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2008年1月 6日

2008年 日本の展望

今年一番のみなさんの関心は景気でしょう。

新聞を見ても不安を煽る記事がいっぱい。たとえば、12月27日の日経新聞は、1面トップで日本のGDPが世界の10%を切ったと書いている。1994年には日本の一人当たりGDPは世界第1位で、世界一豊かな国でした。今は18位。先進国で一番低くなってしまった。しかも、エコノミストや経済ジャーナリストたちによる日本の2008年の予測も暗く、この先さらに順位は落ちるとも言われている。

なぜ景気が悪くなるのか。原因は3つあります。

≪原因1≫ まだまだ底が見えないサブプライム問題
1つはやはり、サブプライムローン。
2007年夏ぐらいから始まったのですが、サブプライムローンの焦げ付きが世界中に出回っている。

サブプライムローンの損失は、FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が9月の段階で損失額を17兆だと言っていた。ところが、17兆なら何とかなるかと思っていたら、OECDが33兆だと発表した。業界筋によると、今では300兆あると言われています。

しかも、もっと大きくなる可能性もある。サブプライムローンは金融工学を駆使して証券化されているから、いろんな金融商品に混ざっている。もしかすると自分が持っている投資信託に入っているかもしれない。そういった地雷がまだ残っています。

日本で90年代初めにバブルがはじけたとき、目減りした資産が約100兆。ですから、その3倍が焦げ付いているかもしれない。
その目減りしたものは不良債権になる。日本はバブル崩壊から不良債権処理をして景気回復するまでに10年かかった。だから、今回も不良債権処理から景気回復まで10年かかるんじゃないかとも言われている。

ただ、日経新聞の滝田洋一さんが言ってるのは、サブプライムローンは2002年ぐらいからずっと高まっていったので、それが2006年まで高まったとして約4年間。なので、4年間で高まったのなら、4年間で終わる。日本に比べれば短い。だけど4年間ダメだということになる。一方、日本でバブル時代の不良債権処理をまともにやったのは小泉内閣の竹中平蔵さん。小泉内閣が2001年からだから、バブルがはじけてから約10年かかっている。サブプライムローンはすでにアメリカの中央銀行であるFRB、ヨーロッパの中央銀行、スイスが一緒になって4兆円の公的資金を出していて処理が早い。処理が早いから4年より早く収まるのでは、という見方もある。

そこで、現在では2008年と2009年の2年間はダメだという見方と、1年以内で解決するだろうという2つの見方に分かれています。

≪原因2≫ 原油高騰で喜ぶアメリカ
2つ目の不安は、原油価格が高騰していること。
現在、1バレルが約100ドル。原油の生産コストは現在1バレル5ドルだと言われていますから、30ドルから40ドルが相場です。現実はその2~3倍に上昇しています。

実はこれには大きなカラクリがあって、原油価格はアメリカのテキサス州で相場が作られていますが、そのテキサスの原油量は世界のわずか0.4%にすぎません。

ところが、サブプライムローンがダメになったことで資金が余っている。その金が、テキサスの小さな池に向かってクジラのように入ってきている。そして原油価格が上昇している。

この原油価格の上昇は、中国やインドの経済成長とは関係なくて、テキサスの小さな池にクジラがどんどん入っているだけなんです。だとすれば、現在は無理やりの相場ですから、価格は下がるはず。ところがなかなか下がらない。なぜか。肝心のアメリカにとって原油価格の上昇は、国民は大変だけど、アメリカにとっては悪くないからです。

先日、経済に詳しい日本在住のイラン大使に会いました。彼に「原油が上がったから、イランは儲かってしょうがないでしょう」と尋ねました。イランは世界第2位の石油産出国ですから。すると、「そうじゃないそうじゃない。原油でカネがあるからインフラの整備をしないといけない。ところが、原油が上がると全ての価格が値上がりして、インフラ整備代も上がってしまう」と。
このインフラの整備を仕切っているのはアメリカです。アメリカは原油価格の上昇で儲かってる。

さらに、原油価格が上昇したらサウジアラビアなどの湾岸諸国はカネができます。ところが、こういう国には資金を運用する能力がない。結局どこが運用するか。アメリカなんです。産油国の余ったカネがアメリカに入ってくる。アメリカにとって原油価格の上昇はメリットなんです。もちろん、日本にはカネがあまり入ってこない。

困ったもので、サブプライムローンと原油高、これが日本の経済に相当ダメージを与えるのではと言われています。

≪原因3≫ 構造改革の後退によって外国からの投資が逃げる
もう1つ、日本にとって困った現象が起きています。
いま、日本の株式市場で売り買いをしている投資家の多くが外国人なんですが、その外国人がどんどん日本から去っている。また、日本人も日本市場で売買しないで、外国で売買している。つまり、日本からカネが海外に逃げ、市場が小さくなってる。これも深刻な問題です。

国民の多くも誤解していて、自民党も誤解しているのですが、前回の参院選は小泉・竹中路線の構造改革によって格差が広がり、それで選挙に負けたと考えている。だから、その格差を小さくするために、もうちょっと金を出すべきだと。

実は、日本から金が去り始めたのは、参議院選挙で自民党が負けたときからです。なぜ減り始めたかというと、安倍内閣の後半になって構造改革が緩んできた。緩んだ結果、負けた。負けた原因は格差ではありません。

外国人はそのことがわかり、「構造改革はもうやらない、日本は逆方向に向かう」と捉えた。そんな日本には魅力がないので、市場から去っていった。

日本人も自民党もそのことに気づかずにバラまきをやればやるほど、日本からカネが去って行きます。

やはり、もっと構造改革をして、日本に将来性があるぞという事を示さないと日本にお金が帰ってこない。福田内閣がやろうとしていることと逆をやらないといけない。
これが2008年の大きなテーマです。

2008年、これが日本の追い風になる!
では、2008年日本はどうなるか。一つ追い風が吹いています。
それは地球環境問題です。これは日本の経済にとってプラスなんです。

日本人はITの分野で1社も成功できなかった。たとえば、アメリカではマイクロソフト、グーグル、ヤフーなどいろんな会社ができました。日本は全然できていない。日本人は、何にもないところに絵を書くというのが下手なんですよね。

ところが、環境問題というのは目的がハッキリしている。これは「CO2をいかに出さないか」ということです。

目標ができたときの日本は強い。CO2をいかに出さないかということは、つまり省エネをどうするか。いま日本の省エネ技術は世界一です。エネルギー効率は中国の7分の1、アメリカの2分の1といわれている。もっともっと技術が進んだら、世界中の国が日本の技術を買わざるをえない。これは日本にとって強い追い風です。

この追い風があるから、僕は一般的に言われているほど2008年は暗くはならない。こう思っています。

(協力:JFN 構成:《ざ・こもんず》運営事務局)

■田原総一朗の『タブーに挑戦』 http://www.jfn.co.jp/tahara/
JFNデジタル703chで好評放送中の『田原総一朗のタブーに挑戦!』では、「政治・経済の動向や裏側」、「注目の人物」、そして「ご自身の事」など、田原総一朗さんが鋭い論評を展開しています。
また、番組では、田原さんに聞いてみたいことや人生相談など、なんでも受け付けています。下記フォームからどしどし質問をお寄せください。
http://www2.jfn.co.jp/jfnwwwmail/mailform/mailform.cgi?ch=iradio_tahara

Profile

田原総一朗(たはら・そういちろう)

-----<経歴>-----

1934年、滋賀県彦根市生まれ。
早稲田大学文学部卒。
岩波映画製作所、テレビ東京を経て、77年フリーに。
テレビ東京時代の連続番組「ドキュメンタリー青春」で、取材対象者に肉薄する独特のインタビュー手法で注目を浴びる。
現在は政治・経済・メディア・IT等、時代の最先端の問題をとらえ、活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。
テレビジャーナリズムの新しい地平を拓いたとして、98年ギャラクシー35周年記念賞(城戸又一賞)を受賞した。
2002年より母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生や社会人の指導にあたっている。

-----<出演>-----

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日、毎月最終金曜25時?)

『サンデープロジェクト』
(TV朝日、毎週日曜10時?)

BookMarks

田原総一朗 公式サイト
http://www.taharasoichiro.com/

田原総一朗のタブーに挑戦!(JFNラジオ番組)
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朝まで生テレビ!
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サンデープロジェクト
http://www.tv-asahi.co.jp/sunpro/

早稲田大学 大隈塾
http://www.waseda.jp/open/attention/ookuma/ookuma_curriculum_2005.html

早稲田大学 大隈塾ネクスト・リーダー・プログラム
http://www.waseda.jp/extension/okumajuku/index.html

-----<著書>-----


『市場浄化』
2006年10月、講談社


『テレビと権力』
2006年4月、講談社


『オフレコ!Vol.2』
2006年3月、アスコム


『国家と外交』
2005年11月、講談社、田中均共著


『日本の外交と経済』
2005年9月、ダイヤモンド社


『日本の戦後(上)』
2003年9月、講談社


『日本の戦後(下)』
2005年7月、講談社


『田原総一朗自選集 1?5巻』
2005年7?10月、アスコム

『オフレコ!Vol.1』
2005年7月、アスコム、季刊

『日本の戦争』
2004年12月、小学館文庫

『日本の政治?田中角栄・角栄以後』
2002年10月、講談社

『日本の生き方』
2004年11月、PHP研究所

『日本政治の表と裏がわかる本』
2003年5月、幻冬舎文庫

『連合赤軍とオウム?わが心のアルカイダ』
2004年9月、集英社

『「小泉の日本」を読む』
2005年2月、朝日新聞社

『面白い奴ほど仕事人間』
2000月12月、青春出版社

『日本のからくり21』
朝日新聞社

『愛国心』
2003年6月、講談社、共著

『わたしたちの愛』
2003年1月、講談社

『日本よ! 日本人よ!』
2002年11月、小学館

『田原総一朗の早大講義録(1)』
2003年9月、アスコム

『田原総一朗の早大講義録(2)』
2004年3月、アスコム

『田原総一朗の早大「大隈塾」講義録 2005(上)』
2005年5月、ダイヤモンド社

『田原総一朗の早大「大隈塾」講義録 2005(下)』
2005年5月、ダイヤモンド社

『頭のない鯨?平成政治劇の真実』
2000年2月、朝日新聞社

『田原総一朗の闘うテレビ論』
1997年3月、文芸春秋

『メディア・ウォーズ』
1993年3月、講談社

『平成・日本の官僚』
1990年3月、文藝春秋

『警察官僚の時代』
1986年5月、講談社

『マイコン・ウォーズ』
1984年12月、文芸春秋

『原子力戦争』
1981年11月、講談社

-----<連載>-----

週刊朝日「田原総一朗のギロン堂」

SAPIO「大日本帝国下の民主主義」

プレジデント「権力の正体」

-----<映画>-----

『あらかじめ失われた恋人たちよ』
1971年、監督

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