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2008年8月31日

初の黒人大統領か、初の女性副大統領か

民主党は大会を開き、オバマを正式に大統領選候補者に指名し、主要政党として初めてのアフリカ系アメリカ人の大統領選候補者を誕生させました。そして翌日の29日、マケインは大方の予想を裏切って、共和党の副大統領候補として初めての女性になる44歳、アラスカの州知事、サラ・ペイリンを指名しました。

その狙いは明らかです。若いペイリンで自分の高年齢のイメージを打ち消すと共に、民主党支持層のミドルクラスにアピールし、堕胎、銃保有なの問題で保守層を惹きつけ、予備選挙で負けたヒラリーへの支持票、女性票を取り込みたいということです。

それが選挙だといえばそれまでですが、マケインはオバマを若くて特に外交経験がないと批判したのに対して、ペイリンはもっと若い44歳、政治経験は知事が2年弱、その前は人口8千人の市長しかありません。ましてやマケインが重視する外交や安全保障の経験はゼロに等しいのです。もしヒラリーが副大統領候補になっていれば、ペイリンの副大統領候補もなかった可能性が高く、副大統領候補選びの基準は、国を統治するためではなく、選挙に勝つための副大統領選びだと言われても仕方ありません。意表をついた話題性でペイリンが一瞬大きく騒がれても、それだけで支持が長く続くものではありません。今後の討論会等で本当に候補者としての資質があるのか問われることになりましょう。

またこれでヒラリーがどう動くのか、興味深くなりました。民主党団結のために一点の曇りもなく心底オバマを支持できるのか、それとも初の女性副大統領誕生に向け、表面的にはオバマを支持しながら、心情的にペイリンを応援するような仕草を見せるのか、それによっても女性票は大きく動きそうです。

マーティン・ルーサー・キング牧師が人種差別を訴えたあの「ワシントン大行進」から丁度45年、女性参政権が憲法で認められたのが1920年8月26日、あれから88年、いずれにせよ初の黒人大統領か、初の女性副大統領が誕生することになりました。さらには争点として経済か、イラクか、今秋の大統領選挙は益々目が離せなくなりました。今度は1日から共和党大会がミネソタ州で開催されます。

2008年8月21日

飲酒年齢は下げるべきか

アメリカは、基本的に「自由」を尊重する国ですが、一方でその裏返しでもある「責任」、「ルール」、「法律」を重んじる国でもあります。また日々の生活で他国より厳しい基準を課していることも多く、その象徴が「飲酒年齢」ではないでしょうか。

飲酒できる年齢は、州ではなく連邦の法律で「21歳」と決まっており、「バー」に入る際に若い人は必ず写真付きの身分証明書の提示を求められます。特に日本人は若く見られるので、30歳過ぎても提示を求められることは普通なのです。それで「私って若く見えるのかしら」と、一寸勘違いしている人も多いとか(笑)。

もともとアメリカはピューリタン(清教徒)の影響で酒に対する批判が強く、当初は第一次世界大戦の影響もあり、1919年に酒の製造・販売等を禁止する憲法の修正条項、翌年にいわゆる「禁酒法」が成立しました。これは結局「ザル法」で、カナダ等からの持込が増え、密造業者や密売にかかわる「アルカポネ」を代表とするギャングやマフィアがはびこり、当初の目的とは違う方向に社会が変化しているとして1933年に法律は廃止されました。

しかし「禁酒法」は廃止されても、今でも南部を中心に酒を販売しないDry County(郡、市等)が非常に多いのが実情です。またワシントン地域もそうですが、Hard Liquor 、いわゆるウィスキー等の度数の高い酒は、特定の店舗でしか販売できない州も多いようです。

そこで今、この飲酒年齢を21歳から18歳に引き下げるべきとの議論が巻き起こりつつあります。 その中心的主張者は、全米の大学の総長、学長という教育者であり、現時点で100名以上の名前を連ねている「アメジスト・イニシアティブ」というグループなのです。彼らの言い分は、むしろ21歳という飲酒年齢により、大学生は飲酒に対する接し方がわからず、隠れて21歳未満でお酒を飲む学生も多く、結局、大酒をくらって騒ぐなど、問題を悪化させているというものです。

一方でこの動きに対し、既にヘルス関連の団体、政府運輸部門の関係者等から批判の声があがっています。今でも飲酒による自動車事故が多く、18歳に引き下げれば、さらに事故が増えるという根強い反対意見が多く、政治的にその実現は難しいようです。

アメリカでは16歳で普通運転免許証が取れ、18歳で選挙権の付与、本人の意思での結婚、軍への入隊が認められるのに、飲酒だけが21歳というのも説得力がなさそうです。もちろん健康上の理由はありますが、それも程度問題でしょう。飲酒と交通事故との関係は、年齢が主な原因ではなく、もっと日常的な教育など、別なところにある気がします。アメリカは自由と自己責任原則を前提として成り立つ国ではありますが、やはり宗教国家としての側面が強い国なのでしょうか。

2008年8月13日

08大統領選-批判できる土壌

マケインのオバマ批判が先鋭化しています。

日本であれば考えられませんが、テレビコマーシャルやネット・メールで、

「セレブ気どりのオバマに大統領をまかせられるか」、
「オバマは大統領になるには外交経験が足りない」、
「政権をまかせるには準備が出来ていない」、
「オバマが大統領になれば、増税になり、政府支出が増える」

等、批判の連発です。

映像だけ見ていると、最初から最後までオバマの映像が映り、オバマのコマーシャルかと見間違えるほど。

具体的な数値で表せる増税ならまだしも、「準備ができていない」というのは何を根拠にしているのか、ほとんど論理性がありません。

アメリカでは、商品コマーシャルでも他社のライバル商品との差を示す「比較広告」が昔から盛んであり、相手を叩くことにあまり抵抗感を感じない国民性なのかもしれません。だから国民は選挙でもこういうコマーシャルを受け入れる土壌があり、マケイン陣営もそういうイメージを植え付けることが効果的だと思っているのでしょう。だからマケインは徹底して批判路線を変えません。

しかしトップシェアや人気の高い商品は、逆に比較広告をする必要がないのであって、オバマは逆に相手をあまり批判せず、逆に優位に立っているような感じすらします。日本でも小泉郵政解散時が特にそうであって、民主党は相手の批判ばかりして、自分たちの政策や方針が見えてこないという、有権者からの批判を浴びました。野党は与党の政権運営のまずさを指摘することが仕事なのですが、それが行き過ぎているというイメージになれば、批判の矛先は自分たちに戻ってくるのです。いずれにせよ、日本は批判すること自体にネガティブなイメージを持つ、「和をもって尊し」とする文化なのだと感じます。

2008年8月11日

映画「Swing Vote」

最近公開された映画「Swing Vote」を観てきました。

よく使われる「Swing States」とは、その時々の情勢で共和党か、民主党か、どちらの候補者が勝つか予想しにくい「接戦州」のことですが、その言葉に引っ掛けたものでしょうか。

主演は私の大好きな「ケビン・コスナー」でアル中のダメおやじ役。舞台は大統領選挙の投票日、ニューメキシコ州の小さな町。

娘が父の代わりに隠れて投票した1票が停電で一時的に無効に。

しかしその1票が住民を巻き込んで大騒ぎになります・・・。

つまり、10日後に再投票する1票が大統領を決めることになり、彼は両陣営から様々な供応を受け有名人になる。

しかし有頂天になったオヤジは依然として政治には興味を示さず、無責任なオヤジに娘は愛想をつかすが、最後は有権者から届いた切実な手紙の声に動かされ、感動的な結末に・・・。

まず大統領選の仕組みがわからないと、この映画はおもしろくない。でも選挙の仕組みを理解するいい機会になるし、事前に勉強して観れば、お薦めの一本です。

またアメリカでは小学校から政治教育がしっかりされており、このような地道な活動が民主主義を育てているのか、考えさせられます。

それにしても大統領選を題材に政治や民主主義の重要性を描き、これが映画興行として成り立つのは、やはりアメリカならではか。

日本でも大統領選挙がある11月までに放映してほしい。

娘役の演技が素晴らしい。授業参観に来なかった父をかばい、クラスで生徒や父兄の前で娘が語るシーンに泣けます。

2008年8月 8日

オリンピックと政治(ニュースレター第18号)

北京オリンピックがいよいよ始まりました。

ニュースレターは米中関係シリーズの第3弾として、ワシントンにおける中国のプレゼンス、そして米中関係の日米関係への影響がテーマです。

早速コメントをいただきましたが、かつての東京やソウルがそうであったように、アジアでのオリンピックは常に「ポリティカル」であり「経済成長」の転機です。

中国はこれを機にさらに経済的に発展すると思われますが、一方で経済成長共に「民主主義」のうねりが高まるのがオリンピックです。中国政府にとってオリンピックは惹きつけられる「魔物」であり、「両刃の剣」となりかねません。しかしもう誰にも勢いのついた「五輪列車」の動きは止められません。

2008年8月 4日

若林秀樹の「アメリカ定点観測」

「ざ・こもんず」初登場です。

ワシントンから臨場感溢れる政治情報をお届けします。

また8月1日からブログ「Hands-On Politics」を開設しました。

「Hands-on」とは、直接手で触れる、実際に参加することを意味します。

つまりこのブログは、国際政治を少しでも身近に感じて欲しい、皆さんも国際政治に参画している一人なんだと思って欲しい、そんな願いを込めて立ち上げました。

また、ニュースレターも配信しています。

ここでもご紹介したいと思いますが、ご希望の方は、メールで「名前」「メールアドレス」「所属(任意)」を記述の上、hidekiwaka@aol.comまでお申し込みください。
よろしくお願いします。

Profile

若林秀樹(わかばやし・ひでき)

-----<経歴>-----

1954年東京生れ。
1976年早稲田大学商学部卒業。
1979年ミシガン州立大学院農学部修士課程終了。
現在、08年3月からワシントンにある政策シンクタンク、CSIS(戦略国際問題研究所)の客員研究員。
80年からヤマハ(株)勤務、労組役員を経て93年からワシントンの日本大使館1等書記官として政府開発援助(ODA)と日米協力を担当し米国際開発庁(USAID)から表彰を受ける。帰国後は電機総研副所長を務め、01年に民主党比例区で参議院議員に初当選。在職中は「次の内閣」経済産業大臣・財務副大臣、国際局副局長を歴任。さらにイラク、シリア、イラン等を訪問し安全保障、復興支援、核問題等幅広く国際問題に取り組む。08年はCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員として活動し、09年1月より非常勤客員研究員。現在、(財)日本国際フォーラム常勤参与・主任研究員。

BookMarks

-----<著書>-----


『希望立国、ニッポン15の突破口』
2006年9月、日本評論社



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