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見逃される「外出」という希望 ── 公的介護制度のはざまで

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 東京・渋谷の狭いオフィスでスタッフと一緒に弁当を食べるのを楽しみに訪れてくれる人がいる。「また、来れてよかった」。当たり前のようなことに涙ぐむその人に、若いスタッフは胸を詰まらせ、どうしていいか分からない。

 道一本隔てたビルに引越せば家賃を下げることができたが、ぎりぎりで思いとどまった。車いすを使う人が寄れなくなってしまうからだった。

 障がいを持つ人を対象とする福祉制度には、外出して人と会うことなどをサポートする仕組みがある。ところが、高齢者の場合はこうした考え方への共感が少ない。公的介護保険が始まって10年、「住み慣れた町でいつまでも」という考え方は確かに正しい。しかし、それですべてよいのかといえば、わたしはうなずけない。

 高齢で介護が必要となった人にとっても「外出」は強い希望である。ベッドに縛ることや、部屋に鍵を掛けることが問題なら、住んでいる地域でしか介護サービスが提供されないのは、地域に拘束しているようなものではないだろうか。

 友人を訪ねることも、歌舞伎や相撲を見に行くことも、お墓参りさえままならない。人生のゴールに近づいた人たちが、わずかな望みさえあきらめざるを得ないこの国の豊かさとは何なのか、と何度も考えさせられた。

 初詣では孫にお年玉をやりたい。雪が溶ければ梅や桜。お盆や夏休みは離れて暮らす家族が顔を会わす。行楽の秋は紅葉狩り。こうした生活文化を日本人の多くが大事にしてきた。介護が必要になったからといって変わるものではない。それどころか、壁と天井ばかり見ていれば、よほど強い願いとなるだろう。

 制度の揚げ足を取るつもりはない。日本は社会保障の国民負担が少ない。増税も保険の負担増も好む者などいない。だから今は、自己負担するしかない。ただ、そのことが足かせとなって本人も家族もなかなか言い出せない。

 「出掛けたい場所、連れて行ってあげたい場所はどこ?」--。そんな言葉を飲み込まざるを得ない介護スタッフの目の前にある壁は厚く高い。

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Profile

篠塚恭一(しのづか・きょういち )

-----<経歴>-----

1961年:千葉市生れ。
1991年:(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。
1995年:超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。
2006年:内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。
現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。

BookMarks

あ・える倶楽部
http://www.aelclub.com/

-----<著書>-----


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