Calendar

2006年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

Recent Comments

« 2泊3日で韓国“お勉強ツァー”に行ってきた!
メイン
昨日のサンプロはなかなか面白かった! »

W杯目前に読むのは川淵三郎の新著『虹を掴む』だ!

 川淵三郎キャプテンから新著『虹を掴む』(講談社、6月1日刊)が送られてきたので、今日予定していた仕事を中断して一気に読んだ。面白い。W杯を目前にして今の時期に読むのにこれくらい相応しい本はない。写真は、扉に書いて頂いたキャプテンのサイン。人柄のよく表れた、いい字を書くんだよね。見習わなくてはいけない。

kawabuchi.jpg

 「はじめに」を読んで初めて気が付いたのだが、キャプテンが自分のサッカー人生について自ら書いた本はこれまでなかったのだ。「Jリーグ開幕前から今に至るJリーグ、日本代表の舞台裏を初めて明らかにした日本サッカーの“歴史書”」という本の謳い文句は決して誇張ではない。特に歴代のジャパン監督の評価と、ジーコになってからのジャパンの変化についての下りはW杯観戦の参考になるはずで、開戦前に読むことをお勧めする。

 私が川淵さんに最初に会ったのは、Jリーグが開幕する2年ほど前、あるパーティの席上でのことで、彼は「サンデー・プロジェクト」をよく見ていて下さって、そのことがきっかけで話が弾んだのだったが、私が話題を変えてJリーグの準備状況について訪ねると、彼は面白いことを言った。その一言で私はそれまで(ラグビー派だもので)サッカーにはほとんど興味がなかったのに、一遍に“川淵ファン”になってしまい、以後、サッカーそのものというよりも、後に「Jリーグ百年構想」として定式化されるJリーグの理念の私設応援団となってしまったのだ。彼はこう言ったのだ。

 「高野さん、明治から100年、これまでの日本には“スポーツ”がなかったんですよ。Jリーグを以て、初めて日本で“スポーツ”が始まります」

 最初、私は何のことか分からずに、「はあ…とすると、今までは何があったんでしょう?」と寝ぼけたような反応をした。川淵さんはすかさず「“体育”です」と言った。たったこれだけの会話で、川淵さんという人物と、その人が生み出そうとしているJリーグの意味を理解するには十分だった。私は一瞬絶句して、「凄い。凄いですね!」と握手を求め、以後、今日までお付き合いさせて頂いている。

 私は、四半世紀近く前に新宿ゴールデン街で酒の勢いで始まった草ラグビーチームの一員で、今もその団長を務めている。その中で昔からチームメイトに語っていたのは、こういうことだった。

 「諸君、一度でいいからイギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドなど先進国のラグビークラブというものを見なければダメだ。田舎町でも町の真ん中にクラブがあって、フカフカの芝生のグランドが6面も8面もあって、そこで子供からトップチームまでが遊んだり練習したり試合したりしている。クラブにはコーチやトレーナーはもちろんドクターまでいて、子供たちは幼いときから一貫したプログラムに従って体を鍛え技術を身に付ける。トップチームの選手たちの第1の義務は子供たちの教育なのだ。日本はどうか。ラグビーでもサッカーでも野球でも、土のグランドで、小学校、中学校、高校とてんでんバラバラの指導のされ方をして、しかもやたらに長時間、体を痛めつけるような“軍事訓練”まがいのド根性物語が横行する。スポーツは地域社会の文化であり、子供の教育であり、大人たちみんなの楽しみなのだ。アメリカの野球だって同じだ。日本はまだ先進国じゃない。発展途上国なんだ」

 明治から100年余を経て、日本は経済の図体だけはでっかくなったけれども、政治も社会も文化もまだ中身は“お上”=官僚が支配する発展途上国で、その発想とシステムを克服しない限り成熟先進国としての発展はない、だから全面的な「改革」が必要なのだというのは、当時から(今も!)私の時代認識の基本にあることであったけれども、それがスポーツにおいても同じなのだということを、川淵さんは改めて教えてくれたのだった。

 日本の“スポーツ”は、形式的には、学校〜企業〜国家スポーツであり、そのそれぞれのレベルにおける対外的宣伝と対内的なアイデンティティ強化の道具として貶められていて、最終的にはオリンピックで日の丸・君が代、大いに国威発揚して一同、涙、涙、という具合に組織されてきた。内容的には、まさに“軍事訓練”の目的で始まった体育であり、そこでは誰もが同じことが同じスピードで出来るような集団的規律と一人だけ弱音を吐いて脱落したりすることを恥とするド根性を身に付けることが何よりも重視された。そのような日本のスポーツの体育への歪曲から解き放つことなしには、日本のスポーツはいつまでも世界と勝負する域には達しない。学校〜企業〜国家の道具であるスポーツを地域社会が自ら営み楽しむ市民の文化形態として発展させるのでなければ、この国は成熟社会に辿り着くことが出来ない。——そのように、ラグビーを通じて私が漠然と思っていたことが、まさに川淵理念に基づいてJリーグという形でこの国で実現しようとしていることを知って感激した。

 やがてJリーグ開幕。私は有り難いことにチェアマンから招待券を頂戴して、メインスタンドで観戦した。すぐ前の席には、玉木正之さんが息子と来ていて、息子が試合中に「お父さん、ラグビーの方が面白いね」と言い、玉木さんが慌てて「シーッ、黙れ!」と叱っていたのには笑った。写真は「タカノハジメ」の名前入りの記念すべきチケット。

j-league.open.jpg

 私が特に印象的だったのは、開会式での「君が代」だった。TUBEの前田亘輝が一筋のスポットライト浴びながら芝生の上を歩いて小さな壇の上に立ち、いきなりアカペラで、小節の利いたロック調の君が代を朗々と歌った。後にチェアマンに「あの君が代が“体育の100年”へのアンチテーゼだったんですね」と言うと、彼は「アハハ」と笑った。

 この本にはその開会式の話も出てくる。読売のナベツネとの戦争の下りも面白い。私もインサイダーで何度も採り上げ、企業スポーツの鬼であるナベツネを批判した。ある時は川淵さんから「このインサイダーを関係者に配りたいんで500部買うから持ってきてくれ」と言われて、慌てて増刷して届けたこともあった。まあ、いろいろ思い出もあって、感慨深く読んだ。▲

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/3652

コメント (5)

早速買います

本屋に走ります。

アマゾンで注文しました。
国家、企業の道具である「体育」から、地域社会が自ら営み楽しむ市民の文化形態としての「スポーツ」へ発展させる事ができたかどうかが、この国が成熟社会に辿り着くことができたかどうかの物差しになる訳ですね。私も自分が運動があまり得意でなかったせいもありますが、「合理性を欠く不適切な指導」と「学生生活のすべてをつぎ込むかのような長時間の練習」には疑問を持っておりました。
縁あって3年前から「合氣道」を習っていますが、必ずしも相手を打ちのめして勝つ事を目的とせず、自身の鍛錬にこそ重要性を置く日本の「武道」には、いわゆる「体育」とは次元の異なる成熟した精神性があると思います。
まずは川淵キャプテンの知られざる闘争と現在進行形の夢についてじっくり読ませて頂こうと思います。

>地域社会が自ら営み楽しむ市民の文化形態としての「スポーツ」

ナットク! 5月24、25日の私のコーナーでふれた福島県のある村の「堰上げ」=イワナつかみはその原初形態だと思いました! 地域アイデンティティの自己確認なんですね。

すばらしい本のご紹介ありがとうございました。さっそく買って読んでみようと思います。

川淵チャーマンが高野さんにかけた言葉印象的ですね。まさに「体育」から「スポーツ」へ、「国家」から「市民」へという明確な意思表示ですよね。サッカーのことがますます好きになりそうです。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
(読売TV系、月~金曜21時~)

BookMarks

東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER:インサイダー
http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.