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2006年11月24日

帯広でランチョエルパソの放し飼い豚と遊んだ!

21日に帯広商工会議所青年部(帯広YEG)主催の講演とシンポジウムがあって、久しぶりに帯広に行ったので、翌日は旧知のレストラン「ランチョエルパソ」亭主=平林英明の自宅兼豚牧場を訪れて、広大な林野で自由奔放に放し飼いされている240頭の豚の世話を手伝ったり遊びの相手をしたりして過ごした。

pig1.jpg

平林とは、10ほど前に故・藤本敏夫に連れられて帯広に行って、平林が経営する市内の著名レストラン「ランチョエルパソ」と郊外にある自宅兼乗馬クラブ「リバティファーム」とを訪れたのが最初で、彼が作る地ビールと手作りのハム・ソーセージ、緑の林道や純白の雪原を馬で乗り回す魅力にたちまち虜になって、やがてその乗馬クラブの一角にログハウスを東京の何人かで共有して、年に3〜4回は2泊3日程度で通い詰めることになってしまった。私たちが行くと、平林の周りに集う面白い人たちが集まってきて、一緒に馬に乗ったりサウナに入ったり、夜はそのログハウスで宴会になって十勝の町づくりについて酔い潰れるまで議論したりして、その集まりのことをいつしか「十勝渓流塾」と呼び、またその場を提供してくれている平林の牧場を「十勝自然王国」とも呼んで、「鴨川自然王国」との同盟関係を樹立したのだった。加藤登紀子さんももちろんここを何度も訪れていて、平林夫妻のファンである。

ランチョエルパソ:http://www.elpaso.co.jp/

その後平林は、レストランのほうが忙しくなって、乗馬クラブの経営は止めたが、馬の数頭は残してプライベート牧場にし、そのうちの1頭である「ラージドリーム」は私の名義にしてもらって行く度に乗り回していた。が、やがて彼は、手作りハム・ソーセージの探究が高じて自分で豚を飼うようになり、馬の世話までは手が回らないということで残った数頭を手放した。他方、私はこの2年間ほど、鴨川での自宅建設と、この《ざ・こもんず》事業起ち上げもあって忙しく、帯広から足が遠のいていた。だから今回はほぼ2年ぶりの帯広訪問だった。

講演の翌22日は牧場に行って豚の世話を手伝った。平林は当初、育豚業者から生後約100日、体重90キロ程度の豚を買って、それをかつての馬の放牧場である広大な林野に放し飼いにして育養して、それでハム・ソーセージを作っていた。それでなくとも彼のハム・ソーセージは美味しかったし、そうやって肥育期に自然の中で健康に過ごした豚を素材にしたそれらはますます美味しかったが、彼の探求心はそこに留まることを許さず、今年夏からは、生後25日、体重5〜6キロの乳離れしたばかりの子豚の段階で買ってきて、最初は温度完全管理の哺育舎で丁寧に50日間育て、それからパドック付きの育成舎に移して30日間、豚舎と外のパドックを自由に行き来させて野外に慣れさせる。そうやって計100日余り経った豚を、いよいよ敷地の下の林野に連れて行って100~150日間放牧、140キロほどに丸々と太ったところで出荷するのである。屠場で捌いた肉は全量引き取って、ハムやソーセージ、最近開発して人気が高い豚丼や豚ステーキなどに加工し、レストランで出すだけでなく真空加工してインターネット通販で販売する。

90キロになった豚を仕入れていた頃は、4カ所の豚生産者から持ち込まれる豚の健康度がまちまちで、中には病気になったり死んだりする豚もあった。また生産者によっても、あそこの豚はみな健康だが、こちらの豚はそうではないということが起こる。ということは、90キロに育つまでの飼育方法が問題で、やはり子豚の段階から自分で納得できるように育てなければダメだということになった。

放牧場は、東京ドームの5〜6倍はあるかという広大なもので、東側の入口には柵と扉があるけれども、南側は大きな池、北側は白樺林の向こうに川が流れていて、西側はどこまでも続く林で柵がない。豚たちは夏には池で泳いだり、冬の今でも川に足を入れて水を飲んだり、林の中を歩き回ってクルミの実を食べたり、腐葉土に鼻ごと顔を突っ込んで土からミネラルを補給したり、全く自由気ままに過ごしているので、みな丸々と堅太りして肌もつやつやしていて、「豚が汚い」とか「臭い」というのは飼い方の問題にすぎないことがよく分かる。いずれ殺されて食われてしまう運命ではあるのだけれど、生きている間このように豚生を謳歌して楽しく過ごすことの出来る豚たちは幸せだ。

pig2.jpg

実際、多くの育成場では、体がやっと入る程度の板囲いの中で身動きも出来ない状態で機械的に流れてくる水と餌を飲み食いするばかりで、無理矢理ブヨブヨに太らされるので、病気になる確率も高い。酷いところだと30%が出荷までに死んでしまい、全北海道平均でも10%が死ぬという。が、平林のやり方だと、もちろん標準的な予防注射を打ち、軽い病気になって治療する場合もあるが、この方式にしてから今までに1頭も死ぬ豚はいないという。

23日朝には、たまたま日本テレビの朝ワイド「スッキリ!」(テリー伊藤ほか)で、平林の豚飼いぶりが「豚の匠」として取り上げられるということで、平林夫妻と共に朝食をとりながら今か今かと待ち受けた。始まってしまえば5分か7分の短い番組で、2日間も取材の撮影隊と付き合った夫妻にしてみれば不満も残ったようだが、しょせんテレビはそんなもので、むしろその短い時間の中で、彼の豚へのこだわりがポイントを押さえてキチンと報じられていたことを喜ぶべきだろう。またその中では、洋食レストランチェーンのアプレシオが幕張のAPAホテル48階にオープンした「アプレシオ東京ベイ幕張」店で、平林の豚製品を全面的にメニューに採り入れることになり、平林自慢の豚丼や豚ステーキも気軽な値段で味わえることが紹介されていた。「こりゃあいい宣伝だ」と喜んでいると、間もなく店のほうから電話があって、番組が終わった直後から電話やネットでどんどん注文が入り始めたと報告があった。このようなレストランチェーンとの提携が成功すれば、豚の匠=平林もいよいよ全国区になって商売が軌道に乗るかもしれない。まだ喜ぶのは早いが、長年苦心惨憺、本物の豚肉をどうしたらお客に届けることが出来るかの一念で頑張ってきたのだから、報われて当然なのだ。

テレビを見終わった頃に、北海道でも数少ない豚専門の獣医である江口暢先生が札幌から定期検診にやってきた。今日の仕事は哺育舎の80頭の子豚たちに何だかの予防注射を打つこと。柵の中に入って平林が20キロほどある子豚を1頭ずつ抱え上げると、手足をバタバタさせてギャー、ブオワーと断末魔のような叫びを上げる。その耳を先生が押さえて首筋に素早く注射を打ち、すかさず奥さんのトミさんがお尻に赤いマークを付けるという連携作業だ。マークを打たないとどれが打ってどれが打っていないか見分けが付かない。1頭がギャーギャー言う度に全員がパニック状態になって走り回ったり折り重なったりで、まあ、豚舎がひっくり返るかというほどの大騒ぎ。30分ほどで全部打ち終わると、平林も先生も汗だくだ。

放牧場に下りていく道すがら、先生が言う。「北海道中探してもこんな豚の飼い方をしている人はいませんよ。私もここへ来る度に勉強になります。私がもし自分で飼うことになったら、こういうやり方をするでしょう」と。豚ドクターもびっくりの匠の技を、レストラン経営者でありハム・ソーセージ製造業者である平林がこだわり一筋で編み出してきた、その情熱と独創性が凄い。改めて感動を味わった帯広の2泊3日間だった。

その他にも、いつものことだが、短い日程の間にいろいろな人に会った。帯広YEGの催しでは、私の講演の後のパネル討論で、服部聖=十勝支庁農務課長、國枝恭二=日本YEG会長・帯広YEG顧問、後藤健市=日本YEG改革推進会議議長・帯広YEG相談役らと“農”を真ん中に置いた十勝の発展について語り合った。この催しは帯広YEGのメンバーである岩田博樹君が中心になって企画したもので、彼とは2年前の彼の結婚式に出席してスピーチさせて貰って以来の再会だ。國枝さんや後藤さんともその時以来で、相変わらず元気な若手経営者だ。2人とも最近は全国YEGの幹部としての活動が忙しそうだ。

帯広YEG:http://obihiro.yeg.jp/

終了後は、後藤さんらが設立したNPO「北のれんがを愛する人々」が営む囲炉裏居酒屋「古季庵」で打ち上げ。60年前の民家を改造した2階建ての昭和モダン風な建物で、十勝を中心とするこだわりの素材を使った囲炉裏焼きと海鮮鍋を堪能した。これはお勧めの店だ(まずランチョエルパソに行って、それからここへ!)。

古季庵:http://www.kitanorenga.com/kokian/

22日夜には、市内の焼肉店「平和園」で、平林夫妻、地元デザイナーでエッセイストでもある吉田政勝さんはじめ町づくりに取り組むみなさんと食事。2次会はそこから歩いていける帯広名物「北の屋台」へ。全国的に有名になった屋台村は元気一杯で、20軒弱のビニールカーテンで囲ったお店はどこも若い人で満員。その内の1軒で、「北の屋台」の仕掛け人である坂本和昭さんが待っていてくれて、久々に旧交を暖めた。坂本さんの著書『北の屋台・読本』『北の屋台・繁盛記』は、全国で町づくりに携わる人々にとってもはや古典となっている。

吉田政勝:http://www.nakanishi-printing.co.jp/monologue/mono-25.html

北の屋台:http://www.kitanoyatai.com/

もう1人、今回初めて凄い人に会った。今帯広のみならず全国で最も注目されている「半田チーズ」の半田司さん。大樹町の国道236号線からちょっと入った、うっかりすると看板を見過ごしてしまいそうなところに半田ファームがあって、牛牧場の一角が自家製ナチュラルチーズと酵母パンとチーズケーキ、絞りたて牛乳、それにワインなどを楽しめるカフェになっている。160頭の乳牛を放牧中心で飼って、オチャード、チモシー、ルーサンなど牧草の名前を冠したオリジナルのチーズを夫人の手作りで作っていて、これがおいしいと楽天でも大評判。店に行くのは2回目という平林夫妻と共に立ち寄ると、その日はたまたま雨模様で牧場作業がないので、ご主人が店にいて、昼間からワインを空けてチーズを次々に賞味しながらお話しを伺った。「10年でようやくここまで来ました」。これまた平林と同種のこだわりの匠だ。

半田ファーム:http://www11.ocn.ne.jp/~michina/Homepage.htm

旅に出て本物のプロの仕事に触れることほど楽しいことはない。▲

2006年11月17日

食品添加物の空恐ろしい内幕!その2

やっぱりみなさん食品添加物への関心は強いようで、いろいろなご意見があった。安部司が『食品の裏側』で言っているとおり、すべて毒!とやたら恐怖心を煽るのもまた考え物で、せめて買うときも食べたり飲んだりするときも、裏の「原材料」表示を確かめて、最低限、自分が何を食わされているのかを知って体内に取り入れるのが第一歩となるだろう。ある期間を決めて「私の添加物日記」を作るのも勉強になるかもしれない。

■コーヒー

例えば私の場合、ある土曜日で言うと、朝は仕事をしながら自分でコーヒーを淹れて、それだけで済ませた。このコーヒーは、私の知人が、産地のコーヒー農場が農薬を使っているかどうかまで調べて輸入し、自分の手で焙煎した超こだわりの豆を月に2度ほどまとめて送って貰って冷凍庫に保管し、1袋ずつ小出しにして茶筒に常温保存し、その時飲む分だけを豆を挽いて85〜90度のお湯で淹れるというものなので、無添加であるのはもちろん原素材の安心も確保されている。

インスタント・コーヒーというのも意外と“純粋”で、ネスカフェはじめいくつかを調べると分かるが、原材料表示を見ても「コーヒー豆」とあってその原産国が記されているだけ。添加物という点では問題なさそうだが、材料の豆の安全性は不明だし、何よりもコーヒーの楽しみの半分を占める香りが殺されて薬臭い臭いがするのがどうも……。

これが缶入りのコーヒー飲料となると別で、例えば、キリンの「FIRE挽きたて微糖」というのが甘みが少な目でよさそうじゃないかと思って手に取って、裏を見ると、「原材料」としてコーヒー、砂糖、全粉乳、脱脂粉乳、香料、乳化剤、カゼインNa、甘味料(アセスルファムK、スクラロース)が並んでいる。アセスルファムKのKはカリウムで、「ジケテンとスルファミン酸を反応させた後、三酸化硫黄と反応させ、水酸化カリウムで中和し,結晶化することにより合成され、砂糖の200倍の甘みがあり低カロリーの甘味料として広く使用されてる」というもの。スクラロースは「蔗糖の3つの水酸基を選択的に塩素原子で置換して生成され、蔗糖の600倍の甘みがあり多数の食品に使用されている」というもの。と聞いても何だか分からないが、要は、値段の高い砂糖を徹底的に抑えて、その代わりに強力な人工甘味料をほどほどに入れているというのが「微糖」の意味だろう。カゼインは、牛乳の蛋白質の80%を占める非常に栄養価の高い蛋白質で、体内でカルシウムの吸収を助ける働きがあるので、健康サプリメントとして製品化もされている。自分でミルク・コーヒーを作れば、コーヒーに牛乳を入れれば済むことだが、それでは保存が効く製品は作れないので、カゼインや全粉乳や脱脂粉乳など牛乳由来の工業製品を組み合わせて、たぶんそれをコーヒー液と混ぜ合わせて安定させ、特に脂肪分が表面に浮いてきたり、蛋白質が固まって粒になるのを防ぐのに、乳化剤を使うのだろう。

「乳化剤」は食品衛生法で「一括表示」を認められている表示方法で、これだけでは中身は分からないが、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ソルビタン脂肪酸エステル、植物レシチン、卵黄レシチンなどをいくつか組み合わせて使うことが多い。要は界面活性剤で、水と油のように本来混じり合わないものをその境界を取り除いて均一化するのもで、例えばマヨネーズは、卵黄中に含まれるレシチンが乳化剤として働いてサラダ油と卵と酢が混じり合って安定した状態のものである。で、実際にこの缶コーヒーに本当のコーヒーがどのくらい入っているのかは分からない。たぶん、恐ろしいほど少なくて、コーヒーの香りのする香料(フレーバー)でそれらしさを補っているのだろう。

ちなみにハワイで盛んにお土産品として売っているKONAはじめ「フレーバー・コーヒー」というのは、コーヒー豆にバニラ、ナッツ、チョコレートなどのフレーバー(20種類以上あるらしい)をまぶしてから粉にしたもので、元はと言えばまずくて香りの薄いコーヒー豆を何とか売る方法として米国で考え出されたもののようだ。

■駅弁

で、10時に家を出て新横浜駅で駅弁とお茶のペットボトルを買い、新幹線に乗り込んで名古屋までの間に昼食。お茶はアサヒの「若武者」で、原材料は、緑茶、玄米、ビタミンCと、ベリー・シンプル。緑茶については「国産茶葉100%使用、無香料」と断ってある。ビタミンCは実際はL-アスコルビン酸で酸化防止剤、毒性は心配ない。しかしお茶は農薬の大量散布で有名で、国産だからいいというものでもない。

駅弁は凄いのだ。スーパーやコンビニの弁当やおにぎりは、特に保存剤や合成着色料の使い方が酷いということで問題になって、5年ほど前からセブン・イレブンを筆頭にそれらの使用を止めた(が、それでいいというものではないことは、今週の『AERA』も特集で書いている)。ところが、JR東海パッセンジャーズが製造しているこの「歌舞伎」と称する駅弁はまだそこまでも行っていないようで、昔どおりに保存剤も着色料も使っている。「原材料」のうち添加物を列記しよう。

調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、グリシン、保存料(ソルビン酸K、ポリリジン)、着色料(カラメル、パプリカ、クチナシ、紅麹、黄4、青1)、増粘多糖類、酸味料、甘味料(ステビア、ソルビット、カンゾウ)、酸化防止剤(V.C)、香料、香辛料。

調味料の「アミノ酸等」は、単に「アミノ酸」と書いてあれば、ほとんどの場合“味の素”すなわち蛋白質を分解して得られるアミノ酸由来のグルタミン酸ソーダのことで、「等」が付くと、分解の過程でアミノ酸以外の成分が含まれているか、アミノ酸以外のイノシン酸やグアニル酸などの調味料を混ぜているという意味のようだ。味の素は、昔は石油から塩酸を使って作って、有毒な有機塩素化合物が混じっているということで糾弾され、今はそんなことはしていないけれども、それ以来、私を含めて味の素拒否の人は多い。

■pH調整剤

pH調整剤は、最近急激に使用料が増えている代表的な添加物。ご存じだろうが、pH(ペーハーまたはピーエイチと読む)は酸性やアルカリ性の度合いを計る物差しで、0〜14までの目盛りの真ん中の7を中性とし、それより小さくなるほど酸性が強く、大きくなるほどアルカリ性が強い。

加工食品のpHを調整する添加物にはクエン酸、クエン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸など30種類以上があり、目的に応じてそのいくつかを組み合わせて配合し添加する。例えば、ある「アジの干物」の場合は、DL-リンゴ酸ナトリウム(15%)、クエン酸三ナトリウム(5%)、DL-リンゴ酸(3%)という割合で3種類のクスリを混ぜた「溶液」を作ってそれにアジをザブンと漬けるかスプレーで散布する。これも食品パッケージに表示する場合に「一括表示」が認められているので、この場合は単に「pH調整剤」とだけ記されていて、どんなクスリがどれだけ使用されているかは消費者に知らされない。

pH調整剤を添加する目的は、pHを4.5〜5程度のやや酸性にすることで最近の増殖を抑えて保存性を高めたり、色調や固さや組織などを維持することにある。具体的には……、

(1)保存料や酸化防止剤と併用することで食品の保存性を高めたり、消費者や研究者から批判の強い保存剤を使うのを止めたり減らしたりした場合にその代わりに使う。

(2)食品中の色素成分や天然系の着色料の色調を保ち変色を防止する。

(3)ゼリーやプリンなどの固さや組織を安定させる、コーヒーホワイトナーなどの分離や沈澱を防止する、ホイップクリームなどを滑らかで均一な組織にするなど、品質を安定させ加工・製造しやすくする。

前出の『AERA』によると、評判の悪い保存剤を止めて、その代わりにpH調整剤を大量に使うというのは、最近流行のやり方で、たいていのスーパーやコンビニの弁当やおにぎりなどがそうである。保存料を使えば10日間保存できるものが、同じ量のpH調整剤では数日間しかもたないので、もたせようとすれば量を(ものによっては数十倍も)増やさなければならない。pH調整剤はその食品だけでなく体内に入ってからいい菌も悪い菌も殺してしまうので、正露丸を飲んだのと同じことになって、正露丸はまだ酷い下痢を取り敢えず止めるという緊急避難策として容認されうるが、それを日常的に大量摂取した場合にどういう影響が出るのかはよく分かっていない。

酸味料は、字面からは、酸っぱみを加えるためのもののように思えるが、そうではなく、pHを酸性側に調整するためのもので、普通は「pH調整剤」として一括表示されるはずだから、ここでそれとは別に「酸味料」と表示されているのがなぜだかは分からない。

保存剤はソルビン酸カリウムとポリリジンが使われている。ソルビン酸Kは「エチレンを原料とするクロトンアルデヒドとケテンを反応させて得られるソルビン酸を炭酸カリウムで中和させて」製造され、かび・酵母・好気性菌の発育を阻止する抗菌効果があるが殺菌効果はない。pHが低い方が効果があるのでpH調整剤と併用されることが多い。ポリリジンは「放線菌の一種を培養することで生まれる水溶性高分子材料」で、細菌類の増殖を抑制する。特に澱粉系食品に使われる。

グリシンはアミノ酸の一種で、皮膚のたんぱく質であるコラーゲンを構成しているアミノ酸の3分の1を占めているほか、体にとって重要な働きを担っているので「快眠サプリ」などとして販売されている。食品添加物としては調味料、日持ち向上剤、緩衝剤、栄養強化剤として使われる。

■その他いろいろ

着色料は今では天然素材から抽出したものが多く使われる。カラメルは糖類や糖蜜などから、パプリカ、クチナシはそれらの果実から抽出される。紅麹はまさに麹の一種で、それが健康食品としても売られている。黄4、青1は化学合成である。

「増粘多糖類」という一括表示は、食品や飲料に粘り気、とろみを加えるためのさなざまな添加物の総称で、が用いられることがほとんど。澱粉、果実、藻類など天然由来の多糖類から直接抽出するか、それを発酵させるなどして製造する。弁当の惣菜、ジャム、ゼリー、缶コーヒーなどが代表的な用途である。

そういうわけで、この日は駅弁でたっぷり食品添加物を摂った。夜は目黒の東京都庭園美術館で漫画家のわたせせいぞうさんのパーティがあって、料亭「金田中」特注のオードブルとワイン、2次会も隣のカフェバー「Kanetanaka」で金田中の料理と炊き込みご飯で芋焼酎だったから、たぶん添加物なし。まあまあかな、という1日だった。▲

2006年11月13日

サウジアラビアも石油資源の将来に見切りをつける?

産油国の代表格であるサウジアラビアさえもが石油資源の枯渇を予想して、原子力に転換する議論を始めている。ワシントンに本拠を置くMEMRI(中東報道研究機関)の緊急レポート11月10日号が次のように伝えている。

「サウジアラビアも平和利用の目的で核開発に着手せよ 」

サウジの経済専門家アミン・サアティ(Amin Sa’ati)は、2006年10月15日付サウジ紙Al-Iqtisadiyyaに「サウジが原子炉に進む時」と題し、この地域における諸般の事情から、サウジアラビアは平和利用の目的で原子炉建設を早急に進めるべきである、と主張した。以下その記事内容である。

■この地域の諸般の事情から、サウジが核開発計画を推進する時がきた

2ヶ月前アメリカのブッシュ大統領は、石油よりずっと低価格の代替エネルギーを確保できる日が近いとし、アメリカは10年もすれば中東の石油を必要としなくなる、と言明した。

同じく2ヶ月前サウジのファイサル外相(Prince Sa’ud Al-Faisal)はイランを訪問した際、国際法上イランに核の平和利用の権利がある、と言明した。先月には、イスラム教国外相会議がアゼルバイジャンで開催され、イランは平和目的のため核エネルギーを使用する権利がある、と宣言した。

この地域に見られる諸般の事情から、サウジは核政策を見直す時がきている。核エネルギーのような安価なエネルギー源をもたないばかりに、いくつもの国が破綻している。これをみても判るように、安価な新しいエネルギーを確保する必要がある。核拡散防止条約(NPT)は、加盟国における核エネルギーの平和的利用計画を支持していることもあり、核エネルギー政策へ回帰する時であると思われる…。

国際エネルギー機構(IEA)の報告によれば、先進工業国の全部と発展途上国の一部は核エネルギーを使用中である。原子炉についていえば、現在443の原子炉が稼働中で、建設中が26ある…核エネルギーの全消費に占めるサウジの割合は、悲しいことにゼロである。

平和目的のための核エネルギー科学は、未来の科学である。世界が水不足で苦しんでいることから尚更である。科学者や専門家が指摘するように、水不足が原因で戦争になる可能性が充分にある。特にアラブ圏と中東がそうである。石油資源の枯渇も予想され、世界は水不足と共にエネルギー不足で深刻な危機に直面するであろう。

■石油に代わるものは核エネルギーしかない

先進工業国は、以上の問題を考慮して、従来の政策を見直し、核エネルギー(の平和的利用)を推進するようになった。石油に代るエネルギーは核しかなく、水と電力の生産に重要であるとの認識を持っている。

サウジが核開発に踏みきるには、いくつかの手続きを経なければならない。なかでも、重要なのが、核エネルギー開発機構法を制定することである。石油、天然ガス、核エネルギー、再生可能エネルギー(太陽熱、風力、バイオマスなど)等のエネルギー源の開発コストを含む経済性を計算し、中、長期見通しに立脚してそのバランスを考えなければならない。研究開発と制度的運用に必要な人材の確保も検討課題である…更にいえば、サウジアラビアにおける開発、近代化計画に核エネルギーがどのようなインパクトを及ぼすのか。この面で総合的な未来構想を描く必要もある…。

これまでサウジではさまざまな国家開発計画が進められてきたが、それに予算上影響を及ぼすことなく、我々は核エネルギー開発に多額の投資ができる。そのような財政状態であるからこそ、今のうちに原子炉建設の計画を早急にたてる必要がある。(サウジ)王国は今こそ〝核クラブ〟入りをめざすべきである。核の平和的利用は正当な権利でもある。

現代の世界では、平和的利用を目的とする核開発は、発展、成長に不可欠の要素になっている。(サウジアラビアの)国家開発でも重要な要素になることは間違いない。資金を予算化すれば、サウジの諸大学で工学部に学び、この核分野で働くことを熱望する有能な学生もいることから、推進可能である。我々は核開発で遅れをとっている。核開発計画の着手は焦眉の問題として考えなければならない。▲

2006年11月11日

食品添加物の空恐ろしい内幕!

『週刊ポスト』が先週から連載している「食卓の危機」、今週の第2弾はなかなか迫力がある。私は、食材とそこに使われている食品添加物についてはそこそこ関心もあって、自分の食卓には危ない物は持ち込まないようそれなりに気遣いしてきたつもりだったが、料理店や居酒屋が仕入れる業務用の「プロ用スーパー」というものがあって、そこではほとんど想像を絶するような空恐ろしい素材や調理済み食品が大量に売られているという実態については、これを読んで初めて知った。

例えば、安い牛の赤身のもも肉に、剣山のようなインジェクター(注射器)を突き立てて乳化剤に溶かした「和牛脂」を注入し、さらに味や食感を補うために「植物性タンパク」「乳タンパク」「コーンスターチ」「重曹」「増粘剤」など10種類以上の添加物を加えた人工的な「霜降り肉もどき」が、「鹿児島産和牛」と称して、本当の霜降り肉の半分以下の価格で売られている!

マカロニサラダ、スパゲッティサラダ、ポテトサラダなどは、1キロ=300円で売られていて、居酒屋などで小鉢に分けて出せば10人前になるから、原価は1鉢=30円となる。生野菜を使ってマヨネーズ風のドレッシングまで掛けてあって、なぜ賞味期限が製造日から1カ月もあるのかと言えば、もちろん添加物のお陰。「半個体状ドレッシング」と表示されているのは、業界で「マヨネーズもどき」と呼ばれるもので、パーム油などに水を加え、増粘多糖類でとろみをつけて、さらに化学調味料や安い醸造酢で味付けし、保存剤として酢酸ナトリウムなどを加えた、添加物の固まりである。日持ちをよくするために90度のお湯で20分ほど加熱するが、その際に本当のマヨネーズでは分離・変色してしまうので、マヨネーズもどきを使う。

チャーハンも凄い。もちろんコメ、野菜、焼き豚、卵、塩、醤油は使っているが、その先は添加物20種類以上のオンパレードで、デキストリン(増粘安定剤)、でんぷん、豚脂、しょうがペースト、チキンエキスパウダー、帆立エキスパウダー、粉末卵白、香味油……等々で、これが1キロ=4人前で500円。

ゼミの学生が開く飲み会で、高田馬場駅近辺に乱立する「2000円で2時間、飲み放題・食べ放題」といった酒場によく行くが、どうしてこんな値段で成り立つのか不思議で仕方なかった。その秘密はこういう業務用もどき食品にあったのだ。

ポストの記事中でもコメントを出している安部司さんの著書『食品の裏側』(東洋経済)は、業務用加工食品については特に触れていないが、我々が日常、どれほど沢山の添加物に囲まれているかを理解するには必読の書。例えば、喫茶店でアイスコーヒーを頼むと付いてくる「コーヒーフレッシュ」は、誰もがミルクすなわち「牛乳」か「生クリーム」だと信じて疑わないが、その成分は実は植物油と水と添加物で、ミルクなど一滴も使っていない。水と油はそのままでは混じり合わないけれども、乳化剤すなわち界面活性剤を使えばアッという間に混ざって白く乳化する。それだけではとろみがないので、増粘多糖類を入れる。見栄えのためにカラメル色素やミルクっぽい香りのためにミルクフレーバーという香料も加える。変質・変色を防いで日持ちさせるにはクエン酸、クエン酸ナトリウムなど数種類を組み合わせた「pH調整剤」も使う。いやー、ビックリすることばかりだ。

このようにして、我々はほとんど自覚することなく、年に平均4キロほどの添加物を体内に取り込んでいて、その中には発ガン性など健康に害のある疑いを持たれている物質も含まれているという。もちろん、認可されている1400種類もの添加物のお陰で便利で安価な都会の食生活は成り立っているのであって、やたらに敵視するのもどうかと思うが、少なくとも消費者が正しい知識を持って、例えば叩き売りされる安いハムと手作り高級ハムではどのくらい添加物の量が違うのかを知って、目的に応じて選択することが必要だろう。醤油にもみりんにも、自然素材だけで混ぜものなしに昔通りに時間をかけて醸造したもの、自然素材を使ってはいるが添加物を加えたもの、まったく工業的に即製される「もどき」でしかないものまであって、安売りしているからといって品質表示も確かめないで買うような真似をしてはいけない。究極は、安田さんも奨励しているように、作れるものは自分で素材から料理する手間を惜しまないことだが、そうなると今度は素材の品質が問題になる。となると、せめて自分で食べる野菜くらいは自分で作るということになっていく。そうでないと、大量生産・対象流通・大量消費・大量廃棄の巨大システムに自分の食生活を無防備に預けてしまっていることの根源的な危機を逃れることは出来ない。▲

2006年11月10日

お知らせ!DVDビデオ版『高野孟の最新韓国を見る旅』発売!

《ざ・こもんず》運営事務局からのお知らせです。

Pod Commonsオリジナル番組として、配信してきました『高野孟の最新韓国を見る旅』がDVDビデオとして発売になります。

DVD版は、3時間に渡ってお届けしたPod Commons版を60分に再編集。

一番見たいところだけをギュッっとセレクトしました。たった60分で、南北朝鮮問題と中国、アメリカ、日本にまたがる諸問題の本質を理解することができます。

また、くっきり鮮やかな映像で大型TVモニターでお楽しみいただけます。

Pod Commonsの小さな画面では見づらかった地図や風景なども鮮明にみえますので、良くみていただけます。

ツアーに参加された方々は、思い出と復習をかねて、参加されなかった方々は是非、高野孟氏、解説の韓国ツアーを疑似体験してください。このDVDを見てから韓国を訪問すれば、さらに深く韓国を知ることができるにちがいありません。

※このDVDはDVDプレイヤー用です。ご購入の際には、ご注意ください。

監修:高野孟
制作著作販売:株式会社インサイダー
価格:12,000円(税・送料別)
お問い合わせ:info@smn.co.jp
FAX:03-5410-0325

発売は11月下旬になります。

ご期待ください!

PRビデオダウンロード

※Macの方はクリックでは再生(またはダウンロード)しません。マウスプレス、またはキーボードの「control+マウスクリック」で「ディスクに保存」し「QuickTime Player(Ver.7以上)」で再生してご覧ください。
もしそれでもお使いのブラウザが正常に動作しない場合は...
Firefox↓
http://www.mozilla.com/firefox/(英語版)
http://www.mozilla-japan.org/products/firefox/(日本語版)
をお使いください。

2006年11月 9日

北朝鮮“崩壊”をどうコントロールするか?

このテーマについて「インサイダー&アーカイブ」に新しい記事を載せたのでそちらを参照して頂きたい。暴発、崩壊、戦争といろいろなシナリオがあり得るが、現実的なシナリオは実は極めて限られているということである。▲

2006年11月 7日

韓国に進出した国際ヤクザ組織の一覧表!

韓国で今年最大の観客を動員した映画は、チョ・インソンが三流ヤクザを演じた『卑劣な通り』だが、現実の韓国裏社会では、世界中のマフィアやヤクザが乗り込んで跳梁跋扈、大変なことになっている。

『朝鮮日報』10月23日付の記事によると、国家情報院は、韓国に進出したり韓国内の組織と連携しているロシアや日本などの国際的な犯罪集団が43グループに達することを把握している。そのうち日本から行っているのが半分近くで、山口組、住吉会、松葉会、酒梅組など21組織もある。

山口組は、04年に中堅の組員である堀江某ら7人を釜山に送り込んで賭博場を開設して摘発された。また東京のヤクザ組織である松葉会は03年末に韓国に覚醒剤を密輸しようとして組員2人が逮捕された。酒梅組の組長=金山耕三郎こと金在鶴(キム・ジェハク、67)は、昨年2月にソウルの一流ホテルに滞在し、義兄弟の契りを交わした韓国七星派のボス李某(62)などと接触して不動産取引に介入、韓国の政・官・財界の要人とも親しくしているという。

日本以外を含む国際ヤクザ組織の一覧表を『朝鮮日報』より転載させて頂く。

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2006年11月 4日

昨夜の「朝まで」は6者協議再開と日本核武装論!

「朝まで生テレビ!」に久々出演。今回のテーマは北朝鮮の6者協議復帰と日本核武装の是非論だが、13人の出演者で3時間マイナスCMだから1人当たり10分強の発言時間しかなく、消化不良に終わった。せいぜい7〜8人でないと無理だよね。それに、第1コーナーの在ワシントンのロビイスト=伊藤貫のインタビューも、わざわざ衛星中継まで使って約10分間を費やすほどの中身ではなく、ほとんど意味がなかった。

私の関心に引き寄せて補足しながら大事なポイントを挙げれば……、

(1)北朝鮮はなぜ早々に6者協議に復帰したのか。

第1に、金融制裁が、マカオのバンコ・デルタ・アジアの北の口座封鎖だけではなく中国銀行など中国の4大商業銀行による送金停止が加わったことによって、金正日体制を窒息寸前に追い込むほどの効果を発揮した。

第2に、そのことを含め、これまで北に対して困惑しつつも同情的だった中国が、北の核実験後ははっきりと米国と歩調を合わせて北に厳しい圧力をかける側にスタンスを移し替え、北の体制転換(すなわち金正日除去)の可能性さえも否定しない態度を暗に示した。

第3に、北の狙いは初めから“生き残り”、ということは米朝交渉を通じての“朝鮮半島の非核化”と和平の達成、国交樹立であり、そこへの唯一の入口としての6者協議に復帰するしか選択がなかった。

実際、中国の胡錦涛主席の北への怒りは凄まじく、何としても第2回目の核実験を阻止しようとして決然と行動した。葉千栄によれば、銀行の送金停止だけでなく、(実験失敗による)放射能汚染に備えた軍の特別公衆衛生部隊の緊急編成、かつて朝鮮戦争に参加した東北地方の2つの陸軍機甲師団計6万人の中朝国境近くへの展開、密輸防止のための鴨緑江沿いの強固な鉄条網とパトロール用道路の建設促進、原油供給の一時停止などの措置が黙々と実施されたようだ。それを背景に、中国は北に「もし2回目を強行すれば米国は北に対して先制攻撃に打って出るかもしれないが、中国はそれを阻止できない」くらいのことを言って金正日を脅したに違いない。

金正日に亡命を勧告したという見方もあるが、これは金は絶対に受け容れず、それよりも米国に爆撃されて死ぬことを選ぶだろう。中国が北の軍内部に手を突っ込んで宮廷クーデターを策する可能性については、葉は、中国はそのようなことが起きても構わないとは思っているが自分で手を下すことはしないという判断だった。

(2)6者協議が再開しても北は時間稼ぎに利用するだけではないか。

確かに、これまで10年余りの北のやり方を思い返せば、再開後ものらりくらり、押したり引いたりを繰り返して、その間に一層多くの核物質を蓄積して次の恫喝を準備するということになりかねず、そうなれば最悪の展開となる。

しかし第1に、中国も米国もそんなことになれば国際的に一層の恥の上塗りになることを百も承知しており、米朝国交樹立という“出口”を唯一の落とし所として用意した上で、容赦なく北を追い詰めるだろう。今回の6者は、実質は米中朝の3者であり、その中国が「米中関係は“重(要)中の重(要事項)”」という態度に踏み切った以上、北は米中の意見の違いを利用して巧く立ち回るというこれまでのやり方を封じられるだろう。

第2に、再開される6者(実質3者)では、最初から具体的かつ生々しい話が出るだろう。まず、北は偽ドル・偽タバコ・麻薬など国家的犯罪ビジネスについて「我が国の一部がそのような犯罪行為に手を染めた」ことを(拉致を認めたのと同じ論法で)暗に認めてその根絶を表明し、それをよしとして米国は金融制裁を一部解除する。一部とは、偽ドルなど犯罪行為のお金の洗浄に世界各地の銀行口座が使われていないかを引き続き監視し、また国連制裁決議に沿って軍事・核関連の物資や技術の取引や贅沢品の取引は今後とも阻止するが、一般の貿易の決済や既存の金正日の個人口座などは条件付きで出し入れを許すというようなことだろう。次に恐らく、北のIAEA(国際原子力機関)復帰とその下での寧辺の各施設への査察を受け容れるかどうかである。これは簡単には行かないが、それを条件に米中朝の和平協議(38度線の休戦協定を恒久的な和平協定に置き換える)、それに伴う半島の核を含む軍縮協議、平行しての米朝国交交渉準備など一連のプロセスのロードマップが米中側から提示されれば、北が呑むこともあり得ないことではない。あるいは、北側からそのような包括的な提案を出せばもっと話が早い。

第3に、再開合意の中に「作業部会」の設置が盛り込まれたことは小さくない。これは報道では金融制裁についての作業部会とされているが、実際にはすべての問題について迅速かつ実務的に詰めて行くための場となるはずである。

(3)日本は核武装の是非を論議すべきなのか。

この点についてはほとんど時間がなく、煮詰まった討論は出来なかったが、ほぼ全員が、大いに議論して、なぜ日本の核武装が軍事的に無意味なばかりか政治的に自殺行為であることを明らかにすべきだという認識で共通していた。

第1に、北が核実験をやったから日本も核武装すべきだという一部の意見は、その間の10段階くらいを吹っ飛ばした感情的な暴論であり、まず北が数発の実用に足る核弾頭を完成してノドンに装着したとして、それが明日にも日本に向けて発射されるかのように騒ぐことが馬鹿げている。北にとって日本は直接の軍事的脅威ではなく、何もない時にある日突然北が日本を核攻撃する可能性はゼロに近い。逆に、朝鮮半島で米朝が戦闘状態に入った場合に、もし北にそれだけのゆとりがあれば、米軍の出撃基地となっている在日米軍基地や“後方支援”に携わる日本自衛隊基地の無力化を目的として日本を、核にせよ非核にせよ、攻撃する可能性は大いに高まる。とはいえ、米朝が戦端を切れば、緒戦で米国は北のすべての核基地を破壊するだろうから、北に第2撃力を日本に向けるゆとりがあるとはほとんど考えられない。いずれにせよ、北が核を持ったとしてそれが実際に日本にとってどのような脅威となりうるかの見積もりをしなければ、「北は3発持ったらしい。日本も5〜6発は持たないと」というような、軍事的には無意味な、全く幼稚な感情的爆発としての核保有論になってしまってお話しにならない。

第2に、それでも核を持つことで北の外交的威嚇の手段が増えるのは事実である。しかし、だからといって日本も外交的な発言権確保のために核武装すべきだということにはなるはずがなく、それによって世界的に総スカンとなって外交的また経済的に失うもののほうが100倍も大きい。簡単な話、NPTとIAEAを脱退した日本はウランの輸入先を失い、電力供給の4割を占める原発が止まる。そこで、日米同盟下で“核の傘”を差し掛けられることによって外交的に対抗することになるが、この核の傘が本当に機能しているかどうかは大いに怪しい。日米は“同盟”と言いながら核の傘の実質についてまともに話し合ったことは一度もなく、日本は「米国があると言っているんだから信じるしかない」という態度である。仮にそこを詰めて「実はなかった」ということになったとしても、だから日本も核武装ということにはならないのであって、核だけが抑止力・外交力の源泉ではない。現に米国は、戦術核の使用に踏み切るぞと半ば公然と敵を威嚇しながらも、朝鮮戦争では引き分けに、ベトナム戦争では敗北に終わっていて、核恫喝の威力など知れている。

第3に、日本がもっと声を大にすべきは、北に核実験を止めろと迫っている米国も中国も、包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名はしたが批准しようとはしないし、もっと遡って、5大核保有国が核軍縮に向けて努力することを前提としてそれ以外の国々への核拡散を防止しようというNPTの初歩的な原則さえ、米国も中国も誠実に実行していないことである。確かに日本は毎年のように国連総会に「究極的核廃絶」への宣言を提出して非核国・唯一被爆国の責務を果たしているかのようではあるが、究極的核廃絶とお題目を唱えるだけなら5大核保有国も賛成で、実質的には意味がない。そうではなくて、今回の事態をきっかけにNPTやCTBTの行き詰まりを打開する新しい全世界的な核軍縮プロセスを日本が発起し、その下で北東アジアと朝鮮半島の非核化のためのステップを提唱するような、本気の核軍縮イニシアティブを発揮することが求められているのではないか。

かつてインド・パキスタンの相次ぐ核実験の後、梶山静六は「保有国に核廃絶を説得できるのは日本だけだ」と言い、野中広務は「(米国を含む既存の)核保有国に対して『あなたがたが核をなくした上で他国に核を持つなと言いなさい』と言う勇気を日本が持たなければ」と言った。梶山は官房長官を下りた後、野中は自民党幹事長代理の時だったろうか。今は山崎拓と加藤紘一が陰のほうでそういうことを口にしているだけで、自民党の真ん中にはそんなことを言う人はいない。▲

※「朝まで生テレビ!」次回の放送は、11月3日(金)の深夜になります。

Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
(読売TV系、月~金曜21時~)

BookMarks

東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER:インサイダー
http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

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