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« オバマ大統領初来日に思う日米同盟の原点
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日米関係を決める米中関係の深まり »

オバマ大統領政策演説の狙い

11月14日、サントリーホールでオバマ大統領のアジア政策に関する演説を聴いた。オバマ氏の演説を直接聴くのは、昨年6月以来2回目である。実際にテレビ放映の方が大統領の顔の表情まで含めてよく分かるし、音声もはっきり聴こえるのだが、ライブでしか味わえない臨場感や楽しみがある。特に体全体から伝わってくる話し手の意志やエネルギーは、直接会場に足を運ばないとわからない。約30分の演説の中でオバマ大統領がどこに力点を置き、どんな思いで喋ったのか。

今回の演説の最大の意義は、大統領としてアジア政策の全体像を初めて明らかにする演説を北京ではなく東京で行い、米国がアジア・太平洋国家として、日米同盟を基軸にアジアに深く関与していくことを宣言したことにある。これ自体は極めて重要なことであるが、オバマ大統領の来日は当初より1日遅れ、鳩山首相が不在であるにもかかわらず、APEC首脳会議の初日を欠席してまで何故、東京で政策演説を敢行したかったのか。ホワイトハウスがこの政策演説を正式に発表したのは、9日になってからであり、米国大使館は慌てて政策演説の準備を行った様子がうかがえた。それでも実施したかった政策演説の狙いは何だったのか。

即ちタイトな訪日スケジュールでも政策演説を東京で開催して日本重視の姿勢を示しつつ、一方で中国との関係を強化する姿勢を中国訪問前に示し、中国との友好ムード醸成に向けた地ならしをしたかったのではなかろうか。

念願のアジア外交に関する政策演説を実施し、日本と中国とのバランスを取るには、無理してでも東京で開催するしか選択はなかったのである。オバマ大統領は、演説の中で中国に対して時間をかけて米中の協力する意義を訴えた。「現実的な協力を追及することが大事だ」、「米中が協力して取り組めば、双方の利益になる」、「米は中国を封じ込めようとは思わない」等、中国重視の姿勢を強調した。中国の人権問題、軍備増強、人民元の切り上げ問題等には一切触れなかった。オバマ氏は、大統領選候補者の時には「中国は敵でもない、味方でもない、競争相手だ」と述べ、人権問題についても問題視する姿勢を見せていたが、予想されていたとは言え、大統領になって対中政策を大きく方針転換したことになる。つまり米国のアジア政策の中で中国との協力関係強化を正式に表明したことに今回の政策演説の最大のポイントがあったと思われる。

細かいが演説の中で気になった点は、普天間基地の問題である。オバマ大統領は、直接、普天間の名前こそ出さなかったが、米軍再編という言い回しで、「両国政府が達した合意を履行するために作業グループを通じて迅速に行動することに合意した」と述べた。つまり政策演説では細かいと思われる作業グループにまで言及し、鳩山首相の「日米合意を協議の前提としない。合意を前提とするなら作業グループはいらない」と述べた点について、「あくまで合意を履行するための作業グループ」という位置づけを明確に示し、鳩山首相に対して釘を刺したことになる。オバマ大統領が政策演説の中で、改めて細部まで踏み込んで普天間基地の日米合意履行に触れたことは、この問題ついては相当な不満を持っている証左であり、普天間基地の辺野古への移設にこだわっている姿勢がうかがわれる。

また北朝鮮問題では、日本の拉致問題に触れたことは大変良かったが、後で言質を取られない様に慎重に言葉を選んでいたことに注目しなければならない。つまり隣国(日本)との関係正常化は、「被害者の家族に完全な形で説明することによってしか実現しない」とし、あくまで拉致問題の「説明」であり、「解決」とか、正常化への具体的な前提条件には触れなかったのである。これは後で、米朝協議を進める上で、いくらでも日本に言い訳ができる言及の仕方であった。

いずれにせよ、この政策演説におけるオバマ大統領の問いかけに、鳩山首相はどう答えていくのか。友好ムード演出も限界にきており、答え方次第では、日米関係の決定的な痛手になりかねない。

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コメント (7)

>>友好ムード演出も限界にきており、答え方次第では、日米関係の決定的な痛手になりかねない。
おっしゃる通りであると思います。具体的には、「日米安保を破棄する」「日本も核武装する」「中東諸国との原油取引の一部を円建て決済にする」といった決定をすれば、日米関係の決定的な痛手になりかねません。
ただ、国際社会は独立国といえども、いまや相互依存関係で成り立っており、外交は「カード」で例えられるように「ゲーム」です。
「変化」を望むのであればそれなりの覚悟が必要であることはいうまでもなく、現状を維持するのであれば傍観していれば良いのであります。

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また普天間問題で、日米関係に決定的な痛手ですか。
 どう考えても、この問題が、そこまで重要な問題になるとは思えないので、もし本当にそうであるのなら、米国が拘るのはなぜか、ミステリーです。
 約束違反とか云うのでは、理解出来ません。
 米中戦略互恵関係の中で、沖縄の基地を維持しなければならない理由も見えにくくなっているのに、辺野古に飛行場を作ることが、何故決定的に重要なのか、解説をお願いしたいと思います。

Obama氏の若いスピーチライターに驚きました。

オバマ大統領の東京スピーチの内容分析もそれなりに面白いですが、私にとってはオバマ大統領と同行しているスタッフのレポートが、それにも増して面白いです。オバマチームのエネルギーが見えるようです。

Jon FavreauというLead speechwriter、とても若く見えます。それも驚きですが、こうしたビデオをホワイトハウスの公式ビデオページから出している事自体、従来はなかったことではないでしょうか?

Speechwriterの名前は秘密ではなかったと思いますが、敢えて表に出すという事はなかったように思います。以前はこのように表にでることは、あったのでしょうか?

これを見て下さい:
Jon Favreau Checks in from Tokyo
http://www.whitehouse.gov/photos-and-video/video/jon-favreau-checks-tokyo


鳩山首相のスピーチはご本人がかいているのですか?年寄りのブレーンではなく、こうしたチームはあるのでしょうか?

White Houseのビデオが全て "Public Domain"となっていることも、とても良いと思います。日本の国会ビデオ、官邸からのビデオは public domainでしょうか?

<利権が絡む辺野古への基地移転問題>

冷戦時の国際情勢のもとで作られた日米安保条約も50年経った現在、通常兵器のハイテク化や昨今の国際情勢を俯瞰すれば日米同盟のあり方をもう一度考え直し、その中で基地問題をどうするか考えるべきという鳩山総理の考え方は正しい。

ここ10年の間、米国の軍事技術は飛躍的発展を遂げ、特に全世界の海深くに密かに展開する原子力潜水艦によって、何時でもどこの国でも瞬時に攻撃する態勢を整備している。例えば北朝鮮がミサイルをいきなり日本に発射しても北太平洋に展開する米軍の原子力潜水艦が直ちに報復攻撃を行える体制になっている。

そこで米軍は今までのように莫大な経費のかかる外国基地への駐留を止めるとともに、日本や韓国にいる米軍兵士の損耗を防ぐために米国本土やグアムに基地を移すという米軍再編に着手している。従って、日本もいま、米国に対し国内の米軍基地を縮小する提案をする良い機会なのだ。

問題は、日本の外務省や自民党、民主党の防衛族が「基地問題がこじれると米国が日本を守ってくれなくなる」ことを名目に反発しているが、実は思いやり予算(2000億円)や辺野古の基地整備(6000億円)の利権がなくなることを恐れているのだ。

ハドソン研究所の日高義樹は「米軍は元々、日本や韓国からの基地撤退を計画しており、現在ではすでに日本には陸海空軍の実戦部隊はおらず、海兵隊は沖縄からグアムへ移動中」と述べていた。しかし自民党政権が気前のよい思いやり予算で米軍を引き止めていたので、米軍も有事に備えた基地という名目で駐留しているのが実態だ。

しかし有事になれば、日本の既存の空港(例えば稼働率の低い佐賀空港や関西空港)を使えばいいはずで辺野古にこだわる必要はない。今回オバマ政権が鳩山政権に辺野古に基地を作る約束を守れと言っているのは、沖縄の海兵隊をグアムに移す費用の予算を米国議会から認可を得ていることが原因だ。

その際、市街地にある普天間基地を日本側の要請により辺野古に移すため、グアム移転費用の半額を日本が出すということが前提条件になっている。従ってその前提が崩れると米国議会から予算の承認が得られず、米軍再編に支障をきたすというわけだ。

鳩山政権が「普天間から県外、あるいは国外を検討」といっているのは、辺野古でなく他の場所に変えても日本が移転費用を負担さえすれば米国議会で予算承認はとれることを見越しているのだろう。

もし日本側がグアム移転費用(10億ドル)をまるまる負担すれば米政府や米軍も、また米議会も文句は無いはずだが、日本側の利権集団が「辺野古への移転を譲らない」よう米側(共和党右派など)に働きかけているのだろう。

熱烈な自民党支持者様

 明快な解説ありがとうございます。よく理解できました。
 若林さん、この解説についてのご意見はいかがでしょうか。
 このとおりだとすれば、このことで、「決定的な痛手」を蒙るという日米関係について、如何思われますか。
 日米の良好な関係は太平洋の平和と安定のためには勿論重要ですが、軍事利権のための日米同盟というのでは、余りに将来が無いのではないでしょうか。

 米軍の移転費用を負担しても、意味の無くなって来ている基地をなくしていくことが、沖縄の人々の負担を軽減し、日米同盟を強固にしていく方向に沿っているのではありませんか。

コラム最後の部分には同意します。しかし,

「中国との友好ムード醸成に向けた地ならしをしたかったのではなかろうか」

さすがにこれはちがうと思います。オバマの考えていることは明らかに中国政府の現方針とは180度異なります。だってそうでしょう,米中が本当にウィンウィン関係になりたいのであれば,「核兵器拡散大賛成」「温暖化なんてぶっとばせ」とか言いまくって,米中G2でグルになって世界を好き勝手に動かしたらいいだけでしょう?でも現実は違いますよね。いくら友好を口にしてみても,オバマの言うことは明らかに中国に冷水をぶっかけています。
若林氏は,オバマの背後にウヨウヨしている元来のマッチョなアメリカ中心主義の人達の存在をよく理解しているがために,このコラムのような主張になるのだと思います。日本からはすぐに昔の自民党政権のようなアメリカ崇拝の動きは出てこないでしょうが,アメリカはいつ元に戻るかわからないところがあります。

しかしよく考えると,中国が「中国はまだ途上国です」などとふざけた主張を振りかざしていくら弱いふりをしても,米中がこれからの世界のG2であることは揺るぎない事実だと思います。日本はちょうど二大政党がどちらも過半数を制しきれない議会の第三党のような立場にあるような気がしてならない。ユーロは大きいですが,もともとアメリカ支配に対抗するために出来た守り重視の組織で,米中と異なり他地域との軋轢が少ない。太平洋においては,日本がオバマを助ければオバマは生き残るだろうし,オバマを見捨てれば,アメリカは元のマッチョな国に戻り,日本は中国に飲み込まれていくような気がする。そして,そのとき,日本は米中両国に対抗できるのか。オバマが東京で演説した理由はそう意味かな,と想像しています。彼らは日本に「悪いようにはしないから,中国に肩入れするなよ」と言っているような気がしてなりません。つまりは小沢氏の二等片三角形外交なんですけどね。あとは,世界にあまたとある少数政党と仲良くしておくことかな。第三党の立場だったら普通そうしますよね。

日本の国債が郵貯に流れ込んでいても中国に流れ込んでいなかったのがせめても救いだと思いたい。これから中国が買うかも知れないけど。

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Profile

若林秀樹(わかばやし・ひでき)

-----<経歴>-----

1954年東京生れ。
1976年早稲田大学商学部卒業。
1979年ミシガン州立大学院農学部修士課程終了。
現在、08年3月からワシントンにある政策シンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)の客員研究員。
80年からヤマハ(株)勤務、労組役員を経て93年からワシントンの日本大使館1等書記官として政府開発援助(ODA)と日米協力を担当し米国際開発庁(USAID)から表彰を受ける。帰国後は電機総研副所長を務め、01年に民主党比例区で参議院議員に初当選。在職中は「次の内閣」経済産業大臣・財務副大臣、国際局副局長を歴任。さらにイラク、シリア、イラン等を訪問し安全保障、復興支援、核問題等幅広く国際問題に取り組む。08年はCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員として活動し、09年1月より非常勤客員研究員。現在、(財)日本国際フォーラム常勤参与・主任研究員。

BookMarks

-----<著書>-----


『希望立国、ニッポン15の突破口』
2006年9月、日本評論社



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