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耐震強度偽装事件というのは何なんだ?

 今日のサンプロは、手嶋龍一が出た「日米関係」も、大谷昭宏取材の「四国アイランドリーグ」も面白かったが、魚住昭(ジャーナリスト)と神田順(東大大学院の構造設計の専門家)による「耐震強度偽装事件」見直しの議論には心底ビックリした。マスコミで報道されているとおり、姉歯はじめ関係者が先週次々と事情聴取されており、来週には一斉に起訴されるかという流れとなっているが、その容疑を見ると建築士資格の名義貸しだとか粉飾決算だとかいった類の“別件”ばかりで、肝心の耐震強度偽装という犯罪で裁かれる構図にはなっていない。ということは、こんなことで裁判をしても、全国民の不安の種である偽装の構図の解明と再発防止策のヒント提供には繋がらないということになる可能性が大きい。

 元共同通信の事件記者である魚住は、これについて、(1)当初検察はこれを、全関係者が予め相談して仕組んだ巨大な詐欺事件として一網打尽に出来ると踏んでいたが、やってみるとそれほどのものではなく、むしろ、穴だらけの建築確認システム、その実態をよく分かっていない国交省はじめ検査機関の馬鹿さ加減、その隙間を突いた業者や建築士による“節約”精神等々の累積のなせる業であることが分かってきた、(2)それでも、世論は“悪い奴”をやっつけろといきり立っているので、“別件”でも何でも起訴してしまう、(3)捕まえてしごけば、もうちょっとマシな容疑に引っかけられる自白も出てくるかもしれない——ということだろうとの趣旨を述べた。

 これはその通りで、検察は“別件”逮捕・起訴は常套手段である。とにかく“悪い奴”をとっ捕まえるのが先で、理屈は後から付いてくる。ロッキード事件で田中角栄を「外為法違反」で逮捕したのがその典型で、私や田原さんは当時、巨悪は裁くなら正面から裁くべきだと言い、立花隆は法律技術的にはどんな手段を使ってもとにかく裁きの場に引きずり出すことが大事だから検察は正しいと言って論争になった。“別件”で血祭りにあげても、「あんな悪い奴、許せない」という世論感情は満たされるけれども、“本件”の問題の本質的な解明と再発防止策の立案には何の役にも立たない。現に、ロッキード事件やリクルート事件やその他いろいろあったけれども、政治家の汚職は後を絶たないではないか。

 神田先生が面白かったのは、耐震強度の基準そのものが「みなし」にすぎないのだが、国交省の役人も検査機関もそういうものであるということに「無知」だと断言したことだ。今の建築基準法では、昔からの「許容応力度等計算」に加えて「限界耐力計算」など4つの計算方式が公認されているけれども、そのどれを採るかで、あるマンションは安全であるか、補強工事が必要であるか、それとも即刻住民退去が必要なほど危険なのかの評価は違ってくる。また、そのうち1つの計算方法で基準をクリアして適法であるとしても、だからと言って実際にそれが様々のケースでどれほど安全かということは別の問題だとも指摘した。ということは、強度が1.0なら安心、0.9なら危ない、0.5など飛んでもないという具合に、基準を絶対的なものと見なして大騒ぎすること自体がおかしいということになる。逆に、基準を満たしていないから危険だ、退去だというのも拙速で、1件1件について改めて実際にどの程度危険なのかを調査して対策を決めるべきなのだ。

 そこで私は、前に建設業界の人から聞いて疑問に思っていたことを神田に訊いた。そもそも日本では、基準そのものが無闇に高く設定されていて、そのために業者は、少しくらい鉄筋を減らしても問題ないと思っているので、手抜きに走ることになりやすいと聞いたことがあるが、本当か、と。神田さんは「確かに諸外国に比べて高い。業者がそう考える可能性はある」と答えた。

 要するに、建築基準なるものが相当に怪しいのである。それを魚住は「建築基準のシステムが破綻している」と表現した。破綻していて、そのことについて国交省はじめ当局も無知であるのか知っていても認めたくないのか、いい加減なままになっているシステムを前提に、それに違反した姉歯はじめ偽装者たちを裁くことが出来るのかどうか。出来そうにないから“別件”で取り敢えず生け贄にしておこうということなら、怪しいシステムとそれを放置する役所の怠惰は見過ごされることになる。▲

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コメント (6)

先日、建築関係者に話を聞いたのですが、姉歯は確信犯だから、まだ罪は軽いそうで、本当に怖いのは、建築基準値とパソコンソフトを妄信して、自分では安全な建築物を設計していると純粋に信じ込んでいる建築士が増えたことだそうです。現場の大工が見て、ほとんど施工不可能な設計や経験上危険と感じる建物が増えているそうです。
 そもそも基準値を満たしていても土地の状態や液状化が起きれば、ひとたまりもないわけで、お役人に安全を決めてもらうより、自分でリスクを実感して生きるほうがマシかもしれない、など思いました。

検査でもパソコンソフトの部分は中身を検証しなくていいことになっているようですね。
「自分でリスクを実感して生きるほうが…」そうだよね。大都会に住むこと自体がすでにリスクなのだという自覚が必要かもしれない。
私が安房鴨川の山林に建設中の住居は、その辺りの集落全部が「地滑り防止区域」指定なので、建築許可申請そのものが要らない——と言うか「出さないでくれ」と役所が言う。そんな危ないところに建てるのはお前の勝手で、それを役所がOKして事故があったら役所の責任が問われてかなわない、ということなんでしょう。で、今公然と無許可の家を建てています。

国土交通省で考えられている建築基準について

そもそもこの建築基準で安全が担保されていると考えるのは危険です。建築構造のあり方を考える時に、当然のことですが、私達の国が地震列島であることを無視して考えることは出来ません。この地震に対しての構造として、大きく分けて「耐震構造」と「免震構造」があります。今現在、私達の身の回りの建物の大部分は「耐震構造」に基づいて建築されているものばかりです。ただし、神社や寺など古い建物の多くは「免震構造」の建築物です。阪神・淡路でも明らかなように「耐震構造」を前提にした構造建築のあり方では強い地震に対応できません。それなのに、「免震構造」の建築物は古くに建てられた神社や寺ばかりです。なぜでしょうか?

私が社団法人である某建築協会に問い合わせをしたところ、20年前まで「免震」と言う考え方を口にするのも憚られ、学会ではタブーだったそうです。これは一体どういうことでしょうか。国土交通省に問い合わせてみましたが、建築技術の歴史的経緯についてはわからないとのこと。文部科学省に問い合わせをすると、おそらく、法隆寺の建築物等、多くの古代建築に用いられた「免震構造」である礎石作りから、「耐震構造」の考え方に変わったのは明治になってからだと思われるとのことでした。さらに、多くの古代建築物が礎石作りになっていたのは免震を考えてではなく、偶然だったのではないかと言っていました。ようするに、礎石作りにしたら、たまたま地震に対して強かった、との考えです。先人を軽く見てはいけないと思います。当時の建築技術は優れたものがあったことは現存している国宝・重文などの建築物を調べればすぐにわかります。彼らは長い経験から得た地震に対応する技術をもっていたと考えるほうが自然です。
しかし、その「免震」技術は江戸時代までは継承されていましたが、国土交通省の役人が言ったように明治で「耐震構造」に変わっています。そして「免震」は20年前までタブーとなり、ようやく最近になって高層ビルや大きな病院等に「免震」が取り入れられるようになってきたといことです。どうも、明治という時代と建築構造の問題は無関係ではないように感じます。(古代建築物の中でも伊勢神宮は礎石作りではなく掘立柱の建築物です)

建築基準については、地震列島であることを前提にした根本的な構造の理解が必要だと思います。国土交通省や建築学会は、業界の利益や廃仏毀釈的なイデオロギーに囚われることなく、広く情報を集めて、真に国民の安全を考えた建築基準を制定すべきです。でも、ポルコさんが言うように、建築の問題だけではなく、その他の事も、国が教えてくれなければ自分で自分を守るしかないですよね。

耐震と免震ねえ。面白い問題ですね。明治になって耐震路線を敷いたのは、そりゃあ東京大学工学部でしょう。「東大工学部の“近代建築”路線があって、それを実施するために建設省という役所が出来たんだ」という話を聞いたことがあるが、誰かこの辺の歴史を知っている人は教えてください。

某大学の建築学科の教授に話を聞いたところ、明治になって西洋からの新しい技術が入ってきたことで、慌ててその技術に飛びつき、西洋万能主義に近い形で今までの建物のあり方に否定的なムードが当時出来上がった、その結果、礎石や玉石造りの構造ではなく、基礎を強く、壁を強く、構造自体を強くしていく方向にシフトしたのではないか、簡略するとこのような話でした。(関東大震災後に柔剛論争なるものが学会であったようです。結果、「免震」はタブーに)
さらに話では、わかりやすく言うと、今一般的にある構造物は、大地に根をはる樹木のようなもので「耐震」、礎石造り・玉石造りは大地の上にある岩のようなもので「免震」である、とも言っていました。大地震の際、建物には瞬間的に物凄い力が大地から加わるので、植物のように上が軽ければしなやかに対応できるが、そうでなければこの構造では強く根を張っている分まともに力を受けてしまうというわけです。それに対して、岩は大地に対して強く根を張っていない玉乗り的構造で、自らも動くことで振動を逃がす、吸収するということです。
より強くという形で大地震を克服しようとしても(自然に対する克服という考え方は西洋の伝統的自然観)こと大地震に関しては難しく、むしろ、岩の考え方、礎石・玉石造りは広い意味では自然との共生(アジアの自然観)の考え方と言え、大地震に対しては有効なのではないかと私は思います。阪神・淡路やその後の大地震でも結果は明らかですし、現在、静岡県では「免震構造」の建物が多いそうです。

ただ、私が気になるのはもう一つ別の問題です。それは建築技術を文化として考えたときに、この礎石造りというものを明治政府の歴史観において容認できなかったのでは、ということです。現在の私達の安全に関わることなのに、それだけとは言わないまでも、そのイデオロギーがあったがために容認しずらいままで20年程前まで来ていたのではないか、だとしたら、国交省の技術に関する認識不足とは別に、これはこれで問題です。(日本の問題の多くはここに行き着くように思う)
白鳳大地震後、古代建築の中で姿を消したと言われる掘立柱の建物なのに、今も掘立柱の構造をあえて維持している伊勢神宮がそれを語っているような気がします。

なるほど~、そりゃ耐震より免震の方がええやろう。要は、日本は明治以来、国は国民を守らない、牛乳を採る為の家畜程度に保護し、後は鋤焼にして食うと言う事ですわな(日本に限らず国なんてそんなもんやろけど)。建物自体に強度が有ろうが無かろうが、貧乏人が住む処なんてマンションであれ一軒家であれ、そもそも地盤がイケてないんだから運まかせや、oun risk で生きて行くしかない。国交省は殺人建築やら殺人電車を奨励するは、財務省は銀行たら言う金融詐欺師に金やるは、オマワリはシャブ食ったり裏金稼ぎにむちゅうで、マスコミは批判したポーズだけ取っておこぼれにあずかってる。「じや~なりすと」は、税金不払いキャンペーンあたり仕掛けてくれへんかな。
しやけど、姉歯氏や小島氏たちのプロ意識ちうか自尊心の無さを云々する輩を、TVで見たりするけど、程度や業種で犯罪に成ってへんだけで同様の事が結構有りますわな、したり顔の評論家、耐震偽装ちゃうから偽装報道は、無罪。

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Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
(読売TV系、月~金曜21時~)

BookMarks

東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

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http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

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