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春山昇華『サブプライム問題とは何か』を読もう! »

レーニン『帝国主義』を読もう!?

昨日のサンプロに、前日に東京で開かれたG7(7カ国蔵相・中銀総裁会議)を終えたばかりの額賀福志郎財務相が出演して、サブプライム問題をきっかけとした世界金融システムの動揺について、全く危機感のない緩んだ話を綿々しているのにだんだん腹が立ってきて、思わず「レーニンの『帝国主義』でも読んだらどうか」と、あらぬことを口走ってしまった。発言を記憶に従って再現すればほぼ次のような趣旨だった。

「金融商品の透明化を図るとおっしゃいますが、根本的な問題は、1つは、さきほど額賀さんが言及した“金融安定化フォーラム”がG7に対して提出した中間報告がサブプライム・ローンについて『詐欺的な融資慣行が横行している』と言っているわけで、まずアメリカ国内の問題としてこんな詐欺まがいのローンを止めさせなければならない。もう1つは、さらなる詐欺的行為として、その怪しいサブプライムを束にしてさらに別のローンの束と一緒にして証券化して金融工学なるもので数式をまぶして『ほれこのようにリスク分散されていますよ』と言いくるめて売り飛ばすというやり方。これはインチキなビーフ・ハンバーグみたいなもので、豚肉が混じっていたからその部分だけ取り除けと言ってもミンチになっているから今更取り出せない。だから透明化は無理なんですね」

「私は、G7の皆さんにレーニンの『帝国主義』の勉強会を開いて貰いたいと思います。本来は産業に対する“控えめな仲介者”であった銀行それ自体が独占体となって産業を支配し、そうなると資本主義はモノ作りを通じて富を生産するという本来のあり方を失って、金利が金利を生む金融詐術(騙しのテクニックですね)によって利潤を生むようになって、資本主義が腐っていく——と言っている。アメリカ流というかアングロ・サクソン式の金融資本主義の根太が腐って底が抜け始めている。レーニンが100年前に言っていたとおりのことが今まさに起きているんですよ。そういう根本的な構造問題にメスを入れることなく“透明化”なんて言っていてもしょうがないじゃないですか」

それに対する額賀の返答は、引き続きムニャムニャしたもので、何を言ったか私はよく覚えていない。まあ、財務相に対して「レーニンを読め」などとガサツなことを言う人はいないだろうから、彼も戸惑ったことだろう。番組後、隣にいた司会の寺崎貴司が「そうですか、レーニンが100年前に言っていたんですか」と盛んに感心し、番組スタッフの何人かも同じことを言い、さらに昼食会の席で田原総一朗さんが「いやあ、サンプロでレーニンが出てくるとは思わなかった。レーニンは死んだと思われていたけど、日本で生きていた」と面白がってくれたので、私は「額賀がモッチャモッチャラ言っているので段々腹が立って来て、思わず言ってしまった。どうも、私の歪んだ基礎教養が出てしまって、すいません」と茶化した。

家に帰って、私の要約の仕方が正しかったかどうか気になって、『帝国主義』(岩波文庫)を読み直した。要点は以下の通り。

●レーニンの見通しは正しかった

▼ケストナーはこう書いている。「純経済的な活動の部面でも、従来の意味での商人的活動から組織的=投機的活動へのある推移が起こっている。最大の成功を収める者は、自分の技術的および商業的経験にもとづいて、顧客の欲望をもっとも正確に理解し、まだ潜在的な状態にある需要を発見して、これをいわば『あかるみに出す』ことのできる商人ではなくて、組織の発展と、個々の企業と銀行のあいだの特定の結びつきの可能性とを、予測できるか、あるいは予感だけでもできる投機的天才(?!)である」。普通の人の言葉に翻訳すれば、これは次のことを意味する。すなわち、たとえ商品生産は従来どおり支配的で全経済の基礎と考えられるにしても、しかし実際には、それはすでに破壊されており、主要な利潤は金融的術策のの“天才たち”の手に帰するようになるほどに、資本主義の発展は進行した、ということである。これらの術策と詐欺との基礎には生産の社会化があるが、やっとこの社会化までこぎつけた人類の巨大な進歩が、なんと、投機者を利するようになっているのだ(第1章、P.45)。

▼銀行業務の発展と少数の銀行業務の集積とにつれて、銀行は仲介者という控えめの役割から成長転化して、資本家と小経営主との総体の貨幣資本のほとんどすべてと、またその国やいくたの国々の生産手段および原料資源の大部分とを自由にする、全能の独占者となる。多数の控えめの仲介者からひとにぎりの独占者へのこの転化は、資本主義的帝国主義への資本主義の成長転化の基本的過程の1つをなすものである(第2章、P.51)。

▼少数者の手に集積されて事実上の独占を享有している金融資本は、会社設立、有価証券の発行、国債の引受、等々によって、巨額の、しかもますます増大する利潤を獲得し、こうして金融寡頭制の支配を強化し、全社会に対して独占者への貢物を課している(第3章、P.89)。

▼資本の所有と資本の生産への投下との分離、貨幣資本と産業資本あるいは生産資本との分離、貨幣資本からの収益によってのみ生活している金利生活者と企業家および資本の運用に直接たずさわっているすべての人々との分離——これらは資本主義一般に固有のものである。帝国主義とは、あるいは金融資本の支配とは、このような分離が巨大な規模に達している資本主義の最高段階である。他のあらゆる形態の資本に対する金資本の優越は、金利生活者と金融寡頭制の支配を意味し、金融上の“力”を持つ少数国家がその他すべての国家に対して傑出することを意味する(第3章、P.98)。

▼帝国主義とは…ある少数に国々における…貨幣資本の膨大な累積である。その結果、金利生活者、すなわち“利札切り”で生活している人々、どのような企業にもまったく参加していない人々…の階層が、異常に増加するようになる。帝国主義のもっとも本質的な経済的な基礎の1つである資本輸出は、金利生活者の生産からの分離のこの完全な離脱状態をさらにいっそう深め、いくつかの海外の諸国や植民地の労働の搾取によって生活している国全体にたいして、寄生性という刻印を押す(第8章、P.162))。

▼輸出の増加はまさに、金融資本の詐欺的な術策と結びついているのであって、この金融資本は、ブルジョア道徳などにはおかまいなしに、1頭の牛から2枚の皮を剥ぎとるように…」(第9章、P.189)。

▼独占は銀行から発生した。銀行は控えめな仲介的企業から金融資本の独占者に転化した。もっとも進んだ資本主義国はどの国でも、3つか5つぐらいの最大銀行が、産業資本と銀行資本との“人的結合”を実現し、全国の資本と貨幣収入の大部分をなす幾十億の金の支配権をその手に集中した。現代ブルジョア社会の、例外なしにすべての経済機関と政治機関の上に従属関係の濃密な編みを張り巡らしている金融寡頭制——これこそが、この独占のもっとも鮮やかな現れである(第10章、P.200)。

▼帝国主義の諸傾向の1つとして、“金利生活者”、高利貸国家の形成ということが、ますます明瞭にあらわれてくる。この国家のブルジョワジーはますます資本の輸出と“利札切り”とによって暮らしている(第10章、P.201)。

ということなので、私のとっさの要約はそう間違っていなかったことになる。問題は、ここでレーニンが言っている金融寡頭制が、およそ100年後の今日、その中心が米国に移り、なおかつコンピューターとインターネットという電子的手段を得て、彼には全く想像もできなかったほどにまで肥大化したことである。

●スーザン・ストレンジの警告

金融の電子的肥大化について、真っ先に警鐘を鳴らしたのは、私の知る限り、スーザン・ストレンジの『カジノ資本主義』(岩波書店、88年刊)。この書は、訳書が刊行された直後からインサイダーでは何度も引用しているが、改めて要点をまとめておこう。

▼西側世界の金融システムは急速の巨大なカジノ以外の何物でもなくなりつつある。毎日ゲームが繰り広げられ、想像できないほど多額のお金がつぎ込まれている。夜になると、ゲームは地球の反対側に移動する。世界のすべての大都市にタワーのようにそびえ立つオフィス・ビル街の部屋々々は、たて続けにタバコに火をつけながらゲームにふけっている若者でいっぱいである。彼らの目は、値段が変わるたびに点滅するコンピュータ・スクリーンでじっと注がれている。彼らは国際電話や電子機器を叩きながらゲームを行っている。彼らは、ルーレットの円盤の上の銀の玉がかちっと音を立てて回転するのを眺めながら、赤へ黒へ、奇数か偶数へ自分のチップを置いて遊んでいるカジノのギャンブラーに非常に似ている。

▼カジノと同じように、今日の金融界の中枢ではゲームの選択ができる。ルーレット、ブラックジャックやポーカーの代わりに、ディーリング——外国為替やその変種、政府証券、債券、株式の売買——が行われている。これらの市場では先物を売買したり、オプションあるいは他のあらゆる種類の難解な金融新商品を売ったり買ったりすることで将来に賭をできる。遊び人の中では、特に銀行が非常に多額の賭をしている。きわめて小口の相場師も数多くいる。アドバイスを売っている予想屋も、騙されやすい一般投資家を狙うセールスマンもいる。この世界的な金融カジノの元締めが大銀行と大ブローカー^である。…国際金融システムを賭博場と非常に似たものにしてしまった、何か根本的で深刻な事態が起きたのである。それがいかにして生じたのかは明らかでない。

▼確かなことは、それがすべての者に影響を及ぼしていることである。自由に出入りができるふつうのカジノと、金融中枢の世界的カジノとの間の大きな違いは、後者では我々のすべてが心ならずもその日のゲームに巻き込まれていることである。通貨価値の変動は農民の農作物の価値を収穫前に半減させてしまうかもしれないし、輸出業者を失業させてしまうかもしれない。金利の上昇は小売商の在庫保有コストを致命的なまでに引き上げてしまうかもしれない。金融的利害に基づいて行われる企業買収が工場労働者から仕事を奪ってしまうかもしれない。大金融センターのオフィス街のカジノで進められていることが、新卒者から年金受領者まですべての人々の生活に、突然で予期できない、しかも避けられない影響を与えてしまうのである。金融カジノでは誰もが“双六”ゲームにふけっている。サイコロの目がうまく揃って突然に幸運をもたらすか、、あるいは振り出しに戻してしまうかは、運がよいかどうかの問題である。

▼このことは深刻な結果をもたらさざるを得ない。将来何が起きるかは全くの運によって左右されるようになり、熟練や努力、創意、決断、勤勉がだんだん評価されなくなる。そうなると社会体制や政治体制への信念や信頼が急速に消えていく。自由な民主社会が最終的に依拠している倫理的価値への尊敬が薄らいでいく危険な兆候が生じる(以上第1章)。

▼はるかに重大なことは、この不況の経済シナリオの政治的影響である。一世代全体が経済システムに幻滅し、デフレーションとスタグフレーションが代わる代わるにやってくるジェットコースターから逃れることができない時、政治的反作用が必ず生じる。1930年代のヨーロッパの経験は2つの共通の対応があることを示唆している。1つはあらゆる種類の政治に対する完全な反発、第4共和制下のフランスで多分頂点に達したような精神的無気力である。いま1つは、アドルフ・ヒットラーのようなデマゴーグ、政治的売薬行商人の後に従うことである、デマゴーグは、ごたまぜの社会的偏見を激しい国民感情を喚起するインチキな歴史とインチキな科学の中に包み込むであろう。前者の場合には政府は弱く、不安定になる。後者の場合には、政府は野蛮で、堕落し、弾圧的で、しばしば攻撃的になる。これらの政治的帰結は、いずれ国際関係に波及する。…共通の価値を持った自由民主主義国の同盟を維持することがますます困難になる。将来がどうなるかについてのビジョンの欠如は、現在の道徳も損なってしまう。アメリカはしばらくの間、おそらく現在のように軍事的、政治的、経済的に支配的な立場からする特権的免疫を享受できるであろう。アメリカは、自分の思い通りに進み、多国に苦痛に満ちた調整を引き受けさせるために、軍事的保護者として、あるいは干渉主義のおせっかい屋として、あるいは主要貿易相手国としてその交渉力を発揮できるだろう。しかし、最終的には、そのようにして同盟を繁栄させたり、維持することはできない(第7章)。

事実上無制限の電子空間での金融取引が、限りある地球上での実物経済の100倍にも達しようかという、レーニンも想像しなかったほどの金融的ふしだらの果てに、典型的には、石油が実物としては需給が逼迫していないというのに先物相場に乱入した一握りのギャンブラーたちのせいで史上空前のレベルにまで高騰し、世界中の人々の暮らしに打撃を与えているといった事態が、ますます深刻化する。そのギャンブラー達は、サブプライム問題で証券化された金融新商品ではゲームが続けられないので石油に目を付けたのである。このようなカジノの創設者であり推進者である米国は、これまではそうやって世界中から資金を環流させてその借金で自分らの生活を膨らませる特権を享受してきたが、いよいよそれが立ち行かなくなって、同盟国を引き続き協力させるための方策も尽きているというのが、G7が直面している本当の問題であるというのに、彼らは「金融商品の透明化」などと間抜けなことを話し合ってそれさえも有効な解決策を見いだすことができなかった。私の1年半前の著書のタイトル『滅びゆくアメリカ帝国』がますます現実のこととなりつつある。▲

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コメント (3)

自国の利が他国の不利益、
他国の不利益なくしては自国の利はないという今の世界の仕組み、
こんなシステムはひといちばい善良な私の心をも蝕む

takano said

より実物経済に進化させるよい方法を考えついたが集中力をつかいはたしてしまい 文字化できずに途中でバテテしまった、その先はさあ貴方が誰が考え付くのかな

takano said (限りある地球上での実物経済の100倍にも達し)../

より実物経済に進化させるよい方法を考えついたが集中力をつかいはたしてしまい 文字化できずに途中でバテテしまった、その先はさあ貴方が誰が考え付くのかな

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Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
(読売TV系、月~金曜21時~)

BookMarks

東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER:インサイダー
http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

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