Calendar

2010年2月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            

« 日米安保改定50周年(3)-日米同盟の矛盾に挑戦
メイン
ティーパーティ運動はアメリカ保守の逆襲か »

苦悩が続く日米「民主」政権

オバマ大統領、鳩山首相は、それぞれ就任後初となる「一般教書演説(1月27日)」、「施政方針演説(29日)」を行い、2010年の政策課題を国民に明らかにした。演説の中でオバマ氏は、「仕事」を23回、鳩山氏は「いのち」を24回連発、そこには両首脳が抱える共通した悩みがうかがえる。共に高い支持率の下で政権が船出したものの、内政、外政共に国民の期待に応えられず支持率が急降下。日米ともに財政赤字は過去最高を記録し、選挙公約の目玉政策の実現に暗雲が立ち込めている。本年は共に重要な「中間選挙」、「参議院議員選挙」を控え、民主党と、野党である共和党、自民党との対立が深まり、国民の目線とはかけ離れた次元での権力争いが続く。このままでは日米共に国際的地位の一層の低下は避けられない。

両首脳の演説の発言には、政権運営が順調に進んでいない苛立ちが感じられた。積年の課題である米の医療保険改革では、共和党が上院を通過した法案に反対し、政策的に両党の案は大きな差がないにもかかわらず(オバマ大統領)、不毛とも思われる醜い対立が続いている。議論が白熱すればするほど政党間にも国民の間にも亀裂が生まれ、法案の行方は益々不透明になってきた。日本では、「政治とカネ」の問題が争点となっている。もちろん事の重大さは理解できるものの、自民党はかつての民主党と同じように、その問題の追及にやっきになり、国家運営にとってもっと大切な経済・財政政策、外交・安全保障等は二の次のように見えてしまう。メディアも一緒になって「政治とカネ」で国民を煽り、一方で普天間基地移設問題では、民主党の現行合意案の変更や決定の先延ばしに関する発言をさんざん批判しながら、民主党が現行案の実施を暗にほのめかすと、沖縄県の民意を逆なでするものだとして、手の平を返したように酷評する。結局、メディアは政治に対する不信感を自ら増殖させ、混乱させている自覚がないとしか思えない。

何のために政治はあるのか。幕末思想家の横井小楠氏は、「国家の目的は民を安ずるにある」と言った。政治はこの国家の目的を果たすために存在する。この点に関して、今の民主的な政治体制が本当に効率的で望ましいシステムなのかどうか。また政治家は、この言葉を肝に銘じて本当に活動しているのかどうか、自戒の念を込めてため息をつく時がある。

かつてウィンストン・チャーチル英首相は、「実際のところ、民主制は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた、他のあらゆる政治形態を除けば、だが」と言った。つまり共産主義等の政治体制に民主主義が打ち勝ってきたことを逆説的に述べたものである。しかし2010年にチャーチルが生きていれば、違ったことを言ったかもしれない。今、一党独裁で言論の自由さえない中国は、世界経済を牽引し、国際政治にも大きな影響を与え始めている。共産主義ではないが、事実上の一党独裁国家であり、発展を続けるシンガポールも一例である。中国は、民主主義の手続きに時間がかかっている民主国家を横目に、必要な政策をスピーディ且つ強引に進め、金融危機をものともせず急成長を遂げている。このような中国やシンガポールは目指すべき国家のモデルになってはならないのだが、日米は、中国の政治・経済に依存した構造に陥っているのも現実である。

オバマは、演説の中で「国民は、選挙に明け暮れているような米政治にいらだっている」、「民主主義は時として、騒々しく、混乱し、複雑になる」と指摘し、一方で「(人気取りや選挙対策の為の政策を否定し)我々がここに存在する唯一の理由は、幾世代もの米国人がひるまず、成功が不確かであっても、必要であれば実行し、この国の夢の輝きを子供や孫たちのために保ち続けたおかげだ」と、「超党派での協力」と「変革の必要性」を訴えた。

日本もかつて自民党一党独裁政治と官僚システムによって高度成長を遂げ、その実態は今の中国と大差はなかった。しかし、その政治体制が行き詰ったからこそ政権交代が起きた事実を忘れてはならない。民主主義と定期的な政権交代こそが成熟した国家を発展させる基盤である。変革を進めようとすれば、出血を伴う痛みはつきものである。しかしそれが健康体になるための痛みがどうかを判断するのは、当事者である我々自身の責任である。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/6573

コメント (5)

■コメント投稿について編集部からのお願い

《THE JOURNAL》では、今後もこのコミュニティーを維持・発展させていくため、コメント投稿にルールを設けています。はじめて投稿される方は、投稿の前に下記のリンクの内容を必ずご確認ください。

http://www.the-journal.jp/contents/info/2009/07/post_31.html

ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

[日経ビジネス ONLINE  検察の 「暴発」 はあるのか (下) ] において, 郷原信郎氏が述べている説論を頭に入れながら, 若林秀樹氏の 「変革を進めようとすれば、 出血を伴う痛みはつきものである」 という論点を, 自覚して, 押さえておく必要があるかも知れない。

郷原信郎氏も危惧している [検察の 「暴走」 が成功し、「小沢VS検察」 が検察の勝利に終わ] る, という 「最悪のケースは」 二月三日正午過ぎ現在, どうやら免れるような形勢である。 それは喜ばしい限りだが, 小沢幹事長支持者ともども [小沢氏の側には, 検察に対して, 慎重な対応が求められる] に違いない。 [報復的に検察組織に介入したり、 支配をしようとする動きは、 検察の捜査権限を政治的に利用する悪しき前例を残すだけ] で, [小沢氏側がそのような動きを見せた場合には、 筆者 (郷原信郎) を含め、 今回の問題に関して, 検察の 「暴走」 を批判してきた多くの論者は、 一斉に小沢氏側を批判する立場に回ることになる] のは, 必然である。

郷原信郎氏は重ねて忠告している。「小沢氏は、刑事責任追及を免れた場合も、 今回の事件に関連して受けた様々な批判を、 真摯に謙虚に受け止め、 政治的、 社会的責任を明確にすることで, 国民の信頼を回復することに努めるべきだ」

民主党の支持者としても, 心しないといけない言葉だろう。 それにしても, この一年間の対東京地検特捜部との闘争は, 「出血を伴う痛み」 だった事には, 間違いはない。


<見えてきた?オバマの対日戦略>

昨年末までの金融危機問題や医療保険改革、アフガン増派で忙殺されていたオバマ政権が、やっと日本の米軍基地問題に関心を向け5月までに「新日米安保体制」を構築するため動き出した。現在、日米政府間で「新日米安保体制」の骨格作りと「普天間基地問題」をどうするかの調整が続いているようだ。

ところでオバマは昨年8月に最も信頼する側近のジョン・V・ルースを駐日米国大使に任命した。政権発足後、半年以上もたってからの人事だったため、日本に民主党政権が誕生することを確信してからの政治的任命とも言われた。また何故、外交経験の無いルースを任命したかについて様々な憶測が飛んだ。

国務省筋からの裏情報では、沖縄基地など防衛関連に対する国防総省や軍産複合体の活動実態やベールに包まれた防衛族の巨大利権を調査させるのに最先端技術や資金面に強いルースが最適だったからとも言われている。巨額財政赤字に悩むオバマ政権としては、コストのかかる海外軍事基地の統合や縮小は重要な政策課題でもあり、沖縄の海兵隊についても早急にグアムへ統合したいと考えている。

しかし問題は、共和党右派や国防総省、軍産複合体の巨大利権に手を突っ込めばとんでもない反発を食う恐れがある。そこでオバマは鳩山政権から5年間で4500億円のアフガン民生支援を引き出すことで軍産複合体をなだめようとしていたが、どうやら普天間基地の機能を各基地に分散させる「B案」で反対勢力と折り合いをつけたようだ。

「新日米安保体制」については、鳩山首相の持論である「駐留なき安保」が骨格になるようだが、米国の軍産複合体の手先である防衛族などの反対勢力の(国土防衛に穴が開くという)批判を考慮し一時封印するとしてきた。しかし「駐留なき安保」はオバマ政権にとって軍事戦略面やコスト面でもメリットになるため、水面下の政府間協議で検討は行われているようだ。

ところで昨日、米政府の代表としてキャンベル国務次官補が小沢氏と面会したようだが、恐らくオバマ政権の真意(B案の説明か?)を伝えにきたのではないだろうか。またこれだけメディアや自民党が騒ぎ立て、果ては岡田外相のKY発言にも係わらず鳩山首相が余裕を見せているのは、以上のような筋書きがオバマとの間で既に出来ているのかもしれない。

いずれにしろここ数日の状況を分析すると、軍産複合体の代理人であるリチャード・アーミテージやマイケル・グリーンらの影響力が少しずつ弱まってきた気配を確実に感じることができる。

アメリカにしても、日本にしても21世紀になり、新しい経済体制や政治体制、及び国家体制を見直さざる得ない時期にきていると思います。

その過程を暗中模索しながら進んでいるのでしょうが、これまで既得権益を持つものにとっては、手放したくないはずです。

それぞれの歴史年表でもその争いはある。
未来の歴史年表には、この数年はどのような記載が、されているのだろう。

個人的には小沢氏の政治スタイルには強い疑問を持っていますが,起訴されなくて良かったと思います。ホント,検察という組織も劣化したということなのか,余計なことばっかりする。検察幹部だって選挙権持っているんだから,小沢氏が嫌なら自民党に一票入れたらいいだけじゃないか。職権に対する感覚が麻痺しているんだと思う。しかし,これでようやく,小沢氏を含めた民主党の政策・方針がいいのかどうか,政治の本論に関心が移ると思います。
コメントが少ないのは若林氏の論説があまりに真っ当すぎるからでしょうが,実際,民主党政権はここからが正念場です。消費税を上げずに今年の予算をどうまとめるつもりなのか。国債をさばけずに日本も破綻国家の仲間入りをするのか。僕は菅氏の手腕に注目したいです。
それにしても,アメリカ国民は左派に対するアレルギーが強いようですね。国民皆保険に対するアメリカの反応を報道で聞いていると,きっとアメリカ国民の多くは「アメリカはヨーロッパじゃない!アメリカはアメリカなんだ!」と思っているように感じました。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

若林秀樹(わかばやし・ひでき)

-----<経歴>-----

1954年東京生れ。
1976年早稲田大学商学部卒業。
1979年ミシガン州立大学院農学部修士課程終了。
現在、08年3月からワシントンにある政策シンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)の客員研究員。
80年からヤマハ(株)勤務、労組役員を経て93年からワシントンの日本大使館1等書記官として政府開発援助(ODA)と日米協力を担当し米国際開発庁(USAID)から表彰を受ける。帰国後は電機総研副所長を務め、01年に民主党比例区で参議院議員に初当選。在職中は「次の内閣」経済産業大臣・財務副大臣、国際局副局長を歴任。さらにイラク、シリア、イラン等を訪問し安全保障、復興支援、核問題等幅広く国際問題に取り組む。08年はCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員として活動し、09年1月より非常勤客員研究員。現在、(財)日本国際フォーラム常勤参与・主任研究員。

BookMarks

-----<著書>-----


『希望立国、ニッポン15の突破口』
2006年9月、日本評論社



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.