オバマ政権の100日と日米関係の課題
先日、開催された「日米対話」という知的交流会での感想です。時期的にオバマ大統領が就任100日を迎えることもあり、オバマ政権の外交政策に対する評価についての言及が相次ぎましたが、支持する政党やイデオロギーに関係なく、パネリストのオバマに対する評価が極めて高かったのが印象的でした。アメリカ人の元駐中国大使は、「ルーズベルト大統領がそうであったように、今日の金融・経済危機など取り組むべき課題が大きければ大きいほど、偉大な大統領が生まれる。オバマは『単なる大統領』ではなく、『偉大な大統領』を目指している」との、クールさの中にも熱く語るベテラン専門家の発言は、米国大統領の新たな歴史が今この瞬間にも作られている「ライブ感」を感じさせるものでした。
オバマ政権の外交政策100日に関して言えば、国際協調や対話を重視する姿勢は、とりあえず各国から好意的に受けとめられており、核廃絶、イラクからの撤退、アフガン・パキスタン包括戦略など新たな政策を矢継ぎ早に発表し、いいスタートを切ったのではないかと思われます。その上でオバマ政権の外交政策と日米関係の課題について、論点をいくつか挙げてみたいと思います。
まず第一に米国のアジア重視と言っても、伝統的な同盟国である日本、韓国との関係を別にすれば、重視の中心となる国は中国とインドであり、またオバマ政権の最重要外交政策課題は、隣接するアフガニスタンとパキスタンの政治的・経済的安定とテロ勢力の縮小・封じ込めです。このコンテクストにおいて、同盟国である日本が米国と普天間基地移転等の問題でギクシャクし、何も決められない政治的漂流状態が長く続くと、米国の同盟国、パートナーとしての日本の存在感は益々薄くなり、アジアの秩序づくりは米国と中国、インドとの間で進んでいく可能性が高くなるということです。既にアジアに関して中国抜きで日米が決められることは少なくなり、北朝鮮問題についても、益々中国の意向が反映されることになるでしょう。
第二に米露で「STARTⅠ(第一次戦略兵器削減条約)」の後継条約締結の交渉等で核軍縮が進むと、中国の核攻撃能力が相対的に高くなって東アジアの軍事バランスが壊れ、米国の核抑止力がどこまで保たれるのかという不安です。日本は米国と共に核軍縮の先頭に立つべきですが、一方で日本の防衛を米国の核の抑止力に依存している現実を考えれば、米の核軍縮政策を単純には喜べない状況にあると言えます。日本の非核三原則、「核兵器を持たず、作らず、持ちこませず」の内、第三の「持ちこませず」は変えるべきとの声も良識派から出始めています。
第三に北朝鮮問題ですが、米国にとって北朝鮮問題の外交上の優先順位は低く、軍事力の行使を背景に金正日総書記と構える余裕はないことです。先日開かれた下院外交委員会公聴会での10分程の冒頭発言において、クリントン国務長官は、北朝鮮問題には一切触れませんでした。北朝鮮のミサイル発射問題で、ほんの1週間前、米国は日本と共に安保理の決議を主張したとは思えない、「本音の関心の低さ」です。今後、米国は日本とこの問題で連携する姿勢はみせるでしょうが、北朝鮮問題は中国頼みであり、この問題を前に進めたくない中国の姿勢を変えるには、日本と韓国が連携して米国や中国に圧力をかける必要があります。今のままでは、ブッシュ政権と同じく、時間稼ぎだけされて核開発が進んでしまう懸念が消えません。
政権誕生後最初の100日間は、「ハネムーン期間」とも呼ばれ、世論の期待が高く、議会やメディアも大統領のお手並み拝見で、厳しい批判を避ける傾向にありますが、それでもオバマ政権は高い支持率を背景に良いスタートを切ったことは間違いありません。いずれにせよ、この勢いをどれだけ継続させ、目に見える成果を出していけるのか、今後とも注視する必要があり、また外交政策は、国内政策、経済政策の成否と大きな関連があり、今後の国内動向、特に経済の回復、失業率の改善等に目に見える成果が出ないと、外交政策にも大きな影響が出るものと思われます。
