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2008年12月29日

2008年大統領選と金融危機を振り返る

 今年1年を振り返り絶対に外せないニュースは、何といってもアメリカ建国200年間で初めて黒人の大統領が選挙で選ばれたことであり、そして100年に一度と言われている金融危機の勃発です。どちらもアメリカのみならず世界に与えたインパクトは計り知れず、その起きた事実が歴史となり、好むと好まざるとにかかわらず、新たなアメリカを形づくっていくことになりましょう。

 先日、ワシントンで広報業界に長年携わり、大学で「メディア史」を教えている方とお会いしたところ、授業で学生に対し「何十年後に今回の大統領選について歴史として振り返ることができる君達が羨ましい」と述べたそうです。この一言をとっても、オバマ大統領の誕生が如何にすごいことなのか、おわかりいただけると思います。

 今回の選挙の特色は、インターネットの活用とメディア戦略無くして語ることはできません。オバマはインターネット等よる献金で500億円以上集め、その8割が100ドル以下の少額献金者だと言われ、献金者の大多数は投票行動に結びついたものと思われます。また4年前の大統領選で制作されたケリー候補者のコマーシャルの数が120種類であったのに対し、オバマは徹底的にフォーカス・グループ、ターゲット・エリアを絞り、400種類のCMを作ったと言われています。以前は候補者の実際のスピーチを使ったCMの作成とテレビ放映までに5日間程かかったそうですが、今では、例えばデンバーで開かれた民主党大会でのオバマのスピーチは、その2時間半後にはスピーチを挿入したテレビCMが流れるほど、メディアの進化は目覚ましいものがありました。長い人種差別の歴史を引きずった大統領選でしたが、一方で最先端のIT技術と巧妙なメディア戦略が存在しなければ、歴史に残るオバマ大統領の誕生は無かったのかもしれません。

 また金融危機問題では、最近、ワシントンとニューヨークでその最前線にいるエコノミスト3人に会い、話の中で、今回の金融危機は米国のサブプライムローン問題に端を発したものでありながら、発信源で深刻な経済状況にあるアメリカが逸早く景気回復するのではないかとう印象を持ちました。何故ならば、アメリカの対応がかつてないほどの規模と大胆なやり方で金融危機問題に対応しており、引き継ぐオバマ新政権が国民の高い期待を背景に経済問題へしゃにむに取り組むことは確実であるからです。むしろEUは各国間の調整に時間がかかり政策の大胆さに欠け、日本は政治の混とん等の影響で、景気回復への期待感さえ持てない暗い状況であり、その対比から見ても違いは明らかです。

 2009年のアメリカは、経済的には一段と深刻な状況を迎えそうですが、高い期待を集めるオバマ新大統領の誕生により、アメリカ社会がどうチェンジするのか、その復元力に期待したいと思います。一研究者として、変化するアメリカの姿を見ることは今からワクワクします。

Profile

若林秀樹(わかばやし・ひでき)

-----<経歴>-----

1954年東京生れ。
1976年早稲田大学商学部卒業。
1979年ミシガン州立大学院農学部修士課程終了。
現在、08年3月からワシントンにある政策シンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)の客員研究員。
80年からヤマハ(株)勤務、労組役員を経て93年からワシントンの日本大使館1等書記官として政府開発援助(ODA)と日米協力を担当し米国際開発庁(USAID)から表彰を受ける。帰国後は電機総研副所長を務め、01年に民主党比例区で参議院議員に初当選。在職中は「次の内閣」経済産業大臣・財務副大臣、国際局副局長を歴任。さらにイラク、シリア、イラン等を訪問し安全保障、復興支援、核問題等幅広く国際問題に取り組む。08年はCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員として活動し、09年1月より非常勤客員研究員。現在、(財)日本国際フォーラム常勤参与・主任研究員。

BookMarks

-----<著書>-----


『希望立国、ニッポン15の突破口』
2006年9月、日本評論社



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