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鞄の中身(2) 水ボトル

鞄の中身(2) 水ボトル SIGG Classic

 日本には555万台のペットボトル飲料自動販売機があって、国民1人当たり年間168本を消費するという。1人1日2本ということで、これはもう「リサイクルすればいいじゃないか」という次元を遙かに超越している。そこで「マイボトルを持とう」ということで、私も以前から、そのへんのホームセンターで買った安物の魔法瓶や水筒を持って歩いたり忘れて出てしまったりしていたが、最近知人から「マイボトルならこれしかないですよ!」と勧められて欠かさず持ち歩いているのが、スイスのSIGG社のアルミ製ボトル。軽くて堅牢、安全、そして何よりフォームとデザインが美しい。

IMG_0381.JPG

 SIGG社は社員わずか60人ほどの小企業で、1908年に創業してレジャー用品、台所道具などを地味に作ってきたが、その製品の1つであったレジャー用の水筒が、環境保護意識の高まりに乗って90年代から世界的に大ブレーク。そのため98年からは同社はこのボトルの生産・販売だけに事業を集中して製品の質の改良とラインナップの拡張を図り、今では欧州市場を完全に席巻したばかりか、数年前から米国でも大流行を引き起こし、いま日本でも愛好者が急増中という、まさに水筒の世界No.1企業に躍り出た。

SIGG:http://www.sigg.ch/default.htm

 最大の特徴は、純度99.5%の純度の高い1枚のアルミ板を600トンのプレス機械を使って深絞り加工して、継ぎ目がなく(従ってハンダ付けもない)ボトルの形を仕上げていく技術にある。さらにその内面は、キッチン用具やストーブの表面加工に使われるホウロウ吹きつけ技術によってコーティングし、果実の酸や糖分配合飲料などに侵されない完璧な安全性を実現している。そのため、形はシンプルな円筒型で、そのシンプルさがかえって表面の自由な彩色とデザインを許していて、カタログを見ているだけで楽しくなる。この製品の一部はニューヨーク近代美術館にも現代を代表する工業デザインとして収蔵された。大きさは300ミリリットルから1リットルまで、種類は子供用、レジャー・旅行用、スポーツ用、シティ・一般用と分かれているが、それは主として栓の形状が違うだけなので、別売の栓だけ買って付け替えればどの目的にも使える。

 シンプルだとはいえ、飲み口の口径や厚みや微妙なくびれがまことに口当たりがよくなるように絶妙に作られていて、さらにネジも内側の少し奥まったところに切ってあるのでギザギザが唇に触れたりすることがない。そしてそのくびれは、これも別売のおしゃれなストラップを引っかけるのにも役立っていて、肩に掛けて歩くことも出来る。スイスらしい繊細なモノづくり精神が隅々まで行き届いた逸品である。これを手にして初めて、私はそのへんで中国製の安物の水筒を買って事足れりとしていた自分の不明を恥じたのである。

 これを勧めた知人がその場でこの白いボトルを私にプレゼントしてくれたので、私以外の家族や孫のマイボトルをまとめて注文し、家族全員でSIGGを持ち歩くことにした。

 さてペットボトルとは、プラスチックの一種であるポリエチレンテレフタラート(PET)を材料として作られるのでそう呼ばれる(ちなみに英語ではplastic bottleで、PET bottleと言っても通じない)。日本の飲料業界ではかつて「1リットル未満のペットボトルは製造・使用しない」という自主規制があったが、「リサイクル可能ならいいんじゃないか」ということになって、95年の「容器包装リサイクル法」で消費者・行政・事業者それぞれの責任分担でリサイクルを推進していくことを前提に解禁、ガラス瓶や缶に代わってペットボトルが一挙に飲料容器の主流となって普及した。自治体レベルと事業者レベルでの分別収集を徹底し、自治体が交付金を出して各地に指定工場を建設して再商品化を進めるという図式が、バラ色の循環型社会を切り開くかの幻想が振りまかれた。それで確かに回収率は上がって、ペットボトルリサイクル推進協議会によると06年で66.3%で世界でもトップ級(例えば米国は20%程度!)をキープしているものの、再商品化率となると(公表されていないが…何故しないの?)20%程度で、全国に約70ある自治体肝煎りの再商品化工場の4分の3は休眠状態に陥っていると言われる。残りはどうなっているかと言えば、他ゴミと一緒に焼却したり、指定外の業者に入札などで払い下げられて粗悪なペットクズとして中国などに大量に輸出されている。

ペットボトルリサイクル推進協議会:http://www.petbottle-rec.gr.jp/

 再商品化の1つはペットボトルをペットボトルとして再生する永久循環型(?)で、03年に帝人グループが徳山で量産工場を鳴り物入りで立ち上げたが、原料高騰でたちまち行き詰まって2年後に操業停止した。元々新品を作るより製造コストが高く品質も不安定なペットボトル再生を敢えて事業化したのは、そのコスト高を自治体の交付金で埋めることになっていたからで、原料価格も新たに投入する石油価格も高騰したのでは自治体も負担増に耐えきれない。もう1つは、回収したボトルを粉砕してペレット状にして繊維などにするもので、各地の工場のほとんどはこれに取り組んできた。が、これも原料高騰で割に合わなくなった。再商品化は事業モデルとしては破綻しているといって過言でなく、採算に合わなくても環境保護のために続けるのかどうか、続けるとすれば誰の負担によってかという政治的判断の問題に直面している。自治体の負担は総額で約3000億円に達していてこれ以上は無理であり、政府も金を出す気はない。勢い業者の負担ということになるが、業者もまた悲鳴を上げている。

 他方、中国などへの輸出も問題で、廃棄物の輸出を禁じたバーゼル条約に違反するとの指摘もある(が、日本はこの条約を批准していない)。日本の業界は、処理されたペットックズは廃棄物ではないという見解で、輸出分も事実上のリサイクルに当たるから、実際の日本のリサイクル率はもっと高いと主張している。

 なおここでコストという場合に、自治体やコンビニなどが回収する場合に、内部が汚れていたり異物が入っているものを除去し、他の素材のボトルが混じっていないか分別を確認し、キャップを外し簡単に洗浄するなど1次処理するための手間、トラックの燃料代、中国にクズを輸出しそれがカーテンや床マットなどに加工されてまた日本に輸入される輸送費等々は含まれていないから、全体ではリサイクルのためにまた大量の石油を含むコストを投入するというジレンマからは到底逃れることは出来ない。それが全部でどのくらいのコストになり、それがコストに見合うだけの環境保護に役立っているのかどうかについては、武田邦彦と山本弘の間の有名な論争があるが、そういう基本的なデータの公開もないまま「リサイクルはいいことだ」という程度でこの政策を押し通してしまう政府と国会の責任は大きい。

 消費者レベルでは、まずペットボトルを買わない、捨てないのが一番で、これこそが究極の解決策である。しかし、どうしても買ってしまう場合もあって、その時に、捨てないで水筒として再利用すれば無駄にならないじゃないかと思う人もあるかもしれないが、それは素人考えで、全国清涼飲料工業会がHPで「やめてくれ」と言っている。衛生上、安全上よろしくない上に、ペットボトルには、標準温度用(白キャップ)、熱いお茶などの高温度用(オレンジ色キャップ)、冷凍可能用(水色キャップ)などの性能の違いがあって、例えば高温度用に水を入れて冷凍したり、標準温度用に熱いものを入れたりすると破裂するなどして危険である。飲み残しを冷蔵庫に入れて保管するのも、飲みかけをバッグに入れて持ち歩くのも「出来るだけやめて、一度栓を開けたら早めに飲んでくれ」と。ひえーっ、そうだったのか。空気中や口中の雑菌などが中に入って繁殖したり、バッグの中で結露して携帯電話やパソコンなどの精密機器に影響したりするのだそうだ。

全国清涼飲料工業会:http://www.j-sda.or.jp

 そうでなくとも、そもそもペットボトルの材質には酸素を透過する性質があって、時間が経てば内容物を酸化させる(つまり腐らせる)可能性があり、それを防ぐために多くの飲料には酸化防止剤としてビタミンCが添加されている。ペットボトルで飲むと余計な添加剤まで飲まなければならない。店頭で長い時間置かれていた場合には酸化が始まっている場合もありうるから、賞味期限のチェックも欠かせない。それに近頃は異物混入事件も頻発していて、上記HPでも「栓の未開栓・開栓済みの見分け方」を告知しているほどだから、栓もよく確かめないといけない。さらに、「ペットボトル症候群」というのもあって、それは多くの飲料に6〜10グラム程度の糖質が加えられていて、若者の中には水代わりにスポーツドリンクのようなものを1日に2リットルも飲んでいる者がいるが、そうすると角砂糖を毎日30〜50個食べている計算になり、それが原因で糖尿病になるという。こんな思いをして何でペットボトルで水分を摂らなければならないのか。

 水道の水が不味いということはまた別の問題だが、ともかく昔は水を湧かしてお茶を入れ、茶碗で飲んでいたし、遠出をするときはそのお茶を水筒に入れて肩から斜めに掛けて出歩いた。みんながそうすれば、このペットボトルを巡る膨大な問題群がすべて一瞬にして消滅する。それだけの話なのだ。だから、みなさん、SIGGでなくとも結構、自分で納得の行く、ということは愛着の持てるお気に入りの水筒を探して持ち歩こうではありませんか。▲

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コメント (1)

かなりぼこぼこになってきましたが、自分も真っ赤なsiggを愛用してます。派手な色なので置き忘れもなく重宝してます。

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Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
(読売TV系、月~金曜21時~)

BookMarks

東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER:インサイダー
http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

→ブック・こもんず←



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