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知的障害者による女児殺害「東金事件」判決公判を傍聴して

 9月29日に東京高裁で開かれた東金事件裁判の判決公判を傍聴した。東金事件は、千葉県東金市で2008年9月に、知的障害者のR君が近所の女児を自宅マンションに連れ込んで、騒がれたために殺害、遺棄したとされる事件だ。判決は懲役15年。弁護側が主張した心神耗弱などの主張はことごとく退けられ、責任能力が認定された。犯行態様といい、動機といい、彼が知的障害者であることを抜きにこの事件は語れないのだが、判決ではそれについての斟酌はなかった。

 公判の後、弁護士会館で支援者らと弁護団による内輪の報告集会があり、参加した。久々にR君の母親にも会った。『創』はR君逮捕直後から、主任弁護人だった副島洋明弁護士のインタビューを毎号掲載。知的障害者の問題を提起するためにキャンペーンを張った。同時にこの事件を報道するマスコミを厳しく批判したものだったために、R君のカラオケ映像を放送したTBSを始め、大手マスコミと論争にも至った。
http://www.tsukuru.co.jp/tsukuru_blog/2009/04/post-79.html

 その後、不幸なことに、弁護団が方針をめぐって分裂、副島弁護士が公判開始直前に辞任するというありえない展開となった。『創』の連載も頓挫した形となった。だから今回、事件関係者と会ったのは久々だった。

 判決を聞きながら、重たい気持ちになった。これで事件の解決になったかというと全くそう思えなかったからだ。

 R君の父親は以前からがんで入院。彼が逮捕された直後に他界した。母親はその前から女手ひとつでR君を育てていた。彼は2008年夏に、勤めていた工場をやめてフリーター生活になった。工場では、知的障害ゆえにからかわれるといった体験もあったようだ。そして、昼間母親が働いているため、R君は一人で家にいるという生活になった。どうもその生活のなかで彼は次第に孤立を深めていったらしい。殺害した女児を連れ込んだのも、当初報道されたようなわいせつ目的でなく、友達がほしかったという動機と思われる。実際、事件後、彼が捜査線上にあがったのを受けて接近してきたマスコミに対しても、彼は警戒するどころか、話し相手ができたと喜んでいたほどだった。記者とカラオケ店に行き、熱唱している様子を撮影されるという事態も、健常者ならありえないことだろう。そもそも、彼が、自分の犯したことの意味や、置かれた立場を十分に理解しているかどうかは、今現在も不明のままだ。

 知的障害者がこの社会でどういう環境に置かれているのか、社会的に孤立している彼らをどうしたらよいのか、家族(この場合は母親)だけに、そのケアや責任を求めるだけでよいのか。本来ならこの事件あるいは裁判は、そういう問題を考えるきっかけにしなくてはいけないと思う。裁判所にそこまでを求めるのが酷だとすれば、それは恐らくマスコミの役割なのだと思う。しかし、そういう問題提起を行った新聞・テレビはほとんどなかった。

 そもそも、今の日本社会では、犯罪を犯した者に判決がくだされるとそれで一件落着とされ、マスコミ報道も「ジ・エンド」。判決を受けた者が将来出所した時に、社会がどう受け入れ、ケアしていくべきかという問題意識などほとんどない。こんなことで犯罪がなくなっていかないことは明らかだ。

 R君が15年後に戻ってきた時、再び我々の社会は、彼のケアを母親だけにおしつけてよしとしてしまうのか。孤立し、追い詰められて犯行に走った、今回の教訓が、それで活かされたと言えるのか。障害者による事件と聞いただけで、難しい問題なのであまり触れないでおこうという、今のマスコミのあり方で本当によいのだろうか。そういうことを考えると、裁判が終わっても、疑問ばかりが残るのだ。

 この事件については、次号の『創』12月号で改めて取り上げようと思う。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

篠田博之様

御指摘のように、大変重い問題でどのように理解したかよいか、非常に悩むところです。

知的障害者といっても、程度区分4以上の対象者は、施設に入所するという選択肢があり、3以下の人は、ケアホーム、グループホームという選択肢があります。いずれも親、兄弟、後見人の判断が左右しますが、この方はかなり軽い普通人として生活できるほどの知的能力を有していたと理解してよいのでしょうか。

孤独は、人間に与えられた特権ではあるが、一人で生活できる心を鍛えるのは、人生に対するある種の悟りを得なければ、不可能なことであって、ほとんどの人が人間的かかわりなしには生活できないと思います。

知的程度が重ければ、社会の支援制度が手厚く確保されていますが、知的程度が軽いと、支援体制がほとんど期待できなく、健常者と同じような扱いを受ける社会を、どのように考えたらよいかという問題にいきつくのではないでしょうか。

知的障害者でなくても、自分の判断能力が欠けていて、行政に批判的な見方ができない、行政追随者が数多くいます。このような人は、自己判断が欠如しているので、知的障害者となんら変わらないのです。この社会における自立できない人々をどのように社会的支援していくべきか、非常に大きな、重い問題を包含していると考えています。

解決できない複雑な問題を含んでいますが、裁判は裁判として是認しなければならないとおもいます。篠田様ご指摘のように、出所ごの生活支援をどうしたらよいか。彼にとっては、刑務所に入って生活する方が快適かもしれず、法だけで解決するのではなく、親身な支援を公的機関に要請したい。

知的障害者であれ、人を殺したことに変わりは無い。それも抵抗すらできない小学生女子である。
出所後の社会復帰、ましてや生活支援の心配など、殺された女子のご両親はどんな気持ちで聞くのだろう。
殺された時点でその子の人権は失われるのだろうか。
夢や希望やこれからしたい事はいくらでもあっただろうに。

 知的障害のある子供には、養護学校があり、平日はその子の状況によって教師の指導を受けることができますが、学校を卒業すると自立もできない子たちが社会へ放り出されていきます。

 その後の受け皿としては、デイサービスを受けたり、作業所へ通うことができます。しかし、これらのサービスは、絶対量が不足しており、どこへも行き場がなくなる子が毎年大量に卒業するため、先生方も親御さんも、受け皿探しに大変ご苦労されていると聞いています。

 お年寄りとは違い、これから40年50年と障害を持ち、生き続けていきます。それなのに、親子を支えてくれる施設は本当に不足しています。施設に入所させず、手元で世話をしてやりたいとご家族が思っても通所施設が少なく、では入所をと考えても、それも順番待ちです。

 本当なら、人口の何パーセントが知的障害者かなどは、政府が少し努力すれば分かるのですから、養護学校卒業後の受け皿も準備すべきなのに、民間任せで自分たちでは何もしない。政治家も、大して票にならない相手のためには働かない。

 拘置所の中では、多くの知的障害者が服役していると関係者から聞きました。社会に受け皿さえあれば、楽しく働いているであろう人たちが、その障害が原因で犯罪者となり、牢屋に閉じ込められています。
また、家族によって家に閉じ込められている人も多いでしょう。

 このRくんも、そのような状況で犯罪を犯してしまいました。社会的な受け皿が必要なのに放置され、家族の努力だけが要求される社会に、問題があると思いました。

篠田です。自分の原稿に誤りをみつけました。東金事件裁判の判決公判を9月30日と書いてましたが、これは29日の間違いです。入力ミスです、すみません。それと、この裁判の総括レポートを次号の月刊「創」12月号に書いたのですが、ここにあるほかの方々のコメントを引用させていただきました。なかなか参考になるコメントばかりでしたので。11月7日発売ですので書店にてご覧になってください。

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Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

BookMarks

創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

最新号
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詳細はコチラ

-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

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