さいとう・たかを先生に会った!
そうだ、これを報告するのを忘れていた。先週の火曜日に、劇画の大御所で『ゴルゴ13』の作者であるさいとう・たかを先生にお目にかかった。何のためかと言えば、まさにその『ゴルゴ13』の全作品の中からとりわけ国際情勢のダイナミズムを活写していると思われる作品を選び出して、それを素材にしながら「日米経済戦争」「資源戦争」「メディア支配」「パレスチナ問題」「激動の中国」など13のテーマを立てて図解入りで解説するという本を作っていて、春には小学館から出版される予定なのだが、その巻頭に載せるさいとうさんと私の対談を収録するためだ。
事前の想定では、各作品の取材や構成の苦労話を聞いて、そこから国際情勢の裏表のナマナマしい話に入っていこうかというつもりだったが、「あんなの“ウソ八百”を描いているんだから、それで国際情勢を勉強したいと言われても困っちゃうんだよね」という先生の一言で流れが変わってしまって、人間論・文明論みたいな話になっていって、その展開に編集者はいささか戸惑ったようだったが、私はそれが面白く、闊達なさいとうさんのおしゃべりを大いに楽しんだのだった。もっとも、“ウソ八百”という先生の謙遜に対しては、私はこう述べた。「いや、ストーリーや登場人物そのものがフィクションだというのは分かり切ってますが、その背景になっている国際関係の敵対構図や表も裏もある駆け引きなどは物凄いリアリティがあって、ジャーナリストである私が読んでも、うーん、こんなことが本当にあったのかもしれないなあと思ってしまうところが面白いんですよ」と。それはそのはずで、原案提供者は海外経験もあるジャーナリストやその分野の専門家ばかりであって、彼らとの議論を通じて形作られるしっかりとした骨組みの上に、先生自身の独特の感性に従って目一杯、想像力を働かせてストーリーを走らせていくわけだから、先生が言うように「こんなことは絶対ありえない(という荒唐無稽な)ことは描いていない」のである。
『ゴルゴ13』の連載が『ビッグコミック』で始まったのが38年前の1968年、私が大学を出てジャーナリストの道に踏み出した年である。その時から今日まで欠かさず読んでいるのだから、私もゴルゴの最良の読者の1人と言えるだろう。2年前に還暦を迎えて、何かけじめを付けなければいけないと思って、『ビッグコミック』を毎週キオスクで買うことは止めた。しかしゴルゴだけは気になって、単行本が出れば買って読んでいる。さて、どんな本が出来るのか、楽しみなことであるけれども、原稿を書かなくては始まらない。今日明日はその執筆に没頭の予定。▲
コメント (3)
さいとうたかお氏の ブログも見たいですね
あの 情報は 彼は どこから 仕入れているのか聞きたいです。
麻生外務大臣も ゴルゴを毎週読んでるとの事ですから。
しかし 大臣が あれを読んで まさか 本気で ゴルゴ頼みはないでしょうね(笑)
投稿者: 松本 | 2006年2月 5日 16:56
特別な秘密の情報源などはなく、情報提供者は、本文に書いたようにジャーナリストが多いようです。しかし、プロから複雑な国際情勢の葛藤の話を聞いて、パッとひらめくのはさいとうさんの感性というか想像力と直感力なんでしょう。想像力とか直感力とかいうものは、ヤマカンとは別物で、やはり普段から自分なりの物の見方、哲学、文明論を鍛えておかないと湧いてこない。そのへんがさいとうさんは凄いと思いました。
投稿者: 高野孟 | 2006年2月 5日 23:57
過去のゴルゴ13原作者には堀井雄二、船戸与一、雁屋哲、小池一夫などの大御所もいたはずです。最近号では元銀行マンなども。
投稿者: Pippin | 2006年2月23日 15:29