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米国の対日牛肉輸出問題がこじれる訳は?

 今日の「毎日新聞」が面白い記事を載せている。「米食肉加工業者が農務省提訴/「大手配慮、全頭検査せず」。米国の中堅食肉加工業者であるクリークストーン・プレミアム・ビーフ社が23日、BSEのための全頭検査をしないのはおかしいとして米農務省を提訴したことについて、同社のCEOに直接インタビューしたのだ。ジョン・スチュワートCEOの言うには、「米農務省が『全頭検査は非科学的』と主張しているのはシェアの約8割を占める業界大手4社が検査をしたがらないことに配慮しているためだ。検査費用は1頭20ドル(約2300円)かかり、大手は負担増を嫌がっている。当社は高級牛肉中心なので検査で(より安全という)価値が高まる」というのが提訴の動機である。

 こうなると、一見すると日米両政府間の“神学論争”であるかに映っている現象論レベルの問題が実体論レベルに移し替えられてくる。

 第1に、ここで言う「シェアの約8割を占める業界大手4社」とはどこか。タイソン、カーギル、スウィフト、スミスフィールドの食肉加工業者4社で、実際この4社が対日輸出も仕切っている。ジョン・ディック他の論文「世界食肉市場の構造」によると、世界の食肉加工業者の売上げによるランキングのトップ10は次の通りである。世界の食肉市場は完全に米国が支配していると言っていい。
                            
(1)Tyson Foods,Inc.(U.S.) 24,000(Sales=百万ドル)
(2)ConAgra Food(U.S.) 13,894
(3)Excel Corp.(U.S.) 12,000
(4)Nestle SA(Switzerland) 10,150
(5)Swift and Co.(U.S.) 8,000
(6)Nippon Meat Packers(Japan) 7,853
(7)Smithfield Foods,Inc.(U.S.) 7,400
(8)Farmland Refrigerated(U.S.) 4,754
(9)Danish Crown(Denmark) 4,534
(10)Sara Lee Packaged Meats(U.S.) 4,166

 タイソンは1931年創業の鶏肉業者で、2001年に牛肉・豚肉のIBPを買収して一躍世界一となった。コナグラは元はネブラスカの製粉業者の合同会社から始まった総合食品会社だが02年に牛肉・豚肉部門をスウィフトに売却した。エクセルは巨大穀物メジャー=カーギルの牛肉・豚肉部門。スウィフトはセントルイスに発した牛肉の老舗。スミスフィールドは合併を繰り返して大きくなってきた多国籍企業。ということで、コナグラを除く4社がので、ビーフ・マフィアのメンバーである。

 ちなみに6位は日本ハムのこと。他の日本企業は伊藤ハムが12位、プリマハムが16位、丸大ハムが25位、スターゼン(旧ゼンチク=全国畜産協同組合)が28位にランクされている。

 第2に、このビーフ・マフィアのブッシュ政権に対する発言力は強大である。ビデオニュースの神保哲生が昨年『論座』に書き、ホームページで公開している論文「このまま米国産牛肉の輸入を再開して本当にいいのか」から引用する。
http://www.jimbo.tv/commentary/000143.php

▼タイソン、カーギル、スウィフト、スミスフィールドの米国の大手食肉メーカー四社及び四社が実質支配する食肉業界の業界団体は、政治献金やロビーイング活動を通じて政界でも絶大な影響力を誇る。そうした政治力に加え、その背後には全米の生産者、屠畜業者、レンダリング業者、飼料業者、そして牛や豚、鶏の飼料を生産する飼料農家等々、膨大な数の畜産従業者が控えているため、組織票という意味においても、屈指の政治集団を形成している。しかも、全米ライフル協会(NRA)などと似て、畜産ロビー(食肉業界の圧力団体)は結束が固くて強面という評判が、ワシントンでは定着している。
▼過去二回の大統領選挙では、食肉業界は一致団結してブッシュ陣営を支持した。大統領選挙に呼応する形で日米の牛肉交渉が熱を帯びていったのは、決して偶然ではない。
▼ところで米国の政界では、選挙での支持に対する御礼の仕方が少し日本とは異なる。米国では貢献度の高かった支援団体の関係者を政権の枢要なポストに政治任命してしまうという手法が用いられることが多い。当選後あれこれ面倒を見るよりも、政治的な権限をそっくりあげるから、自分でいいようにやりなさい、といったところか。
▼食肉業界もご多分に漏れず、ブッシュ政権から十分な恩返しを受けている。例えば、政治任命される農務省の高官ポストのうち、ムーア主席補佐官を筆頭に次官、副次官、次官補クラスに少なくとも8人の食肉業界の出身者がひしめきあっている。単に食肉業界の息がかかって役人がいるというだけでなく、もともと食肉業界にいた人たち自身が政権交代とともに大挙して政権内部に入り込んでいるのだ。農務省の政策が業界の意向に沿っているのは、ごくごく自然の成り行きということになる。

これじゃあ米農務省を相手にした交渉が難航する訳だよね。それにしても物凄い米国の官民癒着ぶりだ。▲

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Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
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東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
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INSIDER:インサイダー
http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

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