社用ジェット機で倒産の危機に
アメリカにとっての自動車は、国民の精神的なシンボルである。まさに米国産業の歴史であり、アメリカン・ライフの象徴である。その米国の自動車産業、取り分けGMが存亡の危機に立たされている。場合によっては最悪の可能性も現実味をおびてきた。
この数年というより、日米の自動車摩擦が激しかった1980年代後半頃から、ビッグ3の衰退は始っていた。今でも鮮烈の思い出すのは、1973年7月、フォードの本社があるミシガン州ディアボーンの工場見学に行った時のことだった。まず見せられたのは、鉄鉱石が積まれた船であり、製鉄部門から最終的に車が完成するまでの一貫製造体制だった。「どうだ、これがアメリカの車の作り方だ!」と誇らしげに語ったアメリカン人の顔が忘れられない。一緒にいた新日鉄の人が、「これは駄目だ!」と言ったのが今でも耳に残っている。まだ19歳の私には、すぐにその意味がわからなかった。少し後になって「こんな小規模な施設で製鉄をしていたら、経済的な効率は悪く、競争力は弱くなる」ということではなかったかと理解している。あれから35年、今でもビッグ3の経営の考え方は、基本的に変わっていないのかもしれない。つまり「我々は世界一の車を作っているのだから、売れて当然だ!」だと。
11月20日、ビッグ3首脳は、既に決まっている250億ドルの融資に加え、更に250億ドルの支援を求めるために、ワシントンで開かれた公聴会に出席した。しかしその交通手段が3人とも高価な社用ジェット機だったのである。これが全米中のテレビに流されて大ひんしゅくを買った。当然、税金による支援を求める経営者の姿勢として、まずジェット機を手放なすなど、経費の圧縮に努めるべきとの批判の声等を背景に、法案の採決さえ見送られた。次の段階はビッグ3が12月2日までに事業計画書を再度提出すれば、その内容如何で12月8日の週以降に審議することになった。
ビッグ3とも12月2日までに計画書を再度提出することになったが、こういう騒動の中では車の売れ行きはさらに落ち、さらに資金繰りが悪化する悪循環になってきた。まさに時間との勝負である。アメリカの中でも意見は分かれているが、「破産法制チャプター11の下で、経営陣を入れ替え、抜本的なリストラをして、将来に向けた経営再建を行うべきだ」というロムニー元マサチュッセッツ州知事をはじめとする意見に私は説得力があると感じる。
コメント (1)
「国会放送公開の弊害かあ」
まあ、この様な事は、普通の時は大いにやって構わないと思います。その主張の正当性も理解できます。3社の決算を見ていれば判るように、数年前から営業ベースでの赤字を何らかの形で隠してきたのだから。ブッシュ・チェニー辞任しないかなあ。オバマがやろうが、誰が遣ろうが大きな流れは変えられません。しかし、NYダウ30が、3000に成るのと5000位で済むのの差はできると思います。銀行の問題は、もう他の大手に対しても、シティ型を繰り返すしかありません。バンカメやウェルズ・ファーゴの動向を見ておこう。国内でないけれどUBSも。ビッグ3についても、残念な事ではありますが、事実上の国有化しかないでしょうね。株価は、何か大きなものが終わった時、先祖がえりするものです。どの時点かといえば、グリーンスパーんが就任したてで起こした、ブラックマンディの株価を見ても…。なにせ、今回の金融問題を起こした株価との対話政策が、その後スタートしたのだから…。
投稿者: おumaちゃん | 2008年11月26日 12:26