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2010年7月25日

情けは人のためにならず ── 支える側も幸せに

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 「ここ、いいことやってるから、応援してやって」。行政の人から、うれしい言葉を聞くようになった。お年寄りの孤食と一人で家にいる時間を減らそうと、トラベルヘルパーが自分の住む地域を訪問し始めたころから様子が変わってきた。

 施設や地域にいる関係者を通じて介護旅行やトラベルヘルパーの活動を伝えてもらおうと、一種の社会運動のようなものだった。介護旅行は公的な介護保険のメニューにはない。利用すれば全額自己負担。その上、手間がかかり、採算を考えたら普通はやらない事業だろう。わたしたちも何度も行き詰まり、あきらめかけたことがある。

 しかし、その都度、不思議に背中を後押しされるような出来事があり、やめさせてもらえなかった。何か見えない力に支えられているようだった。少しずつなじみ客がつくと、その笑顔を裏切れなくなった。

 「辞めても誰も困らない」。そういわれた時期もある。しかし、苦しくなると若い人が「わたしにもやらせてほしい」と加わってくれた。厳しいことは承知の上だ。超高齢社会が進み、支える必要のある人が増えている。福祉を事業にするのは容易ではないが、ひるんでばかりはいられない。

 高齢者を狙った悪質商法が後を絶たないが、そのエネルギーが人をだますのでなく、幸せにすることに向けられたら、どれほどいいだろう。自分が幸せを感じながら、世の中を明るくするお金の使い方はあると思う。

 介護旅行に取り組み始めたころ、過疎と高齢化が進む里山を守る活動に参加した。「お金を払ってまで、こんなにきつい作業をする人などいるのだろうか」という不安をよそに、老若男女、参加者は増え続けた。そこに別の価値があることに気付いた人たちだった。

 この1年、地方や行政の人が手を挙げて、地域でトラベルヘルパーを育てる動きも増えてきた。介護が必要になっても、希望があり、明るい笑いがある。そんな暮らしを大事に思う人の輪が広がり始めている。情けは人のためならず。「誰かのため」とやってきたことは、支えてくれる周囲あっての喜びになった。

2010年7月18日

冒険を怖がらないで ── 受け入れ側も気持ちの余裕を

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 障がいを持つ子と親の会が計画したスキー旅行が、直前になって断念せざるを得なくなった。

 「良いサービスをする自信がない」と言ってきた旅館の主人に悪気があったわけではない。直前まで障がいのある人のグループとは知らされていなかったのだった。

 「わたしたちは、特別なことは何も求めていません」と親の会の代表が言うように、段差解消も、流動食への対応も今回は必要なかった。だから、旅行代理店も特別なことは言わなかった。

 サービスを提供する側にいたわたしには、旅館の主人の姿勢はまじめな性格が言わせたものに思えた。しかし、子供たちも親の会も傷つき、その話を聞いたわたしたちも暗い気持ちになった。

 旅はその後先も、人の心を明るい余韻につつまなければならない。そのため介護旅行では、誰かが双方の誤解や摩擦を減らし、互いの理解を深め、信頼関係を築き、それぞれの責任を確認し合う過程を"通訳"しなければならない。トラベルヘルパーを育てるのは、その過程をマネジメントする重要な役割を担ってもらう必要があるからだ。

 情報の伝達ミスから始まった悲しい出来事は、何を知り、伝えるか、新たな課題となった。

 そうした課題への対処方法が整理されれば、超高齢社会の到来は地方の温泉街など客足の減少に苦しむ観光地に大きなチャンスをもたらすと思う。

 ほとんどの観光地や宿泊施設は、行動に不自由のある人や障がいを持つ人の受け入れに二の足を踏んでいる。しかし、都市部の高齢化は、今後ますます勢いを増して進んで行く。これからも出かけたい、旅に出たいと希望するのは、高齢者が中心になっていく。

 旅は、どこか冒険的な要素がないとつまらない。少々のハプニングも笑って乗り越えられるよう、旅する人も受け入れる側も気持ちの余裕が必要だ。権利や責任ばかりを主張するような関係で旅を楽しめるはずはない。

 人生と一緒で、思惑どおりにいかないところに面白さがあり、その修正の中に知恵がでて、生きる意味を知るところがあるのではないかと思う。

2010年7月 8日

日本はどのような国を目指すのか 超高齢者社会を生き抜く"お互い"意識

 公的介護保険がはじまって10年、500万人の高齢者とその家族が制度を利用する時代になった。介護は少なくとも国民の1割以上が関わる生活基本サービスとなったのである。

 日本は、わずか60年で30歳も長生きする超高齢者社会を築いた。それは、豊かな先進国であることを証するのと同時に急速な少子高齢化による人口構造の変化に、社会も戸惑いを隠せない。認知症や老老介護など、渦中の人の周囲には、行き先の見えない閉塞感が漂っている。

 また、リーマンショックのような経済問題が発端で、わずか3年の間に4回も所有者が変わった老人ホームがある。その施設では、所有者が変わるたびに、入居者へのサービスが削られていった。見知らぬ海の向こうの出来事が、日本の高齢者から静かな老後と希望を奪ってしまう時代である。監督省庁が曖昧な為に、この問題はたらいまわしとなった。

 そうした中で行われる選挙。先進国の立場から、高齢期の暮らしとは、介護が必要になっても安心してすごせる生活とは何かを考えたい。

>>続きは「Infoseekニュース 内憂外患」で

Profile

篠塚恭一(しのづか・きょういち )

-----<経歴>-----

1961年:千葉市生れ。
1991年:(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。
1995年:超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。
2006年:内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。
現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。

BookMarks

あ・える倶楽部
http://www.aelclub.com/

-----<著書>-----


介護旅行にでかけませんか──トラベルヘルパーがおしえる旅の夢のかなえかた(講談社)

問診による経営診断のすすめ方(共著)

大人の脳活性訓練ガイド(入門編)監修

トラベルヘルパー養成講座・教本
 
介護旅行でいきましょう(時事通信・連載)
 
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