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2012年1月15日

現役編集者らが突然逮捕された「現代書林」事件の公判を傍聴しました。

 同業の現役編集者が手錠腰縄姿で入廷したのを見た時には、ちょっと深刻な思いにとらわれました。さる2011年12月27日、横浜地裁で行われた出版社「現代書林」が被告となった裁判の第一回公判でのことです。大手マスコミではほとんど報道されていないのですが、言論や出版に関わるこういう事件は、きちんと報道がなされないといけないと思います。

 この事件は昨年10月6日に、現役編集者やフリーライターら4人が薬事法違反容疑で逮捕されたもので、その後2人が不起訴で釈放されましたが、元社長と現役編集者はこの公判まで勾留され、接見禁止でした。編集者やライターがいきなり逮捕されるという、言論・出版に携わる者にとっては大きな事件であるのに、大手マスコミの関心は薄く、逮捕があったことさえ知らない人も多いようです。薬事法違反容疑という、やや専門的な領域に属する事件であることと、逮捕直後に神奈川県警がリークしたのでしょうが、問題となった本がひどいものだと強調する新聞報道がなされたため、報道する側が引いてしまったのでしょう。ちなみに、その警察の意図のままに報道を行った神奈川新聞に対しては、現代書林側が名誉棄損で提訴を行っています。

 12月27日の公判で象徴的だったのは、勾留されている現代書林の元社長と現役編集者が入廷した時の姿が手錠腰縄のままだったこと。裁判開始前から「犯人」「悪人」であることを印象づけるとして、入廷前に手錠腰縄を解くという配慮をするケースもあるようなのですが、今回はそうではありませんでした。健康食品販売会社の社長も含め、被告が4人の統一公判であるため、関係者も多く、40席近い傍聴席は満席でした。被告の家族や関係者にとっては、接見禁止がついていて逮捕後初めて被告と顔をあわせた人もいたと思うのですが、手錠をはめられたまま出廷する姿はショッキングだったと思います。

 その日は起訴状朗読と冒頭陳述で終わったのですが、この事件は、警察・検察側の主張にかなり無理があり、任意の取り調べを拒否していない人たちをいきなり逮捕するという手法も相当乱暴です。そもそも問題となった本は約10年も前に出版されたもので、当時はまだ健康本ブームで、「○○がこうした治った」式の体験記を並べた本がたくさん出ていた時期でした。その種の本を薬事法違反とするのも法的には簡単ではないのですが、現代書林の場合も、当時の社長はずいぶん前に退社しているし、仮に法的に問題だとしても時効が成立しているケースです。警察は、いまだにその本が書店に置かれていたとして起訴に踏み切ったのですが、こういう場合の「販売を行っていた」主体が誰なのか、現在の現代書林なのか、元社長なのか、あるいは書店なのか。初公判では弁護側が、その点を検察側に質すところから始まりました。

 今の出版システムを含め、出版に関わる者にとってはいろいろな問題を提起している事件ですが、どう考えても逮捕という強硬手段をとる必要がない事例で、フリーライターまで逮捕して実名報道するという乱暴な取り締まりの仕方が気になります。かつてなら言論出版に関わる問題にこんな乱暴なやり方で国家権力が関わってくることに、新聞が批判的報道を行ったものですが、今はマスコミ自体の力も問題意識も低下して、報道さえきちんとなされていません。逆に言えば、そういう権力を監視する勢力が衰退している現状が、乱暴な逮捕といった事態を生み出しているのだと思います。ちなみに勾留されていた被告に対しては、この公判でようやく保釈が認められました。最近は、公安絡みの事件でも、逮捕後否認しているといつまでも保釈を認めないという「人質司法」が一般化していますが、警察検察のやり放題というこの現状に、もっと言論報道に携わるものが危機意識を持たないといけないと思います。

 なお、この現代書林の逮捕事件については、『創』1月号に詳しいレポートを掲載しました。事件について多くの人に知ってもらいたいという思いから、いずれかの時点で、全文をネットで公開するつもりです。

2012年1月 7日

戦後三大謀略事件「三鷹事件」の再審を求める動き

 1949年に起きた下山、三鷹、松川のいわゆる三大謀略事件といえば、歴史の教科書に載っている話で、多くの人が古い過去のことと思っているかもしれないが、そのひとつ三鷹事件の再審請求が昨年11月10日に起こされた。実は三鷹事件については、被告の大半が無罪となったのだが、ひとり竹内景助被告のみ死刑判決が確定、再審請求申し立てを起こした段階で本人が病気で死去。死刑囚の汚名を着せられたまま真相が闇に葬られてしまったのだった。今回、息子が父親の遺志をついで改めて再審請求申し立てをしたのである。

 様々な新証拠の存在からこの事件が冤罪であることは明らかだが、事件から年月がたっていることもあり、再審開始への道のりは簡単ではない。

 今回の再審請求に至る経緯や判決の問題点などについては月刊『創』1月号に再審弁護団の高見澤昭治弁護士の詳しいインタビューが掲載されているからぜひお読みいただきたい。
(以下のサイトに全文を掲載)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120106-00000304-tsukuru-soci

 そして1月19日(木)18時半〜20時半に吉祥寺の武蔵野公会堂で「三鷹事件の再審開始を求める集い」が開催される。「下山事件」の著書もある森達也さんや事件の目撃者である堀越作治さん(元朝日新聞記者)の講演、それに再審弁護団の報告などが行われる。

 入場無料。主催は三鷹事件再審を支援する会
(世話人・大石進)電話0422-26-8029
mitaka-case@island.dti.ne.jp

 私・篠田は三鷹に住んでいることもあって、この事件に関心を持ってきた。この再審の動きについては『創』で今後も積極的に取り上げていくつもりだ。

チラシをダウンロードする(pdf)

Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

BookMarks

創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

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-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

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