生き物文化誌が「鶴見良行」特集/懐かしかった!
私も会員になっている「生き物文化誌学会」の会報『ビオストーリー』第6号が「歩く学問・鶴見良行の眼」を特集している。
鶴見さんは、『バナナと日本人』(岩波新書)、『なまこの眼(まなこ)』
(ちくま学芸文庫)などの名著で知られるアジア学者で、『鶴見良行著作集』全12巻がみすず書房から出てもいる。鶴見俊輔さんの従弟で、1926年に米国に生まれ19歳で終戦を迎えるまで米国に育って米国籍も持っていた。が、戦後、日本国籍を選んで帰国して、やがて東京・麻布の国際文化会館のスタッフをやりながら、鶴見俊輔、吉川勇一、武藤一羊の各氏らと共に「べ平連」を作ってベトナム反戦と脱走米兵支援の活動に取り組んだ。75年にベトナム戦争が終わると、アジアの民衆生活に根ざした学問をやろうと、吉川・武藤両氏らと共に「アジア太平洋資料センター(PARC)を創設、そこを拠点に独特の“足で歩く学問”を展開した。
私は、師匠の山川暁夫氏が彼らと親しかった関係から、PARCが出来たときから出入りし、ボランティアでそのニュース発行を手伝ったりし、後にはPARCの事務所があった神田神保町のビルの1つ下のフロアが空いたというのでそこにインサイダーの事務所を移してPARCの人たちといろいろなことを一緒にやったので、談論風発止まるところを知らない鶴見さんからも多くのことを教わった。
この特集には、鶴見さんが晩年奉職した龍谷大学の中村尚司経済学部教授と生き物文化誌学会会長の対談「鶴見良行が目指したもの」をはじめ、彼のお弟子さんや担当編集者だった人たちによる思い出話など8編が収められていて、胸に染みるような懐かしさと共に読んだ。
『ビオストーリー』は、小長谷有紀さん(国立民族学博物館教授)が編集長、編集委員には秋篠宮文仁さんも入っている。書店もしくは発行元の京都「昭和堂」(075-706-8818)で注文できる(1500円)。また生き物文化誌学会の活動にご関心ある向きは下記を参照のこと。
また、アジア太平洋資料センター(PARC)については次を。
PARCがその事業の1つとして毎年5月〜12月に行っている「PARC自由学校」は、言わばアジア・第3世界志向のカルチャーセンターで、毎年すばらしいプログラムを組んでいる。2007年のカリキュラムは、ことばの学校(英語・中国語・タミル語・アラビア語の8講座)、世界を知る学校(連帯経済・東アジア像・暮らしから考えるグローバリズム・ポストアメリカの世界・民際協力の5講座)、社会を知る学校(不安社会ニッポン・となりに生きる外国人・オルタナティブメディア・検証戦後史の4講座)、環境と暮らしの学校(エコ的豊かさ・食農教育・からだとこころ・さかな・東京で農業など6講座)、表現の学校(写真教室・詩・ラテンダンス・西アフリカダンス・三線・ミュージアム入門の6講座)で、以前に何度か講師を務めたことのある私でも他の教室を覗いてみたくなるような、まさに鶴見学を継承する充実した内容。現在、生徒募集中なので上記HPを見て申し込んでください。なお札幌、名古屋、京都、福岡でもそれぞれに地域に根ざした個性的な自由学校が開かれている。▲