題は、「頑張る」について。日本が再び世界に羽ばたくには、「製造業が、どの部分(whatまたはwhich)で、どのように(how)、頑張れば成果に結び付き効果的なのか?」となります。

2.私見では、此のTheJournalの何処かでも披露していますが、製造業を第2次産業から第2.5産業へ脱皮させることだと考えています。日本が誇る「ものづくりのノウハウ」に、お客様ユーザーに喜んで貰うために「コンテンツ(Virtualに限らない、Analogな気配りなどを含む)で勝負する」ことを大命題とする「第3次産業の優良なSpirits」を融合させて出来上がる新産業のイメージです。この新産業は斬新なものではなく既に一部が存在していますが、膨大な消費市場と需要が未だ開拓されずに眠っている筈(確信に近い仮説です)だと。
具体例は、嘗てのソニーのWalkman、任天堂の一連のゲーム機、近い処でAppleのiPod。iPodは第3次産業工程(着想・企画・開発など)をアメリカで行い第2次産業工程をアジアなどに委ねたが、日本はこれらを一貫して完成させる。

3.「第2.5産業」などとインパクトの無い表現をしていますが、両産業が結合して全く新しいものに進化させるとダイナミックに考えれば、「第5次産業」と呼べるかもしれません。第4次産業が金融を含めて知的集積度の高いと定義すれば、それは現場的要素を排除してVirtualまたは机上論に偏っており、先般の経済危機の原因となったこともあり最先端産業としての信頼と期待に傷が入ったというと言い過ぎかもしれませんが・・。
何れにせよ、創造的な「新しい未来産業」の出現が一層強く待ち望まれているという私の仮説に繋がって行きます。

4.当然ながら、日本人の旧来型の「ものづくり」も変質することが不可欠になるでしょう。例えば、熟練工個人や特定組織に埋没している「暗黙知」を徹底的に解析して「形式知」に変貌させることは当然のこととなる。その反面で、結果として旧来型の「ものづくりの誇り」が消滅することになったとしても・・、「ものづくりの誇り」も時代と共に進化することが不可欠だということになる。
「誇り」の脈絡で横道に外れれば・・、日本農業が活性化されるには、「農業者の誇り」も進化する必要が有るのだろうとも・・。

(日本人を止めていない)無国籍人さま
日本の進むべき方向として、無国籍人さんのご意見、ご見識に120%賛同します。
今ここで持論を展開するつもりはありませんが、日本が元気になるためには、新たな製造業の育成に向けた国民的なコンセンサスが必要です。改めて稿を起こしたいと思っています。貴重なご意見ありがとうございました。

若林秀樹さん | 2010年3月 5日 18:54 
(若林さんも、無国籍人「さん」でお願いします。Mr./Ms.の感覚です。)

   「国民的なコンセンサス」
引用【日本が元気になるためには、新たな製造業の育成に向けた国民的なコンセンサスが必要です。】

ううううんんん・・、若林さんを相手に言葉尻を云々することは全く本意に反するのですが、「言葉尻」ではないと信じて・・(笑):
1.私は、この経済的事業的(「政治ではない」の意)な重大事には、【国民的なコンセンサス】は全く必要がない、というより【国民的なコンセンサス】を求めることは時間の浪費にしかならず、【コンセンサス】が出来上がらずに混沌が残るだけで前進しないと、経験的に確信しています。
「戦略」という表現をすれば(此処での論点は、真にこの表現に値すると思っています)、
1) 誰か特定の少数のリーダーが夫々に、
2) 経済界の片隅で、
3) 高度の洞察力と論理と情緒(左脳7と右脳3)を持って、
4) かつ判断責任は勿論結果責任の全てを背負う志と覚悟を持って、
5) 一歩を踏み出し、刻苦勉励して、
6) 成功事例という成果を造り出せば、
7) 一般国民は、自ずからに【国民的なコンセンサス】を造り出す、成功事例に参加すれば自ずからに元気になって行く、と確信します。
8) 乱暴に聞こえるでしょうが、私見では過去20年間と現時点の日本が該当しているのですが、経済界・産業界がParadigmShiftの乱世に直面した場合に重要なのは、専制君主的な「賢明な独断力(独自に決断する力)と強力な突破力」だと思っています。平和で平穏な時期の「平等な民主主義」は勿論「公平な民主主義」(引っくるめて「コンセンサスへの仕組み))は、時に決定と実行のスピードを損ない時に停滞を呼び込むだけであって有害でしかない。私が時により引用しますW.Churchillの複雑な言「民主主義は史上最悪の政治システム」は、この脈絡では非常に的確適切だと読めます。

2.上記の第8)項は、やや柔和な顔をしてバランスを取る必要が有りますが、政治にも適合する考え方だと思います。無血革命などと言われながら、新政権の最高権力者がが此の乱世に採用している手法が、「平和時の民主主義の手法」では、何かが画期的に変わる訳はない・・、という認識に通じて行きます。

追伸:
AA. 私は、乱世では、Lester C. Thurow氏の著書を含めて格言【Fortune Favors the Bold】の信者です。私は、今後の将来に、経済的に「乱世」でない時期はあるのかなあ?と懐疑的です。
BB.私の名前は、引き続き「(日本人を止めた)無国籍人」です(笑)。

>人間の活動の集大成である社会を相手にしていることも忘れてはならない。
トヨタのことはさて置き、
これはアメリカという国にこそ
言うべき言葉なのではなかろうか。

<トヨタは蘇るか?>

永年、自動車会社に勤務し、後半生は生産管理のコンサルタントをしてきた経験から、今回のトヨタの騒動を振り返ってみる。

トヨタ生産管理システムというのは我々コンサルタントがお手本にするくらい実によくできたシステムだが、日本人の器用さという暗黙知に依拠するところが多い。

例えばジャストインタイムの肝は「シングル段取り」という身体の器用さや器具の工夫で段取り時間を局限化する方法だが、厳しい訓練と作業員の資質によって成立する面もある。

このスキルはトヨタと他自動車会社とでは天と地ほどの差がある。そのような卓越したスキルを海外の労働者に要求できるのか甚だ疑問で、トヨタが他自動車会社に比べ海外展開に消極的であった原因の1つでもあろう。

しかし国内需要の低迷で海外進出は避けられなくなり、トヨタも後れを取り戻すために一挙に海外展開をしたが、問題は優秀な人材が海外に流れ、国内の生産、品質管理体制が疎かになっていった点である。

信じられないことだが、例えばジャストインタイムの重要な管理技術の1つであるTPM(全社的保全管理)の肝になる設備の日常点検すら忙しくてここ10年近く実施していなかったこともある。

またトヨタの役員が今回のブレーキの問題でも「感覚的に利きが遅れるが踏み込めば問題ない」等の発言をしていたが、こんな発言を昔の役員が聞いたら烈火のごとく怒っただろうなと思わせる無責任発言だ。

どうやらトヨタは現場だけではなく役員の質も低下したのかもしれない。いずれにしろ、トヨタの社長が公聴会で証言したように、品質問題を起こした原因は「海外展開などによる急速な成長」にあることは間違いない。

安全や品質管理の手本といわれたトヨタが海外展開する中で、従来、トヨタの強さを支えてきた卓越した生産管理システムを再構築できるのか、それとも他社と差別化できず普通の自動車会社になるのか、今その分岐点にいるのかもしれない。

熱烈な自民党支持者さん | 2010年3月 7日 12:48

初めまして。
1.そうだったんですか、PenNameから受ける私のイメージとは掛け離れたご経歴で一寸驚きました。
他方、過去の書き込みが理路整然とされていることに思いを致せば、「成程ね」と得心もします。

2.此処でお書き戴いた実情を生産管理のプロかお知らせ頂くことは、非常に価値のあることだと思い敬意を表します。
私の外部から観た仮説が裏付けられた部分もあり、御礼申し上げます。

若林秀樹さん 

1. 私の前々稿(2010年3月 5日 12:54)に関連して、今日(3/7)の日経朝刊に偶々Apple社かつ自動車産業関連の興味深い記事2件を見つけましたので、ご紹介します。
1) P1の連載「企業の強さ」で、「iPodモデル」という捉え方がある由、引用【・・・日産。描くのは「iPod」モデルともいえる手法だ。ハードとソフトの融合で圧倒的な稼ぐ力を手にしたアップル。その姿が日産を動かす。】
2) P5見出し【「ITと連携を」トヨタに指摘 アップル共同創業者】という記事。
リコール騒動の真っ只中とはいえ、Apple社と雖も、引用【「パソコン同様に今や大半の機器の問題はソフトにある」と指摘、トヨタにIT業界との連携やソフト技術力を強化するように暗に求め】られては、トヨタの技術開発陣は怒り狂っているのではないでしょうか(笑)。

2. 「次世代の日本の製造業」を論じる場合に、二つの記事が自動車産業に集中する点と「コンテンツ」の要素が皆無という点で、私には「一寸、戴けない」のですが・・。
まあ、「次世代」までの繋ぎとしての「明日の自動車産業」として読めば示唆的だと考えた次第です。

重ねて、引用【今ここで持論を展開するつもりはありませんが、・・・改めて稿を起こしたいと思っています】と仰る「稿」を期待してお待ち致します。

イギリスの新聞記事に、トヨタのリコール問題に関し「日本は個人の利益よりも企業の利益を優先する文化」とありました。人の命に関わる問題が発生したにも関わらず、企業擁護に傾向する日本人、ということです。
私はその通りだと思います。
政府が日本経済のために影で何らかの援護をする・しないの是非は別として、個人レベルにおいてトヨタを擁護する意見があまりにも多いと思います。
悪いものは悪いと主張し、認め、改善してこそ、長期的発展が望めると思います。

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Profile

若林秀樹(わかばやし・ひでき)

-----<経歴>-----

1954年東京生れ。
1976年早稲田大学商学部卒業。
1979年ミシガン州立大学院農学部修士課程終了。
現在、08年3月からワシントンにある政策シンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)の客員研究員。
80年からヤマハ(株)勤務、労組役員を経て93年からワシントンの日本大使館1等書記官として政府開発援助(ODA)と日米協力を担当し米国際開発庁(USAID)から表彰を受ける。帰国後は電機総研副所長を務め、01年に民主党比例区で参議院議員に初当選。在職中は「次の内閣」経済産業大臣・財務副大臣、国際局副局長を歴任。さらにイラク、シリア、イラン等を訪問し安全保障、復興支援、核問題等幅広く国際問題に取り組む。08年はCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員として活動し、09年1月より非常勤客員研究員。現在、(財)日本国際フォーラム常勤参与・主任研究員。

BookMarks

-----<著書>-----


『希望立国、ニッポン15の突破口』
2006年9月、日本評論社



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