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2011年4月 7日

震災・原発報道とメディアについて上杉隆さんと話しました。

 上杉隆さんがキャスターを務める朝日ニュースターの「ニュースの深層」にゲスト出演し、震災・原発報道とメディアについて話しました。放送は初回が4月12日(火)夜8時からです。http://asahi-newstar.com/web/22_shinsou/?cat=18

 控室で上杉さんが先頃、TBSラジオ「キラキラ」を突然降板させられた話が出たのですが、まあこれについては機会を改めて書くことにして、番組で話した私の震災・原発報道についての感想を、ポイントのみ紹介しておきます。詳しくは来週の番組を見て下さい。

 ちなみに今回の原発報道については、朝日ニュースターは本当に健闘しています。というか、地上波がダメなので、この番組の独自性が光っていると言うべきか。こういう時こそ大切な「言論の多様性」の確保におおいに貢献しています。先般、ビートたけしさんが「原発については地上波とCSと全然違ったことを言っているので、何が正しいのかわからない」と言ってましたが、違った言論がきちんとメディアで伝えられることが大事なんですね。

 で、その番組でも話した、私がこのところの震災・原発報道について思う事柄なのですが、ポイントのみ簡単に紹介します。

(1)今回の震災を「国難」だという指摘が多く、それは間違っていないのですが、そういう状況下で報道機関はどんなスタンスをとるべきかが問われています。政府は国民がパニックになるのを回避するために「安全」「安心」「直ちに危険はない」と強調し、それが原発事故については次々と「事実による反撃」を受けているという、危機管理においてはほとんど破綻状態なのですが、問題は報道機関もそれに引きずられていること。昨日言ったことが今日になると間違っていたという現実を次々と見せられることは、市民の政治不信とともにメディア不信を増幅することになっており、報道機関が国家ないし政府との距離をきちんととれないというのは、致命的なことです。非常時といえど、メディアが我を忘れて政府と一体となって「安全」「安心」だけを広報する機関になってはいけないのです。

(2)原発問題については、20年ほど前、「朝まで生テレビ」でよく賛成・反対両派のディベートをやっており、こういう立場の人がこういう発言をしているのだと、見ている方はリテラシーを働かせて受け取ることができていたのですが、今回の報道ではそれができていません。この10〜20年ほど日本社会から批判勢力、カウンターパートが放逐されることで、いつのまにか「原発反対」の論者は、大手マスコミでは見かけなくなってしまいました。今回の事故報道では、学者が各局登場していますが、それぞれの人がどういう立場から発言しているのか明示されず、ただ「教授」とかいう肩書きだけで解説を行っています。市民にすれば問題は「事実は何なのか」ということなのですが、今の地上波の報道は、解説者のスタンスが明示できていないことも含めて、その市民の欲求に応えられる報道になっていないのです。これはもしかすると、この20年、日本から社会的な批判勢力がパージされていったことのツケが現われているということかもしれません。
 海外だと原発反対運度が盛り上がり、「フクシマ」は国際的キーワードになっているようなのですが、肝心の日本では浜岡原発など一部を除けば、そういうリアクションが目立たない。これ、よく考えると深刻なことかもしれません。つまり日本ではこの20年、大政翼賛化と画一化が進んだということなのですね。

(3)このところの「自粛」ムードの高まりは、昭和天皇死去の時とよく似ているのですが、これもよく考えると怖い現象です。節電に協力するといった合理的な自粛はよいのですが、演劇やらスポーツ大会を中止することが、被災者への配慮になるわけがないのに、自粛の連鎖が急速に拡大しています。8月の花火大会まで中止になっていくようなのですが、復興支援に逆行するようなこういう現象がなぜ起きてしまうのか。突出したことをやって「不謹慎」との非難を浴びると、まさに「非国民」扱いされかねないという、そういう風潮を皆が怖がっているわけです。昭和天皇の過剰自粛の時は、当の天皇家が「過剰自粛を避けよう」というアピールを行うという、ジョークのような展開になりましたが、今回もそれに近い状況です。

 上記3つの事柄について問題なのは、政府の危機管理が破たんしていくのが同時に、政府広報を垂れ流すだけのマスコミの不信、破綻にそのまま連動していっていることです。マスコミはそろそろ独自のスタンス、国家との距離のとり方を考えないと、メディア不信が一気に爆発することになりかねません。これ、すごく深刻な問題なんですが、日々の報道に追われている大手マスコミがどれだけそれを認識しているのか。

 4月7日、月刊「創」5・6月合併号が発売されました。特集は地震以前から進めていた「マンガ市場の変貌」についてですが、それ以外は「震災とメディア」について様々な論者が論及しています。例えばノンフィクション作家の吉岡忍さんとTBS「報道特集」のキャスター金平茂紀さんの対談など、相当読み応えある内容です。作家の柳美里さんが原発事故に対して家族ともども大阪に「疎開」した話など、『創』ならではの記事が満載です。ぜひご購読していただいて、震災・原発報道について一緒に考えて下さい。
お願いします。

Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

BookMarks

創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

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-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

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