金権政治は悪なのか?(前編)
なぜ、日本にはバラク・オバマがいないのか。
その理由は、よく言われているように、政治家が家業になってしまったからだろう。お寺の息子が和尚になるように、政治家の息子が政治家になる。政治家の子どもは「日本をこうしたい!」と思って議員になるわけではなく、家業を継ぐように政治家になる。
昔の自民党はしたたかで、世襲政治家を首相にすることはあまりなかった。最初の世襲政治家の首相は、1954年に就任した鳩山一郎だった。以後、91年の宮沢喜一まで世襲で首相になった人物はいなかった。世襲はダメだということが自民党の議員はわかっていたのだ。世襲政治家は修羅場をくぐっていない。宮沢さんも頭はよかったが、パワー不足で頼りなかった。
宮沢さんの次に世襲で首相になったのは96年の橋本龍太郎だった。以後、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と7代連続して世襲政治家である。
世襲政治家がこうも増えてしまった理由は、親の選挙地盤があるため、金銭面で無理をしなくていいからだ。たたき上げの議員は、政治家として生きるには無理をしなければならないので、金がどうしても必要になってしまう。
その代表格が田中角栄だった。だが、彼のすごいところは、田中角栄が首相になるまで、日本には旧帝大出身の高級官僚しか首相になれなかった。いわば、日本は階級制度だったのだ。これを小学校しか出ていない田中角栄がぶち破った。裏を返せば、田中角栄が首相になるためには、金権しかなかったとも言える。だから彼は、佐藤栄作にも池田勇人にも多額の寄付をしたのだ。
誤解を怖れずに言えば、私は、日本が階級制になるくらいなら、金権政治のほうがまだましだとさえ思っている。