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2009年2月24日

金権政治は悪なのか?(前編)

 なぜ、日本にはバラク・オバマがいないのか。

 その理由は、よく言われているように、政治家が家業になってしまったからだろう。お寺の息子が和尚になるように、政治家の息子が政治家になる。政治家の子どもは「日本をこうしたい!」と思って議員になるわけではなく、家業を継ぐように政治家になる。

 昔の自民党はしたたかで、世襲政治家を首相にすることはあまりなかった。最初の世襲政治家の首相は、1954年に就任した鳩山一郎だった。以後、91年の宮沢喜一まで世襲で首相になった人物はいなかった。世襲はダメだということが自民党の議員はわかっていたのだ。世襲政治家は修羅場をくぐっていない。宮沢さんも頭はよかったが、パワー不足で頼りなかった。

 宮沢さんの次に世襲で首相になったのは96年の橋本龍太郎だった。以後、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と7代連続して世襲政治家である。

 世襲政治家がこうも増えてしまった理由は、親の選挙地盤があるため、金銭面で無理をしなくていいからだ。たたき上げの議員は、政治家として生きるには無理をしなければならないので、金がどうしても必要になってしまう。

 その代表格が田中角栄だった。だが、彼のすごいところは、田中角栄が首相になるまで、日本には旧帝大出身の高級官僚しか首相になれなかった。いわば、日本は階級制度だったのだ。これを小学校しか出ていない田中角栄がぶち破った。裏を返せば、田中角栄が首相になるためには、金権しかなかったとも言える。だから彼は、佐藤栄作にも池田勇人にも多額の寄付をしたのだ。

 誤解を怖れずに言えば、私は、日本が階級制になるくらいなら、金権政治のほうがまだましだとさえ思っている。

金権政治は悪なのか?(後編)

 アメリカの大統領選挙では、自分が集めたカネの額を公表している。しかも、その多くは個人献金である。ところが、日本では個人献金が少ないので、政治家は企業からカネをもらうしかない。しかし、企業の社長にとって、献金したにもかかわらず会社に何も得るものがなかったら背任行為である。一方、献金によって得るものがあれば贈賄になってしまう。日本で政治献金をする人は、賄賂と背任の狭間で活動をしている。

 献金を集めることが難しいがために、カネの心配の少ない世襲政治家がどんどん増えてきた。そのためなのか、世襲政治家の多くが汚職とは無縁だが、大きな目標はない。

 昔の自民党がよかったなどと言うつもりはない。しかし、歴代の首相には、池田勇人の「所得倍増」、佐藤栄作の「沖縄返還」、田中角栄の「列島改造」など、「日本をこうするんだ!」というビジョンがあった。

 世襲政治家はそのような目標がなくても首相になれてしまう。これが日本の政治をどんどんダメにしている。

(構成:THE JOURNAL運営事務局)

Profile

田原総一朗(たはら・そういちろう)

-----<経歴>-----

1934年、滋賀県彦根市生まれ。
早稲田大学文学部卒。
岩波映画製作所、テレビ東京を経て、77年フリーに。
テレビ東京時代の連続番組「ドキュメンタリー青春」で、取材対象者に肉薄する独特のインタビュー手法で注目を浴びる。
現在は政治・経済・メディア・IT等、時代の最先端の問題をとらえ、活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。
テレビジャーナリズムの新しい地平を拓いたとして、98年ギャラクシー35周年記念賞(城戸又一賞)を受賞した。
2002年より母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生や社会人の指導にあたっている。

-----<出演>-----

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日、毎月最終金曜25時?)

『サンデープロジェクト』
(TV朝日、毎週日曜10時?)

BookMarks

田原総一朗 公式サイト
http://www.taharasoichiro.com/

田原総一朗のタブーに挑戦!(JFNラジオ番組)
http://www.jfn.co.jp/tahara/

株式会社アスコム
http://www.ascom-inc.jp/

朝まで生テレビ!
http://www.tv-asahi.co.jp/asanama/

サンデープロジェクト
http://www.tv-asahi.co.jp/sunpro/

早稲田大学 大隈塾
http://www.waseda.jp/open/attention/ookuma/ookuma_curriculum_2005.html

早稲田大学 大隈塾ネクスト・リーダー・プログラム
http://www.waseda.jp/extension/okumajuku/index.html

-----<著書>-----


『市場浄化』
2006年10月、講談社


『テレビと権力』
2006年4月、講談社


『オフレコ!Vol.2』
2006年3月、アスコム


『国家と外交』
2005年11月、講談社、田中均共著


『日本の外交と経済』
2005年9月、ダイヤモンド社


『日本の戦後(上)』
2003年9月、講談社


『日本の戦後(下)』
2005年7月、講談社


『田原総一朗自選集 1?5巻』
2005年7?10月、アスコム

『オフレコ!Vol.1』
2005年7月、アスコム、季刊

『日本の戦争』
2004年12月、小学館文庫

『日本の政治?田中角栄・角栄以後』
2002年10月、講談社

『日本の生き方』
2004年11月、PHP研究所

『日本政治の表と裏がわかる本』
2003年5月、幻冬舎文庫

『連合赤軍とオウム?わが心のアルカイダ』
2004年9月、集英社

『「小泉の日本」を読む』
2005年2月、朝日新聞社

『面白い奴ほど仕事人間』
2000月12月、青春出版社

『日本のからくり21』
朝日新聞社

『愛国心』
2003年6月、講談社、共著

『わたしたちの愛』
2003年1月、講談社

『日本よ! 日本人よ!』
2002年11月、小学館

『田原総一朗の早大講義録(1)』
2003年9月、アスコム

『田原総一朗の早大講義録(2)』
2004年3月、アスコム

『田原総一朗の早大「大隈塾」講義録 2005(上)』
2005年5月、ダイヤモンド社

『田原総一朗の早大「大隈塾」講義録 2005(下)』
2005年5月、ダイヤモンド社

『頭のない鯨?平成政治劇の真実』
2000年2月、朝日新聞社

『田原総一朗の闘うテレビ論』
1997年3月、文芸春秋

『メディア・ウォーズ』
1993年3月、講談社

『平成・日本の官僚』
1990年3月、文藝春秋

『警察官僚の時代』
1986年5月、講談社

『マイコン・ウォーズ』
1984年12月、文芸春秋

『原子力戦争』
1981年11月、講談社

-----<連載>-----

週刊朝日「田原総一朗のギロン堂」

SAPIO「大日本帝国下の民主主義」

プレジデント「権力の正体」

-----<映画>-----

『あらかじめ失われた恋人たちよ』
1971年、監督

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