2月に続いて再び、上海に来ている。市内中心部をクルマで走り回っている間に、どこか違和感を覚えた。競い合うように新しいビルが林立し、街の景色が固定されることがない。来るたびに違う表情を見せる街である。だがこの1、2年の間に際立ってきた変化がある。
■落ち着きを見せ、おしゃれになった上海
街が落ち着きをみせてきたことだ。勢いがなくなったという話ではない。ほんの少し前までの上海はエネルギッシュだが、剥き出しの拝金主義を象徴するようながさつさにあふれていた。
大渋滞の車列のそこここからクラクションが悲鳴をあげ、交通マナーのかけらもなかった。だが気がつけば、クラクションの喧騒がいつの間にか消え、街をゆく人びとが見違えるほどおしゃれになっている。
ことに若い女性たちのあいだでは日本のファッション雑誌が大流行しており、その影響なのか、まるで表参道や渋谷を歩く日本の若者たちとまるで遜色がないほどに洗練されてきた。女性とくらべると大きく遅れをとってきた男の子たちのファッションセンスも随分とブラッシュアップされた。
量的拡大の勢いだけで世界を圧倒してきた上海だが、2010年の上海万博をひかえ、いまは世界屈指のクオリティを備えた街へ変貌することに神経が注がれている。街の清掃ひとつとっても大きく変わってきた。
日経BPnetにも原稿アップしました。どうぞご覧ください。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090317/139488/?P=2
中国は今年、改革開放30周年を迎えた。鄧小平氏が目指した「社会主義市場経済」は、共産党の一党独裁と計画経済先を維持しながら市場経済のいいとこ取りを狙った一大構造改革であった。だがそれはなんとも陳腐で、独りよがりな国家運営だと先進各国から揶揄された。
■計画経済でひた走る中国
ところがそれから30年、いまや中国の計画経済モデルは世界の最先端に躍り出た。
市場原理主義というアングロサクソンモデルが崩壊したとたん、各国は思い切り「計画経済」化に走った。米国ではシティバンクや世界最大の生命保険会社AIGが実質国有化された。英国では巨大名門銀行であるロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RSB)の株式を政府が95%所有するという異常事態が起こっている。
金融機関救済に投じられた公的資金は、米国ですでに74兆円を越えた。英国はRSBを含む大手三行だけで5兆円だ。気がつけば「市場原理主義」は消失し、欧米諸国は計画経済のオンパレードとなってしまった。
それにしても世界経済が迷走すればするほど、中国の存在感が高まるという状況になってきた。09年中の不況克服が絶望的な日米欧とは対照的に、中国経済は底力を発揮しそうだ。
日本国内では日本と中国の経済状況を単純に同一視しがちだ。米国への輸出依存度の高い中国は日本同様、壊滅的なダメージを被っているに違いないと、多くの日本人は信じ込んでいる。だがそれは中国経済の全体像を知らぬ暴論と言わざるを得ない。
日経BPnetにも原稿アップしました。どうぞご覧ください。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090305/136845/?P=2
メガバンクの貸し渋りは限度を越えているようです。
信じがたい話ですが、先日会った銀行関係者によれば、いまや上場企業ですらニューマネーが借りられるのは全体のわずか1割。ロールオーバー(借り替え)ができる企業も3割ほどしかないというのです。つまり上場企業でも6割が資金繰りに苦心惨憺していることになります。政府が政策投資銀行を通じた低利融資などの資金繰り支援策を強化しつつある理由もまたそこにあります。メガバンクは本当に役に立たない。企業が苦しい時には必ず逃げる。
しかし逃げれば逃げるほどメガバンクは自滅します。巨大なメガバンクとなった彼らの業績もはやGDP連動から逃れられません。企業倒産が続出し、日本経済全体が落ち込めば、メガンクも落ち込まざるをえません。
まさにToo Big To Escape(大きすぎて逃げられない)なのです。
サラリーマン根性から抜け出して日本経済のためにメガバンクは資金の出し手としての存在感を今こそ示すべきです。