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雑誌ジャーナリズムの現状を考えるために新刊『生涯編集者』を出版しました。

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『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』(篠田博之著、創出版)

 今月初めに書き下ろしの新刊『生涯編集者』を上梓しました。月刊『創』の編集長として体験してきた30年余をつづったものですが、単なる回顧が目的でなく、この何年か危機が叫ばれている雑誌ジャーナリズムの現状について改めて考えてみたいと思ったのです。

 『創』はもともと1971年創刊で、60年代末の新左翼運動の流れを組んだ雑誌でしたが、1982年の商法改正で『現代の眼』を始めとした新左翼雑誌群は一気に壊滅。『創』についても当時のオーナーが休刊を宣告したのでした。経営の都合で雑誌が廃刊していくという当時のその状況に反発して、編集部が『創』を継続発行することにし、興したのが創出版でした。当時、私・篠田はまだ20代で、資金力があったわけでもなく、「どうせ1年ももたないだろう」と言われていたのですが、気がついてみれば今年で30年も『創』を出し続けたことになったわけです。

 70年代というのは、左から右まで、あるいはサブカル系の雑誌も含めて、言論の多様性がいまよりはるかにあった時代でした。多様な言論の確保というのが、テレビなどのマスメディアと異なる雑誌メディアの特性ですが、この何年か、ジャーナリズム系の雑誌が次々と休刊していくという状況は、その点からも非常に大きな問題といえます。もともとジャーナリズム系雑誌はそれほど儲かるジャンルではないし、経営的視点から判断すると休刊になって不思議はないのですが、だからといってそれを次々となくしていくという出版界の現状は、本当にそれでよいのだろうかという疑問を禁じ得ないのです。

 『生涯編集者』は、連続幼女殺害事件の宮崎勤死刑囚や、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚との10年以上に及ぶ関わりや、武富士の盗聴事件を追及して裁判闘争にいたった経緯などを書いたものですが、それを通して雑誌ジャーナリズムの原点とは何なのか、雑誌に限らず、ジャーナリズムはいま、市民の立場に立って権力を監視するという原点を見失いつつあるのではないか、というのを提起した本です。

 『生涯編集者』の最終章「雑誌ジャーナリズムの苦境」に書いた一節を引用します。

《2008年頃から、総合誌が次々と休刊になっている。月2回刊だった『ダカーポ』(マガジンハウス)が08年1月2日号で休刊、『論座』(朝日新聞出版)、『KING』(講談社)が10月号で休刊、『月刊プレイボーイ』が11月発売の09年1月号で休刊、そして『月刊現代』(講談社)が12月発売の09年1月号で休刊となった。年が明けてからも『諸君!』(文藝春秋)が09年6月号で休刊となった。
 特に波紋を投げたのが『現代』の休刊だった。というのも、総合月刊誌では断トツのトップを走る『文藝春秋』が、かつてのような調査報道型ノンフィクションをあまり載せなくなったこともあって、『現代』がノンフィクションの最後の牙城、と言われていたからだ。同誌の休刊は、今後、ノンフィクションライターたちの発表の場が極端に少なくなったことを意味した。》

《最終号となった『現代』1月号では、様々なライターや作家が思いを綴った。巻頭を飾った「潜思録」で、辺見庸さんが痛烈な一文を書いていた。
「戦前戦中は国家権力が有意の雑誌、単行本を多数発禁処分とし、戦争協力に積極的な翼賛新聞、出版物を大いにとりこんで国策宣伝に利用した。いまは権力の弾圧などいささかもないのに、伝統ある各雑誌がただに売れないからといって版元みずからあっさり休刊、廃刊をきめる。とくだんの"たたかい"も苦悩もなさそうである。」
 この一文を最終号の巻頭に載せたのは、もちろん辺見さんの意向であると同時に、編集部の苦悩の反映でもあるのだろう。講談社ではその年の4月、会社全体で雑誌部門の根本的見直しを行うことが決定された。そしてその見直しには「聖域を設けない」とされたという。『現代』の赤字は年に3億から5億と言われていた。講談社全体が儲かっている時代なら、そのくらいの赤字は許容されたのだろうが、会社全体が苦境に陥るなかで、ジャーナリズム部門を担う第一編集局においては、『週刊現代』も赤字になったため、これ以上支えきれない、と会社が判断したらしい。》

《マンガ雑誌も総合週刊誌も次々と赤字に転落していくという、現在の出版界において、雑誌休刊が相次ぐのは不思議なことではない。しかし、「聖域を設けない」つまりどの雑誌も経営的な判断で存否を検討していくとなると、もともと採算性の低いジャーナリズムやノンフィクションといったジャンルは、真っ先に消滅していくだろう。本当にそれでよいのだろうか。出版界が厳しい今だからこそ、そういう問題を根本的に考えねばならないのではないだろうか。》

 最後に『生涯編集者』の目次から各章のタイトルを紹介しておきます。

新左翼系=総会屋系雑誌の壊滅/家内制手工業の日々/皇室タブーと右翼の攻撃/イトマン事件と家宅捜索/コミック規制反対の闘い/差別表現と「断筆」めぐる合意/三田佳子さん二男の薬物事件/麻原元教祖三女の入学拒否事件/和歌山カレー事件・林眞須美死刑囚/武富士盗聴事件と裁判闘争/奈良女児殺害・小林薫死刑囚の手記/宮崎勤死刑囚の突然の刑執行/三浦和義さんの謎の死/映画「ザ・コーヴ」上映中止騒動/田代まさしさんの薬物事件/雑誌ジャーナリズムの苦境

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コメント (2)

企業から小遣いもらいながら、そのくせ
エラソーにそして勇ましい(?)見出しを
書き並べる商売保守系誌。
私は、それらをを苦々しく思いながら
『創』を手に取り、パラパラと中身をチェックし、書店のレジへ向かうのでした。
篠田さんのがんばり、感謝しております!

すごく内容が良かったです。僕は創出版は特別だと思っているので大好きです。一言でいうと真実だからです。創出版の草創期の話でさらにファンになりました。が、読んでいて一点、思うことがありました。クレームですいませんが、アメとして受け取ってください。三浦氏の話ですが、テレビや新聞で知りえなかったことを知れた点では良かったのですが、1つ取り上げていないことがあります。万引事件です。これはテレビで映像を見ましたが、言い訳の余地のないものでした。三浦さんの今までの努力がこれでパーになったと思いました。自己弁護という並大抵でない努力をしてきたのにこの万引事件のときはショックでした。この万引事件と言う汚点も取り上げて欲しかったです。

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Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

BookMarks

創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

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-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

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