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安易な“中国脅威論”に反対する!

 昨日のサンプロは、(1)堀江の送金指示メールは本物か?、(2)日本にとって中国は脅威か?、(3)北朝鮮・大物工作員の正体、の3本立て。(3)はTVジャーナリスト集団「ジン・ネット」の取材ディレクター=高世仁さんによる近頃出色の追跡ドキュメンタリーで、拉致に関わった謎の大物工作員「朴」の足跡を追ってそのすぐ配下で働いていた在日朝鮮人の証言を引き出したのはお見事。普段はあんまり「特集」を誉めない田原さんも終了後「よく取材したねえ」と感嘆していた。山谷あたりで身寄りのない日本人を捜して戸籍を乗っ取るという手口もさることながら、北朝鮮に家族がいる在日朝鮮人を脅して秘密工作に協力させるという汚いやり方には腹が立った。ところが、それをやっている工作員自身も、本国の家族を“人質”にとられているからスパイの仕事を離れることが出来ないという構図がなおさら悲しい。

高世仁『北朝鮮の国家犯罪・拉致』(講談社文庫、02年9月刊)
ジン・ネット http://www.jin-net.co.jp/

 (1)は、民主党のライブドア問題追及チーム会長の桜井充と自民党幹事長補佐の世耕弘成のやり合い。メールが「本物である可能性が極めて高い」と言いながらも、桜井の発言は恐ろしく歯切れが悪く、その理由を彼は「情報提供者を守らなければならない」と繰り返したが、私が「守らなければならないのは当然として、それは命が危ないのか、仕事を失うのか、どういうレベルの話なのか」と聞くと、どうも「仕事が続けられなくなる」という程度のことらしい。田原さんが言ったように、このメールが本物だったら武部辞任では済まず小泉政権が潰れる。偽物だったら永田議員の辞職では済まず民主党そのものが壊滅する。生きるか死ぬかの勝負なのだから、命が危ないならともかく、仕事を失う程度のことであるならば、民主党がその情報提供者を一生面倒見ることにして国会で堂々と証言させればいいではないか。何をごちゃごちゃ言っているのか。それでも桜井は「振込先の口座番号は掌握している。今週の国会で明らかにする」と明言していたので、それに期待しよう。この国会中継は視聴率が上がるだろう。番組後、田原さんも「NHKの視聴率を上げちゃったな」と苦笑。

 (2)は、麻生外相が「かなり脅威」と言い、前原誠司=民主党代表が「現実的脅威」とまで言った中国の軍拡をどう見るかをめぐっての田岡俊次(朝日ニュースター・コメンテーター/前『AERA』編集委員)、志方俊之(帝京大学教授/元自衛隊北部方面総監)、石破茂(元防衛庁長官)の3人の専門家による討論。田岡さんは中国の軍事費が急増していると言ってもインフレ率を考えればそれほどのものではなく、また例えば2000機以上あることになっている中国の空軍・海軍の戦闘機・攻撃機のうち1000機は1950年代のミグ19など使い物にならない全く旧式のもの、960機はミグ21など「相当旧式」なもので、実戦に足る新型はスホーイ27など245機にすぎないなどと、中国軍は張り子の虎であるという持論を展開した。志方さんが反論するかと思いきや「田岡さんの言うのは正しい」と断言、しかし近年(96年以降)の増強だけでも大変なものであることに注意を払うべきだと言い、また石破さんはその増強の中身について「96年の台湾海峡危機の際に米空母が海峡に進出して中国を牽制したことが北京にはショックで、それ以後、対艦ミサイル能力と対潜水艦能力に特化した増強に励んでいる」と正確な分析を述べた。つまり、最近の中国軍拡は台湾有事に米空母艦隊が介入した場合にそれを(少しでも?)抑えることが出来るようにすることが主な狙いであって、それ自体は日本にとっての脅威ではない。専門家は左右の立場を超えてその点で一致するのである。

 とすると政治家が“脅威”を騒ぎ立てるのはなぜなのか。志方さんがやんわり指摘していたように、軍部は予算が欲しいからわざと“脅威”を強調するのが常で、政治家は意図的=イデオロギー的にか無知ゆえかそれを拡声器にかけて騒ぐという構図である。私が発言したことを補足を加えて再現すれば次のようである。「冷戦時代の旧ソ連の“脅威”でさえ潜在的脅威に留まっていたというのが軍事的常識である。極東ソ連軍の存在は強大であり、それがいざという時に北海道に上陸侵攻する可能性があって、それに第1次的に対処することが志方さんが司令官だった北部方面隊の任務だったが、しかしそれが潜在的脅威であったのは、例えば、ウラジオストク港にはソ連機械化部隊を渡洋させるだけの輸送船がいなかった。それがもし輸送船が集結を始めたということになると、現実的脅威、すなわち我が方が部隊を戦闘配置に切り替えるとか、何らかの軍事的対応を開始しなければならない重大な段階に転化する訳で、そのように潜在的脅威と現実的脅威は厳密に判断しなければ国の存亡に関わる。そういうことも判らずに、安易に“現実的脅威”を口にした前原代表は、軍事・外交のド素人であることを露呈したのだ」と。この点は3人の専門家にも田原さんにも同意して頂いたと思っている。

 この“中国脅威論”の虚妄については、インサイダーで詳しく再論したいと考えている。▲

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コメント (2)

なるほどですね

中国脅威論 前原発言 ここでも
減点ですね

高野さん レクチャーの必要ありではないですか?

 中国脅威論もいいけど、私たちの国はどうなっちゃってるんですかねぇ。冷静になって考えると、もちろん外交も内政も共に重要ですが、急務なのはアメリカとの関係を含めた私たちの国の建て直しだと思うのですが。
 外に目を奪われてる間は、悪事を働く官僚や政治家は安泰ですからね。そのようなことを思うと、対中問題も、メール問題やサヨナラ民主党問題などと同じで、目眩ましの一つなのかなぁなどと感じてしまいます。
 例えば、私たちは、中国脅威論や民主党がボロボロで事実上の一党独裁の果てに、一体どのような国になろうとしているのでしょうかね。
 「中国は昔から日本の目の上のたんこぶだで脅威だったんです。アメリカと一つの国になるのが日本にとって一番いいんです」なんて5年後ぐらいに小泉さんが決死の表情でNHKで生会見したら、みんな「そうだな、今までも北から南まで軍事基地があったし、外資系にはお世話になってるし、ハリウッドもディズニーも大リーグもハンバーガーも結構いいし、たいした問題じゃないじゃん、中国も怖くなくなるし」なんて社会の空気になったりして、と少し心配です。チェーホフの{6号病棟}の話のようになったら怖いです。
 グアムに行くと、チャモロ人の方たちの気持ちを想像してみます。でも、私たちがそうなってみないときっとわからないと思いました。国のかたちが変わるときは、その直前まで、そこにいる人達は、まさかと思っているものなのかも知れませんよね。
 私達は未だに明らかな敗戦国のままなのような気がします。もう戦後60年ではなく、まだ戦後60年ですもんね。自由になるのはまだ先でしょうか。
 中国脅威論や昨今の盲目的アメリカ化推進自民党を見ていると、むしろ私はこんなことを考えてしまいます。

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Profile

高野 孟(たかの・はじめ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。
通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。
同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。
80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任し現在に至る。
94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊したほか、PC-VAN・NIFTY-Serve・MSN、富士通ブロードキャストその他電子メディアのコンテンツ創造、講談社・小学館・集英社その他出版社のウェブサイト開設、『インサイダー』のメルマガ化、などを次々に手掛け、インターネット・ジャーナリズムの先駆的開拓者と呼ばれた。
現在、それらの経験を活かして、独立系メディアの総合サイト《THE JOURNAL》に取り組んでいる。
2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」の授業「21世紀日本の構想」、ゼミ「インテリジェンスの技法」、社会人ゼミ「ネクスト・リーダーズ・プログラム」を担当している。

-----<出演>-----

『サンデープロジェクト』
(TV朝日系、日曜10:00~)

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日系、最終金曜25時頃~)

『たけしのTVタックル』
(TV朝日系、月曜日21:00~)

『情報ライブ ミヤネ屋』
(読売TV系、月~金曜21時~)

BookMarks

東京万華鏡:TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER:インサイダー
http://www.smn.co.jp/insider/

大阪高野塾
http://www.osaka-takano.com/

-----<著書>-----


『滅びゆくアメリカ帝国』
2006年9月、にんげん出版


『ニュースがすぐにわかる世界地図(2006年版)』
2005年、ポスト・サピオムック


『最新・世界地図の読み方』
1999年、講談社現代新書

『情報世界地図 98』
1997年、国際地学協会

『地球市民革命』
1993年、学研

『21世紀への世界時計』
1991年、集英社

『入門世界地図の読み方』
1982年、日本実業出版社

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