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高野孟の遊戯自在録028

7月10日(日)

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 土佐の和式刃物専門店「トヨクニ」からのメルマガで、「ナギ型造林鎌」を売り出していて、「草刈り機より断然早い!気持いい!安全!」とか謳われているのを見たら欲しくなって注文しておいたのが、今日届いた。刃渡り24センチのがっしりしたナギナタ型の片刃に120センチの長柄がついた無骨なもので、重量は女性向きの380グラム、男性用の420グラム/450グラムの3種があるが、私はためらうことなく450グラムを選んだ。

 平らな草原では草刈り機が威力を発揮するが、森や藪を切り拓く時には狭いところをかい潜ったり、よじ登ったりしてして進むのに、草刈り機は長くて重くて、扱いにくい。特に、頭上に覆い被さった枝や引っ絡まった蔦を払い落とすには草刈り機は不便で、空振りしてイライラしたりすることも多い。なので、これならばいいんじゃないか、と。

 トヨクニは、もう十数年も前に若手経営者のための講演で高知市に行った時に3代目の社長と知り合って、刃物フェチの私としては、昔ながらの本格和式刃物を手作りで製造しつつもネット通販を活用してアウトドア用など新しい需要も掘り起こしているその経営姿勢に感心して、その後何度か鍛冶工場を訪れて刃物打ちを体験させて貰ったりして、私の身の回りにはナイフ、釜、鉈、斧などトヨクニ製品がいろいろ揃っている。それがまた1つ増えた。
★トヨクニ:http://www.toyokuni.net/

7月11日(月)

 午前の早稲田での大隈塾高野ゼミでは、菅の脱原発と海江田の親原発の"矛盾"をどう捉えるかという話。午後の大隈塾授業では、大隈塾授業・ゼミのOBで現役の教育学部学生の税所篤快君の講義。彼は、高野ゼミの前期を終えてから忽然と消えてしまって「あいつどうしたのかな」と思っていたところ2年後にまた現れて、ゼミの後期を受講したいと。聞けば、バングラデシュに行っていきなりグラミン銀行のムハマド・ユヌス総裁(06年ノーベル平和賞受賞者)の懐に飛び込んで、同国の貧しい農村で大学進学の機会に恵まれない高校生のためのパソコンとDVDを通じた予備校システムを実験的に構築。或る1つの村で、それがなければ到底大学受験の機会などありえない30人の高校生のうち18人が一流大学に現役合格するという目覚ましい成果をあげた。現在は、これをNPOとしてシステム化して、バングラデシュのみならず東南アジア各国に普及しようと図っている。7月初めには、米国に本拠を置くSIFE(Students In Free Enterprise=大学生が企画・実施する社会貢献事業に対する支援を行うことにより、優れたリーダーを養成することを目指すNPO)の日本大会で、税所君のプレゼンテーションが高い評価を受けて優勝し、日本代表として10月にクアラルンプールで開かれる世界大会に出場することになった。

 大隈塾の授業/ゼミはそもそも、次世代リーダーの育成が目的で、ということはつまり、「お前ら、月並みな就活なんかやめて、誰もやったことのないような事業をおっ始めて、面白い人生を送ろうよ」という趣旨である。その中から、本当にそのようにチャレンジする奴が現れて、授業の講師となって後輩たちに自分の挑戦について語るというのは、私が最初から企図している自己増殖的プログラムで、今回がその初めてのテスト・ケースとなった。
★SIFE Japan:http://www.sife.jp/

 18時半から新宿で、坂本順治監督、原田芳雄主演の「大鹿村騒動記」の試写会。監督からお誘いを受けたので駆けつけた。大鹿村は現存する南アルプス山麓の村で、江戸時代から続く「村歌舞伎」の伝統を守っている。その村歌舞伎の年に一度の公演を巡って、原田演じる鹿肉レストランのオーナーとそれを取り巻く人脈が織りなす、まあドタバタ喜劇と言っていい娯楽編。何と言っても、原田とその元妻の大楠道代の存在感と練達の演技が凄味があるし、石橋蓮司、岸辺一徳、松たか子、佐藤浩市、三國連太郎など脇役も豪華絢爛。これは当たるでしょう。
★大鹿村騒動記公式サイト:http://ohshika-movie.com/

7月12日(火)

 朝は東海ラジオ。昼は読書と原稿書き。夜はご近所の隣組「埋田組」の寄合で8月7日大山不動尊のお祭準備について打ち合わせ。私の属する金束地区のお神輿の担ぎ手(正しくは渡御者と言う)が不足で、お神輿を出せるかどうかの瀬戸際だと長老たちは悩んでいる。というのも、500〜600キロもあるけっこう重いお神輿で、常時40人、交代要員を含め60人ほどが必要だが、高齢化に伴い年々担ぎ手が減って、金束地区の場合は、近年は自衛隊の若者たち20人に応援を頼んできた。ところが今年は東北大震災での出動もあって「10人しか出せない」と言われてしまったのだ。大山不動尊を奉じる5地区のうち2地区は、もうずっと前からお神輿が出せなくなっていて、我が金束地区、鴨川自然王国が属する平塚地区とあともう1つ、3台しかお神輿が出ない状態が続いてきて、ここで金束も出ないとなると祭そのもののピンチとなる。「高野さん、いつも田植え・稲刈りに来る学生さんたちに声を掛けてくれない?」と言われて、帰って早速、ゼミの現役、OBOGの会のメーリングリストで招集をかけた。さて、何人集まるか。

7月13日(水)

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 昼過ぎのバスで上京して、今日は東京FM系JFNの番組収録。ゲストは弁護士で浜岡原発差止訴訟弁護団長の河合弘之さん。彼と大下英治の共著『脱原発』(青志社)を素材に
「原発はすぐ止めよう」「すぐに止めてもガス火力を増強すれば電力不足にはならない」などと大いに語り合った。

 終わって17時から淺草の蕎麦屋「十和田」で友人たちと会食。ほぼ同じ顔ぶれで時折やっている飲み会で、早めに十和田で一杯飲んで、19時半頃からすぐ近くのライブハウス「HUB淺草」に席を移して、私の高校同級生・ブラスバンド同期生でデキシーランドジャズの今や大御所のトランペッター=外山喜雄の演奏を楽しむという趣向。外山は、大震災による液状化で浦安の家が傾いて避難所生活をしていて、おまけに、悪いことは重なるもので、夫婦で東北被災地へ支援に行った時に奥さんが転んで手首を骨折してバンジョーが弾けない。今日は左手だけでピアノを叩いていた。それでも底抜けに明るいのが彼らで、今日も外山は「やっとこのごろ、トランペットの音が分かってきた」などと言う。高校1年生の時から吹き始めて52年間、本番がある日もない日も365日、必ず最低3時間は練習するという彼が、「やっとこのごろ」とはねえ。プロの道とはそういうものなんだね。家内と淺草泊。

7月14日(木)

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 家内は孫の世話を頼まれているとかで早く出て行って、私はホテルで原稿書き。外へ出ると昏倒しそうなほど暑い。15時から内神田の製紙会社で講演があり、「21世紀日本の課題」とタイトルが付いていたが、どんなタイトルでも最近は「原発を止めて世界初の自然エネルギー・水素エネルギー社会を実現しよう」という話しかしない。

 帰宅すると、幻冬舎から小出裕章=京都大学原子炉実験所助教の新著『原発はいらない』が届いていた。早速ウィスキーを舐めながら2時間で読了。やっぱり小出さんが一番分かりやすいし説得力がある。東北大の原子核工学科の学生だった時から40年余、原子力研究者でありながら"反原発"を貫いてきた、その人生を賭けた発言の重みだろう。

7月15日(金)

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 名古屋に日帰りで証券会社の投資家向けの講演会。投資家だろうと誰だろうと関係ない、今日もまた「原発を止めよう」だ。新幹線の往復で、鎌田實『なさけないけどあきらめない』(朝日新聞出版)を読んだ。チェルノブイリ現地に自分自身を含め医師団を94回も出して20年間関わってきた諏訪中央病院名誉院長が、「ぼくは、反省している。......原発の恐ろしさをよく知っているにもかかわらず、原発をすぐにやめろとは言わなかった」と痛切に語る。すぐに止めろと言わなかったのは「経済が悪くなると勝手に思い込んだからだ」。結局、原発は、カネと命のどちらが大事かという問題に行き着いていく。

7月16日(土)

 10時から鴨川自然王国「帰農塾」今年第2回の開講式。13時半から講義で、今回の全体テーマが「自給自足」ということなので、「火とは何か」「薪ストーブの勧め」について話した。火とは何か、エネルギーとは何かを考えるには、我々の祖先が少なくとも160万年前からエネルギーの主力として用いてきた薪というバイオマス燃料を自分で扱うのが一番だと。田淵義男によると、日本のエネルギー消費に占める薪の比率は0.2%だが、欧米では8%、北欧では15%で、いくら石炭や石油の時代になっても、それはそれとして伝統文化としての薪&ストーブはきちんと保持している。これは馬も同じで、自動車の時代が来ても、それはそれとして人類数万年の友である馬は暮らしの一部として残していて、例えばフランスでは人口6000万に対して850万の乗馬人口があってその7割は女性。バカンスには田舎を村から村へと馬でゆったりと旅するのが今も昔も人気の過ごし方である。経済効率オンリーで、石油や自動車に飛びついて薪や馬を簡単に投げ捨てるのが日本人である。田淵によると、日本ほどの森林量があるとエネルギーの10%まで薪で賄うことが可能なのだという。

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 写真は我が家の薪小屋。薪は割ってから最低でも1年半、出来れば3年寝かせてから燃やすと芯まで乾いて綺麗な炎が出る。我が家の焚き方だと、この一面の上下表裏で大体1年分ほどで、4面あるうちの3面が埋まっているから、3年分のストックがあることになる。冬に停電が来て毎日焚いてもまあ2年は大丈夫。しかし薪割りはなかなか大変で、道具もいる。手前の和式斧と鉞(まさかり)も確かトヨクニだったかな。洋式の緑色のは人から貰ったもの。その上の黄色い鉄棒のようなものはフィンランド製のログマティックという道具で、内側の重い鉄棒を片手で持ち上げてドスンと落とすと刃先が丸木を押し割っていく。斧を振り回すより力がいらず危なくもないということで、このところ薪割り族の間で人気の優れものである。チェーンソーは、その辺のホームセンターで売っているのではダメで、森林作業のプロ用のゼンリンという普通の倍近いお値段の高級品。冬でもほとんど一発でエンジンがかかるというのが売り物だ。結局、道具というのは、値段と性能は比例していて、安物を買って何度も買い換えるより初めからしっかりしたものを買って一生もので使うのが一番である。実を言うとこのチェーンソーも、10年間で日本製マキタ、ドイツ製STIHLに続いて3台目。もう買い換えることはないと思う。

7月17日(日)

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 今朝の朝日新聞「声」欄に「経団連会長の原発発言に疑問」という投書が載っている。経団連の米倉弘昌会長が"脱原発"への動きにお怒りのようだが、そもそも原発は大口需要家のために国が血税を注いで造ったもので、しかもそこから派生する仕事を受注して大いに潤ったのも経団連傘下の大資本と、それら企業から多額献金を受けた自民党ではないか。経団連が被害者顔で会見に臨み、原発停止で電力不足に陥ると企業は海外へ逃げざるを得ないという「脅迫」までおこなっているのはいかがなものか、と。

 その通りだ。あの陶製のタヌキの置物のような顔でウワゴトのように原発大事を言い募るのを見ていると胸が悪くなる。原発がないと電力が足りなくなるというのも、そうなると電気代が大幅に上がって企業がこぞって外へ出て行くというのも、はっきり言ってデマである。これは近く論説で採り上げよう。

 夜は帰農塾の交流会という名の宴会。今回は受講生が14名と近来にない多さで、中には、首都圏から能登半島の奥に移住してそこで地域興しに繋がる何かを始めるためにいろいろなところに顔を出して勉強しているという44歳男性、前々から農的生活に関心があり、加藤登紀子の本を読んで参加したという三重県四日市の31歳女性など、遠くから熱心に来て下さった方がいて感動する。

7月18日(月)

 休日だが、今年は授業が5月連休明けから始まって授業日数が足りないので、平常通りの早稲田デー。ゼミでは、毛沢東『矛盾論』を題材にして、物事をダイナミズムにおいて捉える思考方法をどう身につけるかを説いた。午後の大隈塾授業には福山哲郎官房副長官を招いて「日本のエネルギー政策」について講義と質疑応答。その中身もさることながら、枕で語った大震災発生の瞬間から3日間、一睡も出来なかった官邸での戦いの話が面白かった。ジャーナリズム大学院は、「今朝の日経新聞を読んでどんな問題意識を持ったか」を発表しあう授業。韓国人男子、中国人女子の留学生たちも積極的に発言してなかなか活発だった。

 夜はホルモン焼でゼミの飲み会。ゼミ生でない者も混じって10人ほどで賑やかなことだった。東京駅で終バスに乗る前にコーヒーを飲む。バス停から家までわずか15分ほどだが、真っ暗な峠越えの山道を運転するので少しは醒まさなければならない。12時過ぎに無事帰宅。

7月19日(火)

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 台風の影響で久々の雨の恵み。6月に植栽を終えたばかりの雑木、下草、野芝が枯れないか、このところずっと心配で、家内と交代で水遣りに励んできたが、今日は緑が息づいている。庭木より深刻なのは田んぼで、このあたり一帯、どこもカラカラで地割れを起こしている。平地の田んぼはみな川からポンプで水を汲み上げているが、山の上の棚田は大変で、タンク車で水を注入してしのいでいる。今日明日の雨で一息つけるだろう。

 8月7日の大山不動尊のお神輿担ぎの助っ人は、ゼミ現役・OB7人が名乗りを上げてくれて、私を含めて8名の名簿を組長さんに届けた。「いやあ、自衛隊が減った分が埋められて大助かりだ」と喜んで貰えた。学生たちも、高速バス代4000円は自己負担、報酬なしで朝6時から午後4時までの重労働というのによく来てくれるよな。とはいえ、7名来るとなると、バスの座席予約、バス停までの送迎の車の手配、宿泊・食事の用意等々、こちらも準備が必要で、その手配で午前中を潰した。▲

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Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
(読売TV系、月~金曜21時~)

BookMarks

東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER:インサイダー
http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

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