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リコール問題で露呈したトヨタが失ったもの »

米中関係の深化に変化なし

米中間の軋轢を懸念する声が高まっているが、心配は無用である。確かに、その関係の冷え込みを感じさせる事象が続き、これまでにない変化が両国に見られるが、結論として米中関係の深化という大きな流れは一向に変わらないであろう。もちろん表面的には「亀裂」を感じさせるような言動は今後とも続くものと思われる。しかし両国共に引き際や越えてはならない一線はわかっており、「冷え込んだ関係」はやがて収束に向かうものと思われる。ただ一点だけ気になるとすれば、中国の国内世論、特に排他的になりがちなネット世論の動向である。経済発展で自信をつけつつある国民の民族意識に火がつき、胡錦濤政権がその勢いを収拾できず、その動向によって国内政治が影響されるかもしれない。歴史を遡れば、政権は偏狭な国家意識に火がついた国民に引きずられ、戦争を起こした例は少なくないのである。

オバマ政権は政権発足以降、チベット等での人権抑圧に沈黙するなど、中国への配慮を最大限示し、「米中蜜月時代」をアピールしていた。しかしオバマ大統領自身の中国への姿勢が変わったのは、昨年12月、コペンハーゲンで開催されたCOP15(第15回気候変動枠組条約締約国会議)であると言われている(米シンクタンク筋)。オバマ氏は、中国が米国等の提案した「国際機関による削減行動の検証」を拒否し、議定書策定に向けた中国の非協力的な態度に嫌気がさしたようだ。もちろん人権問題から目をそらすことは民主党にとって命取りになる。また支持率の低迷に悩むオバマ政権は、本年秋の中間選挙を控え、保守層に対しても中国への毅然とした態度を示す必要があり、クリントン国務長官等の発言にも変化が見られるようになった。

もちろん中国にとっては、チベットやウイグル地区等での少数民族問題、言論の自由等に関する人権問題、そして台湾への支援は、絶対に黙っていられない「国内問題」である。米国といえども、これらの問題に関するあからさまな行動をとれば、中国は少なくとも表面的には批判せざるをえない。しかし中国は、米国の台湾への武器売却問題で、関与する米企業に制裁を科すと言いながら、未だに企業名や制裁の内容を発表していない。またダライ・ラマ14世との会談についても、中国は「強い不満と断固とした反対」を表明したにすぎない。ダライ・ラマ氏との会談は、米国だけではなく、ドイツやフラン等の主要国も行っており、中国はその都度、お決まりの批判をするが、その後、悪化した関係を引きずることはない。特に仏・中関係は一時的にかなり悪化したと言われたが、サルコジ大統領は今春、上海を訪問することを発表し、中国外相は、大統領との会談で、その訪問を喜ばしい(delighted)と発言した(ニューズ・ウィーク誌)。 

国際政治は、国内政治の延長線上にある。中国は今後も自己主張を益々強め、米中共に表面的には軋轢を感じさせるような言動を続けるであろう。しかし米中はどちらもお互いの協力なくしては経済も、外交もなりたたないことを知っている。どこで矛先を収めるのか、国内世論の動向を見ながら、その機会を見極めることになろう。米中間の大きな流れを見極めず、この機に乗じて、日本が中国に擦り寄るような態度を取れば、米国のみならず、中国にも馬鹿にされるだけである。ダライ・ラマ14世は、この6月に来日するが、これまで会談した日本の首相は大平正芳氏のみである。中国との関係を重視する鳩山政権がダライ・ラマ14世と会談するとは思えないが、少数民族にも「友愛精神」は発揮されるべきである。本来は日本の毅然とした外交姿勢と共に、ダライ・ラマ氏と会談しても悪化しないような日中関係の構築が望まれる。

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基本的には若林氏の指摘は正しいと思う。

>米中間の軋轢を懸念する声が高まっているが、心配は無用である。確かに、その関係の冷え込みを感じさせる事象が続き、これまでにない変化が両国に見られるが、結論として米中関係の深化という大きな流れは一向に変わらないであろう。

ただし、両国が今正面からぶつかり合うことの負担を考えてそうであるだけであり、アメリカは国内の経済不振、アフガニスタン、イラク、イラン、テロ対策など方々に手を出しすぎ、いま中国と事を構えることは出来ないだろうし、中国も後述するような理由でアメリカと本当に対立、衝突をするわけには行かない。両国の対立を避ける理由はそれぞれ違うが、結果として両国の思いは同じだから、軋轢が無制限に高まることはないと考えられる。

>しかし両国共に引き際や越えてはならない一線はわかっており、「冷え込んだ関係」はやがて収束に向かうものと思われる。ただ一点だけ気になるとすれば、中国の国内世論、特に排他的になりがちなネット世論の動向である。経済発展で自信をつけつつある国民の民族意識に火がつき、胡錦濤政権がその勢いを収拾できず、その動向によって国内政治が影響されるかもしれない。歴史を遡れば、政権は偏狭な国家意識に火がついた国民に引きずられ、戦争を起こした例は少なくないのである。

ただ、中国に於いては、例え米国に妥協したくとも、中国がアメリカに匹敵する大国になったかのような宣伝を繰り返してきた結果、それしか知らされていない中華思想に凝り固まった中国国民の手前、弱腰の姿勢は見せられない。

ここにも書いてあるが、かつて政府が国民を洗脳し、その国民が盲目的に政府をたきつけ引っ込みがつかなくなり戦争になるケースは世界中で繰り返されている。また、アメリカなどは、国内をまとめるために、政権の人気が落ちると戦争をしてきた国だが、そのために危機感をあおり国民を扇動して戦争気運を盛り上げ開戦する方法を常に採ってきた。

中国は言わずもがなだ。政府が外国に弱腰の姿勢を見せ国民の怒りを買い押さえきれなくなれば政府は崩壊し、民主国家と違い指導層は蓄えた財産を失い、それどころか生命さえ危険にさらされる。ただでさえ、国内での腐敗、格差を抑えるのに手一杯なのだ。とうてい、国民の怒りをこれ以上買うアメリカや日本に妥協の姿勢は見せられない。

中国の指導層としてもアメリカと戦争をすれば到底勝ち目がないことは知っている。しかし、中国の経済発展に天にも昇る気で居る国民はそんなことは知らない。アメリカが理不尽なら懲らしめてやるべきだと政府をたきつける事もあり得る。そして、誰も望まない戦争になる。むろん、これは非常に小さい可能性だが、若林氏も指摘するように、世界中で繰り返されてきた悲劇であり、米中間で絶対に無いと断言は出来ない。

それに、中国人の多く、それから日本や世界の一部の人間が言うように、中国がアメリカと世界を二分して支配する能力など全くない。精々、アメリカが中国を口実に、つまり傀儡にして単独世界支配をたくらみ、そこに中国の意志もあるかのように中国の自尊心を満足させ実利を取る可能性ならあるかも知れない。ただ民主党ならまんまとだまされるだろうが。

アメリカにしてみれば、これが世界の敵意をアメリカのみならず中国に向けさせながら思い通りに世界を牛耳る一番の得策だと思えるし、今のアメリカを観ているといかにもという気がする。なにしろ、アメリカは世界中から嫌われすぎ、クリントン女史も愛されるアメリカを約束しなければならないくらいなのだから。

>米中間の大きな流れを見極めず、この機に乗じて、日本が中国に擦り寄るような態度を取れば、米国のみならず、中国にも馬鹿にされるだけである。

これも、民主政権の無知、無神経を考えれば単なる杞憂では終わらない。現実にアメリカは日本に失望し、まともに相手が出来ないことはすでにオバマ氏はじめアメリカ政府の態度を観れば分かるし、微笑を絶やさないながら毒餃子、ガス田開発、尖閣諸島など一切日本に歩み寄る姿勢を見せなくなった中国も明確に日本をまともに相手にしていない。

両国とも、日本は大声で脅せば引っ込むことを知っているし、その感をますます強めただけのことだ。民主は異なる顔を両国に見せ、そして同じ態度を両国に取らせることになった。

>本来は日本の毅然とした外交姿勢と共に、ダライ・ラマ氏と会談しても悪化しないような日中関係の構築が望まれる。

むろん、民主にはそのような能力はない。そのような政策を扱える能力など欠片もない。

<小沢氏が心配する米中関係>

昨年、クリントン米国務長官が来日した際、小沢氏は同長官に次のような厳しい「中国論」を展開している。「中国問題がより大きな問題だと思う。中国のこれからの状態を非常に心配している。鄧小平さんが文化大革命の失敗を償うために市場主義を取り入れたのは大きな成果だったが、それは両刃の剣で市場主義と共産主義は相容れない。

必ずこの矛盾が表面化するだろう。従って日米にとって世界にとって最大の問題は『中国問題』だろう」。実は小沢氏はこの頃、講演会ではもっと過激な「中国論」を披露している。「中国はバブルが崩壊して共産党の腐敗は極度に進行している。軍部も非常に強くなっている。

そういう中国で今、景気後退で大量の失業者が出ており、各地でものすごい暴動が起きていると聞いている。抑えているけど、共産党政権というのはその基盤が揺らいでいると思っている。中国は非常に危ういと思う」。小沢氏はこのような苦言を中国共産党の幹部にも何度も述べているようだ。

ところで共産党腐敗の根源は中華帝国を目指す江沢民一派の上海閥や太子党、石油党であり、中国の民主化を進めたい胡錦濤政権の度々の取締りにもかかわらずいまだに強欲な共産主義者をのさばらせている。また胡錦濤国家主席は人民解放軍のトップ(軍事委員会主席)であるにもかかわらず軍は無断で勝手な行動をとることも度々あるようだ。

そこで胡錦濤は2012年の党大会に向け、小沢氏にも近い腹心の李克強を総書記に据えようと考えていたようだ。ところが2007年の党大会では江沢民一派で人民解放軍に近い習近平が李克強を押さえ総書記候補となった。習近平の勝利は既得利益擁護派すなわち改革への抵抗勢力の根強さを象徴的に示すものであった。

現時点で習近平の政治姿勢には不明な点も多い。もし2012年に米国で共和党右派の大統領が誕生すると、中国の不透明な国防予算の増大や少数民族の人権問題、経済・金融面などで米国と深刻な対立を生む恐れもある。また日本に対しても江沢民流の反日教育を強化するなど不安定要因も多い。どうやら小沢氏が心配する米中関係の課題はここら辺にあるのだろう。


若林氏の記事を疑うつもりはありませんが、このところ「トヨタ問題」をあえて避けておられるように感じています。

ようやく、日本でもマスコミに取り上げられ始めた。
そちらでは、これからまだ加熱するのか?収束に向かうのか?そうした内容であってもと、思っていただけに肩透かしを食らった気がします。

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Profile

若林秀樹(わかばやし・ひでき)

-----<経歴>-----

1954年東京生れ。
1976年早稲田大学商学部卒業。
1979年ミシガン州立大学院農学部修士課程終了。
現在、08年3月からワシントンにある政策シンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)の客員研究員。
80年からヤマハ(株)勤務、労組役員を経て93年からワシントンの日本大使館1等書記官として政府開発援助(ODA)と日米協力を担当し米国際開発庁(USAID)から表彰を受ける。帰国後は電機総研副所長を務め、01年に民主党比例区で参議院議員に初当選。在職中は「次の内閣」経済産業大臣・財務副大臣、国際局副局長を歴任。さらにイラク、シリア、イラン等を訪問し安全保障、復興支援、核問題等幅広く国際問題に取り組む。08年はCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員として活動し、09年1月より非常勤客員研究員。現在、(財)日本国際フォーラム常勤参与・主任研究員。

BookMarks

-----<著書>-----


『希望立国、ニッポン15の突破口』
2006年9月、日本評論社



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