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2008年3月26日

困惑する日本

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「The Economist」というイギリスの雑誌が2月に「JAPAiN」という特集を組んだことが話題になっています。
読んで字のとおり「JAPAN」に「PAIN」をかけて「困惑する日本」というイメージの特集なんですが、記事では、日本の混乱は政治に原因があると批判されています。

そもそも小泉さんが総理大臣に就任したころ、株価は1万1000円台でした。小泉政権のいつから株価が上がったのかといえば、郵政の民営化をやったときです。選挙して勝った。このときから株価が1万4000円、5000円と上がっていって、最終的には1万7000円台になった。一方、いつから下がり始めかというと、安倍さんが参院選で惨敗したときです。この時から株価の下落が止まらなくなった。

なぜ下がったのかというと、The Economistにも書いてあるけど、世界から民主党はバラ撒きの抵抗勢力だと思われている。つまり、日本の政治は与党も野党も小泉さんの構造改革路線を否定して、まったく逆にバラ撒き政策をやると海外で捉えられているのです。

中央銀行総裁不在のモタモタでますます日本は見放される

今回の日銀総裁の問題も、政治が困惑していることのあらわれです。
自民党は日銀総裁に武藤敏郎さんを選ぼうとした。言うまでもなく、民主党は初めから武藤さんは駄目だと言っていた。武藤さんは元財務官僚で、事務次官までやった人間。これは財政と金融の癒着になるから、民主党は最初から拒否すると言っていた。しかし、福田さんはそれでも武藤さんで突っ切ろうとした。その次は田波耕治さん。これまた元大蔵省の財務官僚で、しかも元事務次官。もちろん民主党はNOと言う。

そもそも民主党の鳩山幹事長は、サンデープロジェクトに出演した際「財務官なら否定しない」と言っていた。ところが実際に出てきたのは元事務次官で、総裁は結局空席になってしまった。

なぜこのような人選をしたのか。情けないことに、自民党は鳩山さんに先に人選を提示されて、それに従うのは屈辱だからだから他の候補の人事を提案しなかった。

なんかもう子供のケンカで、しかも兄弟同士で「お前の母ちゃんでべそ」と言いあってるようなものです。

総裁代行ではG7に出席できない可能性も

それで、白川副総裁が総裁代行になりました。ところが、代行という地位でおさまったことで、政界がなんとなくホッとしてる。これはまったく間違っていて、冗談じゃないと言いたい。
4月にはG7があります。G7には7つの国の大蔵大臣と財務大臣、それから各国の中央銀行の総裁も出席します。ところが、この大事な会議に「総裁代行」という身分では会議に出席できない可能性があるんです。

このまま行くと、G7に日本の中央銀行総裁が出席できない。世界中が経済をなんとか立て直そうと必死なときに、日本だけ中央銀行の総裁がいない。
こうなると外国から見れば、日本の政治は何もやってない、何をモタモタしてるんだとなります。もちろん、どんどん外国人の株主は逃げていくでしょう。

その次は7月に洞爺湖サミットがあります。
いまだにノンキに「洞爺湖サミットは環境サミットだ」と言っている人がいる。まったく違う。次のサミットのテーマは環境ではありません。テーマは当然ながら今の世界経済の緊急事態です。
ところが、日本中が洞爺湖サミットを経済緊急事態の会議だと思っていない。いまだにみんな「環境だ」と言っている。

自民党はすでに福田首相を守る気がない?

予算関連法案の行方によっては参議院で問責決議案、内閣不信任案が出る可能性もある。
そのとき、自民党は福田さんを守るのか守らないのか。自民党の議員の誰に聞いても「どうなるでしょうね」と言う。

いま、政治が無茶苦茶です。株価が下がっているのは日本の経済が駄目なのではないんです。政治が死んでしまっているんです。


(協力:JFN 構成:《ざ・こもんず》運営事務局)

■田原総一朗の『タブーに挑戦』 http://www.jfn.co.jp/tahara/
JFNデジタル703chで好評放送中の『田原総一朗のタブーに挑戦!』では、「政治・経済の動向や裏側」、「注目の人物」、そして「ご自身の事」など、田原総一朗さんが鋭い論評を展開しています。
また、番組では、田原さんに聞いてみたいことや人生相談など、なんでも受け付けています。下記フォームからどしどし質問をお寄せください。
http://www2.jfn.co.jp/jfnwwwmail/mailform/mailform.cgi?ch=iradio_tahara

2008年3月20日

世界食料戦争を生き抜くために

食料を含む資源戦争が始まった

日本の食料自給率が40%を割り、主要先進国で最低になりました。しかも、輸入食料品は高騰していて、日本の食糧事情はいま大変なことになっています。

なぜこれほど自給率が下がったかというと、理由はわりに簡単で、日本人が米を食べなくなったからです。今でもコメの自給率はほぼ100%。だから、全員がご飯を食べれば自給率が上がりますが、日本人はだんだんごはんを食べなくなってきている。だから自給率の低下が止まらない。

輸入食料品も高くなっています。高騰の理由は、一つは世界の人口が増えたこと。もう一つは原油の高騰。サブプライム問題の影響で日本やアメリカの株が下がっているのに、世界には金が余っていて、この金がWTI(米国産標準油種、West Texas Intermediate)、つまり原油のマーケットに流れている。

今まで食料や原油は基本的に経済原理で動いていました。需要が多くなれば値段が上がる、あるいは干ばつなどで気候が不順になると農作物の収穫量が下がるため値段が上がる。ところが、そのような常識がここへきて大きく変わってきた。

いま、資源戦争の一つとして、世界で食料戦争が始まったと私はみています。
では日本はこれからどうすればよいのでしょうか。

食料戦争を生き抜くために、日本の農業の構造を変えよ

一つは食生活を変えること。もう一つは日本の農業の構造を大きく変換することです。

たとえば、今でもコメは100%自給できている。政府はコメを守ってきたんですね。ところが、コメを守ってきたために、大豆、トウモロコシ、麦などが減り、どんどん輸入に頼るようになった。

そこが難しい話なのですが、明治、大正期を含め、戦後も長い間日本人はコメを食べていました。ところが、うどん、スパゲッティなどの麺類やパン類のほか、日本人はコメ以外の物を多く食べるようになりました。麺やパンを多く食べるようになって麦が必要であるにもかかわらず、その麦は90%以上を輸入していて、その一方でコメは余っている。

しかも、農家の平均年齢は65歳でお年寄りなんです。あと10年後にはほとんどいなくなっちゃう。しかも後継者はいない。なぜ後継者がいないかというと、農業に魅力がない。米が余り過ぎているため、値段が安い。お金にもならない。農家の息子や娘たちは都会へ出て行き、ほかの職業についていく。
ようするに、自給率が低いとこへもってきて、農業をやる人の数が将来どんどん減っている。

このように、日本人の食生活が変わってきたにもかかわらず、コメ中心の農業の構造が変わってないため、あちこちで矛盾が出ています。

だから、食生活の見直しだけではなく、日本の農業を基本的な部分から構造から変えなきゃいけない。


日本の農産物は世界で人気がある

では、日本の農産物の質がよくないかというと、そんなことはない。むしろ世界で一番質がいい。たとえば、りんごのブランドといえば世界では「富士」です。世界で一番おいしいスイカは熊本県産。ミカンもどんどん海外に輸出している。

80年代、牛肉とオレンジの自由化について反対運動がありました。外国から安いオレンジがどんどん入ってきたら、日本のミカンがダメになる。ところが、自由化されたいま、ミカンはアメリカへ輸出している。日本のミカンはとても重要な輸出産業です。

ひとつ面白い話をしますと、アメリカ行ったとき「アメリカの人たちはどうしてオレンジじゃなくてミカン食べるんですか」と聞いたら、「オレンジはテレビ見ながら皮むけない」と言っていました。ミカンは皮むける。食べてみたらおいしい。日本の農産物は輸出ができるんです。


世界の寿司ブームに乗ってコメを輸出せよ

コメも輸出できる可能性がある。

今、世界中で寿司ブームです。僕はアメリカやフランスなど、あちこちで寿司を食べましたがたいしてうまくない。それは現地の水とコメを使ってるから。寿司には日本の水で炊いた日本のコメが一番あってるんです。

私は、日本のコメを水とセットにして海外に輸出すればいいと思う。成功すれば、コメは輸出産業になります。

実際、松岡利勝さんが農水大臣のとき(この人は農水大臣としてはなかなか優秀でした)、中国といろいろ交渉して、初めて日本のコメを中国に売りました。日本米の値段は中国米の約30倍。でも、あっという間に売りきれ、大成功しました。ところが松岡さんが自殺してしまい、その後、そういうことのできる農水大臣はいません。

つまり、米も輸出できる。もちろんスイカやリンゴもです。いろんなものが輸出できる。農業が輸出産業になれはば、日本の農業よくなります。

戦略の転換なくして食料戦争には生き残れない

ところが、どうも日本の農水省と農協は守りばっかりで攻めの発想がない。守って守って農業を弱くしている。人間だって、過保護に育てるとロクな人間にならないように、日本の農業も弱くなっている。

補助金は使ってもいいんです。強くするための金は使っていい。農業の大輸出国であるフランスは、輸出のための補助金を出していますし、アメリカもやっています。

日本の場合は、補助金を出して弱くしてる。民主党は農家一戸一戸に金を出して、1兆円出すといいますが、農家の平均年齢は65歳。ここに補助金を出したって日本の農業はよくならない。

今、日本の農業は大きな見直しの時期に来ています。今まで食料は外国から買えばいいと思ってきたけど、もはやそういう時代ではありません。

この資源戦争の時代になって、日本は戦略を大きく変えなければならないのです。


(協力:JFN 構成:《ざ・こもんず》運営事務局)

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2008年3月10日

支持率低下で自民党内の「NASA」が福田降しに動き出す

福田首相は宏池会系・宮澤喜一タイプ

福田首相は、今までの総理大臣で誰に似ているかといえば、僕は宮澤喜一さんだと思います。

福田さんは、森派(現・町村派、清和会)ですね。だけど、彼は谷垣さんや古賀さんが所属する宏池会タイプです。宏池会の前の会長は加藤紘一さん。その前が宮澤さんだったんだけど、彼は宮澤さん的なんです。

自民党で長年にわたって一番力を持っていたのは旧田中派、竹下派の経世会(現・平成研)ですが、経世会の人からすると、宏池会は「公家集団」。つまり、お公家さんなので闘いを知らない。わざわざ場所とイスを用意して「じゃあどうぞ座って下さい」と言わないと座ってくれない。福田さんもそういう宏池会的な人だと思います。

カネで権力を奪い取る経世会と「綺麗なタカ」の清和会
経世会というのは、カネで権力を奪い取る。これが田中角栄さん以来の経世会です。
いま、カネで権力を奪い取ることは悪いことだと思われていますが、私は田中角栄さんを肯定しています。田中角栄さん以前の日本の政界は、東大か京大、つまり、旧帝国大学を卒業し、高級官僚になった人しか総理大臣になれなかった。吉田茂さん、岸信介さん、池田勇人さん、佐藤栄作さん、みんなそうです。
ところが、田中さんは小学校卒で総理大臣になった。なぜか。カネの力です。田中政治は金権政治だと言われるけれど、小学校卒で総理大臣になれることは素晴らしいことだと思う。学歴や閨閥は関係ない。誰でも総理大臣になれるんだよと。

ところが、その後、田中派はみんなミニ田中になっちゃった。田中さんというのは、カネをたくさん集めたけど、議員立法を37本つくったり、カネ以外にも能力がいっぱいあった。37本も法律を作る、そういう能力がありながら結局カネの力を使わないと彼は総理大臣になれなかった。ところが、その後、安易にカネさえ使えば総理大臣になれるというふうになってきた。

それに対して、福田首相の父親である福田派(清和会)の福田赳夫さんは大蔵省出身の高級官僚で、金集めはからっきし下手でした。

そのため、田中派はどちらかういうとハト派なので、福田派はタカ派路線で対抗した。「汚いハト」から「綺麗なタカ」へ。これが福田派・清和会で、小泉さん、安倍さんはみんな「綺麗なタカ」なんです。

ところがなぜか福田康夫首相はお公家さん集団の宏池会的なんだね。闘わない。福田首相はそういう人です。

支持率30%を割ったら、「福田降し」が始まる
朝日新聞と毎日新聞の世論調査の結果が出て、僕は支持率が当然30%を割ると思っていたら、両方とも割りませんでした。おそらく、一番ホッとしているのは福田さんでしょう。30%を割ったら「福田降し」がドーッと出てきます。ギリギリでした。

今、自民党の中で流行っている「NASA」という言葉があります。

最初の「N」は中川昭一。次の「A」は安倍晋三。「S」は菅義偉。最後の「A」は麻生太郎。この4人で「NASA」と呼ばれています。何かというと、つまり「福田降し」をやろうとしている面々です。

自民党の敵は民主党じゃない。自民党の敵は自民党の内部にあるんです。

(協力:JFN 構成:《ざ・こもんず》運営事務局)

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Profile

田原総一朗(たはら・そういちろう)

-----<経歴>-----

1934年、滋賀県彦根市生まれ。
早稲田大学文学部卒。
岩波映画製作所、テレビ東京を経て、77年フリーに。
テレビ東京時代の連続番組「ドキュメンタリー青春」で、取材対象者に肉薄する独特のインタビュー手法で注目を浴びる。
現在は政治・経済・メディア・IT等、時代の最先端の問題をとらえ、活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。
テレビジャーナリズムの新しい地平を拓いたとして、98年ギャラクシー35周年記念賞(城戸又一賞)を受賞した。
2002年より母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生や社会人の指導にあたっている。

-----<出演>-----

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日、毎月最終金曜25時?)

『サンデープロジェクト』
(TV朝日、毎週日曜10時?)

BookMarks

田原総一朗 公式サイト
http://www.taharasoichiro.com/

田原総一朗のタブーに挑戦!(JFNラジオ番組)
http://www.jfn.co.jp/tahara/

株式会社アスコム
http://www.ascom-inc.jp/

朝まで生テレビ!
http://www.tv-asahi.co.jp/asanama/

サンデープロジェクト
http://www.tv-asahi.co.jp/sunpro/

早稲田大学 大隈塾
http://www.waseda.jp/open/attention/ookuma/ookuma_curriculum_2005.html

早稲田大学 大隈塾ネクスト・リーダー・プログラム
http://www.waseda.jp/extension/okumajuku/index.html

-----<著書>-----


『市場浄化』
2006年10月、講談社


『テレビと権力』
2006年4月、講談社


『オフレコ!Vol.2』
2006年3月、アスコム


『国家と外交』
2005年11月、講談社、田中均共著


『日本の外交と経済』
2005年9月、ダイヤモンド社


『日本の戦後(上)』
2003年9月、講談社


『日本の戦後(下)』
2005年7月、講談社


『田原総一朗自選集 1?5巻』
2005年7?10月、アスコム

『オフレコ!Vol.1』
2005年7月、アスコム、季刊

『日本の戦争』
2004年12月、小学館文庫

『日本の政治?田中角栄・角栄以後』
2002年10月、講談社

『日本の生き方』
2004年11月、PHP研究所

『日本政治の表と裏がわかる本』
2003年5月、幻冬舎文庫

『連合赤軍とオウム?わが心のアルカイダ』
2004年9月、集英社

『「小泉の日本」を読む』
2005年2月、朝日新聞社

『面白い奴ほど仕事人間』
2000月12月、青春出版社

『日本のからくり21』
朝日新聞社

『愛国心』
2003年6月、講談社、共著

『わたしたちの愛』
2003年1月、講談社

『日本よ! 日本人よ!』
2002年11月、小学館

『田原総一朗の早大講義録(1)』
2003年9月、アスコム

『田原総一朗の早大講義録(2)』
2004年3月、アスコム

『田原総一朗の早大「大隈塾」講義録 2005(上)』
2005年5月、ダイヤモンド社

『田原総一朗の早大「大隈塾」講義録 2005(下)』
2005年5月、ダイヤモンド社

『頭のない鯨?平成政治劇の真実』
2000年2月、朝日新聞社

『田原総一朗の闘うテレビ論』
1997年3月、文芸春秋

『メディア・ウォーズ』
1993年3月、講談社

『平成・日本の官僚』
1990年3月、文藝春秋

『警察官僚の時代』
1986年5月、講談社

『マイコン・ウォーズ』
1984年12月、文芸春秋

『原子力戦争』
1981年11月、講談社

-----<連載>-----

週刊朝日「田原総一朗のギロン堂」

SAPIO「大日本帝国下の民主主義」

プレジデント「権力の正体」

-----<映画>-----

『あらかじめ失われた恋人たちよ』
1971年、監督

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