3月に中国、北欧と取材をして帰国したら、麻生政権が目を疑うばかりの巨額景気対策をぶちあげていた。真水で15兆円。99年に「世界の借金王」と開き直った小渕政権が実施した過去最高規模の景気対策が7・6兆円だったことを思えば、15兆円の景気対策が尋常ならざるものであることが容易にわかる。
■首相の景気対策は選挙向けのもの
麻生首相は本気である。ただし頭の中にあるのは、選挙と政局だけだ。はっきりいえば、国民をこれほど馬鹿にした景気対策もない。
先進国中最悪の財政状況で、すでにわれわれが自分の子供や孫の世代に800兆円という巨額の付け回しをしているなかで、15兆円もの財政出動をするのだから、その場かぎりの人気取り政策などであっていいはずがない。
中国でも北欧でもそうだったが、どこの国も、今回の世界経済危機への対応は焦眉の急だ。だが未曾有の危機に対する向き合い方には共通項がある。中国でもノルウェーでも「これを機に国の構造変化を促す」という言葉を何度も聞かされた。危機の震源地である米国ですら「グリーン・ニューディール」に象徴されるように、新たな国家ビジョンを示しながら、目の前の不況と闘っている。
財政出動というものは、不況で激減した民間需要を補完するために、国が力づくで需要創出をして、景気回復への道筋をつけるというものだ。
そこで国家としての見識が問われる。景気回復に向けて最高のコストパフォーマンスを実現する努力が求められるのは当然で、そんなレベルで足踏みしている国など、日本以外にあるのだろうか。
→日経BPnetにも原稿アップしました。どうぞご覧ください。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090413/146028/?P=2
「破産法の申請はあり得ない」
辞任に追い込まれたGMのリチャード・ワゴナー会長兼最高経営責任者(CEO)は、その理由を日本のある自動車関係者にこう語っていたという。
「ユナイテッド航空のように破産法によって再生した事例もあるが、エアラインと自動車メーカーとでは事情がまったく違う。成田―デトロイトを異動する乗客は好むと好まざるとに関わらず、ユナイテッドに乗らざるを得ない。しかし自動車の場合、消費者は無数の選択肢をもっている。破産法を申請したメーカーのクルマを好んで買う人間などいやしないからだ」
「破産したメーカーのクルマには誰も乗らない」
その通りだ。米国では破産法の適用によって会社の存続はほぼ確定するが、ディーラー減少やそれに伴うサービスの低下等々、新たな消費者にとってプラスになることなどなにひとつない。GMを経営破たんに追い込んだ張本人であり、辞任後も巨額の退職金が物議をかもすなど、ワゴナー前CEOに対して米国内でも非難が高まっているが、破産法申請は救済どころか命取りになるという指摘は説得力がある。
ところがホワイトハウスの肝いりで後任のCEOに就任したフレデリック・ヘンダーソン氏は、前CEOの方針をあっさりと覆し、「必要とあらば破産法の適用申請を含め、いかなる措置をも講じる価値がある」と公言した。
最終的にGMやクライスラーがどのように着地するのか、現時点ではきわめて不透明だが、ひとつ明らかなことがある。
市場原理と自由主義というアングロサクソンモデルを、執拗に他国に押しつけてきた過去の所行は完全無視。なりふりかまわず、国家管理下でGMを救済しようとする米国は醜悪だ。
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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090403/143778/?P=2
昨年秋と、今年の年初と2度にわたって「サンデープロジェクト」で“北欧特集”を放送しました。
人口500万人程度のデンマークとフィンランドは世界が羨む「福祉国家」です。福岡県や兵庫県程度の人口規模であるこの2カ国を取材して浮き上がってきものは、政治と国民との距離が決定的に近いことでした。道州制の意義はまさにこにあるとの思いをもって放送をしました。
そして再び、北欧にやってきました。
今度は人口900万人のスウェーデンと石油・天然ガスなど豊かな資源国でもあるノルウェーの2国の取材です。米国発の金融危機が高福祉高負担の北欧(スカンジナビア)モデルにいかなる影響を与えたのか。そこを入り口に日本のカタチを再考すべくやってきました。
スウェーデンもノルウェーも様々な問題を抱えていました。
負担と給付水準をどう考えるのか。そのせめぎ合いもありました。
移民問題はノルウェーの首都、オスロにとって深刻な社会問題を惹起しつつあるといってもいいでしょう。
しかし、北欧すべてをまわってあらためて実感したことがあります。
それは北欧の人びとの規律ある民主主義の歴史です。
民主主義への深い理解の共有があって初めて、世界が羨む「福祉国家」が成り立つという現実。
日本に一番欠けているのは、民主主義への理解いがいなにものでもない。
政権争いに明け暮れる政治家のお粗末もさることながら、日本は国民もお粗末であることを嫌というほど見せつけられた取材となりました。