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« 2010年は日本の将来を考える骨太の議論を
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日米安保改定50周年(2)-条約名は「世紀の誤訳」か »

日米安保改定50周年(その1)、新たな日米関係を築く節目に

日米同盟の根幹となっている日米安全保障条約が1960年1月19日に締結されて50周年を迎える。当然のことながら、日米政府は2010年を日米関係強化に向けた節目の年にしたいと思っているが、普天間基地移設問題をはじめ鳩山政権の一連の言動に米国が不信感を抱き、日米の政府間に大きな溝が生じている。

しかし今の日米関係の現状は、鳩山政権だけに責任を押し付けるのではなく、これは政権交代による民意の現れであり、日米安保が抱える積年の構造的な国内問題が噴き出した形として捉えるべきである(勿論米側にも問題はあるが)。従って問われているのは、国民一人ひとりなのである。この問題が生じたお蔭で、日本国民は今後の安全保障政策や日米関係を初めて本気で考える絶好の機会が与えられ、長期的に見れば日米両国にとってはプラスであると捉えたい。

今回は、まず日米が共有する価値観と日米関係について考えてみたい。
戦後の日本社会の基礎は、戦勝国のアメリカによって形作られた。社会の骨格としては、米国主導により民主化に向けた五大改革を実施し、現行憲法等を制定。外交・安保では国の防衛をアメリカに委ね、主に米国との関係を通じて国際社会との距離を測る外交を展開した。経済では、アメリカの技術と大量生産方式を取り入れ、米国市場を活用して発展した。これらの過程を通じて、日本はアメリカの影響を大きく受け、無意識の内にも米国型の社会を目指してきたと言える。特に筆者を含む戦後世代は、米国のソフトパワーの影響をまともに受け、「洗脳」されたとまでは言わないまでも、日本とアメリカは、同じ価値観を共有しているということに何の違和感もなかった。

そして今、日米両国は、自由と民主主義、市場経済、法の支配、人間の尊厳及び人権といった普遍的価値観を共有した先進国であり、だからこそ成熟した同盟関係を一層強化し、世界における共通する脅威に対処すべきであるという説明がよくなされる。つまり日米は、戦争では戦ったけど、価値観は一緒で似たもの同士だから、協力して仲良くやろうよ、という考えが前提にあるらしい。この考え方は安倍晋三元首相が唱えた価値観外交にも通じるところがあり、価値観の違う独裁・軍事国家や覇権を唱える国と一線を画し、ややもするとこれらの国に対して民主化等を迫るやや高圧的な外交になりかねない。ブッシュ政権も、民主主義を旗印に米国側に就くのかどうか、色分けした外交を展開し、結果としてイスラム圏諸国等と不必要な対立を招いた。

共有する価値観に基づく日米関係は、一見もっともらしい理由付けなのだが、一口に同じ価値観と言っても様々な違いがある。むしろお互いの価値観には違いがあり、多様な価値観を認める外交の展開が必要ではないだろうか。曖昧模糊とした「価値観」の色分けで国際関係を考えると大きな間違いの元になりかねない。判断すべき基準は「国際ルール」と「国益」である。例えば日米は普遍的価値観を共有すると言っても、育まれてきた長い歴史、文化、宗教観、地理的条件、自然環境、政治、社会・経済構造等に大きな違いがあり、結果として個々人の価値観を形成する物事に対する捉え方は、様々な点で大きな相違が存在していると思っている。むしろ世界中で日米ほど、国のかたちや価値観の違う国はなく、その違いを鑑みて物事を進めていかないと、大変な誤解や摩擦を生じやすい関係にあると見たほうがよい。今の普天間基地の問題も、日米は同盟関係にあるから、同じ価値観を共有しているから、合意通りに実施するのは当然であると、米側が高圧的に押し付けることは望ましくない。お互いの立場の違い、抱えている事情を考慮する余裕を持って欲しい。

21世紀初頭の今、外交も米ソ冷戦時代から、新興国が台頭する多極化の時代に入り、日米安保を取り巻く環境も大きく変わろうとしている。何となく価値観が同じだから、アメリカが言うことだからではなく、世界と調和の取れた日本の国益確保の為に、アメリカと如何に付き合い、新たな関係を如何に築きあげるべきなのか、2010年は、普天間基地問題を解決して日米関係が改善し、日本にとって今後の外交・安全保障政策、そして新たな日米関係を考える節目の年になることを切に願うものである。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

本当にそうだな~、と若林さんのご意見に賛同します。

日米関係は、重要です、が、何となく価値観が似ているからというような曖昧さで従属関係を続ける必要はないでしょう。

米国が、米国の国益を追求するならば、同様に我が国も我が国の国益を追求すべきでしょう。

世界の状況も変化してきました。我々庶民もここで立ち止まって、100年の計を考えることが重要だということですかね。

そうしないと、いつまでも米国から大人としての扱いを受けないでしょう。

編集部様、よろんずに掲載された坂中氏の、
【Yoronz】(12/23) 坂中英徳:多民族共生国家への夢を若い世代に託したい
は掲載とりやめなのですか?

すみません、以下の

【Commons】(1/10)
坂中英徳:将来の日本国民を養成する新しい人材育成制度を

にコメントしたかったのですが、若林さんの記事のコメント欄に書いてしまいました。
トップからだと坂中氏の記事をクリックしても若林さんの記事に行ってしまいます。Commonsから行けば坂中氏の記事を読めるのですが。

先ほどリンク先を修正いたしました。誠に失礼いたしました。

なお、「坂中英徳:多民族共生国家への夢を若い世代に託したい」は下記のURLに移行されています。よろしくお願いいたします。

http://www.the-journal.jp/contents/sakanaka/2009/12/post_43.html

日米安保条約を考える時に、今や二国間の問題でない世界情勢であることを基点に考えないといけないと私は、思っています。
私的な極論ですが、寧ろ廃止し、多国間安保と言う考え方も必要でないのでしょうか。

<鳩山政権に擦り寄り始めた米国>

ここ数ヶ月間、普天間問題で米国の共和党右派は日本のマスコミや自民党議員を扇動し「日米同盟の危機」と煽り立てていた。それだけでは足りないとばかり、リチャード・アーミテージやマイケル・グリーンらを日本に派遣し、自民党やメディアとともに鳩山政権批判を繰り広げたことは記憶に新しい。さらには藤崎駐米大使を使ってワシントン駐在の日本人記者を集め「日米同盟の危機」まで演出させていた。

このように米国はあの手この手で鳩山政権を脅しまくり、自公政権のように従属を誓わせようとしたが上手くいかず、またCOP15での日米首脳会談を求めた鳩山首相の要望も拒否したにも係わらず鳩山総理は平然としている。それどころか民主党の小沢幹事長は大訪中団を率いて胡錦濤と会い日米よりも日中が大事というそぶりも見せた。

そういった状況の中で米国民主党系の国際政治学者で知日派のジョセフナイ氏が、普天間問題に関する共和党右派の対日圧力に懸念を示した論文を発表した。これを機に共和党右派の鳩山政権批判が一気に鎮静化し、米国政府が鳩山政権と向き合おうとする動きが出ている。例えば最近、キャンベル国務次官補が、小沢幹事長の訪米を望んでいると時事通信の記者に語ったことが報じられていた。

恐らく米国政府も政権交代を選んだ日本国民の対米感情が悪化すれば、ほんとうに日米同盟が危うくなる。それはむしろ、米国の損失ではないかという冷静な意見が共和党右派の強硬な意見に取って代わってきたのだろう。どうやら小沢・鳩山の我慢強い「沈黙」の効果と、小沢による民主党中道派に対する根回しの効果が出始めているのだろう。

このように一時的に、日本に対する疑念が米側に生まれたとしても、結果的にはお互い日米同盟の重要性を再確認するチャンスになるはずだ。また小沢は常日頃「日本は米国にきちんと自分の主張をしなければならない」と言っていたが、米側にとって侮れない人物がやっと日本にも現れたのだろう。

熱烈な自民党支持者 | 2010年1月11日 20:36様

このところの一連の報道からアメリカの日本に対する外交をどのようにお考えなのか、できればご意見を伺って見たいと思っています。

産経ニュースのキング特使の韓国での記者会見。
ボズワース特別代表の10日の北朝鮮訪問後の会見。
インド洋の給油活動の中国負担情報。
【ソウル時事】北朝鮮外務省は11日、「朝鮮戦争ぼっ発60年となる今年、休戦協定を平和協定に代えるための会談を早期に始めることを休戦協定当事国に丁重に提案する」との声明を発表した。北朝鮮はこれまでも平和協定締結を求めてきたが、声明で交渉開始を提案したのは今回が初めて。(時事通信) 転機

以上の記事から、米中の関係、強化とも取れる軍事協力、米朝会談の進展性とアメリカの北朝鮮外交。
そして、北朝鮮からのメッセージ。
双方の外交の駆け引きが、見え隠れする中、日本の外交の取り方も難しくなってきた感があります。
どちらよりの対応をするかによって、試してきている感もします。(ストレートなボールでなく、いやらしい変化球みたいな)

いかがでしょうか?

 若林様の本稿には、考えさせられますね。 中長期的に極東の安全保障を考えましても、米国の覇権が永続するはずも無く、やがては、ドルの凋落とともに衰退するのは必然です。 
 中国とは、真剣に向き合う必要があります。 米国がCOP15で中国を新興国の代表として(一方の覇権国としてと言えば言い過ぎでしょうか)遇したように、日本もこの大国を敵視しては国際社会に伍しては行けません。
 日米の関係にも、極東の国際情勢が大きく影響します。 いや、米国からして中国への傾斜が感じられる昨今です。 勿論のことですが、この大国の政治的・経済的な不安定要素が将来予測を困難にしてはいます。 北朝鮮との関係もそうです。 であるからこそ、日米関係を従属的なものから、対等・互恵の関係に切り替えないといけないのではないでしょうか。 
 旧来の観念でしか国際政治を観ることが出来ない者には、時代に適した日米関係どころか、極東において日本が生き残る道筋も観えていないのですから国家の将来像として危険極まり無いことと思われます。 

<日本の東アジア外交は?>

現在、中国ではゴールドマンサックスなどの米国金融資本が中国の民主化を進めるべく胡錦濤政権に深く食い込んでいるといわれている。恐らく2012年には米国流民主主義の教育を受けた幹部で固めた(習近平か李克強による)新政権が登場し、中国の政治面での民主化が急速に進みそうだ。

もし中国の民主化が実現すると、米国はコストのかかる東アジア支配(台湾や北朝鮮問題も含め)を中国に任せるために米中軍事同盟を結ぶことになるだろう。ここ数年、米軍が中国の最前線となる日本や韓国から米軍基地の撤退を始めていることや、中国が米軍指揮の下でインド洋に給油艦を派遣するかもしれないという話もその兆候であろう。

従来、自民党政権はこうした米国の日本離れ、それに伴う中国の脅威を恐れ、思いやり予算や米国追従外交で米国を引きとめようと必死に工作してきたが、今回の政権交代によって日本もやっと米国からの乳離れと中国への政治的接近によって激変する国際情勢に対応できる外交が始まったといってよいだろう。

ところで北朝鮮は2012年に「
強盛大国」を完成させようとしているが、後継者への権力移譲と米国との平和条約締結が国家の最重要課題になっている。これによって権力基盤がしっかりすれば、次は豊富な鉱物資源を背景に市場経済の導入や日本も含めた外資の導入で経済基盤の強化が行われるだろう。

このような東アジア情勢の変化に対応し、鳩山政権はどのように動くのだろうか。米中の急接近に対しかつて小沢氏が唱えた「日米中二等辺三角形論」の実践を進めるだろう。具体的には「東アジア共同体構想」と6カ国協議メンバーを中心とする米国も含めた「東アジア安全保障体制」への参加であろう。

また北朝鮮に対しても1兆円規模の経済支援を行うことで拉致問題の全面解決を図ろうとするだろう。北朝鮮は金正日の病気問題で後がないため、恐らく今年から来年にかけて6カ国協議の再開と拉致問題、核問題の解決が一気に進む期待もある。(北朝鮮と親密な関係にある山崎拓氏は昨年末、小沢氏が北朝鮮側と秘密裏の交渉を進めていると言明している)

熱烈な自民党支持者 | 2010年1月12日 16:30様

具体的な指針ありがとうございます。
現在の日米安保の新たなる展開が、ご指摘の内容になることを私も切に願います。
ただ、一縷の懸念が、北朝鮮や中国の民族問題及び台湾問題であろうと感じています。
これまで、北朝鮮が、自国の利益を余りにも強く要望することがあり、態度を急変することが度々ありました。
そのことが、国際社会の信用を失っていく悪循環であった。
今回の報道もどの程度信頼できる物なのか?
どの地位の方の方針なのか不明瞭です。
中国においては、東ドイツや東欧の国々及びロシアの経済政策開放により、国の発展のために何が必要であるか強く意識した政策が、国際秩序の安定をもたらしていると感じていますので、同様の経緯を辿るだろうと推測できます。
とは言え、中国国内の所得格差が民族紛争と繋がりかねない危険性もあります。
現在の国際ルールを守らざるを得ないと思いますので、その点の改革も進んでいくと期待はしています。
後のアジアの懸念材料は、イスラム文化とアメリカの対立この不安材料さえ払拭できればと思ってはいますが・・・。

いずれにしても、アジアの安定が世界経済に与える影響は大きい。
その視点から、外交努力をして欲しいと思っています。

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Profile

若林秀樹(わかばやし・ひでき)

-----<経歴>-----

1954年東京生れ。
1976年早稲田大学商学部卒業。
1979年ミシガン州立大学院農学部修士課程終了。
現在、08年3月からワシントンにある政策シンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)の客員研究員。
80年からヤマハ(株)勤務、労組役員を経て93年からワシントンの日本大使館1等書記官として政府開発援助(ODA)と日米協力を担当し米国際開発庁(USAID)から表彰を受ける。帰国後は電機総研副所長を務め、01年に民主党比例区で参議院議員に初当選。在職中は「次の内閣」経済産業大臣・財務副大臣、国際局副局長を歴任。さらにイラク、シリア、イラン等を訪問し安全保障、復興支援、核問題等幅広く国際問題に取り組む。08年はCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員として活動し、09年1月より非常勤客員研究員。現在、(財)日本国際フォーラム常勤参与・主任研究員。

BookMarks

-----<著書>-----


『希望立国、ニッポン15の突破口』
2006年9月、日本評論社



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