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2008年10月17日

金融パニックのNYから見た日本の滑稽なパニックぶり

10月7日、1週間の取材予定で、NYに到着した。

金融帝国アメリカの崩壊の真相を取材するためだったが、私が滞在した1週間、NYダウは5日連続の大暴落となり、12日(金)には一時、7000ポイント台まで売り込まれた。まさにPANIC WEEKだった。

●前FRB議長は「100年に1度の金融危機」と表現
アラン・グリーンスパン前FRB議長の語った「100年に1度の金融危機」という言葉をまさに体現する大暴落。「NY株式市場112年の歴史の中で最悪の1週間だった」とNYタイムズも伝えていた。まったくの偶然だったが、この最悪の1週間をNYで目撃することができた。
著名なエコノミストやCFR(米国外交評議会)で経済を担当するメンバー、あるいは銀行関係者、さらには米国トップクラスの不動産会社社長などに、時間の限り、話を聞くことが出来た。NY株式市場が恐怖と不安に悲鳴をあげている、まっただなかで、彼らの表情やしぐさをみながら、話が聞けたことは、私にとってはかりしれない意義があった。
9月15日に140年続いた名門投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻が米国社会に与えた衝撃は日本からは想像もつかぬものがあった。

「リーマンは老舗中の老舗、米国の主要企業でリーマンと取引をしていない会社はないくらいの名門投資銀行です。9月に入ってからリーマンの経営危機は話題にのぼっていたがそれはありえないと金融関係者の多くがたかをくくっていた。それだけにリーマン破綻の衝撃波が巨大なものになってしまった」しかもこの日、メリルリンチも経営危機にさらされ、バンカメの傘下で生き延びることが明らかになった。金融帝国アメリカは投資銀行と商業銀行の両輪が激しく回転を続けながら世界を牛耳ってきたが、片方の巨大な輪が脱輪してしまったのだ。邦銀のNY駐在員たちにも、これから米国の金融市場はどうなってしまうのかという恐怖感がこみあげたという。そしてNY市場ではモルガン・スタンレーはもちろんのこと、最強の投資銀行であるゴールドマン・サックスまでが「次の標的」とされ、激しく売り込まれていった。

金融帝国アメリカの崩壊が決定的になった瞬間だ。

●東京市場の暴落は単なる「いいがかり」だ
リーマン破綻をきっかけに米国の金融危機は完全にフェイズが変わった。そこから先は、恐怖と不安だけが支配する暗闇に突入したといっていい。それが世界的なクレジット・クランチだ。クレジット・クランチとは端的にいえば「いつ相手が倒産するかもしれない」という疑心暗鬼で「カネを貸せない状態」に陥ることである。銀行が企業や個人に対して銀行がシビアな貸し渋りに陥るだけならまだ救いがあるが、今、欧米の金融市場では、危なくて銀行同士が短期間の資金を融通しあうことまで出来なくなってしまった。
毎日、資金の過不足をお互いに融通しあうインターバンク市場(短期金融市場)は、「金融市場」の土台である。これが崩れてしまった。欧米の金融システムは著しい機能停止に追い込まれ、すべての金融取引の流れに支障が生じてしまった。だから世界の株式市場が未曾有の大暴落を連日、続けたのである。

NYでの取材はきわめて興味深いものであったが、NYでの取材を終えて呆気にとられたことがある。それは「日本のパニックぶり」だ。はっきりいって、NYから見ていると悲しいほど、滑稽だ。確かに日経平均が8000円台まで暴落し、大和生命破綻という予想外のショッキングな事態まで起これば、恐怖が日本中を覆うこともわかる。そこまで株価が下がれば、個人も企業もとんでもない含み損を抱えて不安心理が高まるのも当然だろう。だがこれは欧米で起こったクレジット・クランチが世界の金融市場を麻痺させていることがその最大の背景であり、日本経済の健全性を考えれば、東京市場の暴落は単なる「いいがかり」だと認識すべきだ。日本は元来が心配性で、「危機のようなもの」が来ると、それがいったいどれほどの真実味をもって現れた現象なのかを冷静に分析することもなく、ただただ「危機だ、危機だ」と騒ぎ立てる"有識者"が多すぎる。

日経BPnetにも原稿アップしました。どうぞご覧ください。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20081014/104443/?P=2

Profile

財部誠一(たからべ・せいいち)

-----<経歴>-----

1956年、東京生まれ。
1980年、慶應義塾大学法学部卒業。同年、野村證券入社。
1983年、野村證券退社。
1986年、出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストに。
1995年、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」設立。「財政均衡法」など各種の政策提言を行っている。

-----<出演>-----

『財部ビジネス研究所』 (BS日テレ、土曜23時〜 再放送:日曜9時〜)

『報道ステーション』
(テレビ朝日系/平日21:54〜)

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http://www.takarabe-hrj.co.jp/

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