ある地方都市でのシンポジウムに参加した。
その県の広報パンフレットの最新版を見ていると、県のGDPや失業率など、県経済の基本的なデータが「平成一三年度」となっていた。私はがく然として、同席した県のトップに「これはなんで平成一三年度のデータなのか」と聞いた。トップは「えっ!?」と驚いていた。
驚かれると、こっちが驚いた。なんと、そのトップはデータが古いことを知らなかったのだ。
トップは下僚に「なんでなのか」と聞いた。下僚は、これが最新データであると答えた。
なぜ平成一八年の世の中で、平成一三年度のデータが最新なのか、私はトップにたずねた。トップは下僚にたずねた。下僚は答えた。「データは国からいただいておりますので」と。
私はそんなバカなことがあるかと、その都市の地方銀行に問い合わせてくれるようにトップに頼んだ。トップは下僚に命じた。
しばらくすると、下僚は、地銀が出したデータを持ってきた。それは平成一六年度版で、つまり世の中の最新版だ。
銀行が護送船団方式で手厚く守られる時代は過ぎ、都市銀行といえど、ましてや地方銀行は倒産の危機に常にさらされるようになった。ところが、県や市はぜったいに潰れない。
格差社会といわれる。それが本当かどうか議論が分かれるところだが、官は気楽なものだというのは議論にもならないだろう。
皇室典範の改正をめぐって自民党はほぼ二分され、小泉首相の進退まで取りざたされていた。そこへ絶妙なタイミング、まるではかったように秋篠宮妃の懐妊が発表された。
皇室典範の改正とはつまり、女性・女系天皇を認めるかどうか、第一子優先の皇位継承にするかどうかだ。政治家、文化人たちの間では当然ながら、この出来事を材料に、秋篠宮の子どもの性別がわかるまで議論を遠慮すべきだ、いや、議論はもはや終わったという意見が強くなってきた。
改正推進派の中心である小泉首相は当初、
改正推進派の中心である小泉首相は当初、「粛々と改正への審議を進める」、あるいは「ご懐妊には影響されない」といっていた。ところが、ここへきて「より慎重に議論すべき」というふうに変わった。これによって、今国会で改正法案が成立しない見通しが強くなった。首相も「期日にこだわらない」と発言したことからすれば、事実上の改正断念といっていい。
私は、男系男子のみが皇位を継承するという規定は、憲法に矛盾すると考えている。憲法では一四条で、性別によって差別されないと書いてある。男女は平等、同権なのだと。ところが、皇室典範ではそうはなっていない。これが私が矛盾だと感じている理由で、その矛盾をできるだけ早くとくべきだと思っている。
その意味では、小泉首相が今国会で改正を断念したのは残念だ。もし小泉首相が改正法案を提案しなければ、次の内閣も、その次の内閣も提案しない、いや、できないだろう。とすれば、この機を逃せば“平等”は半永久的に実現しなくなる。まことに残念である。