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吉と出るか、オバマ大統領のヘルスケア改革(2)

 米国が使っている医療費は全体で約150兆円と言われ、絶対額では圧倒的に他国を上回り、GDPに占める医療費の割合でも先進国の中で相対的に高い方だ。医療費としては膨大な額を使いながら、国民全体にそのサービスが行きわたらないということを考えれば、政策的に欠陥があることは明らかだ。では何故、医療改革が進まないのか。その改革にブレーキをかけている最大の要因は、政府の高齢者や低所得者向けの公的医療保険に対する財政負担である。アメリカは、現在でも過去最大の財政赤字の状態にあるが、金融・経済危機への一時的な対応を除けば、「永続的な財政への最大の脅威は、伸び続ける医療コストである」と、オルスザグ行政管理予算局長も、ウォール・ストリート・ジャーナルに最近、論説を発表したところである。

 かつてクリントン政権の1期目に大統領夫人であった現国務長官が国民皆保険制度を導入しようとして議会の反対で頓挫した。今回はオバマ大統領が「ヘルスケア改革」を大統領選の公約として前面に打ち出し、5月11日、その「改革案」を具体的な関連予算として盛り込んだ2010年度予算教書を発表してヘルスケア改革の本格的な論戦が始まった。しかし党派を超えて支持が得られる公的医療保険にも、一部の議員には未だに根強い抵抗があり、高い支持率を保持しているオバマ大統領といえども、改革が順調に進むとは全く断定できないのである。

 反対の背景には、国家が運営する皆保険制度を設置すれば、国の財政負担に加え、民間保険会社の事業を圧迫するという理由がある。オバマ大統領は、この2点の問題に現実的に対応すべく、新たな公的保険プランをつくって、国民の保険加入者を増大させる包括的な医療保険改革法の制定を発表した。すなわち医療改革のための大増税を避けるために、「改革案」を医療費の大幅な削減等によって財政中立的なものに仕上げ、皆保険制度といえども、減税などによって個人が民間保険を選択する余地を残している。

 財政的裏付けとしては、(1)ヘスケア・コストの削減(3160億ドル、5月11日発表の予算教書では2,670億)、(2)年収25万ドル超の高所得者の寄付金控除に対する適用税率の引き下げを通じて、2019年度までに6,340億ドルの改革準備金を設置する内容になっている。オバマ大統領は、選挙公約の中で、もっとも実現が難しいとされるヘルスケア改革を最初に着手するという大きな賭けに出た。年末までにこの包括的な医療保険改革法の制定を目指しているが、ヘルスケアは社会的には待ったなしの領域であり、国民の高い支持を背景に、果たして成果がどこまで挙げられるのか、オバマ大統領の手腕が問われるところだ。(おわり)

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コメント (3)

私も「シッコ」を観たり、同時に堤未果さん著の「貧困大国アメリカ」を読んで、たいそう驚いたと共に、皆保険を誇っていたはずの日本も、じりじりとアメリカと同じ形態になりつつあることに恐怖を感じていたところです。

オバマ大統領がチェコで「核廃絶」の演説をし、世界中から評価を得、私もオバマ大統領の勇気に思わず感涙にむせぶぐらい感動したのですが、ふとある意地悪な疑問が生まれてきました。

抑止力としての核保有は、一旦核を持ってしまえば、あとは維持費がかかるだけ。ならば使いもしない核を廃絶することによって次に起こる現象は、新たな武器保有です。
哀しいかな、愚かなるかな、残念ながら人類は“戦争”をやめることが出来ません。“恐怖”連鎖に打ち勝つことの出来ない人間を相手に、アメリカが世界中に武器輸出し始めたら、瞬時に今の赤字財政も潤うことでしょう。アメリカ念願の皆保険の財源も簡単に捻出出来る筈です。(日本もこのままでは、おそらくそういう筋書きになると懸念しています。御手洗、奥田等のやりたい放題に・・・)

もしオバマ大統領がそういうシナリオを描いているとするならば、彼は相当の商売人です。
もちろん、こんな想像は、オバマ大統領に大きな期待を抱いている私の勘違いであってほしいのは言うまでもありません。

マスコミは「医者=金持ち」というステレオタイプをつくりあげていたが、
よく見れば、フェラーリを乗り回していたのは一部の美容外科医であり、愛人にスナック経営させていたのは一部の歯科医であり、あくどく儲けていたのは一部の悪徳医だった。
あくどく儲ける手口が、検査漬けと投薬漬け。
それを可能にしていたのが、(無駄な処置であっても)やればやるだけ払ってくれる「出来高払い」であった。

小泉内閣は「財政赤字と少子高齢化」への対応を迫られていた。

医療と福祉の専門家を外した経済財政諮問会議は、解決策として、診断内容に応じて一定額を支払う米国方式の「定額払い」を採用した。
しかし、米国は「必要な処置も、しない方が儲かる」になっており、
日本は「必要な処置さえ、(場合によっては)してしまったら儲からない」になってしまった。

さらに、介護施設の不足を反映していた老人患者の社会的入院はなくなった(病院から追い出された)が、介護保険の支給枠を全部使っても家族の手が必要なため、介護離職者が増えることとなった。
三位一体改革は地方経済を悪化させ、地元に職はない。
在宅サービスを利用しても、フルタイムの就業は不可能。
介護離職者が、そのまま生活保護受給者になってしまうケースが増えている。

もちろん、麻生総理や桝添大臣が、こういう現状を把握していない筈がない。
金を使うなら、有効な使い方をして頂きたいと思う。

ここでは、時々医師の方のコメントも拝見するが、如何でしょう?

マイケル.ムーア氏の「シッコ」によれば、現在のアメリカのHMOが考案されたのはニクソンのときからで、ヒラリー氏が国民皆保険制度に着手しようとしたときは、医療保険業界の猛反発と、多額の資金投入によるロビー活動で頓挫したということでした。いずれにせよ、現制度に巣食う医療保険業界と新制度の利害調整を迫られるオバマ大統領は経済政策とともに難しい舵取りを迫られているという訳です。しかし、是非、成功して頂きたいです。現在のアメリカの医療の実情は悲惨すぎます。なぜなら、民間の保険に入っている人が、全うな医療サービスを受けられていないと聞くからです。その上で保険会社が莫大な利益を上げていると。本当におかしい事だと思います。
日本とて、国民皆保健とはいえ、規制緩和と称して、現制度の崩壊を自民党は着々と進めてきたように思えます。しかし、私の記憶に間違いなければ現在日本の医師会は、全面的に自民党の政策を支持していません。今はそこが唯一の救いであると思います。私は、今の日本の保健年金制度が、自民党のどの時点の、どの政策で、どのように狂ってきたのかを、なんだかの形で検証しなければならないと思っています。そこがわからないと、制度の見直しようがないと思います。財源がなければ改革は出来ないという発想なら、どのみち何も出来ないでしょう。こういう事案は、人間の尊厳にかけて絶対改革を行うという、強い意志がないと難しいと思います。そういった意味でアメリカ国民、ひいてはアメリカという国の底力を見てみたいと思っております。私たちも人ごとではありませんが。

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Profile

若林秀樹(わかばやし・ひでき)

-----<経歴>-----

1954年東京生れ。
1976年早稲田大学商学部卒業。
1979年ミシガン州立大学院農学部修士課程終了。
現在、08年3月からワシントンにある政策シンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)の客員研究員。
80年からヤマハ(株)勤務、労組役員を経て93年からワシントンの日本大使館1等書記官として政府開発援助(ODA)と日米協力を担当し米国際開発庁(USAID)から表彰を受ける。帰国後は電機総研副所長を務め、01年に民主党比例区で参議院議員に初当選。在職中は「次の内閣」経済産業大臣・財務副大臣、国際局副局長を歴任。さらにイラク、シリア、イラン等を訪問し安全保障、復興支援、核問題等幅広く国際問題に取り組む。08年はCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員として活動し、09年1月より非常勤客員研究員。現在、(財)日本国際フォーラム常勤参与・主任研究員。

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