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2010年6月25日

入念な打ち合わせから始まる旅 ── 認知症でも行かせてあげたい

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 「母の様子を知り、同じ境遇の人たちを少しでも勇気づけることができるなら、何よりです」。トラベルヘルパーとの旅を終え、無事帰国された認知症の方の娘さんから、旅行中のスナップ写真の使用許可をいただいた。

 発症まで美容室にたっていた母は、店を切り盛りしながら姉妹を育てた。今は孫に囲まれ、静かに暮らしている。目的地ブルガリアは、発症前に行くと決めていた。ずっと思いを残してきたのだという。事情があって姉妹は同行できない。とにかく、本人の状態を見てほしいと相談された。

 自宅へ伺う。担当するトラベルヘルパーとの"お見合い"だ。介護する人、される人。心配なのはお互いのことだが、トラベルヘルパーが話し始めるとすぐに安堵(あんど)の空気が流れた。

 外国にあこがれ、経営が落ち着いたころから年に一度の海外旅行が楽しみになった。外国の人と友達になりたくて、学校で学べなかった英語も習ったと、得意のフレーズを何度も聞かせてくれた。とても流ちょうだった。

 孫たちと過ごす時間はにぎやかで、子供たちは同じ話を繰り返す祖母と自然に会話する。「ひょっとすると、母には分からないかもしれません」。姉妹はそう口をそろえたが、すべてが分からなくなる前に、どうしても行かせてあげたいという気持ちが伝わってきた。

 介護旅行を引き受ける条件の第一は「本人が希望していること」。正確に言えば、意思疎通ができるか、という意味だ。言葉がうまく話せなくても、たとえまばたきでも、快・不快の確認ができれば、この条件はクリアする。

 ただ、認知症、特にまだらに症状が現れる人の場合は難しい。いったん仕事を引き受けたら、途中で引き返すわけにはいかない。出発前の状態が変わってしまうと、やはり判断に苦慮する。

 とにかくじっくり家族と話し合い、事前の予防措置を万全に、道中、症状のスイッチが入らないように最前を尽くすしかない。本人と周囲の人が意見を出し合い、納得のいくまで打ち合わせる。旅はその計画会議から始まっている。

2010年6月20日

必要なのは情報のバリアフリー ── 介護現場を変えるために

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 「新聞を見たのですが、わたしたちでも介護旅行なら行けますか」。初めてそんな相談を受けた時は、日付を勘違いしているのかと思った。新聞に載ったのはだいぶ前。老夫婦は小さな記事を長い間、大切にとってくれていたのだった。翌年もまた次の年も同じことが続き、介護旅行への思いとはそういうものだと悟った。

 ただ、わたしは高齢者や障がいを持つ人を一概に弱者と言うのには抵抗がある。そうした人の中にもスポーツやアート、専門知識や経営分野に置いて優れた人はいくらでもいるし、みんな普通の人として接することができる。

 むしろ、否定できないのは「情報弱者」だ。涙ながらに外に出たいと訴える人の存在は、生活環境が情報のバリアーを作り出していると知らせてくれた。体の不自由が原因で、必要とする情報がうまく得られない。「よらしむべし、知らしむべからず」の言葉が頭をよぎる。

 「働き方」や「生き方」での処世を知らない若者にも情報弱者の言葉が当てはまるかもしれない。医療や介護労働の現場では特にそうだ。看護学校やヘルパーの研修では、神業的な移動介助を教えてくれる。しかし、看護士も介護士も腰痛が職業病になっている。

 工場や運搬の仕事では重量物を持ち上げる際、作業ごとに何キロまでという制限が労働基準として示されている。ところが、医療・介護の現場ではそうした基準もないまま過重な肉体労働が常態化している。欧米では、どんな職場でも同様の就労条件を当てはめるのが当然で、機能的な介護機器や補助具が整理されている。超高齢化社会に向かっているにもかかわらず、この点でも日本は後進国の域を脱していない。サービスの担い手が安心して就労できる環境をサポートするための公共投資はまだまだ必要である。

 多少体が不自由になったとしてもお年寄りが気軽に温泉地に旅行でき、トラベルヘルパーは入浴介助が楽にできる。しかも、露天風呂では和の風情を壊さない美しいデザインの解除器具が備わっていたら、外国人にも尊敬されるだろうし、どんなにかいいだろうと思う。

Profile

篠塚恭一(しのづか・きょういち )

-----<経歴>-----

1961年:千葉市生れ。
1991年:(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。
1995年:超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。
2006年:内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。
現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。

BookMarks

あ・える倶楽部
http://www.aelclub.com/

-----<著書>-----


介護旅行にでかけませんか──トラベルヘルパーがおしえる旅の夢のかなえかた(講談社)

問診による経営診断のすすめ方(共著)

大人の脳活性訓練ガイド(入門編)監修

トラベルヘルパー養成講座・教本
 
介護旅行でいきましょう(時事通信・連載)
 
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