Calendar

2011年2月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28          

Recent Entries

« 大相撲八百長騒動と『週刊現代』裁判について
メイン
三井環さんらが2月20日に再び検察批判のデモ »

ジャーナリスト黒木昭雄さんが自殺に追い込まれた事情

shinoda110214.jpg

 元警察官出身で警察裏金問題などを告発し続けてきたジャーナリストの黒木昭雄さんが昨年遺体となって発見。「俺が死んだら警察に殺されたと思ってくれ」というのが口癖だったため、当初は「謀殺説」が吹き荒れました。昨年12月19日、都内ホテルで黒木さんと親交のあったジャーナリストらが集まりました(写真はそこで挨拶する宮崎学さん)。その時の黒木さんの長男が最後に挨拶で語った「父は自殺したのではない。殉職だと思っています」という発言が印象に残り、その後、黒木さんの死の背景などを取材しました。享年52歳という、ジャーナリストとしてはこれからという年齢で黒木さんがなぜ自殺したのか。考えてみるべき問題が残されているように思えたからです。

 その詳細は、発売中の月刊『創』3月号に9ページにわたって書きましたので、ぜひそれをご覧いただきたいのですが、ここでポイントのみ紹介しておきましょう。

 まず外形的には黒木さんは間違いなく自殺でした。遺書も見つかり、自殺した昨年11月1日の行動も判明しました。夕方4時頃、自家用車で家を出てからホームセンターでカードを使って練炭コンロ2つや軍手、マッチなどを購入。レシートも残されていました。警察官だった父親の墓の前でワンカップの酒を飲み、妻の兄に携帯電話をかけていること、10月27日に医者に処方してもらった睡眠剤を飲み、練炭自殺を図ったことも、ほぼ間違いないと思われます。

 ただ、知人の清水勉弁護士に送った遺書にも書いてありましたが、この自殺は、黒木さんが一昨年から追いかけていた岩手の女子殺害事件との関わりを抜きには語れません。この事件を追う過程で黒木さんは物理的にも精神的にも追い詰められていったといえます。事件の詳細をここに語るのはスペースの都合で割愛しますが、2008年に岩手で女性が殺害された事件を追いかけるうちに、黒木さんは、警察の見立てたストーリーが全く間違っていることをつきとめ、捜査の見直しを強く求めていたのです。警察は被害女性の知人で行方不明になった男性を容疑者だとして指名手配したのですが、黒木さんによるとその男性も被害者で既に殺害されている可能性が高いというものでした。その男性の親は、捜査も進まぬうちに息子が殺人犯として公開され、「生き地獄」のような状況に置かれるのですが、黒木さんはそういう状況に憤りを持ち、殺害された女性の遺族と、指名手配された男性の家族とともに、捜査の見直しと真相究明を掲げて、署名運動や警察・行政への申し入れを繰り返します。岩手県へ多い時は月に何回も出かける生活になったのです。

 ところが残念ながら、黒木さんの訴えにも関わらず、警察は誤りを認めず、権力を監視すべき新聞・テレビも警察を恐れてこの問題をほとんど取り上げないという状況が続きました。黒木さんはフリーのジャーナリストですから、取材や署名運動に費やした経費はかさみ、生活も圧迫するようになっていったのです。『週刊朝日』などに何度か署名記事でこの事件を執筆しましたが、そのくらいでは追いつかなかったようです。地元の新聞・テレビがほとんど動かないことも黒木さんをおおいに失望させました。

 黒木さんがこの間、取材経過を書いたブログは今でも残されています。
http://blogs.yahoo.co.jp/kuroki_aki

 また、昨年5月に一度、黒木さんと協力してこの事件の疑惑を報じたテレビ朝日系「ザ・スクープ スペシャル」はこの3月に黒木さんの遺志をついで、再度番組でこの事件をとりあげる予定です。さらに清水弁護士らが地元警察を相手に起こした裁判も続いています。

 黒木さんは時々、私・篠田の携帯にも突然電話をかけてきて、「岩手の事件は必ず弾けるから」と語っていました。その黒木さんの信念がなかなかかなえられず、本人の自殺という事態に至ったことは、編集者として何もしてあげられなかった自責の念とともに、私にも衝撃を与えました。

 黒木さんがのめりこむようにして事件の真相を追及し、警察と闘ったのに、逆に自ら死を選ばねばならなかったというこの現実は、日本のジャーナリズムのあり方を考えるうえで深刻な問題を提起しています。かつて狭山事件や島田事件など、大きな事件には、それを追うフリージャーナリストが何人もいて、社会に告発をするとともに、事件を記録するという役割を果たしたものですが、今はそういうジャーナリズムの仕事を保証する環境がなくなってしまったのです。ジャーナリズム系の雑誌が次々と廃刊していったことも、これに拍車をかけました。警察情報に依拠するが故に警察批判のできない新聞・テレビが取り組まない状況を突破してきたフリージャーナリストが、いまどういう状況に置かれているか。黒木さんの自殺は考えるべき多くの問題を提起しています。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/7848

コメント (5)

■コメント投稿について編集部からのお願い

《THE JOURNAL》では、今後もこのコミュニティーを維持・発展させていくため、コメント投稿にルールを設けています。はじめて投稿される方は、投稿の前に下記のリンクの内容を必ずご確認ください。

http://www.the-journal.jp/contents/info/2009/07/post_31.html

ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

警察、検察、裁判の不備は目を覆うものがあります。ですが、既存メディアは、戦後の長い同じ政権下のもとで、
権力になびくことにより、利権を得てきた経緯もあり、司法を不備なまま、権力だけは巨大にしてしまってもだまって見過ごしたのです。また、市民の代表という名称で、市民目線や意見交換なるものがあっても、ほとんどが自民党支持者で占められていましたから、形骸化しているし、冤罪につながるどんなこともできたのです。
黒木さんはそんな日本の巨大な権力の一部を担っている化け物に命をとられたのでしょう。もう一つはメディア関係会社或は、評論家と称して、司法関係者が多数、弁護士をなのって天下っていることも、人権より利権を取り、正しいことを言う人たちの口封じをしてきたのです。記者のなかには、悔しい思いをしている人たちもいるでしょう。記事がボツになる辛さです。
まったく恐ろしい国日本になってしまいました。政権が交代し、やっと司法にメスを入れるかと思えば、政治の実力者を冤罪で縛りつけ、それを与野党で司法に協力しているようでは、本当に怖い怖いことです。

黒木さんは、真実を追及しない現在のジャーナリズムへの失望が強かったのではないでしょうか。真実追及にコストをかけないマスコミ。そして、真実追及でコストがかかった黒木さん。
 あの事件は、やはり変だった。警察見立ててとは異なると私も認識している。検察は、一度立てた筋はメンツにかけて固執するのか。
 今の社会は、至誠の人に報いるのが少ない。無念だ!

馬鹿も休み休み言ってもらいたい。
他の件については知らないが、この「岩手事件」に関しての黒木氏の主張は殆ど根拠の
無い与太話であるばかりか、一切の証拠無く特定の一般市民を殺人事件の真犯人扱いす
る人権無視の暴挙である。

手配中の容疑者が冤罪であるとする証拠など何も無い。
黒木氏の主張する容疑者の「アリバイ」なるものは、遺体発見直後の死亡推定時刻と警
察主張の犯行推定時刻とに約1日のズレがある事を唯一の根拠に、犯行推定時刻後も被害
者がまだ生きていたと決め付ける事によって成り立つもので、死亡推定時刻の誤差という
ものを一切考慮しないトンデモ理論です。
死亡推定時刻の判定は誤差が大きく1日程度の差など当然の誤差の範囲内で、こんなもの
犯行推定時刻後も被害者が生きていた証拠になど成り得ない事は、多少の知識があれば素
人でもわかる。

黒木氏の主張する容疑者冤罪論は全てこの「アリバイ」が成立することを大前提に成り立
つもので、これが崩壊すれば全て崩れ去ってしまう砂上の楼閣のようなものです。

もっと問題なのは、この砂上の楼閣である冤罪論を前提に「真犯人」の「推理」を始める
ことで、容疑者が係っていた金銭トラブルや、容疑者と交際していた女性がたまたま被害
者と同姓同名であった等の事件と直接関係の無い断片的事実を妄想のみを根拠に組み合わ
せ、金銭トラブルの相手である男性を事件の「真犯人」であるばかりか、彼が容疑者をも
殺害しているという「推理」を展開する。
しかしそれを裏付ける証拠は一切無い。
100%妄想のみで成り立つ奇怪で荒唐無稽な物語に過ぎない。

こんなもの他のメディアが相手にしないのは当然です。 「弾ける」事などあるわけもない。

私も今の警察や検察に対する憤りでは人後に落ちないつもりです。
だが批判するなら明らかな根拠に基づいて論理的に展開しなければならない。
こんな与太話はまともな警察批判の足を引っ張るだけです。

テレ朝は以前の「ザ・スクープ」で、このネタをよりによって「三井環事件」の延長線上で
取り上げた。
あれは「三井環事件」を、この与太話のレベルに貶める行為にほかならない。

死亡推定時刻についての学問的考察。

この推定式によって得られた推定死後経過時間と実際の死後経過時間と
の相関図を図10に示した。推定値と実測値の重相関係数は089であった。
また、全事例の46%は推測値と実測値の誤差が1時間以内、72%が2時間以
内、94%が5時間以内の誤差であった。
http://reposit.lib.kumamoto-u.ac.jp/bitstream/2298/8417/1/32-902.pdf.

「94%が5時間以内の誤差」とのこと。

遺体検案書が示す死亡推定日時は、極めて正確なものと言わざるを得ない。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

BookMarks

創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

最新号
↓ ↓ ↓

詳細はコチラ

-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.