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これは何?/その2

takano-iden-thumb.jpg

 マインドマップの第2弾、「高野孟の活動領域」もしくは「高野孟のマルチなアイデンティティ」である。「自分が誰であるか」ということはそれほど自明のことではなく、しかもそれを内面ばかりを見つめて錐を揉むように探究しようとすると袋小路に嵌って自殺したくなったりすることになりかねない。そうではなくて、大きな紙の真ん中にまず「自分」を置いて、周辺や所属の組織や社会との関わりでのいろいろな要素を外に向かってのびのびと描いて行って、その関係性の総体を「自分」と認識し直すことが必要である。人間とは、ヒトのアイダと書くように、アイダがなければ動物の一種としてのヒトでしかなくて、アイダがあって初めて人間らしくなる。

 そのような捉え方は、仏教で言う「生かされている」ことを「ありがたい」と思う感覚に繋がる。自分は一人で生まれてくる訳にはいかず、両親によって命を与えられたのであり、そのことをありがたいと思うところから人間的な感情が始まる。自分は一人で生きる訳にはいかず、両親はじめ兄弟や親戚の叔父さんや友人や先生や猫や庭の柿の木やその他たくさんの人や物たちにポジティブ・ネガティブ両面の様々な影響を受けながら「育てられる」のであり、それらによって自分が「生かされている」のである。自分は好きで生まれてきたのではない、自分が生きていくのに誰の世話にもなる必要はないという傲慢に陥ると、命の価値が分からなくなって、簡単に人を殺傷したり自殺したりすることにもなる。

 私がそのことに気付いたのは、20数年前にまだ西ドイツと呼ばれたドイツで、知人のドイツ人ジャーナリストに「週末に家に飲みに来ないか」と誘われて、デュッセルドルフ郊外の彼の自宅を訪れたときのことである。道に車を止めてアプローチを歩いていると、植垣の向こうで隣家の太ったおじさんが花の手入れをしている。知人が「こちらは日本から来たジャーナリストで…」と私を紹介しながら挨拶すると、彼は「私はこの町の少年サッカーの監督をしていまして」と自己紹介した。私は、ふーん、暇なオッサンなんだ、くらいの受け止め方で通り過ぎたのだったが、家に入ると知人が「君ね、ドイツのどの町でも少年サッカーの監督というのは市長の次くらいにみんなから尊敬されているんだ。もっと感動しなければダメだ」と言う。しかも、そのオッサンは、仕事としては一流の製薬会社の副社長であり、さらには、ベトナム戦争孤児を引き取って養育する全欧州的な運動のリーダー格でもあって、現に女の子と男の子を自分の子供として籍に入れて小学校に通わせているという。

 私は少なからず驚いた。日本なら、まず会社の肩書きを言って、ことによると名刺を出したりして、自己紹介するだろう。ところが隣家のおじさんは、いくつかある自分のアイデンティティの中で一番アピールすべきものとして少年サッカーの監督を前面に出した。ああ、そうか、と。「先進国」あるいは「成熟社会」では、会社がすべてではないんだ、と。あくまで「自分」というものが真ん中にあって、その周りに、家族、地域社会、サッカーの監督、ベトナム孤児救済のボランティア、そして会社の仕事といういくつもの活動領域もしくはアイデンティティが適切に配置されていて、その間を時間とエネルギーを適切に配分しながら移動する、そのコーディネーションの巧みさがこの人の「自分らしさ」となっているのだ、と。「市民」であるとはどういうことだったのだ。

 翻って発展途上国である日本では、「会社」が太陽のように真ん中にあって、下手をすると「自分」はその周りを回っている月でしかない。会社人間とか、佐高信の言い方では「社畜」とか呼ばれるほど会社に尽くして、その果てに会社を定年かリストラで辞めるとアイデンティティ喪失に陥って毎日何をしたらいいか分からず、引きこもりになって、挙げ句には離婚されたりするというのは、つまりは「自分」が真ん中にいない人生だったことに今初めて気が付いて、しかし今更どうしたらいいか分からないということなのだ。自分が発光体として真ん中にいて、周りにいろいろな活動領域があって、会社なんぞそのワンノブゼムでしかないということであれば、その1つが欠けてもたいした支障はない。むしろ、他のもっと浮き浮きするような諸活動に力を注ぐことが出来る。帰国した私は、今も団長をやっている草ラグビーチーム「ピンクエレファンツ」の機関誌「桃象主義者」に、自分が真ん中にいて周りにいろいろな要素を巧みに配置した先進国型の生き方と、会社が真ん中にあって自分はその周りを回るだけの途上国型の生き方とを図に描いて、「俺たちがチームを作っているということは、こういう意味なんだ」ということを説いたりした。

 上の図を少しだけ解説しておこう。緑の領域は、食と農、田舎暮らしに関わる。真上に伸びている太い枝の脇には、故・藤本敏夫と書き込んだほうがいいだろう。彼と一緒に94年に昭和19年生まれの人たちに呼びかけて、[10年後の還暦を以下に迎えるか」の研究会と称する飲み会「一休会」を作った。その場で藤本が、「人生は二毛作である。二毛作と言えば“農”である。日本人すべからく、第2の人生は何らかの程度で“土”のある暮らしをすべきである」とアジったので、彼と加藤登紀子が安房鴨川の山中で開いている「農事組合法人・鴨川自然王国」を訪ねた。そこで10年間、田植えや畑、味噌造りに取り組むうちにすっかり嵌って、その近くに1800坪の山林を買って移り住むことになった。他方、これも藤本の紹介で帯広に行って、ランチョエルパソという手作りハム・ソーセージと地ビールで有名なレストランのオーナーである平林英明と出会って、彼の自宅兼牧場で馬に乗ることを覚え、そこで十勝の町おこしを語り合う「十勝渓流塾」というものが出来て、その拠点となるログハウスを牧場内に持った。そこから、茶色に塗ってある馬に関わる領域がどんどん広がって、今は特に、神奈川県中を馬で歩ける道を作るための研究会の活動を熱心に進めていて、やがてこれはNPOとして組織化しようと思っている。また、フランスが世界に誇る人と馬の混然となった音楽劇「ジンガロ」の日本誘致に取り組んで昨年成功し、次は08年に新しい出し物で公演を実現するということで、5月連休にはイスタンブールにそれを観に行くことになっている。黄色は、文化、スポーツ、健康に関わる領域。赤は早稲田大学で教えるという領域。青は狭義の仕事である。

 みなさんもこのような形で自分のアイデンティティを再確認してみることをお勧めする。描くことが何もないというのは寂しい。が、もしそうだったら、描くことがたくさん出てくるような暮らし方をこれからすればいいだけのことである。▲

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コメント (5)

面白いですね。
自分でもやってみましたが、高野さんの四分の一しか枝がない、、、。
なぜだか、もっと増やさなければ、、、なんて思っちゃいました。

僕には無理でした さすが高野さん

『マインドマップ・ノート術』本日入手しました。これ、まさしく「脳内地元学」であり「自分学」ですね。やってみます。

ちなみに、マインドマップを知る前に作った高野個人ホームページの表紙は、図らずもこのマップとほぼ合致している。そうとは知らずにマインドマップをやっていたということだ。

高野さんへ

だから 貴方は凄いです

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Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
(読売TV系、月~金曜21時~)

BookMarks

東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER:インサイダー
http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

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