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カバンぐらいなら引き受ける ── トラベルヘルパーの原点 »

篠塚恭一:たとえ小さな助けだとしても ── 介護の旅を支えるトラベルヘルパー

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 若いヘルパーに身をゆだねるように抱かれたその人は静かに目を閉じ、胸もとから首のあたりまで湯につかったまま、気持ち良さそうにじっとしていた。何年か前に度重なる脳梗塞(こうそく)で倒れ、とうとう歩くことができなくなってしまったという。婦人のたっての希望で、元気だったころ、娘たちを連れてよく訪ねたという静岡県の熱海で、家族旅行を再現したのだった。

 かつては大企業の幹部として大勢の部下を率いて腕をふるったという。その年齢、経歴から察すれば、日本経済を引っ張った一人であることは間違いない。家族も驚くほど部下たちに慕われたその人柄は、むしろ倒れてからの方がよく伝わってきた。脳梗塞で何度も倒れながら、仕事を続けていた。その度ごとに、部下が病床にかけつけ、仕事の指示を仰ぎながら家族の看病を手伝ったという。熱海の思い出も家族とばかりではなかった。部下を引き連れて威勢良く酒を振る舞ったこともあったようだ。

 迎えの車内、まひの残る手で振った孫の手が「カツン」と音をたてた。娘の頭を勢いよくたたいたのだ。力の加減が効かない。悪気はなくても痛いものは痛い。「動けないから、いつもこれでやられるんです」。悪びれもせぬ態度が、娘のやり場のない気持ちに追い打ちをかける。

 家族介護の日々を戦いという人がいるが、トラベルヘルパー(外出支援専門員)として何度もそういう場面に遭遇したことがある。たたいた孫の手は、連れ出してくれたうれしさからきたのか、照れくささがそうさせてしまうのか、わたしには分からない。ただ、トラベルヘルパーが、そんな家族の役に立つのなら、それでいい。

 「介護旅行」を支えるトラベルヘルパーの現場から、誰でもどこへでも出掛けられることが当たり前となるユニバーサルデザインの社会作りを考えて行きたい。

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【プロフィール】 篠塚恭一(しのづか・きょういち)
1961年千葉市生れ。91年㈱SPI設立、代表取締役。観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。2006年内閣府認証NPO法人 日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立 理事長。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援を行う。

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http://www.the-journal.jp/contents/info/2009/07/post_31.html

ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

私は足の動かない母親の車椅子を押しています。足が動かないと、生活も通常通りにいきませんし、外に出るのも(人の目を気にしたりして)億劫になります。それでも、健康な人たちと共に生きる感覚を得てもらいたいため(また本人もそれを察してか)外に出る機会をもつようにしています。

しかし、実際車椅子で外に出てみると、街の構造や他の人たちが、車椅子の人のことを認識できていないことを実感します。

放置自転車があり歩道が通れない。リフトの前にまで放置している自伝者が有る。エレベータが無く、入る事のできない建物や、スロープの無い入り口。身障者用の駐車スペースでさえ、健常者の車が停まっていて駐車できない、など、呆れを超して悲しくなることが外にはいっぱいあります。
無自覚なのかもしれませんが、それは社会が自分を無視しているようにも見え、程度の低さと、時には怒りさえ覚えます。

自転車に子供を二人乗せ買い物に行くお母さんなどは、見ていて応援したくなることもあるのですが、悪びれる様子も無く路上に放置するその自転車で、車椅子の人が通れなくなるのです。それでも一生懸命やっているお母さんの顔を見ると、複雑な心境になります。

>誰でもどこへでも出掛けられることが当たり前となるユニバーサルデザインの社会作りを考えて行きたい

私も日々同様の事を考えています。いかに自覚の無い人に自覚を促し、我々はどういう人たちと共に生きているのかを理解してもらい、そこから社会をみんなで考えていきたいと思っています。

 私自身、介護ヘルパー2級の資格を以前とりまして、ボランティアをしていました。いい年をしてヘルパー資格を取りに行くのは躊躇しましたし、学校にいっても周りを見渡して何か勝手が違いうので戸惑いましたが、仲間とともに運動として始めたことで何とかやりとうせました。
 学校の仲間は女性が圧倒的に多かったのですが、タクシー運転手の方がいました。介護タクシーの資格を得るためでした。
 また、建設業界から経営者の業態転換を受けて派遣されている若い従業員の方もいました。聞けば有料老人ホームに経営の幅を広げるということでしたが、これには自分のところの現有のスタッフを中核に据えたいとのことでした。
 すごい経営眼力だと思いました。
 それからいろいろあるのですがまたの機会に。
 民主党連立政権への支持は生活に根差した視点が第一と考えます。
共に頑張りましょう。

これからの時代に、高齢者にどんな喜びと、満足を与えられるか?日本の自民党政治は、官僚に来るべき高齢化社会に対する対処を指示して来なかった。今の社会施設を見ても高齢者への対策が遅れている。小生はホテル業で、この問題を取り上げて来た。しかし、心のケアーを考える体制がなかなか難しかった。政治が今この問題に提言をしてくれないと、民間の力では限界がある。是非ジャーナルの中でも、篠塚さんへの協力をしてゆきたいと思います。人は必ず年をとる事を止められない。自己責任としても知恵を出してゆきたいですね。

今から24年前、家内と東京に買い物に行った時のことです。帰宅が遅くなりそうなので、おばあちゃん(家内の母親)に電話をしました。「ハイハイ」と電話に出たおばあちゃんが「電気炊飯器のスイッチはどこにあるのですか」と、ちょっとおかしいのです。買い物もそっちのけで、帰りました。前兆はあったのですが、気がつかなかったのです。もともと、腰が悪かったので、まもなく、寝たっきりになりました。私には、当時、中二と小六、小3の三人の息子がいました。ある日、三人の息子に命令しました。「お父さんもお母さんも、朝は非常に忙しい。君たちが赤ん坊の時、おしめを取り替えてくれたのはおばあちゃんだ。御恩返しのつもりで、明日から、三人でおばあちゃんのおしめを取り替え、ご飯を食べられるように、お手伝いすること」と。三人はおばあちゃんが死ぬまで、いやな顔一つしないで、やりました。
在宅介護は大変です。私の母は、現在、97才です。弟夫妻が面倒を見ています。週三回のデーサービスとショートステイがあるので、なんとか、老老介護が出来るのです。人生の最末期を安心して、きれいに過せる社会が、理想の社会だと思います。

ジャーナル編集部さん。お世話になります。投稿ありがとうございました。
社会が変わる時は一瞬で変わるんでしょうね。20年前に登場した携帯電話は、またたく間に社会に広がり、私たちの生活(文化)を一変ました。ただ便利になった半面、社会問題も明らかになりました。その身体へおよぼす害との因果関係は、まだ日本では明らかにされていませんが、少なくとも電車の中で(公共の)迷惑になるような使い方をしていた人は、あっという間に消えました。
社会(大人)が認知すると一瞬にして世の中が変わるものだとわかります。北欧など福祉先進国と呼ばれる国も、百数十年かけてそう呼ばれるようになりました。私は日本人はその叡智で、あっという間に福祉先進国と呼ばれるようにになると思っています。

http://www.the-journal.jp/contents/info/2009/07/post_31.html

篠塚です。まつもとさん、ありがとうございました。すべての人が、一日生きれば一日、1年生きれば一歳、年をとります。だから、医療(健康)や介護(福祉)のことは、まつもとさんの同級生のように、いろいろな立場の方が知るのは、とてもよいことだと思います。社会に出てからの同級生もいいですね。私にもたよりになる同級生、先生がいます。

まつもとさん、WACWACさん、ごめんなさい。不慣れで、投稿の見方を誤りました。編集部宛の返信は、まつもとさん宛て、まつもとさん宛ての返信がwacwacさん宛とすべきものでした。おっちょこちょいですみません。

まつもとさんへ
マザーテレサは「愛の反対は(無視)無関心」と言ったそうですが、超高齢者時代に突入した今、「知らなかった」では、すまされないこともたくさん出てきました。火事で逃げ遅れ、亡くなったグループホームのお年寄りたちは、歩けないから(移動できない)、逃げられなかった人もいたのではないかと思います。施設だけが、悪いはずはありませんし、スプリンクラーをつければいいということでもないと思います。なんとか逃げられたお年寄りとヘルパーが、どれほど深く傷ついているか、考えると身につまされます。気付かなかった、知らなかったで、済まされる話ではないと思いました。私も一緒に考え、行動し、まず自分が変わるところからはじめています。ご意見、ありがとうございました。

wacwacさん。ありがとうございました。しのづかです。
>連立政権への支持は生活に根差した視点が第一と考えます。
おっしゃる通りだと思います。友愛を掲げる現政権は、多くの国民の期待を背負って、かじ取りを任されたと言われます。評価が決まるのはこれからだと思いますが、資源の無い日本には、心配なこともあります。公約に期待を込めた人々の暮らしに目を向けて、すすめてほしいと思います。
>共に頑張りましょう。
こちらこそ、どうぞ、よろしくお願いします。

MIYAUCHIさん ありがとうございます。篠塚です。
ホテル業界にいらしたのなら、高齢者社会の到来をずっと以前に実感されていたのではないでしょうか。MIYAUCHIさんのおっしゃる通り、介護保険は、余裕がなくて身体介護はできますが、心のケアまではなかなか行き届きません。だからこそ、ホテル業界の方などホスピタリティ産業に従事した方々、サービスのプロフェッショナルの出番ではないでしょうか。

>ジャーナルの中でも、篠塚さんへの協力をしてゆきたいと思います
私達も今は、ほんとに小さな集りなので、ご協力をよろしくお願いします。ありがとうございました。

二見伸明さん 篠塚です、ご意見ありがとうございました。うちも朝から夜遅くまで、共働きの家庭ですので、子供たちに対しては同じような心境になることがあります。おばあちゃんへのご恩返しが素直にできるお子さんたちは、素敵です。いい時代に、いい環境で育ったのだと思いました。私も高度成長のど真ん中に千葉の港町で煙突の煙を見ながら育ちました。貧乏でしたが、親戚や近所の人がみんなで、面倒を見てくれました。今にして見えれば、乏しくとも幸せな地域社会があったのだな~と懐かしく思いだします。今はそれが壊れてしまっているところが多いので心配です。バブルがはじけたのを最後に、地域も学校も会社も壊れて守ってくれる人が見当たらない時代が続きました。
>人生の最末期を安心して、きれいに過せる社会が、理想の社会だと思います。
同感です。そのためには、私たち庶民の一人でも多くが、そういう社会にすると覚悟を決めなけらばならないと思います。
幸い神様は、人を飽食には弱く、飢餓に強く作ってくれました。だから、今は自分で生きなきゃならないと覚悟した人からスイッチが入りはじめている。それにバブル以降に生まれた若者は、過去の成功体験をもっていませんから、今の不景気などへっちゃらです。
豊かさから幸せへ、私たちがよりよい人間として1ステップ上がれるチャンスをお年寄りが身体を張って、最期に残してくれているようでなりません。戦争よりずっとマシなことです。
貴重な教えをありがとうございました。

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Profile

篠塚恭一(しのづか・きょういち )

-----<経歴>-----

1961年:千葉市生れ。
1991年:(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。
1995年:超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。
2006年:内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。
現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。

BookMarks

あ・える倶楽部
http://www.aelclub.com/

-----<著書>-----


介護旅行にでかけませんか──トラベルヘルパーがおしえる旅の夢のかなえかた(講談社)

問診による経営診断のすすめ方(共著)

大人の脳活性訓練ガイド(入門編)監修

トラベルヘルパー養成講座・教本
 
介護旅行でいきましょう(時事通信・連載)
 
→ブック・JOURNAL←



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