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GM破産法申請、驕る者久しからず

 5月31日、米国政府は、クライスラーに続き、ビッグ3の最大手、ゼネラル・モーターズ(GM)が連邦破産法11条の適用を申請すると発表した。政府の緊急融資を決定した昨年11月、多くの専門家や連邦議員が今日の破綻を予測していたが、その時点での「破綻宣告」は政治的には難しかった。しかしこれで米国の自動車産業は、再生に向けて新たな段階に入ることになる。

 1973年8月、米国ミシガン州ディアボーンにあるフォードの自動車工場を見学したことがある。見学の最初の工程は、停泊している鉄鉱石を満載した船であり、そこから製鉄が始まり、徐々に様々なパーツが作られていった。そして最後は、組み立てられた完成車が工場から出てくる、正に完全な自動車の一貫工場であった。ガイド役のアメリカ人は、これがアメリカ経済を支える自動車産業の強さであり、日本には到底まねできないであろうと、言わんばかりの誇らしげな態度であった。

 あの工場見学以来、同年に起きたオイルショックを経て、アメリカの自動車産業は衰退への道を転がり続けた。時折、あの得意満面なガイドの顔を思い出しては、あの驕りの態度は基本的に今日まで変わっていなかったと考えるのだった。1980年代の貿易摩擦の時代には、政治的な配慮で日本メーカーが「輸出自主規制」を行い、これが結果としてアメリカ自動車産業の甘えを助長し、日本メーカーの現地生産を加速させた。1995年の日米自動車協議では、「日本での米国車を扱う販売拠点は2000年末までに約1千店に達すると予測する」という合意に達した。日本メーカーは、その実現に向けて相当協力したものの、ビッグ3が自助努力をせず、合意内容は水泡に消え去った。そして、ビッグ3は、その後のアメリカ経済の立ち直りで、一時的には息を吹き返したかに思われたが、昨年の世界的な金融・経済危機が経営危機の引き金を引くことになった。やはり環境問題やエネルギー情勢の変化という大きな流れに対応する努力を怠ったツケが、一時的な救済では手遅れの経営破綻となったのである。

 ここから引き出される教訓は、「驕る者久しからず」である。アメリカ経済のシンボルであったビッグ3は、「倒産するはずがない」、「最後は政府が守ってくれるであろう」、「このアメリカで日本車に負けるはずがない」等という甘えはなかったか。「常に進化する努力」を怠れば、企業は衰退し、やがて経営破綻に帰結する。日本もかつてリードしていた半導体や家電等では地歩を失った。日本の自動車産業も安穏としてはいられない。GMの破綻を「他山の石」として、日本の産業も教訓として生かして欲しいものだ。

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コメント (6)

若林様
GMの破綻は今後日本の製造業にもじわじわとダメージを与えるであろうと伝え聞いております。アメリカ最大手であるGMは世界各国で取引している部品関係の会社も多く、そういう影響から「破綻宣告」を早く出すことが来なかったのでしょうか。いずれにせよ、この経済危機のさなか、影響は免れないのでしょう。どなたかが別のトピで書かれておりましたが、昨今、大企業と言われる会社には国籍がなくなっております。おそらく今まで以上に厳しい国際競争のさらされ、苦しい経営を迫られてゆくと思います。アメリカのビッグ3もさながら日本の企業も、経営マインドにはかなりの問題があると思います。特に日本では、経団連など、政治や官僚との結びつきの大きい企業程、どこか甘えがあるようなそんな気が致します。また、「投資」という事に関して、人的投資、開発的投資があまり積極的でないというか、そういうものにお金を使う価値を見いださないというか、いわゆる商売屋のような企業が、日本には多いのではないでしょうか。かつて戦後の焼け野原の中から這い上がってきた、今の日本の自動車産業の創始者達には遠大な夢があったような気がします。それは、単に日本が戦争でねじ伏せられたアメリカへのあこがれだけでなく、繁栄へのねたみではなく、希望を失った日本の人々を幸せにしようとする、そんなマインドがあったからゆえの成功ではないでしょうか。今後、国際競争で勝ち残ってゆくのは、日本だけに関わらず、本質的な意味で「人間を幸せにしよう」とする、そんな夢を持つ企業なのではないかと、私は思います。アメリカに端を発した金融危機で、自信を失ったアメリカは一体何をしてゆくのでしょうか。今後GMを含めた自動車産業の立て直しの過程も、私たちになにか教えてくれそうな気がします。その前に日本もぬるま湯から脱しなければなりませんが。

若林さんの記事冒頭【・・昨年11月、多くの専門家や連邦議員が今日の破綻を予測していたが、その時点での「破綻宣告」は政治的には難しかった】

1.≪予測≫:若林さんの言葉尻を捉えまして恐縮ですが・・・、私の認識では、「GMを含めて全ての事業経営とは、生き物であって、刻々と変化する状況に対して、迅速で可及的に的確に対応を採って、計画が実現に向かうことを期待する」故に、全ての事業予測は「破綻の予測」を含めて予測困難に不確実であって、0811当時は「破綻が有力な選択肢の一つとして認識」が正しい表現だと思います。選択肢の一つである以上、【政治的には難しかった】のは当然といえる。

2.オバマ大統領を含めて多数の関係者の期待と尽力にも拘わらず、債権者の譲歩を得られないことが確定した数日後に、「この生き物は、このままでは死にゆく運命にある」との診断が下って、生命維持装置であるChapter11適用となったのでしょう。

3.人間という生き物は、「驕る者久しからず」という至言を十分に認識しながらも時機に酔って驕ってしまう(89年以前のバブル時の日本人も「驕った」歴史がある)のと同様に、合理的で公正な判断をしたいという健全さや真摯さを念願すればするほど、時間が掛かり決断の時期が後ろへずれることになる。今更ながら、人間は、先見性や洞察力などに於いて「万能ではない」「完璧ではない」事実を永劫に抱えて行くのでしょう。時として、奇麗ごとに惑わされて、過大な希望を持ってしまいますが・・・。

4.アメリカは、検討をするのに時間は掛けたが、石橋(諸々の意味を含めて)を潰しはしなかった。何故なら、引用【これで米国の自動車産業は、再生に向けて新たな段階に入ることになる】のだから。
CrazyDog

米国の大企業の場合、階級社会からくる、柔軟性の欠如の問題もありますが、公的な社会保障制度の不備による、企業の退職者に対する過重な保険負担をどうにかしないといけないでしょう、日系企業は稼動年数が比較的短いので、それほどの負担にはなっていないと思います。
オバマ大統領の社会保障制度の改革が是非必要だとおもいます。

「企業の大小を問わず」
追い込まれると、売れる物から売る・離れる「スバル・スズキ・イスズからフィアット・オペル…」本当は逆の事をしなければならないのに…。国の政策に任せてしまった会社の行き着く姿。
 それにしても、オバマ政権は、それしか出来ないのかも知れないけれど、期待と言うものをコントロールしてやる事が良いと考えているのだろうか?そろそろ、スピーチライターも含め、どうにかならないのものだろうか?
 まあ、GMにお金を入れると同時に再びGM・GMAC・Residential Capital-CDSで逆の方へもお金を入れないといけないのでしょうね。
 だからこそ、期待をコントロールし、ある種のミニバブルを形成しなければならない。それにしても、GMが倒産した方が自分にとって都合が良いと思っている人がいるのは、今の金融常識なのだから…。
 イヤハヤ、北京でガイトナーが、強いドルを信じている(断定でない)と言ったのは、まな板の上の鯉と言った感じでしょうね。

驕れる者が、税金を使って、また驕るための「破産」「国有化」では、ないでしょうか?結果を見ると、労働組合と、退職者の保障の削減、2万人の解雇、債権者は、一部、保険でカヴァーされ、国有化です。助けてもらえる債権者は、アメリカ国内と、いわば、経営者の「お仲間」であり、それを、税金、国債で助ける。損をしたのは、労働者であり、いままで保障が、なくなるなんて、思いもせず、だから、備えもしていなかったであろう、退職者と、助けてもらえない国外の債権者です。アメリカのシンボルということですが、一企業であり、経営責任などが、あいまいです。下請けの会社のように、経営者が、身銭を切るなんてことが、あの世界であるわけがなく、また、格差が広がるのでしょう。

 車には制限速度があるが技術開発競争には規制速度がない。自動車構成部品は数万点にも及び、軽量化、耐久性、加工性、環境・リサイクル、費用効果などの視点から毎時猛スピードで市場ニーズを満たす技術革新が進んでいる。毛細血管のように張り巡らされた搭載部品・材料開発・供給企業群を有機的に連携・統合・戦力化できなければGM・トヨタといえども競争場裏から脱落する。

 今日誇る新技術も明日には陳腐化してしまう。競争の熾烈さは機能部品ひとつとっても明らかだ。現に車間距離感知システムや車載用CCDカメラ・LED、盗難防止装置など技術革新の激しい製品が続々開発されている。エンジン回りや電装、駆動・伝送、内外装、機構などの部品も鋳鉄からアルミ合金・チタン合金への材料転換や合成樹脂材料へのシフトなどが急だ。GM再生にはこれら先進技術のキャッチアップと独自技術開発が要件となるが、その道のりは容易ではない。

 自動車産業をはじめ米製造業界が世界的な技術開発競争に遅れをとった原因は、いつのまにか身についた他力本願体質にある。頼もしい米金融業界は得意の「お手盛り格付け」によって信用膨張と資金集積を図り、米国内の需要かさ上げに寄与した。無秩序な信用供与がデフォルトとなってはじけるまで金融機関御用達のレバレッジ・カー(需要)に乗ってさえいれば競争に遅れても何とか取り繕えたのである。

 欧米の金融機関は賢いので金融工学を駆使して運用資金をさらう。日本の金融機関は預金集めや保険・債券売りはプロだが、こと運用となるとずぶの素人に等しい。利回りは理解できても金額加重・時間加重収益率は頭になく、運用指図能力の重要性を自覚していない。だからコロっとだまされモノ言わぬ投資家になって貢物を捧げ続け巨額の損失を計上する。

 まあ運用に失敗したところで資本勘定の毀損は増資で修復できるし、あとは国が面倒見てくれるから責任も追及されない。金は天下の回りものなので運用資金がぐるり回ってGM延命に貢献したと考えれば役に立っている。さらには米国競合企業の競争力を低下させる深謀遠慮があったなどと言い出すかもしれない。「運用」の美名のもとに日本の金が投機資金に使われ世界的な物価高や競争激化などを通して国民を苦しめている現実を棚上げにして。

 30年以上も前、院生時代に米国自動車産業研究で権威の下川浩一教授に光栄にもご出張・相対指導を頂いた。当時すでにトヨタの市場席巻を予見されておられ、お陰でビッグ・スリーにも少なからず関心を抱いた。その後アメ車のセコハン販売で成功した水島清治氏によくご自慢のキャデラックで送迎してもらった。彼は「事故に遭遇しても相手の車がぶっ壊れるだけ」といつも豪語していた。アメ車拡販に尽力され21世紀直前に逝去された水島氏とともにGM再生を祈りたい。

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Profile

若林秀樹(わかばやし・ひでき)

-----<経歴>-----

1954年東京生れ。
1976年早稲田大学商学部卒業。
1979年ミシガン州立大学院農学部修士課程終了。
現在、08年3月からワシントンにある政策シンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)の客員研究員。
80年からヤマハ(株)勤務、労組役員を経て93年からワシントンの日本大使館1等書記官として政府開発援助(ODA)と日米協力を担当し米国際開発庁(USAID)から表彰を受ける。帰国後は電機総研副所長を務め、01年に民主党比例区で参議院議員に初当選。在職中は「次の内閣」経済産業大臣・財務副大臣、国際局副局長を歴任。さらにイラク、シリア、イラン等を訪問し安全保障、復興支援、核問題等幅広く国際問題に取り組む。08年はCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員として活動し、09年1月より非常勤客員研究員。現在、(財)日本国際フォーラム常勤参与・主任研究員。

BookMarks

-----<著書>-----


『希望立国、ニッポン15の突破口』
2006年9月、日本評論社



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