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高野孟の遊戯自在録027

7月4日(月)

 早稲田・大隈塾授業の今日の講師は白木夏子=HUSUNA代表取締役。ロンドン大学で国際開発経済を学んだ後、国連人口基金ハノイ事務所、アジア開発銀行研究所でインターンを経験、投資ファンド会社勤務を経て09年に日本初の"Ethical Jeweller(倫理的な宝石店)"=HASUNAを起業した。エスィカルという言葉のちょっと変わった用法だが、フェア・トレードのフェアと似たような意味合いで、多くは途上国で行われているジュエリーの貴金属素材の採掘から生産・加工・デザイン・流通のすべての過程を可視化して、それに関わるすべての人々の幸福を最大化し、また環境への負の影響を最小化するよう仕組まれた、言わば宝石におけるフェア・トレードである。

 まだ10代の時にインドに滞在して、金鉱山の劣悪な環境の下で子どもらが嘘のような低賃金で働かせられているのを目撃して、「自分たちが何の気なしに身につけている装身具が、こんなところで掘られた金で作られているのか!」と衝撃を受け、それがきっかけとなってロンドンで開発問題を勉強した。曲折を経て27歳にして独立して会社を興し、2年後の今年3月、東京・南青山に本店ショップを開店、5月には大阪のデパート内にも出店した。日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011年キャリアクリエイト部門を受賞した。

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 ご覧のように(写真はご自身のブログから無断借用)笑顔の美しいまだ(ギリギリ)20歳代のお嬢さんと言ってもいいような女性が、自分の夢(というか、学問にも体験にも裏付けられた信念)をしっかりと持って、それを世界を股にかけた逞しい行動力で、確実に実現しつつあるその生き方に、学生たちはほとんど唖然としていた。

7月5日(火)

 15時から東京・秋葉原のホールで木造住宅メーカーの提携先経営者向けの講演。大震災後、日本人はこの100年間の浮かれを反省して本来の暮らしぶりを取り戻すことを考え始めるはずで、そうなるとこの国の風土に合った木造住宅に住みたいと思う人が増えるだろう。ここへ呼ばれたからお世辞を言っているのではなく、私自身、とっくに房総の森の中に木の家を建てて薪ストーブを用いてシンプル&ナチュラル・ライフを実践している----というお話しをした。

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 夜は東京駅地下の居酒屋で、私が協力してこのほど出版された『3・11で現実化した"成長の限界"が日本を再生する』という本の打ち上げで、小学館の編集者2人と一杯。巻頭は浜矩子=同志社大学大学院教授の「成長神話の崩壊を超えて成熟国家としての再生へ」、2番目が私で「アメリカ型大量消費文明からの決別を」、以下7人の方々の論考が並んだオムニバス本。中身は面白いのだが、本はやっぱり、浜さんなら浜さんを「編著者」として立てて表紙に刷り込まないと売れないし、タイトルが長すぎるのは余計に売れないと注文を付けた。

7月6日(水)

地元紙に「今が見頃」と案内があったので、朝、車で7〜8分のところにある「大賀ハス」の蓮田を見に行った。ハスの大権威だった故・大賀一郎博士が昭和26年に千葉市の東大農学部農場で地下6メートルの泥炭層からハスの実を発掘、シカゴ大学で鑑定したところ約2000年前のものと判明した。博士が育てたところ、そのうち1粒が見事に発芽し翌年花が咲いた。以来、世界最古のハスとして県内・国内ばかりか世界各国に根分けされて珍重された。
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7月7日(木)

 午前中に待望の雨がかなり激しく降る。空梅雨で田んぼが干上がって皆困っていたが、これで少しは潤うだろう。

 夕方から近所の焼き肉屋で、鴨川自然王国の皆さんと一杯。医療用大麻の解禁に何か妙策はないかと相談した。

7月8日(金)

 5時に起きて朝風呂に浸かりながら新聞を読み始めて、出たらコーヒーと煙草、赤サインペンとカッター、それに今時だと蚊取線香を用意して、晴れていればベランダのテーブル、雨ならば網戸の内側の床で、新聞を広げるのがいつものペース。

 本日も不快な記事が多いが、その筆頭は、日経の「『健康損なう』警告写真/タバコの箱に19カ国が印刷/WHO、日本にも要請」。癌になった肺の写真などをパッケージの面積の半分以上にしろと。いい加減にしろよ。そんなに毒ならWHOは販売禁止を勧告すればいいではないか。どうしてそうしないのかの理由が分からない。酒のラベルには肝臓癌の写真を貼り付ければいいし、自動車のカタログには交通事故でグジャグジャになった死体の写真を表紙の面積の半分以上の大きさで載せればいいだろう。テレビの画面の下半分には「テレビの見過ぎは人間を白痴にする危険があります」と表示しなければ放送してはいけないことにし
よう。携帯電話の画面なら「使いすぎると電磁波があなたの脳細胞を破壊する危険があります」と常時テロップを入れたい。

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 7時から2時間かけて、先頃植えたばかりの野芝の北側部分を容赦なく侵略して来るスギナを退治し、作業小屋から小さな野菜畑にかけての雑草も一掃した。こういうことをやると、手の爪に泥が詰まって少々洗ったくらいでは落ちないが、そこで威力を発揮するのが、淺草・伝法院通の「かなや刷子」で売っている馬毛の爪刷子。田舎暮らしに必須の愛用品である。

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 11時に家を出て空港から札幌へ。北海道トラック協会青年部の講演で、震災後の日本の生き方と原発の行方について話した。とんぼ返りして22時半から新宿・歌舞伎町の居酒屋で前北海道新聞の高田昌幸記者が6月末を以てめでたく退社したお祝い。2004年に「北海道警の裏金問題」取材班を率いて警察の腐敗を徹底的に追及、その報道ぶりは新聞協会賞、JCJ大賞、菊池寛賞、新聞労連ジャーナリスト大賞を次々に受賞するほど評価を受けたが、同取材班による『警察幹部を逮捕せよ!』(旬報社)と『追及・北海道警"裏金"疑惑』(講談社)の2冊の本が名誉毀損に当たるとして道警が北海道新聞社と高田さんら2人の記者を告訴、昨秋札幌高裁で敗訴が確定した。社は、道知事、道議会与党の自公両党、道警など地方権力総ぐるみの圧力に早々に屈して戦いを回避したばかりでなく、2人の記者を左遷するなどして恭順の意を示した。

 高田さん、51歳。「綺麗さっぱり辞めて、まだ1週間。非常に快適な毎日です」と言うが、さあこれから第2のジャーナリスト人生をどう描くか。若いフリー記者たちや元日刊ゲンダイの二木啓孝らを交えた酒盛りは午前2時近くまで続いた。歌舞伎町の安ホテル泊り。.

7月9日(土)

 昨夜頂いた、間もなく店頭に並ぶ高田さんの新編著『希望』(旬報社)を読み始める。大震災の1年前から企画され取材も進んでいた、生きることの希望のありかを探るインタビュー集だが、大震災が起きたので締め切りを延ばしてその関連の5人を追加してそれを第1部に置いたので、インタビュー相手は63人、ページ数は400ページを超える大冊となった。1人1人の語り口は生々しくて重い。じっくりと読むべき本である。

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 11時から麻布十番でスタッフと打ち合わせのあと、別用で都内に泊まっていた家内を拾って帰る。途中、高速を下りて5分、家まで後10分という街道沿いにあるお気に入りの蕎麦屋「きのや」(前にも本録に何度か出て来ているが)に寄って昼食。ふと見ると店内の雑然たる飾り棚の一角に「白戸三平選集」や「カムイ外伝」が並び、店主と白戸さんが並んだ写真が貼ってある。白戸さんがこの近くに住んでいることは知っていたので、「よく来られるんですか」と訊ねると、「前はよくここにお仲間と一緒に酒を飲みに来てましたが、ここ何年かはもうすっかり...。だいぶお歳だし、息子さんも奥さんもいなくなって一人暮しで、あんまり外へも出ておられないのでは」とのことだった。私らが学生の頃には『ガロ』に連載された「カムイ伝」はバイブルのようで、白戸さんは、マルクスやサルトルや吉本隆明や羽仁五郎やボブ・ディラン等々と並んで、「聖者群」に列せられていた。私のちょうど一回り上だから、そろそろ80歳だと思うが、どんな晩年を迎えておられることだろうか。「カムイ伝」の読み方として優れているのは田中優子『カムイ伝講義』。白戸作品の総覧として恐れ入ってしまうのは......
★白戸三平ファンサイト:http://asa8.com/s/

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Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
(読売TV系、月~金曜21時~)

BookMarks

東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER:インサイダー
http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

→ブック・こもんず←



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